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著者;山本巧次



貧乏長屋に小判が投げ入れられる、という奇妙な事件が発生。十手持ちの女親分こと、現代からタイムスリップしている優佳は、かの鼠小僧かと色めき立つ。だが、鼠小僧の事件とは年が異なる。そんな思いを抱いている中、優佳は、旗本の御家人から内々の相談を受けることに。それは、屋敷に侵入した賊に二十両の金子と妖刀と言われる村正を盗まれた、というもので……
シリーズ第7作。
このシリーズ、元々は、江戸時代に起きた事件を、現代からタイムスリップした優佳が、そのタイムスリップを使って、現代技術で謎を解き、それをどう上手くこの時代の人々に納得させるか、というようなところが主題だったように思う。しかし、だんだんと優佳を巡って、鵜飼、宇田川の両者の立ち位置みたいなものが表に出てきたように思う。
で、その後者の観点で言うと、本作は、完全に宇田川の独壇場、というような印象。
記録に残されているよりも、早い段階で現れた鼠小僧と思しき盗賊。その際に浮かび上がる優佳が江戸時代にいるせいでは? という疑惑。そんなこともあって、宇田川もた、江戸の世に。そんな中で発生した銘刀の盗難事件。再び発覚する貧乏長屋への金子配布。そして、その事件の関係者と思しき男の殺害事件。盗難事件などについて、科学鑑定ではっきりとした確証を得つつ、江戸時代の人でも納得できるような言葉で証拠を語る宇田川。さらに、現代の技術を駆使するために優佳と宇田川だけで証拠物集め、というようなシーンが多く、鵜飼の側の出番があまりなかった印象。その点で宇田川の独壇場と感じた。
ただ、物語のメインとなる村正の盗難事件。これって、一つのテーマとして、「人の印象」みたいなものがあるのかな? というのは思った。
優佳が聞き込みに行った際に気になった父娘。その娘に想いを寄せている男。さらに、盗難に関して疑惑を覚えた相手とその手下と思しき男。人間、行動とか、立場とか、そういうもので何となく察する、ということはある。それこそ、「刑事の勘」なんていうのは、その最たるものじゃないかと思う。でも、そういったものがある意味では逆に作用して……。事実認定は、科学捜査によるものなのだけど、そんな印象を巡ってのアレコレというのが面白さに繋がっていると感じる。
そして、その上での「鼠小僧」に関するアレコレ。ある意味では、優佳の存在が、ではある。でも、タイムパラドックスではない。このあたりのオチの上手さも光る。

No.5725

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著者:ウメ種



勇者と共に魔王を打倒した大魔導士であり、女王でもあるレディシア。彼女を悩ませたスライム・ブラックウーズは、フィアーナによって討伐された。だが、王都では、人々が突如として消失する、という奇妙な事件が発生していた。それは、王城も例外ではなく、メイドのティアナがフィアーナ帰還の直後に姿を消していて……
正直なところ、1巻の段階では結構、ワンパターンと感じたところがあったのだけど、2巻になって物語としての面白さが増したように思う。
王国にとっての脅威であった知能を持ったスライム・ブラックウーズは退治された。しかし、その一方で王都に忍び寄る影……と言う感じで物語が進んでいく。勿論、読者にはその原因がブラックウーズに起因するスライムであることはわかっている。そして、そのスライムが、王都に張り巡らされた下水網を通じて増殖し、少しずつ人々を……という状況の気持ち悪さ、怖さが印象に残るようになっている。
この作品、元々はWEBでの官能小説レーベルであるオシリス文庫で刊行された作品なので、スライムに襲われて……っていう部分がある作品なのは確か。
ただ、前巻は洞窟に巣くっているブラックウーズを退治すべく冒険者が訪れるが、「相手はたかがスライム」という油断を持っていたがために……というのが繰り返される展開。それに対して、今巻では、ブラックウーズの脅威はすでに分かっている上で、しかし、それを退治したという安堵感。さらに、何も知らない街の人々が、突如として……。同じ襲われる、にしてもいくつものパターンが用意されていて、その不気味さ、というのがより充実している。そして、ようやく街の異変に気付いたときには、既に最強の魔導士であるレティシアをもってしても手遅れになっていて……というところにまで。ただただ、生存本能だけで、その生存のためには何でもあり、というような感じの不気味さは前巻同様だし。
どうしても性描写的な部分が印象に残るのだけれども、それとは別に、ホラー小説的な面白さを見出すことが出来た。

