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宮本サクラが可愛いだけの小説。3

著者:鈴木大輔



ヒカルとの一線を越えるべく、熱海旅行へと向かったサクラたち……。それが出来ないと、世界は滅びてしまう!?
相変わらず、ストーリーを説明するの難しいな……これ……。だからこそ、「可愛いだけの小説」なのだろうけど。
一応、ヒカルとエッチなことをしないと、ヒカルの中に封印されている(?)オーディンの力が解放されてしまい、世界が滅びしてしまう、ということが示され、そのために色々と行動をする、という話ではある。しかし……
やっぱり、サクラさん、へっぽこ~!!
旅行先で妙にテンションが高くなっている。自分が好きなレトロゲームなどについて、妙に熱く語ってしまう。そして、エッチなことを、というので勢いだけで女体盛なんぞをやらかして、しかし、冷静になってパニック。……挙句に、自分を……と思って、瞑想しようとして普通に爆睡。……どんだけへっぽこなんだよ!!
……というか、そんなサクラを見て、ドン引きするわけでもなく、ただ、女体盛状態の刺身を(ここ重要!)、ただ美味しく頂いた、っていうヒカルも、ヒカルでなかなかのものだとは思うのだけど。
そんなへっぽこさはありつつ、花火大会へと誘い、一応、告白を……となったのだけど……
ここまでのストーリーでは、オーディンの生まれ変わりって? とか、そういうところがあったのだけど、今回はその辺りにも多少、踏み込んでいて……。何か、この辺りの終盤の展開って、『文句のつけようがないラブコメ』シリーズにも通じるところがある様に思う。著者、そういうのが好きなのかな? 最後の最後で、ある事実が判明するわけだけど……このへっぽこさ、っていうのもそのせい……なのか?

No.5313

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美少年蜥蜴 【光編】

著者:西尾維新



眉美を除き、全員がいなくなってしまった美少年探偵団。彼らを探すため、眉美は、リーダー・双頭院学の兄であり、探偵団の創設者でもある踊の元を訪れ、アドバイスを求める。そのアドバイスは、「美術室へ戻れ」というもので……
シリーズ最終編の前半戦、ということになるらしい。
……まぁ、ぶっちゃけ、「物語」シリーズとか、最後、と思わせておいて全く終わっていないシリーズも多いので、どこまで信用して良いのか悩むところではあるのだが(笑) ただ、前作辺りから見え隠れしていたテーマ性みたいなものが、かなりはっきりと見えてきた、というのは感じる。
物語は冒頭に書いた通り、美少年探偵団の面々が失踪してしまって、それを眉美が探す、という形で始まる。探偵団の面々がいなくなり、なぜか、「普通の」学校の生徒たちのようになった指輪学園の生徒たち。聞き込みをしようにも、何か、及び腰な態度を取られてしまう。そして、探偵団の創設者である踊は、探偵団を「卒業」したという人物で、勿論、弟たちを心配はしているのだが、なぜか枯れた、という印象を漂わせる。そんな中で、踊のアドバイスを頼りに美術室を訪れ、そこからヒントを得るのだが……
元が江戸川乱歩の「少年探偵団」ではあるのだけど、前作から見え隠れしていた「卒業」という言葉。そして、ある意味では「井の中の蛙」というような諺。そういう部分に焦点が当てられている、というのを感じる。これまでのエピソードにおいて、突出した才能、というのを示していた探偵団の面々。しかし、それは学校という小さな世界の中だからではないか? そして、そのような流れに、探偵団の面々も? そのようなものが示される中、眉美は、探偵団の面々を探し求める。そうじゃない、と信じて。
一応、最終編の前半戦、ではあるのだけど、話のテーマははっきりとしているし、一つのエピソードとしてはしっかりとまとまっている。これはこれで、一つの作品としてアリなんじゃないかと思う。
勿論、これで何か打破して物語が完結、と言うのでもよいと思う。ただ、これまでのエピソードの中で、この作品世界において、教育システムとか、そういうものが一見、現代のそれっぽく思えたけど、全く違うのだ、なんていうのも示されているわけで、そういうところをどう回収してくれるのかな? なんていう期待をしてみたいところ。

