著者:花間燈



知り合いの女の子4人の力も借り、所属する書道部の掃除を終えた桐生慧輝は、そこに自分宛のラブレターが置かれているのに気づく。なぜか、パンツと一緒に。ラブレターの送り主候補は4人、いや、そのうち一人は妹だから3人。その中の「シンデレラ」を探し始める慧輝だったが……
これ、続編あるの?
冒頭に書いたように、ラブレターとパンツを暮れた相手を探すため、候補となる面々について調べる慧輝。ところが、調べた結果、その少女たちはそれぞれ変態だった、という、ある意味、シンプルな話(笑) 一応、ネタバレになるけど、カラーイラストで書かれているので言っちゃうと、慧輝の所属する書道部の先輩・紗雪は、慧輝にペットとして飼ってほしいと望むドM。一方、慧輝を慕う後輩の唯花は、彼に奴隷になってほしい、というドS。そして、幼馴染の真緒は……
正直ね……ドMな紗雪に「飼い主」になってほしい、といわれる一方で、唯花に「奴隷にしたい」と言われる主人公って、どういうキャラなんだ? という気はする(笑) ある意味、両者から見いだされる慧輝って凄いんじゃないかと思ったり……
そして、そんな二人と比べると、真緒は、正直、「ふつ~」という感じがしてしまうのは、私だけ? うん、コミケ界隈に顔を出し過ぎて感覚がマヒしているのは自覚している……
というか、話の流れとかそういうのは非常にスムーズだし、色々とおかしなヒロインたちの会話と、それに対する的確な主人公のツッコミというのは結構、好き。会話文が多い、っていうのはあるんだけど、それ故にテンポよく進むし、リーダビリティも高い(自分、この作品は30分で読了しました) あとがきで著者が「少しでも笑っていただけたなら幸いです」と書いているんだけど、自分、好きよ、こういう(良い意味で)くだらない作品って。
まぁ、終盤、無理矢理に別キャラを出して、とかは、強引なだけで……って感じだし、結局、ラブレターを送ったのは? というのはある(消去法で、というのはナシね) ちょっとそこが勿体ない、かなぁ、と……

No.4371


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著者:柴田勝家



地下アイドルである奏歌のCDを聴いたファンが立て続けに自殺した。CDの呪いを科学的に解明すべく、陰陽師にして心霊科学捜査官である御陵と、準キャリアの刑事・音名井は、捜査を開始する。奏歌は、自殺したアイドルに祟られている、というのだが……
まずは、本書の前提のなる部分から説明した方が分かりやすいと思う。
この作品の世界では、霊子、つまり、心霊現象の原因となるものとかの存在が確認されている。そして、他者に殺害された場合などには、「怨素」という物質が出るため、それを証拠として司法にも認められる。勿論、だからこそ、そういう事件を担当する零課という部署も設定されている。
正直なところ、著者の作品を読むのは初めてで、SF畑の人という認識しかなかったのだけど、アイドル好きとして知られている人らしい。それを聞くとなるほど、という感じ。
冒頭の粗筋にも書いたのだけど、事件はアイドルを巡ってのもの。故に御陵は、捜査のために地下アイドルのライブへ出かけたりし、その中で、応援したい人物なども登場してくる。そして、その中で目にするのは、アイドルを巡っての様々な部分。同じユニット、グループの中にあってもライバル関係が存在し、人気がある、ない、の格差はハッキリと出てしまう。アイドルは孤独な存在である、という言葉……などなど……
アイドルに対して、熱狂的な声援を送る者と、宗教的行事の共通点。まぁ、特に最近のAKBとかの握手云々とか、総選挙とか、ああいうのを見て、それぞれの推しメンとか、ああいうのは客から金を搾り取るシステムにしかファンでも何でもない私からすると見えるけど、その中にはまって、という場合は確かに宗教的なものに近くなるんだろうな。っていうか、新興宗教にはまって、全財産を、っていうのは近いかも、と思えてきた。
そんな中で、謎となるのは、奏歌の正体であり、そして、自殺だけでなく起きてしまった殺人事件の謎。
奏歌の正体についてのひっくり返しは素直に仰天した。奏歌のライブに行ったとき、祟られているのは間違いない、と確信するわけだけど、そういう部分が全て逆さ、ていうのはすごく大胆。一方の殺人の方だけど……このトリックを用いると、他にも被害者が出てしまうような……と感じたのだが、何かそこに説明があったかな?
ともかく、何というか、著者のアイドル愛っていうのを強く感じた。