No.5724

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この本を盗む者は

著者:深緑野分



本の街・読長町。その中心にあるのは、書物の蒐集家で評論家でもあった御倉嘉市の蔵書を集めた御倉館。そんな嘉市を曾祖父に持つ深冬はしかし、本が好きではなかった。だが、御倉館の管理をする父が入院をし、本の虫で生活能力のない叔母・ひるねの世話をすることになってしまう。ところが、そんな御倉館から本が盗まれ、街は物語の世界へと変貌してしまい……
なんとも不思議な雰囲気。こういう言い方をすると何だけど、結構、児童文学的な雰囲気もあるかも。
冒頭のような形で物語は始まるのだけど、もうちょっと補足すると……。深冬の曾祖父は世間に名の知れた本の蒐集家。そして、そのあとを継いだ深冬の祖母は、それを守り通す、ということを何よりも大切に考えていた。だが、ある時、その本が大量に盗まれてしまい、そのことに激怒した祖母は、御倉館の公開を中止。さらに、本たちに「呪い」をかけてしまった、という。その呪いにより、街は盗まれた本の世界へと変貌。元に戻すには、その本を盗んだ犯人を捕まえねばならない。深冬は、呪いが発動したときにだけ現れる謎の少女・真白と共に本の世界を冒険する、と言う話。
連作短編形式で、各話、その盗まれた本の世界に町が変貌してしまうのだけど、その世界そのものが面白い。ちょっと後味の悪い童話のような話があれば、ハードボイルド小説のような話があり、はたまたスチームパンクのような世界だったり。そんな世界で右往左往しながら、犯人を捜す深冬の冒険。
ここで面白な、と思うのは、その世界観に対する深冬の感想。自分自身、1日1冊くらいのペースで本を読んでいて、それこそ、密室殺人の話を読んだ直後に今度はハードボイルド作品を読んで、今度はドタバタのラブコメで……なんてことは日常茶飯事。で、その際に当たり前のように、頭を切り替えて読んでいる。でも、ちょっと考えると、いきなり全く違う世界観の話になって、それに順応するって、結構、凄いことだよな、なんていうのを思う。なんでそんなお約束があるの!? みたいな深冬の感想って、言われてみれば……と言う気になってくる。
そして、そんな中でだんだんと、その呪いの力が強くなり、世界が滅茶苦茶になっていく中で知った、「呪い」などの真相……
これもまた、結構、考えさせられる。本の蒐集、それを管理すること。勿論、大事なことではある。しかし、本って一体、何のためにあるのか? そもそもが、深冬が本嫌いになった理由。それ自体が、祖母の行き過ぎた管理にあった。本と言うのは、読まれてこそ意味がある。しかし、極端にそれを管理し、それを維持することに血眼になり、読むことすら……となったならば……。
深冬と共に冒険をする真冬の正体。呪い、の正体。勿論、ファンタジーそのものではあるのだけど、何となく、本を守ること、というのは何なのか? そして、その中で翻弄された存在に対する切なさ、というのが感じられた。やっぱり、本は読んでこそ、だもんな……。そんなことを思う。
……で、ふと、私の部屋を見回すと……かなり無造作に本が積みあがっているんだけど、これ、どうしよ……というのも思ったり。

