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法廷の王様 弁護士・霧島連次郎

著者:間宮夏生



傲岸不遜にして毒舌。しかし、一旦、法廷に立てば負けなし。「法廷の王様」との異名を持つ弁護士・霧島に入ったのは、ストーカー殺人で起訴された青年の弁護の依頼。ドライブレコーダーに事件の瞬間が録画され、青年は犯行を自白。直感的に無罪と思いながらも、とある事情から、受けることを渋る霧島だったが、上司の命により、新人弁護士・雨宮と共に受けることになってしまい……
法廷ミステリ……のように見せて、あまり法廷ミステリっぽさがなかったり……
物語の導入は冒頭に書いた通り。事件は、ストーカー殺人で少女が殺害され、一人の青年が逮捕された。逮捕された青年は、少女の義理の兄であり、両親の離婚によって離れ離れになっていた。そして、境遇の違いなどから逆恨みして……というストーリー。そして、過去、兄が妹に大けがをさせた、という事件もあった……。そんな中、霧島が覚えた違和感は、「状況が揃いすぎていること」。そこからスタートして、心を閉ざした被疑者の説得。さらに、兄弟の周囲の状況の聞き込み……
と流れ自体は、法廷ミステリと言えると思う。ただ、この作品のある意味での特徴というと……
法廷シーンが始まる前に、犯人がバレバレという点。一応、犯人の名前そのものは伏せられているのだけど、法廷に入る前に決定的な証拠が明らかにされるため。そして、法廷シーンでは犯人がわかっていることを前提に霧島の演説が描かれるのみ。つまり、検察官とのやり取りとか、そういう部分が全くない。そのため、どうにも法廷ミステリとして見た場合、肩透かし、という印象になった。
その一方で、掘り下げられていたのが、なぜ、霧島は事件に乗り気ではないのか? 妹との関係。過去の事件。そして、無罪と直感しつつも、逮捕された青年に対して隠さない嫌悪感。そういうものに大分、尺をとっている。どちらかというと、そちらがメインなのかな? という感じがする。
正直なところ、もうちょっと霧島の過去と目の前の事件が結びつくとか、そういうのがあってよかったかな? と。双方がバラバラで、しかも、題材からして期待した法廷での駆け引きとか、そういうのがほとんどなかったのは残念、と言わざるを得ない。

No.4995

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著者:飛田雲之



ライトノベル系まとめサイトを運営する高校生・姫宮新。「このラブコメがすごい!」 投稿サイトで行われたランキングで、ラブコメではないのにネット民の悪ふざけにより炎上し、3位になった作品について記事を作成中、彼は、その作者が意中の少女・京月陽文であることを知る。新こそが、その悪ふざけを煽った張本人であったが、陽文は怒るでもなく、「わたしにラブコメの書き方を教えてほしい」と言い出して……
第12回小学館ライトノベル大賞・ガガガ賞受賞作。
なんか、これ、自分が小説感想とかをブログで書いている身として、色々と刺さるなぁ……。先に書いたように、新は、人気まとめサイトの管理人。と言っても、ただのサイトじゃなくて、企業広告とかも手掛けており、法人化するなど文字通りのプロ。そして、そんな中で、陽文の小説のプロデュースというのを請け負うことになって……
色々と読んでいて、しかも、売れる作品、そうでない作品。そういうものを感覚だけではなく、数値などで客観的にみることも出来る。だからこそ、「こういうものはダメ」「こういうものが良い」というような指摘をする。当然、彼の思いにはヒットする、ということが何よりもの優先事項にある。しかし、陽文には……
この辺り、先日読んだ『編集長殺し4』(川岸殴魚著)の中の編集者と作家の対立とか、そういうところにも通じるものがある。もっとも、本作の主人公・新の場合、もっと拗らせている部分もあるんだけど……。ただ、この辺りも含めて、ある意味、共感できる部分があるように感じる。周囲が「良い」という価値観に巻き込まないでくれ、とか、そういうところね。ただ、新自身、ちょっとスタンダードから外れたところを愛してみたりとか、数字だけ、というわけじゃないっていう部分も見えるのだけど(問題があるとすれば、変に動かせるだけの力がある、っていう部分なのかな?)
中盤までの、ライトノベル……というか、ある意味で、投稿サイト関連のメタネタみたいな部分が強かったのが、後半は普通の拗らせた主人公を巡ってのアレコレになってしまった感はある。ただ、だからこそ綺麗にまとまった、ともいえるのかな? 自分がどこまで知っているのか? という問題はあるんだけど、でも、多少なりとも、まとめサイトとか、投稿サイトとか、そういうもののアレコレを知っている人の方が楽しめるんじゃないか、と感じた。

