著者:駱駝



いよいよ始まる夏休み。流しそうめんに海水浴、花火大会。ひまわり、コスモス、パンジーらとの約束が盛りだくさんで、完膚なきまでにイベントを楽しんでやる! ……と意気込んだ中、なぜか俺の前にはホースの親友であり、サンちゃんのライバルである特正北風がいて、しかも、特正が俺に相談があって……??
なんか、前巻で物語が一段落しただけに、今回はちょっとインターミッション的というか何というか……
物語としては、サンちゃんのライバルである特正北風がジョーロの前に現れ、ジョーロたちの学校の野球部マネージャー・たんぽぽとの仲を取り持ってほしい、と依頼をされる話。これまでは、それぞれのキャラクターの裏の顔とかがあって、で、ねじれまくる、というような感じなのだけど、今回は、そういうのがなく、コント的にすれ違ったりはするものの、普通のラブコメ的な話になっている感じ。
なんていうか、なぜか物言いは超上から目線だけど、付き合ってみると、ちゃんと人の言うことは聞くし、それなりに礼儀も心得ている特正。それに対し、猫をかぶりまくっていて自分の信者・ワタゲストを広めたいたんぽぽ。それをくっつける。まぁ、面倒くさい(笑) ただ、ジョーロ自身がそれぞれの裏の顔とかを知った上でのものなので、それぞれのキャラを描きつつ気楽に読めるかな、と。
もっとも、その裏でジョーロを巡る人間関係もちょっとずつ動き出している、っていうのも確か。例えば、コスモスは既に3年生。つまり、来年には同じ学校にいない。そういうことをふと思う……とかね。この辺りは、今後の物語の伏線になっているのかな? と。そして、そのようなイベントの締めにあった、女性陣の対決の結果……
結局、この物語での勝者はやっぱり、彼女のなのかな?

NO.4671

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著者:梶永正史



暴力団員の殺人事件から外され、自衛官の交通事故死について捜査するよう命じられた田島と新米刑事の毛利。現場に近い防犯カメラには、死亡した自衛官が、2人の男から逃げ出し、道路へ飛び出したところが。事件性はないことは判明したものの、そこに何かがあると直感した田島は、カメラに写っていた自衛官・石倉に事情を聴くことにするが、警務官である松井という男から妨害を受けて……
警察と自衛隊の対決。そういう風に著者の言葉として書かれているのだけど、対決というのともちょっと違うな、という印象。そして、物語として珍しく主人公が男性というのが著者の作品としては珍しい印象。
で、物語としては、冒頭に書いたように捜査をした事故に何かがあると直感した田島が、その事故について調べる形で展開。しかし、そこには松井という警務官が妨害を常に企てる。「防衛機密」という言葉を盾にして。しかし、調べる中で、その死亡した自衛官、彼と会っていた石倉という男が、PKOでアフリカの紛争地帯に派遣されていたことが判明。そして、同じように派遣された男が自殺。さらに、彼らは同じ勉強会の仲間であったことも判明して……
読み終わってみると、最近の自衛隊、PKO派遣を巡るある問題をモデルにしているのだな、というのに気づく。まぁ、PKO派遣における問題というのは他の作品でも描かれたことのある題材なのだけど、実際にあった事件をモデルにし、そのエッセンスを取り出したような形でまとめられるので、なるほどね、と強く感じられた。ぶっちゃけ、作中に出てきた政治家も、ある人っぽいし(笑)
という風に書くと、真面目なゴリゴリの社会派ミステリみたいな感じに見えると思うのだけど、郷間シリーズなど、キャラクターを強く出した作品を書いている著者らしく、それぞれのキャラクターが立っているのが印象的。生真面目で理知的に思えて、意外と熱くて周辺が見えなくなっていく田島。帰国子女で自信家で、良くも悪くも空気の読めない毛利のデコボココンビのやりとり。そして、田島らの行動を妨害していた松井の真意。こちらも、嫌な奴だと思っていたら、実はこちらも熱い思いを抱いていた、というのは良かった。そして、それらが全て明かされた上での、田島の策略というオチ。
ちょっと順番が入れ替わってしまったけど、キャラクター重視で軽く読めるけど、結構、真面目なテーマも内包している。そんなバランスがいいな、というのが一番の感想かな。