No.5723

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監獄に生きる君たちへ

著者:松村涼哉



「私を殺した犯人を暴け」 廃屋に閉じ込められた6人の高校生たち。あるのは、わずかな食料と1通の手紙。差出人の真鶴茜は、7年前の花火の夜、ここで不審な死を遂げた恩人だった。なぜ今更、誰がこんなことを? 恐怖に駆られつつ、彼らはその夜の出来事について語り始める……
こう来るか!
密室に集められた複数人の人間。それは、1人の人物が死んだときに居た人間で、その真相を暴け、という指示が……。こういう設定の作品だと、一種のデスゲームというか、人狼ゲーム的な方向へ、ということが多いのだけど、そんな設定から社会派と言われるような作風へと移ろっていく、という流れにまず驚いた。
その渦中にある人物・真鶴茜。彼女は、集められた6人を担当していた社会福祉士。家庭に問題のあった彼らを保護する、というのが仕事。情熱をもってその仕事に邁進し、子供たちを救ってきた女性。物語の主人公、というか、視点となる桜介自身も、そんな彼女に救われ、恩人と慕っている。そして、そんな彼女が、桜介らを花火大会に誘い、そこで……。その日の参加者が語る当日の、そして、自身の過去……
桜介が、自分は茜に救われた、というように、茜の行動によって救われた人間は多い。しかし、じゃあ、全員が彼女に感謝をしていたのか、というと……。「救い」の手を差し伸べられた本人にとってはどうなのか? 確かに客観的に見れば、問題のある親。しかし、本人にとっては自分を愛してくれる存在。そんな親との絆を「保護」という名のもとに破壊されてしまった。そんな恨みを抱く存在も。主観と客観でのギャップ。その中での反発も当然に出てくる。
さらに、それぞれの回想が綴られる中で出てくる集められた人間の、もう一つの共通点……
作中でも語られているのだけど、激増していく児童虐待の通報件数。しかし、人員や予算が拡充されるわけではない。ただただ、一人一人の職員にその重責が積み重なっていくだけ。その中で、当然、手が回らなくなってしまった存在もいる。とりあえず前を見よう。そういうのは簡単。けれども、そんなに簡単に割り切れるのか、と言えば……。責任感が強ければ強いほど、そんな思いは強くなり、疲弊してしまう。茜もまた、そうなってしまっていた。しかし……
彼女の残した手帳。そこに記されたメッセージ。辛い状況を経験しながらも、しかし、再び前を見出るようになったこと。そして、何よりも彼女は、子供たちに本気だった。残酷な結末ではあるのだけど、でも、そのメッセージによって集められた面々が救いも見出すことが出来た。そんな結末にちょっとかもしれないけれども、光を見いだせたのが救いなのだろう。

No.5722

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著者:辻室翔



あらゆる道を究め、そのどれもがプロ級。しかし、全てが趣味だという「史上最強のアマチュア」未十士早來。そんな彼女の現在の趣味は、未来を写すことできる「超理具」と言われるカメラに映った人体消失の謎を解くこと。作家志望の僕、唯乃壱時はそんな早來にいつも突き合わされて……
かなり不思議な感覚のミステリ作品。
物語は、冒頭にも書いたように、早來が未来を写すことが出来るカメラで撮影した不思議な事件の謎を、壱時と共に解決する、というのが基本的な構図。未来を写すことが出来るカメラ。言い換えれば、まだ起こっていない事件の謎を解く、という話になるわけだけど、その中での推理の過程などはしっかりとロジカル。例えば、1編目の話。器物破損と共に発生した人体消失。その謎を解くため、その時間に合わせてカメラで写真を撮る。そこに写し出された諸々から辿り着いた結論は……。文化祭の準備という状況。そして、「最強のアマチュア」と言われる早來の存在。そんなものがほろ苦い部分を含めた謎解きとなっており、しっかりとしたミステリ作品として完成している。
というところから物語が始まっていくのだけど、だんだんと物語は思わぬ方向へ……
一応、ネタバレになるのだけど壱時も持っている超理具の、時を巻き戻す懐中時計。そんな超理具とは一体何なのか? 早來の持つカメラは、なぜか喋ることが出来る。それは何なのか? 物語の謎は、そんなところへも突き進んでいく。
謎解きそのものは、その独自のルールを踏襲しながらもしっかりとロジカル。そして、そんなロジカルさの中にある、ある種の狂気。それでもって、しっかりと1巻ですべての謎、伏線と言ったものを回収してしまう、という構成の妙。しっかりとまとまっている、という完成度の高さは見事の一言。
その上で、このキャラクター造詣が良い味を出している。自分が美少女で、とか、そういうのを自覚している早來と、それに振り回される壱時。そのやりとりの軽妙さがあるがゆえに、終盤の、ある種の狂気とも言えるものが光るように感じる。その辺りも、多分、計算づく、なんだろうな。そして、ラストシーンも……
何か、これで完結したような感じもしないでもないのだけど、続編も読みたいな、というのが素直な思い。