No.4370


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(書評)ラストナイト

著者:薬丸岳



赤羽で居酒屋を営む菊池。ある夜、彼の店に顔に刺青を施した男が現れる。男の名は片桐。35年来の知人であり、32年前に、この店で傷害事件を起こして以来、何度となく犯罪に手を染めてきた男。その犯歴、風貌から、悪し様に言われる片桐だが、彼を知る菊池は、決してそんな男ではないことを知っている。なぜ、彼は罪を犯すのか……
という風に書くと、主人公が菊池で、片桐の真意を探る作品のように思えるけど、そうではない。
物語は全5章構成で、それぞれ片桐と関りを持つ人々の視点でつづられ、片桐の真意を、という形になっている。その第1章が、赤羽で居酒屋を経営している菊池、というわけ。それぞれで、一応、一区切りがついているので、連作短編的な味わいもある。
著者というと、司法、特に刑事事件についての諸々というのを題材にしている作品が多いのだけど、本作もそれは1つのテーマ。特に、前半のエピソードではそれを感じる。短編の感想を書くような形で綴ることにする。
第1章の菊池。冒頭にも書いた通り、35年来の知人であり、片桐の最初の事件は、菊池が店を空けたときに起きたトラブルで、菊池の妻を守ろうとして起きたもの。罪は罪であるが、しかし、片桐に対する借りもある。しかし、その後の片桐の累犯は、決して見過ごせないし、何よりも「経営者」として、片桐が店に来ると客が去ってしまう、という問題もある。自分の代で閉めるならいい。しかし、店を継ぎたいという娘夫婦の意向を考えると……
知人、友人として支えたい、という気持ちはある。でも、現実問題として……。そんなときに、同じようなケースを知っている、という常連客が言った言葉。「ろくでなしだった人間が、支えてくれる人がいたからまっとな道に戻れた」 そんな言葉で、片桐を支えようとした。その時に……
話としてまとまっている上に、その後が気になる。導入編としては完璧だろう。
第2章の主人公は、片桐が起こした直近の事件での弁護をした弁護士・中村。中村は出所をした片桐が出所の挨拶に来た際の「また何かあったら」という言葉が引っかかる……
第1章の、菊池の章にも登場し、菊池に「ずいぶんと真っすぐ」と評された中村。しかし、彼は彼で苦しい過去を持っている。片桐のように、何度も刑務所へ、ということはないにせよ、酒と賭博に溺れ、母など親族へと迷惑をかけまくった父。だからこそ、彼は、父を拒絶した。そして、結果、父は自殺した。自業自得ではある。しかし、それでよかったのか? 自分が手を差し伸べていたら……。加害者家族が、その当人に迷惑をこうむっているけど、しかし……。そんな状況を上手く描いていると思う。
と、前半のエピソードは良かったのだけど、後半、片桐の真意についての話になってくるとちょっと無理矢理感を感じた。片桐の執念とか、そういうのはわかるけど、ちょっと効率が悪すぎないか? とか色々と強引さを感じてしまったので。
ということで、ちょっと後半は強引さを感じた。
ただ、リーダビリティの高さは相変わらずで、どんどん読み進められる。それらをトータルした評価というのはやはり高い水準。

No.4369


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(書評)彼女と俺とみんなの放送2

著者:高峰自由



自分に憧れ、ネット生放送に情熱を注ぐ千遥。相変わらず危なっかしい放送を続ける彼女のフォローに翻弄される俺、播磨巧翔。そんなある日、千遥のもとに、同じように生放送をする生主から、「会ってほしい」という連絡が入る。その連絡をしてきたのは、拓翔が生主だったころ、自分の妹分として自分を慕ってくれていた少女で……
へー……ニコ生やっていると女の子が沢山知り合えるのかー。UstreamでのWEBラジオで知り合ったのは、男しかいないぜー(棒読み)
……それはともかくとして……
1巻は、WEB放送をする側自身の問題。どういう風に話題を探すのか? しかし、個人情報とか、そういうものをどう守るのか? そんな部分が話の中心だったわけだけど、今回は、放送をすることで生まれる相手、リスナー、他の配信者との関係。そういうものをクローズアップした話と言えると思う。これは、別にWEB配信に限らず、ブログでもWEBサイトでもそうなのだけど、訪れる人が増えれば増えるほど、好意的な人だけではなく、批判的な人、悪意を持って貶めようとする人間が現れる。それに対して、どう対応するのか……。これって、生配信だけじゃなくて、自分のようなブログをやっている人間とか、そういうのもにも通じるテーマだろう(というか、90年代からネットをやっている人間としては、その頃からの課題だな、と感じる)
今回の話では、巧翔が生主だったころ、自分を兄のように慕ってくれた存在が登場。千遥と同じく、自分を慕ってくれるのは嬉しい。でも、自分は引退をした身。だから、気にはなるけど、表に出ることはできない。また、自分のことなどどうでもよく、千遥と妹分には仲良くしてほしい。でも、そんなときに……
前作は、ちょっときれいすぎるかな? と思うところがあったのだけど、今度は、WEB配信に纏わる嫌な面とかも出してきて、そういう意味ではよりリアリティを感じる内容になったと思う。まぁ、最後の逆転のところは、ちょっと都合がよすぎるかな? と思うところがないでもないけど。
しかし、この終わり方、ってことは続編も、ってことで良いのかな?