No.4670

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(書評)ネメシスの使者

著者:中山七里



熊谷市で高齢の女性が殺害された。その傍らには「ネメシス」という文字が。被害者は、十年前に通り魔事件で逮捕され、無期懲役で収監されている男の母であった。犯人は、死刑を免れた犯人に替わり、復讐をしているのか? 埼玉県警の刑事・渡瀬は捜査を開始するが、今度は千葉県松戸市でストーカー殺人で収監されている男の父が殺害されて……
正直なところ、なんだかなぁ……という思いが先行してしまった。
いや、物語の基本的なところは面白いのだ。冒頭に書いたように、立て続けに起こった重大犯罪の加害者家族が殺害される事件が発生。しかし、加害者は、被害者遺族らによる「死刑を」という声にもかかわらず、死刑を回避。被害者は、その金銭的な困窮などもあり、民事訴訟による損害賠償の義務も果たさずにおり、被害者遺族たちは何も救われない状況が続いている。そして、その判決を下したのは、「温情判事」などともいわれる裁判官・渋川。
犯人は、被害者遺族なのか? しかし、そうだとしても手がかりが少なすぎる。まして、当時の状況から言えば、事件を見聞きした者たちにも義憤に燃えるものが沢山いる。そのような中、次の事件、さらにと続いていって……
過去に比べれば多少はマシになったとはいえ、まあまだ未熟な被害者遺族への救援。一方で、加害者やその家族などに対するバッシングはネットなどを通じて拡散し、直接の被害も。自分こそ被害者、という加害者家族も。そのような部分、そして、後半で逮捕された犯人の真の目的……。この辺りは悪くないと思う。
思うのだけど、その被害者遺族の怒り、加害者遺族に対するバッシングといったあたりで物語を進めればいいのに、著者の知ったかぶりの、勘違いなデータの見方とかを入れてしまうために、何とも間抜けな空気が物語全体に漂ってしまっているのだ。それが何とも……
その著者の勘違いというのは、「再犯者率」という言葉。作中、「再犯者率が6割を超えていて、刑務所が機能していない」という話が何度も出てくる。何だかなぁ……という感じ。「再犯者率」というのは逮捕された人の中で、再犯だった人の割合。でも、再犯者率、というのは、それが高くなったから再犯者が増えた、ということは意味しない。例えば、去年、刑法犯として逮捕されたのが1500人で、再犯者率が750人ならば再犯者率は5割。それから1年、逮捕されたのが1000人で再犯者が600人だったら、再犯者率は6割と1割も高くなったことになる。でも、再犯者の数は150人も減っているわけである。再犯者率が高くなったのは、再犯者が減っているけど、それ以上に初犯者が減っているからに過ぎない。一応、日本を舞台にしているので、日本の犯罪事情を元にして言うと、2000年代に入ってから、刑法犯認知件数は減少の一途をたどり、その中で再犯者の数も減っている。しかし、それ以上に初犯の数が減っているので、再犯者率が高くなっているに過ぎないのである。簡単な算数の問題である。
勿論、司法の世界とかについて知らない人がそれを怒っている、というのであれば理解できないことはない。しかし、作中、敏腕刑事や、エリート検察官、はたまた、裁判官と言った司法のプロ中のプロたちが雁首をそろえてそんな勘違いを言っているのは何とも滑稽でしかない。
著者の作品って、社会問題などを題材にしたものが結構あるのだけど、読んでいて勉強不足というのを感じざるを得ない部分がかなりある。著者自身もそうなのだけど、編集者なども、もうちょっとその辺りについて調べて軌道修正できないものか、と思えてならない。

