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2012/05/16 (Wed) 21:22
(書評)豆腐小僧 双六道中 ふりだし

著者:京極夏彦

文庫版  豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)
(2010/10/23)
京極 夏彦

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江戸郊外にある廃屋に、いつの間にやら住み着いていた妖怪・豆腐小僧。豆腐を載せた盆を持ち、ただ、立ち尽くすだけのそれは思う。もし、豆腐を落としたとき、どうなってしまうのだろう? そんな豆腐小僧は、ひょんなことから旅に出て……
「妖怪入門としても必読」というのが、文庫の紹介文に書かれているのだけど……どう考えてもそれは違う! 妖怪入門「としても」じゃなくて、妖怪入門「に」豆腐小僧の冒険をくっついている、という感じなのだ。とにかく、全編渡って語られるテーマ。それは、「妖怪とは何なのか?」について、である。
物語は、廃屋で自分の存在を知った豆腐小僧が、そこを飛び出し、様々な妖怪と出会い、その存在について語り合う(というか、話を聴く) その中で、それぞれが「妖怪とは何ぞや」ということが語られていく、という構成。読者に講談調に語りかけるような地の文が何度も言うように、ある意味でとことん素直で愚直な豆腐小僧だから、それぞれの語りをそのまま受け入れ(豆腐小僧自身は、結構、忘れているが)、どんどんと話が広がっていく。その結果、妖怪とは何なのか? という結論へと至る、というわけである。
その妖怪とは何か? といえば、本来は存在しないもの。しかし、何かがおきたとき、それを「妖怪の仕業」とすることで、妖怪は生み出される。つまり、妖怪とは何の力も持っていないものなのだが、人間がそう思うことによって存在が定義づけられる。そして、人間の視点によって作られるため、人間が忘れれば消えるし、人類の記憶から消えれば存在そのものも永久に消滅する。また、錯誤などによって複数の妖怪がひとつになってしまうこともあるし、来歴などがすべて入れ替わってしまうこともある。
ある意味、これってシュールな世界ではある。だって、妖怪が、自分たちは何の力もない。人間の都合で生み出されたり何なりするんだ……ってやっているんだもん。変な世界、ではある。ただ、そんな中で、やがて「そういえば、豆腐小僧は……」というのが現れ結末へ……。ここは上手くまとめたな、と思った。とは言え、全体的に薀蓄部分の比率が高いので、ちょっとスピードに乗りづらい部分があるかもしれない。
これを原作にアニメ映画が作られたわけだが(シリーズ作はあるが、原作は本作とのこと)、よく、これを映像化しようと思ったなぁ……とちょっと感心する。まぁ、逆に薀蓄を削りに削って、豆腐小僧の動きを前面に出せば……よいのかなぁ……?
別の意味で興味を惹かれている自分に気づいた(でも、多分、見ない)

No.2880

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2012/05/16 (Wed) 08:24
ヨルムンガンド・第6話

「Affrican Golden Butterflies phase.1」

途中、少年海賊団の襲撃などを受けつつもアフリカへと向かっていくココたち。ココはそこで、Dr.マイアミとの再会などを約束していたのだが、その本人は蝶を求めて……。一方、香港の商人・陳は、自らの元に来たスケアクロウの漏らした言葉から……

「Golden Butterflies」なんていう複数形がついているように、一本の話というよりも、様々な思惑が絡み合った場所、それがアフリカっていうことなんだろうか?
今回の新キャラであるDr.マイアミや、武器商人の陳とその秘書(?)のカレンといった辺りが色々と思惑を持っているのはわかる。しかし、それとは別に、これまでの登場人物が総登場という感じだから。
冒頭、海賊の中に少年がいたことで動揺をしてしまったヨナ。
アフリカという土地に因縁があり、ラストシーンでは片目を喪ったのがそこにあると案じさせられるバルメ。
そして、アフリカからは手を引くというカリー社長に、そこの前に訪れる陳。その陳自身は、ココの兄であるキャスパーを巡って、というところのようだし……。何となく、それぞれのつながりは見えるのだけど、かなりバラバラに出てきた、という印象。