No.4368


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(書評)蜜蜂と遠雷

著者:恩田陸



3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。ここを制した者は、世界最高峰のコンクールで優勝する、というジンクスが付きつつあるため、世界的な注目を集めつつある。そのようなコンクールへと集った面々は……
第156回直木賞受賞作、2017年本屋大賞受賞作、と、注目される文学賞をW受賞した本作。
個人的に著者の作品というのは、不可思議な世界観、その中での奇妙な出来事……と、どんどん魅力的な世界観を構築していく……までは見事。しかし、その世界観をしっかりと畳むことが出来ているのか? というと……という印象を持っている。勿論、きっちりと畳み切った作品だってあるんだけど、傾向、印象としては、ということで言えば。
そんな中、本作は実にストレート。冒頭に書いた通り、舞台は芳ヶ江国際ピアノコンクール。そのコンクールに参加する面々が、地方予選、1次予選~3次予選を戦い、そして、本選を、というのを描くだけ。ひねりとか、そういう部分ではなく、野球で例えるなら、160キロの剛速球をど真ん中に投げ込んで「打ってみろ!」と言われたようなそんな気分。
亡き名演奏家・ホフマンが招待状と共に送り込んだ少年・風間塵。コンサート経験は一切なく、それどころか家にピアノもないという環境で育ちながら、破天荒で、しかし人を魅了する演奏をする塵。一方、かつて天才少女と言われながら突如、表舞台から消え、7年ぶりに復帰する亜夜。長身で見栄えのする出で立ちから、しかし、時に繊細で、時に豪快な演奏を見せる日系人・マサル。コンクール出場者の中では最年長で、妻子もいる青年・明石。そんな彼らを審査する側の三枝子。そして、その周辺の人々……で、物語がつづられる。
これ、中山七里氏の岬洋介シリーズの感想でも毎回のように書いているのだけど、「読みながら実際に音楽が聞こえるようだ!」という感想が書けない。なぜなら、クラシック音痴の私には、曲名が出ても「どんな曲?」ってのが良くわかっていないから。よくわかっていない中で、曲の強弱、テンポの転換というのを感じさせるのは流石なのだけど……。多分、どんな曲か理解している人なら、そのうえで各人の演奏を頭の中で再現できるんじゃないかな? と思えてならない。
ただ、その上で、コンクール参加者、聴取者たちの意識の変化というのが面白かった。
一応、ネタバレになってしまうけど、2次予選で落ちてしまうことになる明石。他の主な登場人物たちと違い、天才的な腕があるわけでもないし、妻子ある身で24時間、音楽漬けの生活をしているわけでもない。しかし、それでもコンクール参加者たちの演奏を見て、そして耳にして感じる自分の音楽への想い。母を亡くして以来、音楽から距離をとっていた亜夜。当初は中傷なども恐れていた彼女だが、幼馴染であったマサルとの再会、そして、参加する中で自分の音楽への想いを固める。それはマサルもまた……
冒頭、地方予選の審査をしていた三枝子が、塵の演奏を聴き、怒り、「ホフマンはなぜ、このような子を」という問いかけをするのだけど、塵の型破りな演奏を聴き、その中で、自分の心を決めていく面々から、自然とその理由を感じることが出来る。音楽とは何なのか? 誰のためのものなのか? このままいいのか? そのようなメッセージが込められているのだろう、と。
分量があるので、結構、読了に時間がかかったのだけど、その分、読み応え十分。面白かった。