No.4994

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今夜、君を壊したとしても

著者:瀬川コウ



「生き残れるのは一人だけ。残りは全員殺します」 同級生の津々寺は銃を片手にいつもの笑顔で言った。教室を占拠した目的は「友達を作るため」。緊急事態に緊迫するクラスメイト達の中、僕は、彼女と過ごした「あの日」から真意の推理を試みて……
『今夜、君に殺されたとしても』の続編にあたる作品。
何というか……テーマとしては前作と近い、というか、ある意味では視点を変えた、とでもいうか……
冒頭に書いたように、物語はクラスメイトの津々寺がいきなりテロ行為ともいえることをしでかしたところから始まる。そして、その理由を考えるために、過去の出来事を回想していく形で展開していく。そこで明らかになっていくのは、街で起こっている一家失踪事件。そして、その事件に……
前作の場合、主人公である終が、殺人鬼である妹・アザミを匿う中で……という形で進んだわけだけど、本作の場合、その立場にいるのが津々寺。殺人鬼である存在と関わりあい、どうにも惹かれてしまった。それって、ある意味、前作の終の立場そのものなんだよな。でも、終の場合、良いか悪いかは別として、周囲で事件が起こって……ということで、それを終は第三者的な立場で見ることが出来た。しかし、津々寺の場合は……
正直なところ、回想シーンとか、そういうものが多く描かれ、テーマ性が共通している、という意味で前作ほどのインパクトはないかな、という感は否めず。津々寺の話自体も、前作に近いエピソードがあったし、ある意味、終はその門を軽々と超えていた、っていう部分があるしなあ……
その中での、アザミの終に対する想い。これはこれで可愛いのだけど……

No.4993

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黒獅子城奇譚

著者:川口士



放浪の騎士グレンと、新刊を装う魔術師リューは、雷雨に襲われ、黒獅子城と呼ばれる古い砦に逃げ込む。そこには、グレンらと同じく、雨宿りをしていた先客たちが……。視察を終えた騎士たち。義眼の老騎士。商人一家。貧しい吟遊詩人に、しっかり者の町娘。砦に纏わる伝説が語られる中、雨宿り客の一人・老騎士タングレーが遺体となって発見され……
著者の作品を読むのは久々。著者の作品というと、王道な、骨太なファンタジーという印象なのだけど、本作はクローズドサークルでのミステリといった趣の作品になっている。
とりあえず言うと……なんか、イラスト、妙にエロ方面を頑張ってない!? 話の中で、そういう行為をしている、という描写もあるわけだけど、そのタイミングでそのイラスト!? みたいな部分が……。191頁のイラストなんて、会話でちょっと出てきただけ、なのに丸出しやん! ……って、そこで引っ張っても仕方がないな……
で、物語なのだけど、雰囲気は凄く好き。雨宿りのため、黒獅子城に辿り着いた面々が語る過去の話。その中で見え隠れするそれぞれの人間関係。そして、何かを隠している様子……。その中で起きた殺人事件。犯人はいったい誰なのか? そして、どうやって老騎士を殺害したのか……。アリバイに関する話。そして、疑心暗鬼。その中で、さらなる事件が発生して……。魔法とか、そういうものがある世界だけど、そういう設定だからこその考察というのは非常に魅力的。
ただ、その真相は……というと……
なんか、色々と後付けっぽい感じになってしまっているんだよな……。勿論、人間関係とか、そういう部分について、実はこうでした、という部分があること自体は良いのだけど、それがあまりにも連発しすぎていて、トリックそのものまで……となると……。
雰囲気、設定と言った導入が凄くよかっただけに、謎解き部分をもうちょっと頑張ってほしかった。