No.5312

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失われた過去と未来の犯罪

著者:小林泰三



女子高生の梨乃はある時、記憶が短期間で消えてしまう、ということに気づく。この現象は、世界中で同時多発的に発生し、世界はパニックに陥った。……それから十数年記憶する能力を失った人類は、外部記憶装置なしでは生きられなくなって……
SFと言えば、SFなのか……。
裏表紙の粗筋には「ブラックSFミステリ」とあり、確かにそれであっていると思うのだけど、同時に、結構、色々と考えさせれる作品だ、といのも感じる。
物語は2部構成になっている。第1部は、冒頭に書いたように、ある時、自分の記憶が数分しか持たなくなってしまった、ということに気づくところから始まる。ふと気づくと、「自分は何をしていたんだっけ?」という状態になる。そこで、ノートに自分の行ったことを記録していく、ということになるのだが……勿論、そうはならずに、同じことを繰り返す者もいて……
そして、第2部では、長期記憶が出来なくなったため、人々は外部記憶装置を着けることに。だが、その記憶装置の取り違いが起きたり、はたまた、死者の記憶装置を身に着けて、死者と再会できるという「イタコ」という職業が生まれたり……
ギャグと言う面もある。実際に、同じことを繰り返す天丼的なギャグがあったり、ドタバタとか、そういう面もある。あるのだけど、読んでいて思うのは、アイデンティティって何だろう? ってことだったりする。特に第2部の内容。自分で記憶を維持することが出来なくなった人類。外部記憶装置をつけることで、というのだけど、それはパソコンでいうところのHDDと同じ。それを他の肉体につければそちらが自分の肉体のように思えてくる。そうなると……。事故にあった子供を助けるため、自分の肉体に子供の記憶装置をつける者。不慮の事故で好感されてしまった者。自分の肉体と記憶、意識の違いに戸惑いながらも、その生活を続ける中でやがて、自分自身はどこにあるのか? ということを忘れていってしまう。そのようなエピソードを繰り返していって……
物語の結末としては、さらに一歩踏み込んで、というところで、今度は人間とは何か? とか、そういうところへと行くわけだけど、そういう点も含めてアイデンティティについての物語、なんじゃないかな? と思えてならない。

No.5311

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著者:SOW



皆に祝福され、結婚式を挙げたルートとスヴェン。そんなスヴェンの願いは、機械として、ではなく、人間としてルートと同じ時間を歩みたい、ということ。だからこそ、スヴェンは、人化の方法を知るマイッツァーを探すのだが、そのマイッツァーは保安部の手によって誘拐されていた……
シリーズ完結編。
これまで、ある意味で小出しにされてきた世界設定とかのネタが一気に回収されるのに驚いた。
物語としては、人化をしたいスヴェンがマイッツァーを追いかけて、というところから。そのマイッツァーを拉致したのは、聖女とされる存在。そして、マイッツァー自身がその聖女と並び立つ「悪魔」。だが、世間一般で言われているそれらの伝承とは逆の状態。さらに、ゲーニッツの意思を継ぐ、というよりも、ゲーニッツの思惑をさらに曲解し、ただただ戦争をしたいがために動く者たち。聖女の信者たち。そして、第二次世界大戦へ向おうとする国際情勢……
世界観としては、世界規模そのものなのだけど、ルート、スヴェンにあるのは、あくまでも「共に歩みたい」という思い。敵となる聖女にあるのも、歪んだ自己顕示欲とでもいうべきもの。さらに、ソフィアやブリッツドナー、ダイアンと言った面々の想いも……。それぞれ、立場もあるし、国に関与もしている。でも、結局は、本人の想いと言う部分が強調され、それが自らの「意志」へと繋がって……という最後の戦いが面白かった。そして、その戦いの中で消息を絶つルートとスヴェン……
一瞬、バッドエンドかな? とも思わせておいて、ちゃんとハッピーにまとまるところとか読後感も良かった。いい最終巻だった。
……と思う一方で、やっぱり、日常エピソードが最後に欲しかったな、と思ってしまうのも事実だったりする。「人」となったスヴェンの戸惑いとか、ルートとの結婚生活でのアレコレ。ルートに変わってトッカーブロートを切り盛りするミリィ……。色々と描けそうな話は色々あると思うんだよね。番外編短編集みたいな形で後日談エピソード、出してくれないかな?