No.4367


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(書評)ストロベリーライフ

著者:荻原浩



独立は果たしたものの、仕事が途切れがちになったグラフィックデザイナーの恵介。そんなとき、実家から掛かってきたのは2年前、喧嘩別れしたままの父が倒れた、との一報。久しぶりの実家で見たのは、収穫を間もなくに控えた父の作っているイチゴ。父の見舞いと共に、その出荷待ちのイチゴの世話をすることになる恵介だったが……
著者の直木賞受賞後第1作になる長編作品。まず最初に、文体とかが著者のデビュー間もない頃の作品っぽいな、と感じた。『オロロ畑でつかまえて』とか、『誘拐ラプソディー』とか、ユーモア路線が強かった頃の。
実際、作品の雰囲気としてはそのユーモア路線の方向性を含んでいる。冒頭で書いたような内容なのでシリアスと言えばシリアスなのだけど、そもそも父親と恵介の喧嘩の理由が、双方の勘違いからのすれ違いだし、恵介の父の見舞いに行ったところ、姉たちに会って見知らぬ大人に子供が怯えてしまうとか、「ありがち」ではあるのだけど、本筋に関係ないところで深刻さを敢えて削ぐような描写が多く入り、重くなり過ぎないように描かれている、というのを感じる。
まぁ、物語の流れとしては、父の病により、仕方なく、手伝いをすることになる恵介。しかし、いざ、やってみるととても手のかかるものであり、同時に、父と共に長年、農業をする母の手際の良さに驚くことばかり。そんな中、都会育ちの妻は、農業を継ぐことに反対し、夫婦仲も……。それでも、何とか食らいついていく中で……という、ある意味、こういう作品の王道ともいうべき内容。そういうのも含めて、先に書いた重くなり過ぎないようにした配慮というのがうまく奏功していると感じる。
ただ、私自身、農村出身者として思うのは、明るい雰囲気の中にも、結構、「あるある」的なところが描かれている、と感じる点。例えば、仕方なしに手伝いをするようになった恵介に、姉の一人が言うのが……。「継がないって言って出て行ったのに、継ぐなんていうのは虫が良すぎるんじゃないか?」というようなことを言うシーン。いや、その部分だけをとれば姉の言葉が正しいように聞こえるのだけど、その姉自身だって農家を捨てていった身。自分だっていう資格はないはずなのに、結局、その土地をどうするのか、とか、そういうところで小さな争いの芽が出ている、というわけ。「農業を継ぎたくはないけど、でも、自分の家の財産は」 他にも、都会から変な幻想を抱いて農業を始める存在とか、どうして、結局、地元民ばかりになるのか、とか嫌な話だけど、田舎でありがちなものも結構、しっかりと描かれていたのが印象的。
物語は、ハッピーエンドで終わるのだけど、個人的な好み、というか、要望を言えば、もうちょっと恵介の妻・美月の心情描写があってもよかったんじゃないか、と思う。恵介の田舎へ移住するとか、そういうものに反対していたのが、終盤、あまりにもコロッとひっくり返ってしまった気がするので。
明るい雰囲気で読むことが出来、でも、結構、田舎の事情とかそういうものもしっかりと描かれて、田舎育ちとしては首肯した。そんな作品。