No.4992

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死神刑事

著者:大倉崇裕



強盗殺人、偽装殺人、痴漢冤罪、誘拐……。裁判の結果、無罪となったとき、その事件を再捜査する刑事が現れる。捜査に関わった捜査員を一人、相棒に選び、その相棒は出世の見込みがなくなるため、「死神」と呼ばれるその刑事・儀藤は……
という連作短編集。全4編を収録。
話として好きなのは1編目かな? 1年前、伯父を殺害した容疑で逮捕されたものの無罪になった男。しかし、被告は釈放後、行方不明になっていた。所轄の側で、捜査に協力した大邉は、儀藤の相棒に指名されて……。
被害者とは不仲で、同期はある。しかも、当初は自白をしていた容疑者。しかし、裁判になって自白を撤回。さらに、アリバイも確認されて万事休す。そんな中で、被疑者の姉らに聞き込みをする中で……。聞き込みの中で出てきた不可解な行動を取っていた人物。そこで、一つの事件が明るみになった……と思いきや、のひっくり返し。その鮮やかさと、最後の最後に儀藤が言う「死神」の意味。自分が出ることで、様々な関係性、人生が終わってしまう。それを実感させる結末が非常に印象に残った。
ただ、それとは逆の読後感を得られるのが3編目。
痴漢の容疑で逮捕された男が無罪に。男は、怪我をしており、取り調べ中に刑事に暴力を振るわれたのでは、というものも、その一因になった。相棒に選ばれたのは、身体は大きいが、気が弱く、でくの坊扱いされる榎田……。正直なところ、事件の真相のサプライズとか、そういうものは少ない。ただ、儀藤との捜査、その中でのやりとり。そういうものに感化され、そして、最後の最後で……。榎田の成長というのが感じられる読後感の良さが凄く良い。
過去の事件について、資料やらを掘り起こして……とか、そういう意味での「緻密な検証」というタイプの作品ではない。はっきり言って、かなり強引なところ、というのも見え隠れしている。そういう意味で、本格モノ、としての部分は弱いかも知れない。でも、不気味に見えていた儀藤の捜査。それに付き合わされた相棒たちの成長と、何気に心憎い儀藤の置き土産。それらが、一種の人情モノとしての味わいに転化しているのが何よりもの特徴と言えるだろう。読み終わって、意外と良い読後感を味わうことが出来た。

No.4991

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ボーダレス

著者:誉田哲也



出会うはずのなかった4つの日常が結びつく物語。
普段と比べて、明らかに短い粗筋紹介なのだけど、それをやると長々となってしまうため。ただ、冒頭に書いたように「4つの物語」というのが一つのキーとなっている。
とにかく、読んでいる最中、何よりも感じたのは、「これ、どういう風につながっていくのだろう?」ということ。何しろ、4つのエピソードがどうつながるのかさっぱりわからないから。ということで、どんな話なのかを綴ってみる。
夏休みの登校日、超然としているクラスメイト・希莉に言葉をかけ、仲良くなる奈緒。
何者かの襲撃を受け、盲目の妹・圭を連れ、山中を逃げる芭留。
音大進学を目指しつつも挫折し、現在は実家の喫茶店を手伝っている琴音。
病弱で、屋敷の部屋で、読書と、親に秘密裏に会いに来てくれる人を待ち焦がれながら過ごす少女。
この4つの話を繰り返しながら物語は進展していく。奈緒視点の物語は、ひょんなことから会話をするようになった希莉が、小説を書いている、ということを知って、「すごいな」などと思う話。琴音視点の物語は、家の手伝いなどに不満はないが、しかし、挫折をした自分に対する妹の冷たい視線に罪悪感を覚える……と、文字通り、日常と言った印象の物語。
一方で、芭留の物語は、何者かに襲撃をされ、森の中を追跡者から逃れようとするサスペンス。そして、病弱な少女は、親に秘密の相手との密会を楽しみにする、という背徳感と、現実感の薄い、オトギ物語のようなカラー。それらが、繋がるのか? という疑問を抱きつつも、読み進めていくと……
正直、読み終わっての感想は「うーん……」という感じだったり。
途中、いくつかのミスリードがあったりするなどはするんだけど、終わってみると、つながりはしたけど……という感じになってしまうのだ。というのも、「そうだったのか!」というようなトリックがある、という感じではないし、また、それぞれが影響しあって……という群像劇的な部分も薄い、ただ、「はい、繋がりました」というだけ、とでもいうか……
それぞれのエピソードの中で、主人公が抱える思い、とか、そういうものは素直に納得できる。ただ、4つの物語が……という点でいうと、「とりあえずまとめました」と言われているだけの感じで、正直、物足りなさを覚えた。