とりあえず、今回のエピソードは次回でひとつ、決着がつくようだけど、これって、それぞれの人物がその後への伏線という感じなのかな、と感じる。

Dr.マイアミっていうのは、工学者か何かのようだけど、それは武器開発への転用が、ということのようだから、当然、ヨナの嫌うところへ……となるのだろう。
カレンは、次回で最期を迎えるかもしれないけど、カリー社長やスケアクロウとの関係を考えても、アッサリと消えるとは思えない。キャスパーとの絡みもあるのだろうし。
まぁ、今回に関しては、色々と伏線をばら撒いた回、という感じで理解すれば良いのかな? というのが感想。

それと……
Dr.マイアミと言い、カレンと言い……やっぱり、この作品の女性陣は何か違う!!(いろんな意味で)
……あぁ……マリーンさんだけは、常識人だと思う(笑) これで、彼女も、だったらどーしよう(汗)

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2012/05/15 (Tue) 23:08
(書評)鬼物語

著者:西尾維新

鬼物語 (講談社BOX)鬼物語 (講談社BOX)
(2011/09/29)
西尾 維新

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11年前から、滅びた現代という果てしない時間軸移動から戻ってきた2学期初日。出くわした真宵とともにいると、ソレは現れた。「くらやみ」と表現するのがぴったりと来るソレに追いかけられ、たどり着いた先で、忍が語ったのは、ソレは怪異ではない。そして、400年前、最初の眷属を作った際に出会ったいたものだった……
ということで、『傾物語』から時系列的には直後となる物語。
なんか、『傾物語』が真宵の物語と見せかけて、忍とばかりのエピソードになったな……と感じさせ、最後に真宵を持ってきたのと対照的に、今回は忍の過去の話とかは入れながらも、真宵のエピソードが多くなったな、と感じさせ、最後に真宵で締められてしまった感じだ(比較になっていないって)
なんていうか、今回の忍の過去話。作中、主人公の暦も言っているんだけど、「忍って、いろんな意味で大物(でか過ぎて、真面目に考えるのがバカバカしい)」っていう感じで終わってしまっている。『傷物語』で語られた「最初の眷属」の死だとか、そういうものが悲劇的に語られるのかと思ったら、全くそんなことなかったし。ただ、面白がって生きていた忍が、その覚えていた範囲内で過去を語っただけ。確かに、そこに「くらやみ」の正体を示すヒントはあるのだけど、忍の物語とは言いがたい、と感じるのだ。
で、代わりに感じるのは、真宵の物語。忍の過去の話、さらに、「すべてを知る者」こと臥煙伊豆湖によって語られる真相からの展開は、それを強く感じさせる。本当に、真宵って健気だなぁ……と思う。また、この結末によって、『化物語』でのエピソードの中の、取り残された部分にも決着をつけてしまった。本当に、そういう伏線をすべて回収したな、というのを感じる。ちょっと悲しいけど、でも、真宵らしいな、という着地点が良かった。
でもって……一応、このシリーズのセカンドシーズンは次で結末になるんだけど……さぁ、どうまとめる?
今回の「くらやみ」とか、そういうのも関係してきそうだし、ここまで「誰?」状態だった忍野扇も関わりそうだし……他にも色々と気になる連中やら何やらが盛りだくさん。『囮物語』も直接続くんだったっけ? ……などなどと、色々と気になるところは一杯。

No.2879

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2012/05/15 (Tue) 21:28
黄昏乙女×アムネジア・第6話

「復讐乙女」

1日目とは打って変わって、誰も訪れなくなってしまった怪異調査部のお化け屋敷。そんなところに、一人の少女が訪れる。「本物に会えるの?」と中に入った彼女は、何も恐れていなかったという。そして……

復讐とパニック、か……。
怪異調査に訪れた少女の名は有子。学園でもっとも有名な怪談である「夕子」と同じ読みをもつ。ゆえに、そのことでからかわれ、周囲から蔑まれてきた。そんなものがなければ。だから、自分が夕子を殺す。そのために、自ら嘘の怪談を流す。

