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著者:石川博品



大白白帝国。野球の巡業で身を立てていた白白人が興した国。その皇帝暗殺を胸に秘める少年・海功は、少女に身を扮し、後宮へと入り込む。新入り宮女となった彼が見たものは、帝国中から集められた少女たちが帝の寵愛を受けるべく野球に熱狂する姿だった。野球少年であった海功もまた、その熱狂の渦に巻き込まれることになって……
著者の初期作品を読んでみているのだけど、やっぱ、ものすごくクセの強い作品だなぁ……
物語の流れとしては、冒頭に書いた通りなのだけど、ただ野球をするだけなのか? と言えばさにあらず。後宮に入ったカユク。彼は、当然、新米であり、その中の地位としては最も格下。その中で、当然のごとく、下に見られ、中には露骨に嫌悪を露にするものも。一方で、帝の寵愛を手にするために派閥争いなどもあり、各チームは各チームでの派閥争いのようなものも存在する。しかし、その中でも野球に勝って、帝に注目をされて……という部分では一致する。
そして、物語の主人公であるカユク自身のこと。極貧の中で育ち、大好きだった野球も取り上げられ、皇帝暗殺のために後宮へと入れられた存在。勿論、その目的を忘れているわけではない。しかし、新米として忙しく働く日々と、色々とありつつも大好きだった野球をすることが出来る状況。その中に、このままでも良いのではないか? なんていう感情も見えてくる。しかし、実際には男であるし、このままではいられないのも間違いがないわけで、その状況のギャップとでも言うべきものを常に抱えている。このあたりの状況というのが、独特の作品世界観を作り出している、というのは確か。
読んでいて、確かに面白い。色々な要素がごった煮になっているのに、なぜか闇鍋にならず、ちゃんと調和している、とでもいうか……。この独特の感覚はなかなか味わえないものだと思う。
ただ……逆に言えば、これ、どういう風に説明すればよいのだろう? という気分にもなる。
例えば、カユクが、皇帝暗殺を何よりも狙っていて……というのであれば、まだ違うのだろうけど、結構、日常に馴染んでいるわけだし、ただ野球をしている話か、と言えばそうでもない。わかりやすさ、というのがあまりないのが、セールスポイントとして欠けてしまっていたのかな? なんていうことを思ったりはした。

No.5522

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箱とキツネと、パイナップル

著者:村木美涼



大学を卒業した坂出は、就職先のスポーツショップが入るショッピングモールにほど近いアパート・カスミ荘に入居した。一見、ごく普通のアパートであるが、姿は見せないもののマメな大家、さらに個性的な住民たちがいる場所だった。住人たちとの楽しい日々を過ごすことになる坂出だが、おかしなことも沢山起こって……
第6回新潮ミステリー大賞・優秀賞受賞作。
なんだかんだ言いながらも追いかけている新潮ミステリー大賞。これまで読んだ歴代の受賞作は、ヘンテコな作品が多いのだけど、本作も結構、ヘンテコな話。以前の受賞作でも言われていたけど、この作品も、選考委員である伊坂幸太郎氏の作品が頭に浮かんだ。
物語の一番の魅力は何と言ってもカスミ荘の住人との交流かな? 粗筋にも書いたけれども、物語の中心となるのは、同じアパートに住む個性的な住人とのやり取り。引っ越しを手伝ってくれた友人の藤井。息子のことをやたらと心配する前原夫妻と、巨漢の息子・翔馬。コミュ障のコンビニ店長の村瀬、生真面目だけど、酒を飲むと……な北白川、夜の仕事をしているっぽい女性・進藤。さらに、住人ですらよくわかっていない謎の人物・鈴木。不可思議な出来事は起こるのだけど、それについて、(鈴木は出てこないけど)住人がアレコレと噂をしたり何なりと話をし、時に一緒に食卓を囲み、助け合い……というやりとりが何よりも楽しい。
そして、物語として、確固たる謎……とでもいうのかな? 例えば、「殺人事件が起こりました」っていうのならば、その犯人は誰なのか? みたいなものがあると思うのだけど、本作の場合、それはない。しかし、やりとりを重ねる中で、姿を現さないが、「回覧板メール」やらで、やたらとマメな大家は何者なのか? 姿を現さない「鈴木」は何者なのか? 隣の空き地を巡ってトラブルを抱えている隣人は何なのか? さらに、なぜかうまく機能しないインターフォンに、扉をたたく「こん、こん……」という音……。謎は謎だけど、でも、どこへ向かうのかはわからない。その不安定さ。だからこそ、どう決着するのかが気になった。
物語のオチとしては、一つの解決はしている。でも、すべての謎が解けて……というわけではなく、何かふわふわとしている感じはある。でも、希望の見える終わり方とかを含めて、意外と満足感のある終わり方だった。