No.4990

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編集長殺し4

著者:川岸殴魚



編集長が推したことでデビューした作家・マスタニさん。しかし、過去2作はあまり売れず、3作目の企画は1年以上にわたって出てこない……。そんな中、川田は、マスタニさんの担当になることを言い渡されて……などなどのエピソードを入れたシリーズ第4作。
上に書いた、マスタニさん絡みの話を中心に物語が進展。ある意味、編集アルアル的な部分が過去で最も多かったんじゃないかな、という感じがする。
マスタニさん関連の話は、文字通り、作家と作風というような部分になるのかな? 才能があるのはわかっている。それをこうすれば……そんなことを編集者は思う。でも、作家には、「こういうものが書きたい」というものがある。それをどうなだめすかすか? しかし、一方で、作家が書きたいものを、というのがモチベーションになるっていうのも事実。……まぁ、なぜ、マスタニさんが、っていうのを知らせずに川田に丸投げし、地雷を踏ませまくる。そして、それでも……でのオチは結構、酷いぞ(笑)
裏表紙にもあった「オシャレデザインの悪魔」の話は……これ、何気にどこにでもある気がする。ある程度、色々と出来るようになった。だからこそ、「こういうものを」という意欲も。でも、それは……
小説の表紙デザイン。確かに、まず大事なのは、それがどういう作品なのか知らしめること。そして、それを求める人に訴求力を持っていること。それがまず大事なのに、それを忘れて……これは間違いないよね。個人的に、好きな作家の作品なら、それだけで手にしているような人間だけど、でも、初めて読む作家とかの場合……。それを考えると……というのはよくわかった。
……で、それを考えたとき、東川篤哉氏の「烏賊川市シリーズ」の表紙の変遷っていうのが凄く印象に残る。ノベルス版から始まって、『謎解きはディナーのあとで』の大ヒットで、妙にポップな表紙になって……という変遷は、これ、何だったんだろう、っていう感じだし。話自体はほんわりとした感じだけど、色々と考えさせる一編になっていると思う。
でも、本当、これまでのシリーズでも最も、編集部ネタが充実していたな、という風に感じる。

No.4989

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田嶋春にはなりたくない

著者:白河三兎



田嶋春、通称・タージ。サークルの新入生歓迎会で未成年者の飲酒を許さず、学生証の提示を求めて回るなど、空気が読めない正論モンスター。近づきたくないし、周囲からは嫌われている彼女。けれども、誰よりも公平で、正しく、優しい彼女は、キャンパスで起こる謎を解き明かして……
うーん……不思議な感覚。
それぞれ、同じ大学に通い、それぞれにつながりがある人物視点で綴られる連作短編集。それぞれのエピソードについて、謎が出てきて、そして、それを解き明かす、という形ではある。ただ、それですっきりとまとめられるわけではないこともあり、何ともいえない感じに。
何というか……正直なところ、それぞれの主人公、そして、春、どれもエゴ丸出しな部分があって、年齢相応的な部分もあって……。それが人間らしさ、っていうところなんだろうけど……これは完全にあう、合わない部分があるよな……という感じ。そもそも、春のキャラクターが……。空気を読まず、常に正論で、っていうのにいら立つ、っていうのはまあ、話の前提で良いのだけど、いきなり話が横道にそれてみたり、とか、そういうのが続くので読んでいるとちょっと冗長に感じられる、というか。
その中で、個人的に好きなのは、3編目かな? 春と同じサークルに所属する同級生。しかし、隠しておきたかった自分は2浪している、ということを新歓でバラされ、しかし、その一方で姉御的な立場を手にした奏。春に対して悪評を広げている張本人であるが……。自分自身の立場。劣等感。そういうものがないまぜになりながらも、最終的に、春の言葉で、少し前向きになる。その読後感が良かった。
そんな春も……という5編目。それまでのアレコレがあって、っていう部分の集大成になるわけだけど……
ごめん、どっちかというと、このサークルの面々の乱れっぷりの方が気持ち悪いわ!
確か、著者のデビュー作でも、面白いと思える部分もあったけど、その一方で何か気持ち悪さ、というか、そういうものを覚えたことを思い出す。人間のエゴとか、そういうものを描いているから、というのは絶対にあるし、ある意味ではリアリティのある物語と言えるのだろう。人を選ぶ話、っていうのは間違いないと思う。