No.4366


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(書評)夏をなくした少年たち

著者:生馬直樹



大人びた少年・啓。言葉の悪い雪丸。いつも妹と一緒にいる国実。そして、僕、拓海。小学校6年の夏、僕らは大冒険に行くはずだった。しかし、その冒険は想像を絶するような後悔として残った。それから20年余り、ある人物の他殺体が発見されたことを皮切りに、その事件が再び動き出して……
第3回新潮ミステリー大賞受賞作。
新潮ミステリー大賞、前回の受賞作『レプリカたちの夜』(一條次郎著)があまりにもぶっ飛んでいたおかげで本作は普通のミステリっぽく見えるけど、よくよく考えてみると、実は謎解きなどはほとんどしておらず「ミステリー?」っていうところがある。
物語は2部構成。第1部。主人公の拓海は、冒頭に書いたような仲間たちとグループを作りつるんでいる関係。しかし、ただの仲良しグループというわけではない。元々、口の悪い雪丸だったが、最近はますます、その傾向が強くなり、何かにいら立っているように見える。そして、その攻撃が向かうのは国実たち兄妹。一方、啓は啓で、母親との関係が良くない。さらに、町では「おかしな奴」という扱いの聖剣という先輩がいて。そんな日常はしかし、花火大会の夜、登山をしたときに終わってしまう。国実の妹の死、という形で……
この感想を書く前に、ネット書店などの感想を見ていると、「少年時代パートの描写」について、「生き生きとしている」と「子供っぽくない」と二分されているのが面白かったのだけど、私は前者の方に賛成かな? 「小学生」と言ってもまもなく卒業の6年生。早い子供なら、第二次性徴期に入っている年齢で、両親の関係とかも見えてくる年頃。そして、中学という新しい環境が目の前に迫ってくる。そういう状況での人間関係として見ると、凄くリアリティを感じる。自分自身が小学校時代は、学年1クラスしかない田舎で育ち、その中の人間関係をウンザリするほど見てきただけに、その時代を思い出した。仲良しグループではなく、何となくの「関係」とかすごくわかる。そして、その崩壊もまた……
そして、そんな20年前の事件を経ての現在。刑事となった拓海が知ったのは、その時代の知人が殺されたこと。事件解決のため、故郷へ戻るが……
個人的にはむしろ、後半の現代パートの方に違和感を感じた。かつてのグループの一人であった啓と連絡を取ったところ、その娘が何者かに誘拐された。そして、その誘拐犯の要求は……。勿論、過去の出来事と結びついているのは確かなのだけど、犯人が偶然にその場に居合わせた、っていうところから無理矢理感があるし、また、謎解き部分については、作中でも指摘されているように「根拠なき確信」で進んでしまうため。ミステリーの公募新人賞受賞作、という前提で考えると、どうしても、いや、謎解きは? と思えてしまうのだ。
とは言え、小さいころからの人間関係、その中の出来事。そういうものが生き方とかにも影響を与えてしまう。そんな部分の生々しさは見事であり、十分に読み応えのある作品だと思う。

No.4365


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著者:岩沢藍



女児向けのアーケードゲーム「キラプリ」。周囲から白い目で見られつつも、そのゲームに情熱を注ぐ高校生・黒崎翔吾はある日、努力の末に勝ち取った地元ゲームセンターのトップランカーの座を、小学生の千鶴に奪い取られてしまう……
第23回電撃小説大賞銀賞受賞作。
これで、電撃文庫で出た今年の電撃小説大賞受賞作はすべて読了。バトルものとか、SFものとかあったけど、一時期、多くあったラブコメ系の作品がこれ1つっていうのが結構、時代の変遷を感じる。
私自身は、アーケードゲームはクイズゲームしかやっていないのだけど、リズムゲームで子供向けゲームをいい年したおっさんがやって……みたいな話を聞いたことがある(どこまで事実かは知らないけど) ある意味、それをモチーフにしているのだろう。
物語としては、地元のゲームセンターのトップランカーの座を巡って、翔吾と千鶴がひたすらに争う物語。高校生なのに……っていう翔吾と、それはそれとしてもこっちもえげつない方法で争う千鶴。しょうもないやりとりを繰り広げる中、新たなイベントが開始。それは、協力プレイが基本的には必要で……
そこから一緒に映画を見るために町へと行ってみたり、はたまたトラブルを超えて最終的に一緒にプレイをして……という熱さ。ある意味、非常によく見るパターンの流れなのだけど、それだけにツボがしっかりと抑えられており、十分に楽しむことができた。
ただ……正直なところ、本作を読んでいて、一番、頭に浮かんだのは……夏希に対する嫌悪感だった。
いや、部活もせず、クラスで孤立をしてただ、ゲームに熱中している翔吾を心配する、っていうのはわかるんだ。ただ、相手の趣味とかを考えず「アレはダメ」という態度はない。そして、終盤、無理矢理にクラスのパーティーに参加させる。そして、その最中に見知らぬ街で困っていると助けを求める千鶴の電話を聞き、助けに行こうとする翔吾を止めようとするのにはドン引き。いや、小さな子供が街で迷ってSOSしたのも無視しろっての? と……
多分、夏希は翔吾のことが……なんだろうけど、だったら、そういうのをもっと押し出してもいいし、もうちょっと終盤の展開も工夫してよかったんじゃないかな? と感じる。翔吾と千鶴の話の中で、凄く嫌な奴という役を押し付けられた感がどうしてもしてしまう。
そして……
アフロ、GJ!
そんなしょーもない言葉で締めてみる。