No.5521

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シュレディンガーの猫探し

著者:小林一星



探偵は「真実」を求め、魔女は「神秘」を求める。そして、人は時に解かれたくない謎があり、秘密にしておきたい真実がある。探偵嫌いの守明令和は、文芸部部長の芥川くりすの紹介で、「迷宮落としの魔女」焔螺と出会う。謎こそを「神秘」ととらえる焔螺と、謎を解きたい「探偵」との対決が始まる……
第11回小学館ライトノベル大賞・審査員特別賞受賞作。
これはまた、変わった趣向の物語でございまして……
物語は3章構成で綴られており、1章では密室で起きた事件。2章ではクローズドサークルで起きた事件……という風に謎が提示される。そして、それぞれに「探偵」が現れて謎を解こうとするのだけど、それを令和、焔螺が「謎は謎のまま」にして解決するのか……という戦いが開始される。
なんていうか、これ、ある意味ではミステリー論とでも言うべきものだよな、というのを思わずにはいられない。
物語は各章、どういう状況があって、どういう部分が不可解な状況であるのか、というのが提示される。勿論、その状況整理はミステリ作品の推理そのもの。そして、令和たちも、そういうことを踏まえている。しかし、そこからのアプローチが違う、というか……。令和たちと対立する探偵側のアプローチは、普通のミステリ同様、その謎が合理的にどう説明できるのか? ということへと向かっていく。一方、令和、焔螺たちのアプローチは……
例えば、東野圭吾氏の『新参者』は、「真実が明らかになることで、次の一歩へと進むことが出来る」というようなメッセージが綴られていた。しかし、真実が明らかになることで、取り返しのつかない傷を負ったりすることもある。それよりも、謎を謎と残しても、その問題は解決できるのならば? このあたりのやりとり、アプローチの違いって、謎をどう扱うのか? というミステリー作品の在り方に繋がっていくものがあると思う。そして、例えば、第1章の結末とか、まさに、そのアプローチの違いを如実に示しているエピソードだと思う。
まぁ、このあたりの「謎をどう扱うのか?」という話において、その謎がどういう種類のものなのか? なんていう部分に委ねられる部分も大きいと思う。例えば、殺人事件が発生して、なんていうときには、誰が犯人なのか? とか、謎のままじゃあねぇ、っていうこともあるし。その辺の、設定とかも色々と考えられている、というのを感じる。
そういう意味で、ミステリ作品における、謎の扱い、っていうことに色々と思いを巡らせることになった。

No.5520

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呪殺島の殺人

著者:萩原麻里



目覚めると、そこには女性の遺体が……。すべての記憶がない僕は、どうやら秋津真白という名で、死んでいるのは伯母で、屋敷の主・赤江神楽だという。穢れを背負った呪術者の末裔は、皆、悲惨な死を遂げる。そんな話が残る中、赤江神楽もまた、その呪術者の末裔であるという。甥に殺されたのもその呪いなのか? 真白は、幼馴染の古陶里と共に事件の謎に挑むが……
THE・クローズドサークル!
っていう雰囲気なんだけど、ちょっと違うのは、やっぱり設定の妙にあるんだろうな。
冒頭に書いた粗筋の通り、記憶を喪った状態で、伯母の遺体と共に発見された真白。部屋には鍵が掛かっており、状況的に真白が犯人であろう、という環境。しかし、真白自身は自分が誰なのかも記憶にない。そして、伯母にとって唯一の肉親である真白は、その莫大な遺産を受け継ぐ立場。わざわざ殺す必要があるのか? さらに、部屋に設置された防犯カメラのデータはなぜか奪われている。状況的には真っ黒だが、しかし、なにかチグハグ。
そんな中、館は台風によって孤立し、館へ続く山道で、島の駐在員の他殺体も発見される。さらに、館に集まった面々も次々と殺害されて行って……
そこだけだと、どういうトリックで? とか、そういうところがクローズアップされると思うのだけど、この話の面白いところは、話が進むにつれ、どんどん、事件の背景が明らかになっていく点。真白にとって、自分を擁護してくれると思われた存在が一転したり、はたまたその逆だったり。はたまた、島に来る前から、真白を脅迫している存在がいたり、でも、その脅迫者の目的を考えると、真白を犯人に仕立て上げることが得策とも思えない。いろいろな思惑がある。しかし、それがどんどん入り組んでいく様に引き付けられた。
事件の真相、黒幕の思惑についてはちょっと極端かな? と思ったところもあるのだけど、クローズドサークルの中にあって、それぞれの思惑が交錯していく様がすごくよかった。