No.5721

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著者:内藤了



長野と都内で発見された複数の幼児の部分遺体。それは、神話になぞられて遺棄されていた。そんな中で浮かび上がった被虐児童のカウンセリング施設を探る中、比奈子は行方不明に。残された捜査班の面々は、各地で起きた事件を繋ぐ線を必死に探す。そんな中、脱獄した佐藤都夜は比奈子への復讐心を秘めて……
シリーズ第6作。そして、前作『ZERO』から、そのまま続いての物語。
今回の話については、一言。すっげぇ、もどかしい!
こういうと何だけど、読者の側からすれば、前作『ZERO』のラストシーンで、今回の事件の犯人は誰なのか、というのは明らか。
勿論、その中で捜査班の面々が注目するカウンセリング施設の存在、というのは決して間違った捜査ではない。しかし、その施設の一体誰が? というところがちょっとズレている。だからこそ、遺体の遺棄がどのような意思を持って行われたのか? そして、それぞれの事件をつなぐ線からの突破口を目指す。さらに、比奈子の専売特許だった、中島保とのコンタクトも駆使し始めて……
と言う感じで行くのだけど、一方の比奈子自身も、自分を襲った相手の正体に気付いていない、というのが苦しい。読者の目から見れば、犯人はこの人。しかし、比奈子はその人物もまた……と考えてその相手に接する。そういう意味では、こちらもまた……。しかも、その中で、だんだんと都夜が比奈子の元へと近づきつつある、というのがわかるから余計に。
そういうわけで、これまでの、犯人が誰なのか? と言う展開とは異なり、犯人はわかっている中でいつ気づくのか? というハラハラ感を楽しむような巻になっていた、というのを感じる。無論、その中で、迫りくる都夜という最強の敵が来る前に……という時限付きで。ただ、その中で、比奈子と中島の関係性が、捜査班の中に共有されてきたり、比奈子が勘違いをしたことによって発せられるドラマがあったりで、予想とは違った展開になっていく部分もあって「そう来るか!」と思うような話も結構、あるのだけれども。
全てが明らかになってみれば、実はかなり簡単な真相と言える形。けれども、常識と言う考え方から、そこへ至ることは難しい。その辺りの匙加減とかも上手かった。

No.5720

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お隣さんが殺し屋さん

著者:藤崎翔



専門学校に進学するため、田舎から上京してきた美菜。挨拶に向かった先は、隣室に住む青年・雄也の元。雄也は陰のある長身の男だが、そんな彼に美菜は好感を覚える。一方、雄也は美菜にあるものを見られて動揺する。そして、それを使った「仕事」を思い出す……
結構、強引なひっくり返しではあるなぁ……
物語は、冒頭に書いたようなところから始まる。
北海道の田舎から、映像制作の専門学校に入学した美菜。同じ学校に通うクラスメイトと、演技であるとかの勉強をし、アルバイトをしながらの日常。しかし、世間知らずで、色々とおかしな言動をとることも。そんな中、何かと助けてくれる隣人の雄也に対して好感度を持つが、クラスメイトたちは彼を怪しむ。一方、雄也は、世間から隠れるようにして暮らす日々。そんな中で、隣室に越してきた美菜に天真爛漫さに、だんだんと惹かれていく。けれども、後ろ暗い事情も持っている。そして、途中に挟まれる殺し屋の師匠と弟子の会話。「ビッグ」と言われる凄腕の殺し屋の存在についての会話……。その中で、ビッグは、ヤクザの恩人から特殊詐欺を働いた犯人。裏社会の人間の娘を性的暴行した犯人。それを見つけて、殺害する任務を与えられている、ということが語られる。そんな3つのパートで物語が綴られていく。
ここでまず思ったのが、美菜が入った専門学校の様子。映像制作と言っても、例えばカメラマンとか、音響とか、そういう技術スタッフではなく(そういう学科もあるようだ、とは示唆されているけど)、俳優、役者の養成というようなところ。指導者は、プロ、ということになっている。けれども、当然ながら一線級で活躍している人ではないが、生徒に対しては厳しく、中には八つ当たりでは? なんていう者も。また、卒業をしたから、と言ってプロとして生活できるのか? と言えばそれもまた……。わずかなチャンスにかけて枕営業のようなことも……。勿論、デフォルメはされている部分はあるんだろうけど、事実の一部は切り取っているだろうし、また、元々、お笑い芸人だった、という著者の経験とか、そういうのも加味されているじゃないかと感じた。そして、当然のことながら、その中でのやり取りが、ビッグの標的にも繋がっていって……
終盤のひっくり返しは、確かに不意を突かれた。
そして、結構、そのひっくり返しについて、丁寧に解説をしているので、「どういうこと?」っていうのもないと思う。
ただ……そのひっくり返しがそうだとすると……このパートって、半ば妄想? というような感じになる部分もあったり。それはそれで、作りこまれているのだけど、ちょっと強引だろう、と言う感じがしないでもない。それはそれで、こういう作品の味なのかもしれないけれども。