No.4364


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著者:古野まほろ



言葉の真偽、虚実を判別する能力を持つ本田唯花。彼女のもとに届く挑戦状。ABXと名乗る差出人の予告通り、Aという頭文字を持つ少年が殺害された。さらに、その一週間後、Bという頭文字を持つ人物が殺害されて……
ということで、シリーズ第2作。
著者のシリーズは何作か読んでいるのだけど、いつも思うのが、1作目は文章のクセなどにかなり戸惑うものの、2作目からこちらが慣れたのか、文章がこなれるのか、急に読みやすくなる、という印象がある。本作についても、前作に比べて読みやすい印象。
物語としては、冒頭に書いたように唯花のもとへと届く挑戦状。その挑戦状に書かれているように次々と殺害されていく人。Aという頭文字を持ち、血液型がA型で、Aのつく土地で。Bもまた……。しかも、その被害者は唯花の知人。事件が起こるたびに、唯花はその関係者に話を聞き、その虚実・真偽を探りながら、真犯人へと迫っていく。そして、全ての事件が明らかになったとき……
まぁ、ある意味、こういう作品に対して、「その設定は無理があるだろう」というのは野暮ってものだとは思う。ただ、被害者の関係者への聞き込みから出てくる違和感から、ミッシング・リンクが判明するのはともかく、その関係に全く気付かないものだろうか? とはどうしても思う。
ただ、それでもその違和感を最小限にする設定が作られているのは確か。唯花と行動を共にする晴彦視点なので、読んでいるうちに意識から外されていたのだけど、脅迫状の件は唯花たちだけの秘密であり、警察はそれぞれの事件が連続殺人と思っていない。そうなると科学鑑定とか、そういうところでの話が進みづらくなって……となるのだろう。そういう点でよく考えられている、とわかる。また、そのほかの違和感についても、一応は説明可能な範囲に留められているのも評価すべき場所じゃないかと思う。
そして、何よりも、その論理学的発想によって構図が二転三転する終盤の謎解き。実行犯が誰で、黒幕が誰か。その部分が、っていう大胆さはスゴイ。確かに、この人が本当にコレなら、バレていて当然なんだよな……(読んだ人ならわかるはず)
前作、謎解きは面白いけど、ちょっと読みづらい、という風に感じ方は騙されたと思って読んでほしい。本作は普通に楽しめると思うから。

No.4363


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著者:オキシタケヒコ



「ひさしや、ミミズク」 山中の屋敷、その座敷牢に住まう半身不随の少女・ツナ。そんな彼女のため、週に1度、「怖い話」を聞かせるのが僕の日課。そのために、怖い話の蒐集を続けている。そんな街に一人の男が訪れて……
読み終わってみると、なんか凄かった(笑)
山中の屋敷に囚われている少女に、毎週、「怖い話」を聞かせることを一つの日課としている僕こと瑞樹。ただし、その少女、ツナと会っていることは周囲には秘密。さらに、何か秘密があるらしい。そこに、オカルト雑誌の編集者・多津音一が現れて、その謎の秘密を暴き、ツナを解放してやりたいと思って……という流れになるんだけど、これだけなら「いかにも」なホラー作品という印象。
で、実際、そんな方向性で物語は進行していく。自らをペテン師という多津音一は、催眠術とか、類稀な洞察力をもって主人公を驚かせながらも謎へと取り込んでいく。しかも、その中で、長きにわたってかけられた「呪い」があることを喝破、さらに不可解な一族の存在なども明らかになっていく。ところが……
この作品のすごさって、肝となる部分が見事なほどにオカルトとSFが融合していること。あの世とか、呪いとか、そういうものを題材にした作品は多い。一方で、このSF的な話というのも読んだことがある。けれども、それを組み合わせる、という発想はなかなかない。まずそれが凄いな、と。
と、同時に、この読後感がすごく良いのも長所。不可解な状況。呪いなんていうおどろおどろしい言葉。そういうものがあって、いかに凄惨な真相が待っているのか、と思ったら、それぞれ、思惑はありつつも決して害意がなく、互いのことを大切に思っている、ということからの物語なのがその理由だと思う。終わってみると、悪人がいない話なんだよな。故にそれぞれの想いがしっかりと伝わってくるからだろう。
この物語としては、ここで終わりだと思うのだけど、多津音一とかは、色々と使い勝手もよさそうだし、スピンオフみたいなものも出るのかな? と期待してしまう。

No.4362


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