No.5519

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著者:是鐘リュウジ



女神により、神聖空間に封印された魔王ジュノ。しかし、彼はその封印された空間で、300年の時間をかけ、史上最強の魔法「魔導調律」を編み出した! 復活を遂げたジュノは、相手に快楽を与え、絶頂させることで魔導経絡に介入し、相手を意のままにすることが出来るその能力をもって、再び、世界の支配に動き出す!
うん、エロ枠だな(笑)
復活を果たした魔王が、粗筋で書いた能力をもって世界征服を目指す、という話なのだけど、当然、能力が能力なだけに、快楽調教とでもいうべきものを行っているシーンがかなりの分量。魔王は魔王で、人間の身体を手に入れたことで、これまでと違った快楽などを知ることになって……となるので、こっちもこっちで余裕とかないわけだけど。
ということで、エロ方面に目が行くわけだけど、個人的には、敵対する女神側のへっぽこさ、というか、ダメダメさ、というか、そういう部分がギャグとして好きだったかな?
魔王復活の一報を聞いて、最初に攻め込んでくる王女スピカ。王女として、魔王と戦う、という使命を持っているわけだけど、周辺の面々は「こいつにやらせておけ」レベルで、あまり協力してくれない。さらに、本人のパラメータ的には知力20という物凄い脳筋。しかも、魔導調律をする中で、それがどんどん下がっていく。途中で、魔王側について、女神を迎え撃つときの、ポエムには大笑いした。
結構、直接的な描写はありつつも、だんだんとエロ描写に慣れてくるのか、最初の、魔王を復活させた直後のリリスとのアレコレが一番、エロスは感じたかな? それよりも、途中からはギャグ作品として楽しめた、という印象。

No.5518

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綺羅星 銀座ともしび探偵社

著者:小松エメル



大正浪漫の街を歩いては「不思議」を拾う探偵たち。
シリーズ第2作。前巻を読んだときは、謎解きなどをメインにした話なのかな? という前提で読んだので、戸惑うことも多かったのだけど、今巻は最初から不可思議な出来事を目の前にした話、という前提で読んだこともあり、戸惑いなどなく読むことが出来た。
で、この巻は木下、小山田の掘り下げが多かった話かな? と思う。
『開かずの間』は、木下が女子校の開かずの間を調べに行く話。誰もが見とれる美青年であるが、女性が苦手な木下。なぜ、自分が女子校へ……。そこで出てくるのは、鍵があるわけでもないのに、開けることのできない扉。それを前にした時に木下の心に浮かぶのは自身の過去。
元新聞記者である木下。その美形から、勝手に期待され、堅実な記事を書いても「つまらない」と言われる。そして、その美貌故に呼び寄せてしまったトラブル。自分自身が望んで手に入れたものではない。しかし、その特徴故に、勝手にハードルを上げられ、トラブルを背負い込む。それがきっかけとなり、そんなトラブルを呼び込む女性が苦手に……。例えば、教師の子なのに勉強が苦手、とか、そういうところでハードルをあげられて、という話はあるけど、他で努力をしてもなぜか期待外れのように言われる。その劣等感が印象に残った。
『十二階下の少年』は、小山田の話。なぜか不思議を呼び寄せてしまうのと同時に、他者に関心を持たない小山田。そんな彼が唯一、心を寄せる存在が娼婦のユリ。そんなユリの元へ通う少年と知り合い……
他人に関心を寄せない、という風には書かれているけど、そんな感じではない、という印象。確かに同僚とかには冷淡な部分とかもあるけど、ユリのこと
そして、そんなユリの元へ訪れる少年を弟のようにかわいがり、その事件の結末に憤る。ただ、不器用なだけじゃないのか? という感じがしてならない。
そして、不思議なことが減っている、単純化している、ということに気付いての表題作。そこで現れたのは、世の中の「不思議」をなくしている、という集団。そんな集団に対して、探偵社の面々が思ったのは……
なんか、終わり方としてスッキリしない、という部分はある。あるのだけど、ここまでのエピソードで木下にせよ、小山田にしろ、不思議と関わって生きてきた存在。そんな存在だからこその反応がある。そういう結末だったのかな? という気がする。