No.5719

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著者:水沢夢



長きにわたるアルティメギルとの戦いも終わり、平和を取り戻した世界。ツインテイルズは身近な存在としてより親しまれ、散発的に出現する野良エレメリアンに対処する程度の平穏な日々が続く。だが、そんな中、ツインテールへの憎しみによって生まれた未知のエレメリアンが襲来して……
昨年、第19巻で遂にシリーズ完結!
と言っておいて、1年も経たずに刊行された本作。完結……とは……?
まぁ、あとがきでも触れられているように、特撮ヒーローものの劇場版での、色々な戦隊モノが合流して……みたいな話ではあるのだけど。
というところで、本題に入ると、物語は、アルティメギル首領を倒した後のお話。アルティメギルが潰れても、まだ生き残っているエレメリアンとの戦いは散発的に起こりつつも、概ね平和な日々。テイルレッドの正体が総二だ、ということが判明しても、クラスメイトらは、相変わらずテイルレッドに執心しており逆に、その変わらなさ、というのが怖かったりするところでもある。そして、トゥアールと愛香の総二を巡っての争いだったりも相変わらず。そんなときに、ツインテールへの憎しみを抱えるエレメリアンが現れる。それでも、退治していくのだが、なぜかツインテイルズの存在、というのを消滅していく、という事態が起こって……
こうやってダイジェストで粗筋を書くとシリアスっぽいんだけど、日常パートが多く、総二とクラスメイトとのやりとりとか、ツインテイルズの面々の日常とかわいわいとやっている部分が印象的。特に、中盤、シリアスさが出てきた中で、エレメリアンの分析により判明した……
「観束総二くん、おっぱいに一切興味なし」
という暴露が世界中に駆け巡るシーンでは大笑いした。一応、それに慌てるくらいの羞恥心はあったのね。ただ、そんな中でも、だんだんとシリアスさは増していき、やがて、異世界からの干渉なども見えてきて……
終盤になると、著者の別シリーズである『ふぉーくーるあふたー』のキャラクターも登場しての共同戦線という展開に。それ自体は構わないのだけど、正直なところ、『ふぉーくーるあふたー』の方は1巻しか読んでいないんで、あまりキャラクターとかに愛着がなく、その点で自分は損してしまったかな、というところはある。こういうコラボ作品の場合、この辺りはどうしてもプラスにも、マイナスにも働くのだろうな。
その辺りで、作品を十全に楽しめたのか、はちょっとわからないのだけど、久しぶりの、それも日常回的な面々のやりとりは楽しかった。