「夕子を生贄にすれば救われる」

怪異調査部にも、多くの生徒が訪れるが、しかし、一方でパニックに陥った生徒たちは有子をも狙う……。


怪談とか、都市伝説とかってリアリティを出すために、「いそうな名前」をつけることがあるけど、それが同姓同名の人間にとって……ということはあるだろうな。
もっとも、この作品のある意味で凄いのは、(仮に本物の夕子の幽霊がいるとしても)その噂が信憑性を持って周囲に知られている、ということ。多少のからかいの材料になることはあっても、そこまで有子が追い詰められるまで……となるのは、と思う。それとも、クラスメイトに恵まれなかったのか?(ぉぃ)
襲われて、しっかりと胸を去らされるとかを見ると後者の可能性を否定できないな(笑) 相変らず、良く脱がせるアニメだ(ぉぃ)

結局、そんな有子を救ったのは、怪異調査部の面々。
しかし、そんな霧江の前に……

物語も後半になって、学園の秘密とか、色々とこれまでの伏線が出てくるのかな?
今まで気づかなかったけど、夕子の死体がそのまま放置ってのだって変だもんなぁ……

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2012/05/14 (Mon) 20:59
(書評)僕はお父さんを訴えます

著者:友井羊

僕はお父さんを訴えます僕はお父さんを訴えます
(2012/03/09)
友井 羊

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飼い犬のリクが死んだ。何者かに殴られて。中学生の光一は、同級生の沙紗とともに犯人探しを始める。そして、「ある証拠」から決定的な疑惑を持った光一は、司法浪人の敦に相談し、民事裁判に訴えることを決意する。その相手は……お父さん。母を喪った光一にとって、唯一の血を分けた肉親を……
第10回『このミス』大賞優秀賞受賞作。
凄く珍しいところを狙ってきたな、という印象。法廷ミステリ、なんていうようなジャンルは確立されているけど、本作の主人公は、先にも書いたとおりに中学生。そして、題材となるのは 民事裁判。しかも、ペットを殺した、ということでの慰謝料請求。何とも地味なネタであるのだ。
ところが、その地味っぷりが興味を引くつくりになっているのだ。だって、ドラマやら何やらで題材になるのは凶悪事件だし、ニュースなどで報じられるのは、一部の凶悪事件や、国などを相手にした訴訟などばかり。しかも、実際に裁判が始まったあとのことばかり。ところが、本作はその前から始まる。裁判を始めるにあたっての手続き。手数料である印紙代……などなど。裁判そのものは知っていても、その前段階は、という人が多く、それだけで興味を惹かれる内容だと思う。実際、作中で「裁判が高いのは、弁護士の費用が掛るから、だと思っていた」という台詞があるのだけど、実際、そんなイメージくらいしかないのではないかと思う。物語の舞台などはこじんまりとしているのだが、それゆえに、身近に感じられると思う。
そんな形で、少しずつ父親を訴える段取りを固め、やがて裁判へ。口頭弁論から始まって、やがて判決へ……と来てのひっくり返し。ある意味、これはアンフェアな部分もあるのかもしれない。しかも、ある意味では、それまでの人物描写や伏線などから予想できるところもある。だって、そのまま終わったら、「ミステリ」じゃないし、とか思う、衝撃とか、そういうものは、それほどない。でも、そのひっくり返しによって、それまでの日常的と思えるような描写から一気に嫌な雰囲気へと反転させ、その上で救いを導き出すセンスはとても良いと思う。
そんなまとめ方のセンス。そして、最初にも書いた地味な題材を興味深いものにしてしまうセンス。この辺りをとても評価したい作家だな、というのを思う。次回作も期待したい。

No.2878

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2012/05/14 (Mon) 20:04
(書評)サクラ咲く