No.5517

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著者:玩具堂



入学早々、親が探偵であると口走ってしまった戸村。その結果、戸村の元へはクラスメートから相談が持ち込まれることに。そんなとき、戸村の両隣の席である山田雨恵と、雪音姉妹は鋭い推理で問題を解決していって……
これ、好きだな。
彼氏が浮気をしているんじゃないか? という相談。絶版されたミステリ小説の犯人は誰か? 絵画に突き立てられたナイフの謎。そんな謎を解いていく、という形で綴られる。
謎解き、と言っても、上に書いたように殺人とか、そういうものではなく、日常の謎……ともちょっと違う、独特な謎。そして、聞き込みくらいはするものの、尾行をするとか、そういう「探偵」らしきことはしない。色々な話などを聞いて、それについて色々と考えを巡らせて……という形で推理を披露する。どちらかというと、安楽椅子探偵に近い感じかな?
その中で好きなのは、2編目の絶版したミステリ小説の犯人は誰か? という話。問題となる本は絶版となっており、ネット書店などではプレミアがついてとてもじゃないが手を出せない。そんな中で、手に入ったのはカバーだけ。カバーには、登場人物の一覧と粗筋。そして、著者は本格ミステリの作法にこだわっている、というもののみ。そこで、「ノックスの十戒」「ヴァン・ダインの二十則」などをもとに、誰なのか、を推理する。ある意味、ものすごく無意味なもののような気がするけど、だからこそ面白い。
そして、その推理を彩る山田姉妹。姉の雨恵は、人との距離が近く、そして、ここ一番で鋭い推理を披露する。一方、妹の雪音は真面目で勉強家。だからこそ、先のエピソードで言えば、ノックスの十戒とか、ヴァン・ダインの二十則なども知っているし、謎について語るときの進行役にもなる。そんな二人に、主人公の戸沢を含めたやりとりが楽しい。しかも、双子で、それぞれに特徴があるのだけど、でも、それぞれがそれぞれについてのコンプレックスとかがあったり、はたまた戸村のことを考えて……なんていうこともあったり……。1巻の段階では、謎解きが中心になっている面があるのだけど、それでも、だんだんと双子、それぞれの想いとか、そういうのもクローズアップされてきて、謎解き部分もいれつつ、ラブコメ展開になるなじゃないか、というのを考えると2巻目以降もすごく楽しみ。

No.5516

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著者:二宮敦人



大学に入った大船一太郎は、新入生歓迎会で競技ダンスの存在を知る。そんなものがあるのか、という気持ちでダンスパーティーに参加するのだが、これが、競技ダンスの世界へと足を踏み入れた瞬間であった……
これは、小説なのか?
一応、本の形式としては、大学生になった大船が競技ダンス部に入り、そこでの日々を過ごすパート。そして、大学を卒業し、当時の競技ダンス部の面々と当時のことを振り返るインタビュー記事のようなものを繰り返すような形で構成されている。まぁ、大学生パートは小説形式で綴られているのだけど、大学名とかは実際のそれをそのまま使っているし、小説のような形をとりながら、大学の競技ダンス、というものについて紹介した書、という印象のほうが強い。
はっきり言って、異次元の世界ではある(笑)
いわゆる体育会系の部活。例えば、野球やサッカー、陸上……なんていうものは、大学に入るまでの積み重ね、というのが大きくものをいう。しかし、競技ダンスには、それはほとんどない。皆が初心者だし、それでも優勝を狙うことだって十分にできる。何よりも、踊ることが楽しい。そんなところから始まり、しかし、練習はひたすらにハード。しかも、笑顔を絶やしてはならない、とか、そういう部分もある。そんな感じで始まっていくのだけど……
正直なところ、現在、オリンピックなどで行われているフィギュアスケートとか、シンクロナイズドスイミングとか、そういうものにも、表現点とか、そういう点数があり、「これは厳密な審査になるの?」なんていうのを思うところがある。勿論、それらの競技では、「この技を決めたら〇点」みたいな基準があり、そういう意味である程度、客観的な部分は担保されている。しかし、競技ダンスの場合、そういう基準すら存在しない。ある意味、究極の主観評価。しかし、一方で「競技」である以上、試合もあるし、それで敗れると……なんていう部分もある。その辺りの曖昧さ。
さらに、2年生になると「固定ペア」を作り、そこで選ばれなかった者は去っていくことになる。これも、例えば、陸上部だったら、この競技でこのくらいのタイムが出せないと、とか、そういうので客観的に見て、実力の足りない人間は……ということになるだろう。残酷だけど、でも、納得ができる部分もある。しかし、競技ダンスの「固定」の場合、それすらない。
いくら技術があっても、ペアとなりたい、という存在がいなければ外されてしまう。そのペアを巡っての部分にも実力だけじゃなく、相手と付き合っているから、とか、そういう面倒くさい人間関係も見え隠れする。そこまで露骨でなくとも、例えば、ペア同士の身長差であるとか、本人の努力じゃどうしようもない部分などで、どんどん切られてしまう。その相手を見つけるための男女、双方の駆け引きとか、そういうものがすごく怖い。しかも、その中には、体育会系らしい同調圧力とか、そういうものも含まれているし……
そういう意味で、宣伝文句の「社会の縮図」っていうのは、確かにそうなんだろう、とは思う。思うし、そういう世界であることを紹介する、という意味では成功しているとも思う。でも、私のように、競技ダンスを全く知らず、しかも、やる気もない人間がこれを読むと、そんな苦しい関係の場所に惹かれる人間って、どうかしているよ、とも思えてしまう(笑)
知らなかった世界を知る。その意味で、面白く読めたのは確か。
でも、そのことにより、これまで以上に「異次元の世界だ」という印象が私には残った。