No.4669

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(書評)タタの魔法使い

著者:うーぱー



2015年7月22日。夏休みを目前に控えた公立高校が、生徒、教員ごと姿を消した。その後、200名以上の犠牲者を出しながらも、彼らは戻ってきた。そして、生き残った生徒たちは、事件に絶望することなく、将来へ向け努力を続けることとなった。本書は、後に「ハメルンの笛吹事件」と呼ばれるそれは、どのようなものだったのか、生存者たちの証言をもとに綴ったものである。
第24回電撃小説大賞、大賞受賞作。
冒頭に書いたように、物語は、「ハメルンの笛吹事件」というものに巻き込まれた生徒たちの証言により、その時の状況を再現していく形で綴られる。
本書の感想を書く前に、他の方の感想を見ていたのだけど、確かに、作中でしばしば、「日本のここがすごい」というような描写があり、ちょっとうんざり、というのはある。また、そこでの欠点として綴られる、執筆者の主観(執筆者は、巻き込まれた生徒の姉という設定)とかが多くある、というようなものがあるのだけど、それも確かに、と感じた。
ただ……それを含めて、私はこの作品の狙いじゃないか、と感じる。っていうのは、実際の事件を題材としたルポとか、そういうものでも、こういうものってしばしば見かけるから。それも含めて、ルポ作品の味だと思うわけで、それを欠点ととらえるのもどうかなぁ、と感じるのだ。
で、その中で語られる「魔法使い」によってもたらされたもの。そもそもが、学校に現れた「魔法使い」は、彼らの文集に書かれた「夢」をかなえる形でその力を異世界で発言させた。しかし、夢は時に矛盾をし、例えば、「学年1位になりたい」というものをかなえた結果、成績上位者が消されてしまう、という事態が発生。また、その転移した世界は魔物などが跋扈する世界。そのため、何も知らないままに転移し、そこでの混乱の中、死亡してしまう者も。そこに対応できたのが、変身ヒーローになりたい、とかそういうふざけた夢を描いた者だった、などファンタジーならではの要素もちりばめられており、その辺の世界観の組み立て方はなかなか面白かった。
そして、そんな彼らが学校を出て、元の世界へ戻るため、転移させた魔法使いの元へ向かうのだが、多くの犠牲者を出しながらもたどり着いた先で知る、魔法使いの残虐さと、元の世界へと戻るための条件……。そういう質の悪さというのが印象に残るものの、それが冒頭で記された「将来へと向けた努力をする者が多く出た」という結果へとつながった、というのは素直に上手いと思う。
まぁ、もっと魔法使いの存在感とかが強烈に出ていても良かったんじゃないか、とか、思うことはあるものの、それも、ルポ形式で綴られた、ということを鑑みればうまく、処理しているんじゃなかろうか。
賛否が分かれるのは当然なのだけど、私は、この作品、好きだ。

No.4668

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(書評)黒猫の小夜曲

著者:知念実希人



高位の霊的存在である僕は、地上で死んだ人物の魂を主様の元へと届けるのが仕事。しかし、ボスの指示により黒猫の姿になり、地上に未練を残し。「地縛霊」となってしまった存在の未練を解消することになってしまった。降り立ってすぐ、僕は記憶喪失の魂の地縛霊と出会い、その魂を意識不明の女性・麻矢の身体に移らせることになるのだが……
『優しい死神の飼い方』の続編というか、スピンオフ的な位置づけになる作品。物語的には、前作とは無関係なのだけど、そちらを知っていた方が楽しめることは間違いない。
『優しい死神の飼い方』の場合、序盤は死に行く人々の未練を、という形だったのが実はつながっていて、という感じの長編だったのだけど、今回は、最初からそれぞれが関連している、ということは明らかで、その上で、という形になっているので、結構、わかりやすい長編のようになっていると思う。
ということで黒猫のクロとして、地縛霊の未練を解消するために奮闘することとなった僕。しかし、その地縛霊は、ある製薬会社の関係者ばかり。製薬会社に勤める夫婦の殺人事件。そこでの謎の研究。呪いのタトゥー。そして……気づけば、関係者が次々と死亡していることが判明する。
読み進めるうちに、だんだんと気にならなくって行くのだけど、麻矢の身体に乗り移っている地縛霊は記憶喪失の存在であった、なんていうこともあり、それが誰なのか? という謎もあり、それがだんだんと収束していく。前作は、「え? それ繋がっているの?」という感じだったのだけど、今回は最初からどこから繋がっている、という前提で読むことが出来る分、読みやすい、というのを感じた。
あと、これは前作もそうなのだけど、主人公の行動とかがだんだんと猫っぽく(前作は犬っぽく)なっていくのが楽しい。当初は「なんでこんな姿に」とか言っているんだけど、ご飯と言って刺身とかをもらえると大喜び。さらに、考える、と言って丸くなってそのまま寝てしまう、とか、なんか実家で買っている猫の挙動を思い出したし。
まぁ、真犯人については、それだけ派手に動いておいてなぜ目を付けられない? と思うところはあるんだけど、そこは気にしちゃいけないか(笑)