著者:辻村深月

サクラ咲く (BOOK WITH YOU)サクラ咲く (BOOK WITH YOU)
(2012/03/17)
辻村 深月

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若美谷中学1年の塚原マチは自己主張できず、ついつい頼みごとなどをされてしまう少女。そして、そんな自分の性格を直したいと考えている。そんなある日、図書館で本をめくっていると1枚の紙が落ちてきた。「サクラチル」。そんな貸し出しカードには、自分と同じクラスと消された名前。その後も、同じようなメッセージを見つけ、返事を書くのだが……?
という表題作など、3作を収録した短編集。
なんか、そこから突き抜けていきそうで……でも突き抜けない、という変なウズウズ感を覚えた(笑) 全3編の中で、表題作と『約束の場所、約束の時間』は、初出が進研ゼミ中1講座、進研ゼミ中2講座、というもの。そこからわかるように、基本的には中高生向けという形で書かれている。それが、「ウズウズ感」に繋がるのだ。
というのは、普段の著者の作品なら、絶対にもっと学校、教室という閉鎖空間の中で、上だ下だ、なんていうのようなドロドロとした人間関係があり、その中で、という物語が展開していく。表題作であれば、自己主張できない主人公がいて、その主人公に何かと物事を押し付ける友達がいて、なんていうのがあるわけでいつもだったら、絶対にもっと負の感情とかがにじみ出てくるよな、と身構えてしまう。……が、その身構えたところに、そこまで進むわけではないので、何ともウズウズとしてしまう。これは、著者の作品を何冊も読んでいるから、なのだろうけど。
そして、そんな前提となる部分を除いて読めば、それぞれ明るい雰囲気になるのだ。表題作は、本の中のメッセージから、誰なのか? という疑問へとつながり、やがて、その手紙を通して一人の少女を救う結末へと至る。『約束の場所、約束の時間』は、決して目新しさはないものの、SF的な設定を使い、ちょっとさびしい部分はあるけど暖かい。そんな結末を迎える。これまでにないような暖かい作品になっているのである。
そんな中で、初出が「小説宝石」であり、舞台が高校になっている世界で『一番美しい宝石』は、他2編と比べると毒を感じる。映画同好会がヒロインとして勧誘した先輩。しかし、それは断られ、その理由、そして、先輩の条件を出される。その中で、人間の負の感情などが出てくる。いつもよりは控えめだけど、これぞ著者、という感じで、ちょっと安心した(笑) それはそれとして、他の2編とのつながり、というのも感じ、あの人があの人で……みたいなことを考えて読んだ。
しかし、どうなのだろう? この作品、私のような著者の作品に過去に触れている人間と、そうでない人間。どちらが楽しめるのだろう? この辺りの経験によっても評価が変わりそうな気がする。

No.2877

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2012/05/13 (Sun) 11:58
(書評)若紫 ヒカルが地球にいたころ……3

著者:野村美月

“若紫” ヒカルが地球にいたころ……(3) (ファミ通文庫)“若紫” ヒカルが地球にいたころ……(3) (ファミ通文庫)
(2011/12/26)
野村 美月

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式部の突然の告白。その対応に戸惑う是光は、そこから逃避するように、ヒカルの心残りを解消すべく、次の女性の下へ。その相手とは……小学生の紫織子。ドン引きする是光だったが、紫織子はしたたかで、是光の弱みを握り、「犬」として面倒を見ることに……。しかも、紫織子は、大金を狙うための「雀狩り」をもくろんでいて……
なんか、今回のヒカル、かなりぶっ壊れていたような……(笑) ドン引きする是光じゃないけど、紫織子について語るヒカルの姿はかなりヤバかった。そして、形の上で、とは言え、紫織子の世話をする是光も周囲から同じ扱いに……。なんか、今回は、いつもの「ヤンキー」扱いは当然として、ホモだのロリコンだの……『文学少女』の短編でも、同じようなネタがあったよな〜……とか、そういうしょーもないことを考えてしまった。
今回のヒロインに関して言えば、色々と屈折したものを抱えた、でも、未熟な小学生らしさ、というのが溢れているのかな、という風に思う。
「良い人」だった父を、大企業の会長である久世によって死に追いやられ、家も喪った。認知症になってしまった祖父との暮らしの中、その久世に復讐することが唯一の目的。そんな状況であるために、色々なしたたかさを身につけ、是光をはじめ、大人たちを巧妙に操る。けれども、あくまでも、そんなちょっとした形でのものだから出来ることであり、大物である久世を引っ掛けるにはあまりにも稚拙な思慮でしかない。是光をはじめ、それを止めようとするのも聴かず、暴走しそうになる。そんな危うい人物像。それが何よりもこのエピソードでは描かれていたことじゃないかと思う。最初は、ただの不良娘……みたいなところなのが、だんだんと背景が語られ、その危うさが出てくる、という構成は上手いと思う。
物語そのものは、紫織子の父親は、というところの謎とか、その手紙を基にしたひっくり返しとか、ミステリ的要素もある。もっとも、父親の正体については、やや後だし気味だったりで、ちょっと肩透かしなところもあるのだけど、そういうのもすべて上に書いた紫織子の危うさへのスパイスになっているのだろう、と感じる。
で、そういう風に書きながら、これまでのエピソードのヒロインたちが、是光の周りでめまぐるしく動き始めて……かなりにぎやかになってきたな、というのも感じずにはいられなかったりして。