No.4988

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あなたの罪を数えましょう

著者:菅原和也



キャンプ中に失踪した友人らの捜索を依頼された探偵の夕月と、その助手・亮太。依頼人の三浦と共に辿り着いた廃工場で彼らを待っていたのは、多数の人々が監禁・惨殺された形跡だった……
『あなたは嘘を見抜けない』の一応、続編というか、シリーズにあたる作品。とはいえ、物語に直接、つながりはないので、こちらから読んでも問題はない。
で、物語の構成としても、前作に近い形。すなわち、何者かに廃工場に監禁された面々の物語。数々の罠が仕掛けられた廃工場。目覚めて早々、仲間の一人が惨殺され、そこには一枚のメモ。そこに記されていたのは、彼らが参加していたボランティアサークルのメンバーで、1年前に不可解な死を遂げた女性の死に纏わるものだった……という過去パート。そして、その廃工場へやってきて、その事件を検証する夕月たち……という現在パート。で、どちらかというと、過去パートの方に分量が置かれている感じ。
その過去パートなのだけど……まず言えるのはグロい!
目覚めて、いきなり惨殺される。しかも、ワイヤーで繋がれ、巨大なローラーへと引きずり込まれて、仲間がそのままミンチ状態に……。この時点で、アレでしょ? その後も、次々と罠が炸裂していき、そのたびにグロ描写が。著者のデビュー作も読んでいるので、こういう描写をすることがある著者だ、っていうのは知っていたのだけど、結構強烈なので、そういうものが苦手な人は注意が必要かもしれない。
その上でカギとなっていくのは、その監禁された面々の関係性。ボランティアサークルに参加していた面々。その面々は、非常にクセのある人々。そして、死亡した女性を襲った数々のトラブル。サークルのマドンナ的存在だった彼女に想いを抱いていた面々。それは……?
正直なところ、探偵である夕月の謎解き、というようなところはあまりないのだけど、この作品における探偵というのは、そういう役割なのかな? という感じもする。結構、グロさがあるので、万人受けはしないと思うが、上手いことまとまっているな、と感じる。

No.4987

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虚構推理短編集 岩永琴子の出現

著者:城平京



妖怪からの相談を受ける『知恵の神』・岩永琴子。彼女の活躍を主に描いた短編集。
シリーズの前作(?)に当たる『虚構推理 鋼人七瀬』を読んだのが実に7年前。記憶が大分薄れているかな……と思ったけど、何となくの雰囲気で覚えていたのだけど、意外と、その記憶のカラーと似ていた(笑)
水神の大蛇に呼び出された琴子。そこで受けた相談とは、殺人犯として逮捕された女が、沼に遺体を捨てる際、「うまく見つけてくれるといいのだけれど」と呟いていたこと。なぜ、女は死体を捨てたのか? そのことについて……(『ヌシの大蛇は聞いていた』)
前作の時は、人が信じることによって、その怪異が「存在する」ことになってしまう。だから、それをどう否定するのか。どう納得させるのか。というのがポイントだった。そして、このエピソードの場合は、大蛇を「納得させる」ことが主題になる。勿論、真実がどうであれ……。とにかく、琴子と大蛇のやりとりが楽しい。色々な状況から、「こうだろう」と推理を披露する琴子。でも、大蛇は、ちょっとしたところで「いや、そうじゃないのでは?」と大蛇は食い下がる。琴子の「面倒くさい」「そんなこと、気にするなよ」という想いに共感しつつ、一応は納得できるように組み立てているのが見事。本当、そんなの本人だって……ってところなんだろうし。
ひっくり返しの面白さでは2編目『うなぎ屋の幸運日』。友人から老舗のうなぎ屋に呼び出された梶尾。妻を亡くした梶尾を、という意図らしかったが、そこになぜか、場にそぐわない若い女性(琴子)が。女性の正体が何なのか? という話を交えながら、その一方で、友人から付き溶けられたのは、「お前が妻を殺したんじゃないか」という疑惑。色々と追い詰められても、しかし、その態度、雰囲気から疑惑を払拭してもらった梶尾。だが……。話としてはブラックそのもの。でも、そのひっくり返しの爽快感に感服。
前作の感想で、九郎、琴子、紗枝という3人の関係性とかが微妙だった、というようなことを書いたのだけど、今作は、紗枝がおらず、琴子をメインにしたため、余計なものもなく、論理的、というか、言い方を変えると屁理屈的なやりとりを素直に楽しむことが出来た。
……ただ、九郎、何気にクズやな(笑)

No.4986

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