No.5718

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著者:柊サナカ



東京・谷中でクラシックカメラを専門に扱う今宮写真機店。三代目の店主である今宮と、アルバイトの来夏はカメラにまつわる謎を解きつつ、その距離を縮めていた。そして、今日もまた、カメラにまつわる謎が持ち込まれ……
という連作短編集。全7編収録で、シリーズ完結編。
今巻は、思いをつなぐレンズ、とあるけれどもまさにそんな感じで、カメラに込められた思い、というのが強調されている印象。
1編目『光と影の家族写真』。紅葉の写真を撮りに行った今宮達。そんなところで、老婆がひったくり被害にあう、という事件に遭遇。近くの池で、ひったくられたカメラを発見。老婆は、写した写真を現像してほしい、というのだが、そこに写っているのは単なる地面……
カメラで何を撮るのか、というのは、その人それぞれ。それこそ、今宮や来夏が取っていた紅葉の写真だって、それぞれの観点で切り取ったもの。だとすれば、地面の写真だとしか思えなくても……。何気ない、というよりも、他の人には何だかわからないものでも、そこに込められた意味がある。そんな思いを感じさせる理由だった。
魚釣りの仕掛けにカメラが引っ掛かってきた、という『カメラと海と満月と』。水中撮影をするために作られた、というカメラ。その構造、今宮の技術もあって修理は完了。残されたフィルムの現像にも成功する。そこに写っていたのは一枚の写真。その被写体の女性を見つけることが出来たのだが……
女性の若き日の出来事。その秘された時間に起こった出来事。今宮の、写真の技術、知識。そこから導かれた、その人の人生を決定づけた時間が明らかに。今でも、こういうことってあると思うのだけど、それが数十年前なら……。そんな時代の、秘められた思い、っていうのも写真は切り取る。ある意味では残酷な面も、と言う感じすらした。
そして、最後の『顔の見えない勇者たち』。写真を題材にした婚活会場で知り合ったという二人が来るようになったのだが、ある日、その男性が、女性に裏切られた……と言い……。写真を巡るアレコレ。こちらも、その女性の過去とかが明らかにされ、という話ではあるのだけど、果たしてその女性の想いは嘘だったのか? こちらもプロである今宮から見ての、彼女の本気は……。そういうものも、やはり態度でわかるんだろうな。そして、そんな今宮と来夏もまた……
今宮と来夏のところが、後日談的になったのはちょっと残念だけど、きれいな終わり方だったんじゃないかな?

No.5717

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白日

著者:月村了衛



出版社課長の秋吉の元へ届いた一報。それは、大手予備校と組んでの通信制高校設立を主導してきた上司・梶原の息子が不可解な転落死を遂げた、というもの。不登校になった娘を励ましてくれた梶原の息子が? 自殺も噂される中、梶原が主導していたプロジェクトは、一時中止となり……
どこへ向かうのか、それが何よりも読んでいて興味をひかれた点かな?
突如として中断してしまったプロジェクト。梶原の息子が自殺するはずがない、という思いを抱く秋吉は、その死を調べ始めるが、その死を巡り、社内は社長派、専務派による派閥争いが勃発。プロジェクトの中止までもが囁かれ始める。そして、秋吉もまた、その派閥争いに巻き込まれ、その行動に対する制止、さらに監視までついてしまう。さらに、部下たちの中にも不満が溜まり、中には内通者と思われる存在も見受けられ……さらに、通信制高校設立に関して、梶原が文科省との担当者との間で不適切なやり取りをしていたのでは? という疑惑まで浮かび上がってきてしまう……。
まず、主人公である秋吉の状況が切ない。不登校の生徒らを集めた通信制高校。それは、娘がイジメの末に不登校となった経験を持つ秋吉自身にとっても一つの希望。そんな中で、信じられないのは、梶原の息子が自殺をした、という噂。不登校となった娘を励ましてくれた、礼儀正しく、そしてまっすぐな正義感を持った彼がまさか……。会社内でのアレコレの末、秋吉が知ったその死の真相……
これ、フリースクールとか、通信制学校というものが重要な意味を持つようになった現在でも、絶対にある偏見。あまりにもまっすぐだった梶原の息子。だからこそ、その言葉が……。自分自身、学校生活については色々とあった身。そして、その中で、もし、こういう学校があれば……という気もする。けれども、同時に、普通の学校とは違うんだ、みたいな偏見と言うのを持っている、というのを自覚させられた。そして、それを言い放ったのが……となれば……。会社内での、派閥争い、という部分が強調されればされるほど、その言葉の残酷さと、梶原の息子のまっすぐさ、というのが印象に残る。
ただ、終盤の展開はちょっと綺麗にまとめすぎたかな? というのも感じたりはする。確かに、色々な伏線とか、そこでのひっくり返しとかはあるけど、そこまで綺麗に収まらないだろう、と言う感じがするだけに。ただ、この作品で、後味の悪い結末になったとしたら、あまりにも報われないだけに、これはこれで良かったのかな? という気もする。

No.5716

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