No.5310

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ブログ開設15周年を迎えました

12月7日をもちまして、旧ブログの開設から丸15年を迎えました。

この数年は、相変わらず、ただ淡々と書籍感想を書いているだけのブログとなっていますが、この1年に関していえば、書籍感想にリンクを貼るためのサイト用に使っていたジオシティーズがサービス終了した結果、FC2へとお引越しをしたり(ちなみに、そのサイトはこちら)、はたまたMF文庫Jさんの新人賞受賞作『探偵はもう、死んでいる』(二語十著)の推薦文を書かせていただいたり、とか、結構、色々とあったなぁ、と感じる1年でした。

今現在は、コミケ原稿がヤバいことになっているのですが(毎年、言っている気がする)、とりあえず、無事、今年も大きな抜けなく更新し続けられたことが何よりだと思います。
16年目もよろしくお願いします。

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著者:田中静人



「うちの社長は笑いません。ですが、お客様の笑顔のために努力しています」 転職を考えていた森野美優は、訪れたミヤタ電器店の求人広告に心惹かれる。そこでは、家電に詳しいが人の心の機微を理解できない店長・宮田と共に、「なんでも対応」をポリシーに家電に纏わる不可思議な出来事と、その裏側にある人々の想いを解き明かすことになって……
という連作短編形式で綴られる物語。
まず思ったこと。
オタク?
いや、この作品の「オタク」は所謂、漫画とか、アニメとかが好きな人、じゃなくて、家電オタクということになると思うのだけど、この作品に登場する宮田の場合、「家電オタク」というよりも、アスペルガー症候群とか、そういうものじゃないかという気がする。
という形で始まるのだけど、物語の流れと言うのはある程度、パターン化されており、ミヤタ電器店に持ち込まれる家電に纏わる不可思議な謎。相手の家などに行って、なぜ、その現象が起きるのか? というのを宮田が見抜く。しかし、心の機微とかに疎い宮田には、なぜ、そのことが起こされたのか? というものがわからない。そこで、美優がその動機を解明していく……というもの。
例えば2編目。空気清浄機が動いているはずの部屋で、その家の子供がカビが原因の体調不良になってしまった。なぜ、体調不良になったのか? と言う原因は宮田が解き明かす。でも? その家に起こっていた変化。そして、その中での原因となった人物の複雑な想い。その辺りが、かなり上手く描かれていたエピソードだと思う。
そんな中、美優自身の周囲でもおかしなことが。作中、「幕間」と称して、美優をストーキングしている人物が描かれ、さらに、美優自身もつらい過去を持っていた。そんな思いが重なっていって……。ちょっとした仕掛けと、そこからのひっくり返し、っていう部分は上手く機能している。そして、そういう面があるのならば……という点で納得することも出来る。出来るんだけど……なんか、まとめ方が綺麗過ぎる気がしないでもない。そこまでされて、素直に引き下がるか、とか、被害者側は……とか、そういうのを思うと……
まぁ、野暮なのはわかっているし、話をまとめる、という意味では、こちらの方が良いのは確かなのだけど……