No.4667

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(書評)カネと共に去りぬ

著者:久坂部羊



カミュ、漱石、カフカ……文学作品を元にした医療コメディ作品集。
全7編を収録。
話とすれば、同じ新潮社から刊行された『芥川症』と同じようなコンセプトで書かれた作品集なのだろう。
正直なところ、前作の『芥川症』もそうなのだけど、元ネタとなった作品について、それほど詳しいとは言えないだけに、どうパロディ化したのか、という点については何とも言えない部分がある。各編の登場人物が、元ネタの人物の名を使っているとか、そういうのはわかるのだけど。
ただ、本作の場合、「医療の限界」というようなテーマをメインにしているのだろう、というのは強く感じた。
例えば1編目『医呆人』。初めて担当した患者が死亡してしまった村荘。その遺族に対して、「死んでよかったと思う」と発言する。そのことに対し、上司からは、「遺族のことを考えろ」「共感しろ」と言われるが……
「空気が読めない」とか、色々と言われるが、しかし、客観的にみて、これ以上の治療をしても無駄だし、患者を苦痛に苛まさせるだけ。まして、彼を批判する上司たちの言葉は欺瞞に満ちているうえに、その裏で……というのも見ている。さらに言えば、共感しろ、と言われったって、患者やその家族は、それぞれ事情がある。それを考慮するなんて無理だ。不器用な主人公だからこそ、それしか言えない。でも、だからこそ、オチのように、「あなたは素直に言ってくれる」という信頼に繋がる、というのは十分にあるんじゃないかと思う。
また、『アルジャーノンにギロチンを』も同様。医大教授を定年となり、名誉教授となった主人公の手記という形で綴られるもの。当初は、いつも通りの行動をとっていたものの、だんだんと認知症が。いわゆる「まだら呆け」の中、周囲にも迷惑をかけていることを自覚した主人公は……。長生きが良い。治療をすれば将来がある。その価値観は正しいのか? 皮肉を交えて、ではあるけど、こっちの方がいいのかもしれない、というオチになっている。
元々、医療の限界、治療をするのが常に素晴らしいわけではない、というようなものは著者の主題ともいえるもの。その点ではブレていない。ただ、短編集の形でやっていくだけに、それぞれ、同じメッセージが土台にある、となるとどうしても「今度もそうなのだろうな」とオチなどが想像できてしまう部分もある。各エピソードは形式とか、そういうのを変えているんだけど、それでもどうしても……という感じがしてしまう。

No.4666

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著者:土橋真二郎



大学受験に失敗し、「普通」からドロップアウトしてしまった神尾幸太郎は、飯田橋周辺で過ごす野良エルフのベルタに拾われ、養われている。遊んだり、のんびりしたり……と気の向くままに日々を送る二人。そんな幸太郎をまっとうな道へ戻そうと、妹の澪は奮闘するが……?
こういう作品も書くんだ、というのがまず思ったこと。著者の作品は過去に『殺戮ゲームの館』などを読んでいるのだが、タイトルなどでもわかるように、どちらかというと殺伐とした文字通りゲーム的な要素が強い印象だった。そして、ちょっとキャラが弱い、というのも含めて。
ところが、今回は日常系というか、ダラダラ系とでもいうか……そんな感じの話。
一応、主人公の幸太郎は、受験に失敗して、じゃあ、ラノベ作家になるんだ! とはいうんだけど、一応、専門学校には入るものの、特に授業を受けるわけでも何でもなくて、ただダラダラと過ごす。本当にそれだけ。
正直なところ、話としては何がある、ってわけじゃないけど、ところどころに結構、シニカルな物言いがあるのが特徴かな? ライトノベル作家になる、と言ってKADOKAWA以外はラノベじゃない、とか言ってみたり(ついでに言うと、KADOKAWAは飯田橋にある)、アニメ化したら声優抱き放題とか、そこまで悪く言いますかいな……くらいのも。そういうところこそ、本書の見どころ、なのかもしれない。
そんな感じなのだけど、何か、終盤の話が印象的。
専門学校に学籍は作ったけど、まともに通ってすらいない幸太郎。そんなとき、声優学科の姫君、などと呼ばれ人気があり、しかも、ダメダメな幸太郎にバイトを紹介してくれたり、とか優しく接してくれた亜希がその夢をあきらめ、結婚する、という。夢へ、というものをやめ、現実へ……。モラトリアムってそういうものかもしれないけど、何か、しんみりとしてしまった。

No.4665

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(書評)グランドマンション

著者:折原一



老朽化した賃貸マンション・グランドマンション1号館。まもなく、隣に高層マンションである2号館の建設が始まる、という中、騒音問題、住居侵入、ストーカー……次々とトラブルが発生して……
というグランドマンション1号館で起こるトラブルを描いた連作短編集。全7編収録。
著者の作品で、短編集っていうのは、かなり久しぶりに読む気がする。どちらかというと、長編を書く作家、という印象が強いだけに。ただ、読んでいて思うのは、スタイルとしては、長編のそれと似ている感じがする。高齢者が多く、アクの強い面々が揃うマンション。そこで次々と事件が起こっていくのだから。
全体的にみて、結構、後出しというか、後付け的なものが多かったかな? という印象。
例えば、1編目。音に敏感な男が気になるのは、上の階の子供がたてる音。その音に苛立ち、文句を言うのだが、ある時をきっかけにして……。その結末は、というのは予想できると思うのだが、そこで彼が音に敏感になったのは……という真相が語られる。確かにビックリはする。するけど、なんか後付け感が……
個人的に好きなのは5編目の『懐かしい声』。振り込め詐欺による被害が頻発するグランドマンション1号館。事態を心配した民生委員の高田は、マンションに住む、何をしているのかよくわからない一人の若者に目をつける。そんな若者は、同じような若者と、「世直しだ」などと意気込んでいるのを見るのだが……。著者の特異な叙述トリックというわけではないのだが、すっかり騙された、というのとちょっと明るい結末に安心することが出来た。
ただ、全体的に同じようなエピソードが続くし、また、すっきりしない話も多いだけに、続けて読むとちょっと食傷気味になるところがあるのも確か。1日1編くらいずつ読んだ方が楽しめるかもしれない。