No.2876

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2012/05/12 (Sat) 11:21
坂道のアポロン・第5話

「バードランドの子守唄」

律子の唇を奪ったことで、ますますギクシャクした関係になってしまった薫。しかも、律子は「気持ちは嬉しいが……」という言葉で振られてしまう。ジャスの練習にも行かなくなった薫。そんなとき、家を出て行った薫の母が見つかった、という知らせが届き……

千太郎、本当に良い奴だなぁ……
「今、見失ったら後悔する」
失恋のごたごたもあってジャスの練習に来なくなった薫を、家に忍び込んで説得に来る。さらに、自分のことで母に会いに行かないことにしようとした薫を説得する。これ、自分も実の親に対して色々と思うところがあるから、とか、そういう背景はあるのだろうけど、それでも……
まぁ、そのときの体勢は……って感じだけど。そりゃ、誰かが来たら慌てるよ(笑) 明らかに別のシーンに見えるもん(ぉぃ)

そして、いざ、東京へ、というときになぜか一緒に電車に乗ることになった千太郎。
これも、「東京見学」とか言っていたけど、母の職場を見てビビる薫を見たときの態度とかを考えても、薫をちゃんと会わせたい、という思いが強かったんじゃないかと思う。いざ、母と食事をしているときに、席をはずすとか、そういうのも含めて、それを感じる。気を使っているもん。

ま、今回は、薫とすれば、一人で考える時間を、と思っていたのに……となるのだろうけど、それとは違った形で得るものが多かったのではないかと思う。
千太郎がいなければ、母と会えていたかどうかも不明だし、うじうじと考えているだけで終わりそう。
さらに、淳一のアパートの学生とのやり取りなんかもそう。「相棒」っていうのは、やはりふたりでいたからこそ聴けた言葉だろう。そういうのがかなり詰まっていたのではなかろうか。
失恋した、っていうことで母が「青春だね」と言っていたけど、この旅自体が、といえるのではないかと思う。


そんな中で、気に掛るのは、淳一の行方。
セクトににらまれた、なんていうのは、アメリカ音楽とか、そういうのを契機にするんだろうが、それが単純にそうなのか? それとも、何か政治的背景とかあるのか? というのがひとつ。
そして、女の下に? という疑惑。これ、女のところに、となると一方通行の終着点がエラいことになりそうなんだけど……

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(2009/03/10)
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2012/05/12 (Sat) 09:44
(書評)味なしクッキー