No.5309

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著者:藻野多摩夫



大磯にたつ鴫沢古物店。看板も出さず、古いものをひたすらに集める鬼である店主の鬼蔵と、しっかり者の妻・渚。古い物には魂が宿る、というが、そこで扱われた物について、奇妙な出来事が起こって……
と言う形の連作短編集。
まず思ったのが、非常に綺麗な話、っていうところだろうか?
昭和末期の時代を舞台とした作品で、義母との関係が上手くいかない少年が手にした真空管ラジオ。シングルファザーの父との関係に悩む少女が持つドールハウス。そして、鬼蔵と渚のなれそめを描いた話という形。
「道具は、使われてこそ美しい」
ある意味では、そこから始まっているのかな? と……。愛着があるからこそ、そこに想いが生まれる。そして、道具にも……。
特にそれを感じるのは、3編目。鬼蔵と渚の話に集約されているかな? 幼いころからやってきたピアノを諦め、家を飛び出した渚。そこで、声をかけられたのは鬼だという鬼蔵。そして、その鬼蔵と、亡くなった女性の遺品から夫婦茶碗を探すことになって……。勿論、どんな道具であっても使い込んでいれば傷もつくし、壊れてしまうこともある。特に、日常的に使う食器などは……。そんな中での、その夫婦の想いが込められた茶碗。僅かな時間しか共有していなかったが、しかし、想いは強かった。そして、人よりも遥かに長い時を過ごす鬼蔵にとっても、他者との出会い、別れは……。丁度、道具が傷ついていくのと同じように……。でも、それが一つの味となって美しさへ……
電撃文庫で出していた作品とは違い、派手さはあまりないのだけど、その分、落ち着いた、しっとりとした読後感を覚えた。

No.5308

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著者:山下泰昌



エンジェル・ライドの定期開催が決定。再び召集された雅文たち。オルとも再会し、再びペアを組もう、ということになるのだが、そこに現れたのは、オルのレースに憧れる少女・ミミ。「ミミはお兄ちゃんに憧れてるんよ」 そういう彼女は、オルと雅文の間に割り込もうと……。しかも、なぜかオルと雅文の同調が上手くいかなくなってしまい……
大分、久々に刊行された第2巻。
え? そういうことなの!? っていうのが、正直なところ、読み終わっての感想。
物語の主軸となるのは、前回のレースで同調をした雅文とオル。だが、再会した二人は、なぜか同調をすることが出来ない。そして、そんな間隙を突くように現れた、雅文に乗ってほしい、というエンジェル・ミミ。さらに、オルと雅文が、というのが許せないオルの兄弟・エル。そして、スキム……
文字通り、オル、雅文を巡っての争奪戦ということになるのだけど、その中で気になる雅文とオルのアレコレ。前回のレースの中で、オルは確かに雅文にキスをした。そのことが? それとも別の要因が? そういう、自分自身が気づかない心の変化が? とか、そういうのを想っていたら、ちょっと意外な理由だったので、そっちなんだ、と思ったというわけ。そこは、ちょっと残念な感じもした、というのが正直なところ。
ただ、その一方で、レースやらのアレコレは相変わらず面白い。オルとの同調が出来ない中、雅文はミミとコンビを組むことに。エンジェル、としては致命的にスピードのないミミ。しかし、エンジェルの姿になった彼女は、巨大で、とてつもなく力強い、という武器がある。レース中、相手の邪魔をすることも可能である、という特徴を生かせば、最高速で負けていたとしてもチャンスはある。その武器を最大限に活かす作戦を練る雅文。その結果、好成績を叩き出し、自信を強めていくミミ。そんなときに……
作品を巡っての背景となる世界情勢とか、そういうのはあるのだけど、個人的な好みでいうのならば、レース一本でも良いんじゃないかな? とはちょっと思う。正直なところ、同調を邪魔した存在の動機が、イマイチ、よく理解できなかった、というのがあるだけに。
ただ、レースそのものの面白さ。同調が上手くいかずとも、それでも、パートナーとなりたい、という雅文とオルの特訓。そういうところの真っすぐさ、っていうのが大好き、っていうのは変わらない。