No.4664

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(書評)ガーリー・エアフォース8

著者:夏海公司



アンフィジカルレイヤーで目の当たりにしたのはザイの正体とグリペンの理不尽な運命。彼女を救うため、これ以上、戦いはしないと慧は決意する。そんな中、新ドーターの運用試験を行っていたイギリスの基地がザイの戦略兵器によって消滅。そして、次なる目標となったのは小松基地。慧とグリペンを欠く独飛は苦戦を強いられて……
一年以上ぶりに読んだ続編。
前巻で世界観について大分、深く切り込んでいったわけだけど、そこから時間の経過もあって、読みながら「ああ、そういえば、こういう感じだったな」というところが出来てしまった。まぁ、これは私自身の問題。
で、ようやく、世界の設定などを思い出したところで、今回の物語の感想を言うと……
ウダウダを湿っぽいなぁ!
グリペンを救うため、戦いを拒否する慧。イギリスの基地が消滅し、日本も危機に、という状況。それでも、断固として搭乗を拒否する慧。そんな慧を巡り、対立していくファントムら。そして、慧抜きで戦う中、彼女らは次々と傷ついていく。それでも出撃を拒否する慧だったが、気分は落ち込み、明華にも心配されるようになって……
やったー! ようやく明華がまともに活躍した! まぁ、どう考えても、その立場としては、負けヒロイン枠のそれなのだけど(しかも、明華と結ばれることはない、と作中でも明言されちゃったし) そして、ようやく慧は、今、何をすべきなのかを自覚して……
物語的には完全に「繋ぎ」という感じの巻。ある意味、予想された通の展開という感はどうしても残る。ただ……結局、慧の決意とかそういうものが、結局、慧とグリペンの痴話げんかとして昇華されてしまった、というのには笑った。
まぁ、そろそろ完結かな? と思うだけに、流石にもう少しいいペースで刊行してほしいな、と思うところ。

No.4663

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著者:瀬川コウ



ついに4人目が殺された。現場に残されたのは、謎のヒモと鏡。容疑者として見られているのは、一度は逮捕されたが、途中で逃亡した女子高生・乙黒アザミ。それは、僕・橘終の双子の妹だ。そして、僕は、そんな妹をひそかにかくまっている……
物語としては、吸血事件、少女誘拐事件、そして、連続殺人といったものが起こり、その真相を暴いていく、という連作短編の形なのだけど、そこには終始、「向こう側」に行ってしまった者、というテーマが横たわっている。
つまり、どういうことか、というと、まず、それぞれの事件について、常に主人公の頭にあるのは、犯人は妹ではないか、という疑惑。警察に追われる身である妹をかくまっている。怪しまれるから、ということもあり、部屋から出るな、とは言っているもののそれを破っていることは明らか。妹は、自分をやはり、連続殺人鬼なのか? そして、自分もまた……
そんな前提から次々と現れる「向こう側」へと行ってしまった者たち。ごくごく身近におり、普通に接していたものたち。しかし、その中にあって、ある部分でだけは決して他者と相容れることが出来ない。そして、そのあっけらかんとした姿こそが作品の肝であり、その怖さを感じさせる。まあ、1編目の吸血事件については理解できないような性癖、くらいなのだけど、2編目の誘拐事件についてはどちらが中心なのか、というような揺らぎがあり、その関係性に怖さを感じさせる。
そして、そんな中で進んできた連続殺人事件。
正直なところ、登場人物が少ないので、「この人が」という部分での衝撃はそれほどない。けれども、その事件の中で、主人公の終がアザミに対して行っていること。その意味が明らかになっていく。事件に関わったその人物が「向こう」へと行きたいと願う思い。一方、妹を守る、という一点において、図らずも「向こう」にたどり着いていた終の姿。その対比性が物凄く衝撃的なものになっている。
作中、周囲漂っているダークな空気に見合った結末と言えるだろう。

No.4662

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