著者:岸田るり子

味なしクッキー味なしクッキー
(2011/10/07)
岸田 るり子

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全編、ブラックな結末が待っている6編を収録した短編集。ただ、印象としては、最初の方のエピソードは、比較的アッサリとした感じなのが、だんだんと後半になるにつれ、情念とか、そういうものを強めているように感じる。
1編目の『パリの壁』。ある男のもとへ、「取引」を持ちかけるため、パリへと向かった女。その男とは冤罪にもかかわらず、日本でメディアに追われ、社会からはじき出された存在だった。……わずか30頁あまりの分量であるものの、登場人物の立ち位置などが次々と変化していく、というひねり方が楽しかった。
『生命の電話』は、「生命の電話」と言う自殺志願者の悩みを聞く電話が間違って掛ってきてしまう会社を舞台とした話。本当は相談員でも何でもないにも関わらず、適当な言葉で相談に乗る社長。しかし、本当に、その悩み相談そっくりな事件が……。適当な性格の社長から、実は綿密な犯罪計画が!! と思わせておいて、あまりに間抜けすぎるオチというつなぎ方が何とも絶妙。その会社の社員という語り部・サツキの、「自分に向けた怒りでもあった」というその締めの言葉に、読者の私も「確かに……」と同意してしまった。
表題作は、物語の最後に来るのだけど、これは苦笑いとか、そういうものではなく、ただただ悲しい夫婦の物語、という印象。
元々、政略結婚のような形で始まった夫婦関係。夫は妻に心底惚れていたものの、妻はそうではない。しかし、子供が出来れば、と努力をして、それでもかなわず。それでも、妻に執着する夫だったが、認知症となってしまった妻が夫に明かしたのは残酷すぎる事実……。
結婚生活をするにあたって、最初から溝があったのは確かだけど、それがどこまで行っても埋まることはなかった。夫が悪いわけではない。むしろ、努力をしている。しかし、だからこそ浮き彫りになってしまう。だからこそ、ますます意地になってしまい空転する。そんな悲しさが短編ではあっても溢れているように感じた。夫の側は、その最後においても、とことん、救われない結末だ、と感じる。そして、妻の方は……。最後を締めくくるにふさわしい1編だと思う。
『決して忘れられない夜』とか、正直、「ありがちだな」という感じるエピソードもあったりするのだけど、比較的アッサリと、けれども、色々な狙いが入れられている。そんな短編集であるという風に感じた。あと、著者のあとがきで触れられている、各編を作る際のエピソードを、興味深く読むことが出来たりして。

No.2875

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2012/05/11 (Fri) 21:30
(書評)君の館で惨劇を

著者:獅子宮敏彦

君の館で惨劇を (本格M.W.S.)君の館で惨劇を (本格M.W.S.)
(2012/03/13)
獅子宮敏彦

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セレブが関わった事件を秘密裏に解決する「ダーク探偵」。売れない本格ミステリ作家・三神悠也は、そのワトソン役として大富豪・天綬在正の館へと招かれる。大のミステリマニアが集う館には、黒死卿からの脅迫状が届いていた。そして、その脅迫状の通りに連続殺人事件が起こり……
これは、良いお手前……もとい、これは良いバカミスで……(笑)
どんな内容か、ということで、ミステリマニアが集う館、と書いたのだが、まさしく、そんなミステリマニアのための作品になっていると思う。というのは、江戸川乱歩、横溝正史の作品を中心として、様々な作品についての話題などをちりばめながら物語が進んでいくから。マニア同士が、そのことについて話をしている、というわけである。
そして、物語そのものもやっぱり、そんな感じ。乱歩の作品を模した形での殺人。正史の作品を模した形での殺人。それらが、クローズド・サークルとなった館で起こっていく。その中で翻弄される主人公の三神。そして、傲岸不遜なダーク探偵。良くも悪くもそんな感じで進んでいく。
ただ、基本的にバカミスだなぁ、と思うのは、結局、ミステリマニアが徹底的なまでにミステリマニアというその一点に結実するから。私も、ミステリ作品は好きだけど、こんなバカバカしい動機で、バカバカしい行動を起こす気が知れないわ。もはや、理解せよ、という方が無理なのだけど……。まさしくオチとなる部分なんかは、バカバカしさが色々と突き抜けていて大笑いしてしまった。正直、それで何も解決しないだろう、という気ばかりがしたし(笑)
もうひとつ。これは、作品そのものの狙いとか、そういうものではないのだろうけど、トリック成立において、ある意味ではご都合主義過ぎるくらいにご都合主義な協力というのがある。それをマイナスと評価することは出来ると思う。しかし、私は、むしろこれがひとつの舞台設定の徹底の成果なのかな? という風に思う。こんな人材、どうやって探したんだよ、と思うようなところまで突き抜けているので。
はっきり言って、ダーク探偵とかが魅力的かといわれると「?」だし、ノリについていけるかどうか、好みも分かれると思う。万人向けとは到底いえない。ただ、この一種のバカバカしさを許容できるなら、それはそれでアリと思えるんじゃなかろうか。

No.2874

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