No.5307

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クジャクを愛した容疑者

著者:大倉崇裕



シリーズ第4作。全3編を収録した作品集。
何と言うか……今巻は新キャラが加入して、っていうことが一つのポイントになると思うのだけど、結構、扱いとしては地味な感じ。どちらかと言うと運転手と言った役割だし、どちらかと言うと巻き込まれ型というか……。だんだんとカラーに染まっていくのだろうか?
で、本編……
何か物語として、謎解き、というよりも、その題材になった生き物についての誤解とか、そういうところが大きいかな? と……
例えば、1編目の『ピラニアを愛した容疑者』。殺害された老人は、ピラニア飼育のマニアだった。そんな彼の家には、難しいと言われるピラニアの共泳が為されていた。そして、そのことを巡って言い争っていた男が容疑者として浮かび上がるが……
ピラニアというと、それこそ、須藤がイメージするように「狂暴な肉食魚」という印象がある。けれども、実際には……。確かに、肉食ではある。けれども、臆病で、そこまで危険な魚ではない。そして、そんなピラニアに対する誤解。そういうものを描きながら……。謎解きとしては、その前後に起きていたある事件について、なぜ、それで済んだの? というところがあったので……そこから、というのはわかったけれども。
2編目は表題作。目白にある学同院大学の学生が殺害された。容疑者として浮かび上がったのは、学内でクジャクを飼っているクジャク同好会の会長。被害者とは、その同好会の活動場所(クジャクを飼っている場所)を巡って言い争っていた……
っていうことなんだけど、著者、学同院大学ネタ好きだなぁ(笑) 著者の出身校がモデルってことで、描きやすいんだろうけど、読んでいてまず思ったのは……越智くんや、岸さんは出てこないの? ってところだったり(ぉぃ) 著者、結構、他作品のキャラが、ってことをやるんだけど……残念ながら、出てこなかったのが残念。まぁ、犯人については……正直なところ、動機とか、そういうのがひねくれ過ぎていて、ちょっと理解しづらかったかな? という思いが出てしまった感じ。
ある程度、マンネリ化した感じはするのだけど、それが安心感につながっている部分もあるし、第5作目も楽しみにしたい。

No.5306

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虎を追う

著者:櫛木理宇



30年前に起きた『北蓑辺郡連続幼女殺人事件』。亀井戸、伊与という二人の男が逮捕され、死刑が確定し、事件は終わった……はずだった。その事件を担当し、ほのかな違和感を覚えていた栃木県警捜査一課の元刑事・星野誠司は、亀井戸の病死を契機に調べてみようと思い立つ。警察官を引退した星野は、孫の旭、その友人・哲らの協力を得て、SNSなどを用いて、「事件の真相をリアルタイムで拡散する」という形で世論を動かし始めるが……
いや~……面白かった。
物語は、冒頭に書いた通りなのだけど、そもそも犯人の人物像はどうだったのか? どちらも少年時代に事件を起こした過去があり、前科のある人間を積極的に雇っていた会社で働いていた二人。しかし、経営者の交代で職を追われ、日雇いで過ごす中、貧窮し、窃盗を繰り返すようになっていた。言葉は荒いが、しかし、筋の通った行動を見せていた亀井戸。心の弱さなどもあり、単独でそんな大事件を起こすとは思えなかった伊与。どうにも、残虐な犯人像には当てはまらない。一方で、同性愛を周囲に疑われながらもなぜか伊与と行動を共にしていた亀井戸。なぜ、亀井戸は自分が困窮してでも伊与を庇っていたのか? さらに、そんな調査をする中で現れた、真犯人を名乗る者からの手紙。解決した事件をほじくり返すな、という警察からのプレッシャー。
物語の主軸となるのは、当時の関係者に聞き込みをして、新たな発見をして……というのを繰り返す形ではあるのだけど、SNSでの拡散を巡ってのアレコレ。ネットでの拡散だからこその、WEB上での賛否なども多くなるし、あやふやな情報なども多い。その中での様々な反応。さらに、調査の中心人物である星野、旭、哲と言った面々の抱えた事情などが程よく組み込まれており、飽きずに読める、というのも上手さを示していると思う。そして、そのような中で明らかになっていく、真犯人の輪郭。そして、亀井戸自身の事情……
劣悪な環境。持って生まれた障害。出世欲、保身欲。そして、ゆがんだ性癖……。これらが全て加わって、と作中に出てくるキーワードが全て繋がっての真相へ、という構成も相まって、完成度が高さが光る。ただ、作中で出てくる法解釈というか、説明と言うかは、そういう意味だったっけ? ってのがあったりしたけど。

No.5305

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