No.5515

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ダーク・ブルー

著者:真保裕一



海洋調査を専門とする日本海洋科学機関は、科学者・奈良橋の開発チームによって作られた新型マニピュレーターの検証実験のため、潜水調査船りゅうじんを携えてフィリピン沖へと向かう。だが、突如、武装集団に襲われてしまう。船を占拠した集団の目的は、沈没船に隠された「宝」のサルベージ。パイロットの鳴海は、シージャック犯と共にりゅうじんに乗り込む……
うーん……
どうにも中途半端な印象。
ストーリー展開は冒頭に書いた通り。民族の誇りのため。民族の独立のため。そんなために宝を探す、というシージャック犯。確かに、いきなりの襲撃などはあった。銃を突き付けての脅迫もしている。しかし、決して殺すな、という命令が行き届いており、扱いも紳士的。だからこそ、信頼しても良いのではないか? という想いも。そんな中で、いざ、宝を探すためにりゅうじんは出航するが……
面白いのは、奈良原の行動かな? 天才的な研究者で、マニピュレーター開発などをいってに引き受けた人物。そんな彼は、シージャックされた、となるといきなり動いて、りゅうじんのシステムに手を加える。相手がシステムにくわしくない、とみると、口八丁手八丁で相手を翻弄し、自分の思うがままに犯人たちを操る。このあたりのやりとりは素直に面白かった。
ただ、全体を通すと、変なヒューマニズムみたいなものがあって、どうにも……。作中、鳴海自身がストックホルム・シンドロームでは? と言うのだけど、それにしても結構、あっさりと信頼しているのが腑に落ちない。そして、当然のように、犯人たちも分裂してるし。また、潜水にしても、何度か危機が訪れたりはするのだけど、なんか、ちょっと淡々としている感じ。
技術とか、そういうところは色々と調べているのだけど、物語としてはちょっと盛り上がりに欠けるかな? と。

No.5514

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著者:村上凛



三波さんと付き合うこととなった日、仁科から告げられたのは同棲の終了。なんでも、仁科の母が来月、帰国するらしい。景虎も仁科も目的が達せられそうだし、潮時なのかもしれない。……しかし、予定よりも早く帰国した仁科の母。二人の関係も説明できない中、勝手に進んでいた結婚話。仁科の母の目をごまかすために、恋人のふりをしてのデートが始まり……
シリーズ完結編。
まぁ、落ち着くべきところに落ち着いた、って感じよね。
物語の流れは、冒頭に書いた粗筋の通り。元々が、付き合っていて、離れたくない! という嘘から始まった同棲生活。仁科の両親がいない間に、それぞれ恋人を作って……ということにしようと思っており、その流れもうまくいきそうだ……という中での母の帰国。仁科の母が言うように、恋人同士とは思えないような妙な関係性。でも、その中にも絆はちゃんとある。しかし、その中で、景虎は、三波さんという恋人がいるのだけど……
同じ目的のため、互いに協力をしてきた景虎と仁科。同棲をしている、っていうこともさることながら、それぞれの趣味だとか、そういうものは熟知していて、協力もしてきた。そんな絆が確かにある。そして、だからこそ、仁科の危機、とでもいうべき状況に、景虎はいてもたってもいられない。そうして景虎が気づく自分の本当の想い……
まぁ、王道中の王道という感じで意外性はない。でも、景虎と仁科、両者が協力して……というのがずっと続いていたからこそ、の説得力。そんな景虎の気持ちをよく理解して、その背中を押す三波さんも良い娘だよな……。その辺りが、しっかりと決着してすごく満足のできる結末だった。
しかし……そうは言いつつ、それまでに景虎が知り合ってきたゆめさんとか、あの辺は……ちょっと怖い(笑)

No.5513

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