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欺す衆生

著者:月村了衛



戦後最大の詐欺事件と言われた横田商事事件。末端のセールスマンであった隠岐は、その過去を隠しながら暮らしていた。そんな彼の前に現れたかつての同僚・因幡。因幡に導かれるままに、再び「ビジネス」の世界へと足を踏み入れることになる隠岐だったが……
以前に読んだ『東京輪舞』と同様、「平成」という時代を背景にした作品。
冒頭に書いたように、かつて、一大詐欺事件と言われた横田商事事件で、セールスマンとして働いていた隠岐。そんなときに再会したかつての同僚・因幡。以前、横田商事にいた、ということがバレるだけで会社に居場所はなくなってしまう。妻子の為にも、バレるわけにはいかない。渋々ながら、因幡に手を貸すことになった隠岐。しかし、かつてのように、老人などをカモにするわけではなく、欲にまみれた相手を原野商法で、という形でのもの。良心の呵責も少なく、成長する子供のためにも、と自分を納得させる隠岐。しかし、事件後、因幡は今度は、和牛商法へ……
ある意味で、隠岐の成長物語、という感じなのかな?
半ば無理矢理に誘われた詐欺。しかし、比較的、良心の呵責のないところで、感じた快感。それでもやりたくない、と言いつつも生活の為、と続ける詐欺。その中で……。詐欺師という立場ではある。しかし、常に「ここまで」という一線は保とうとする。しかし、相次ぐ修羅場、次なる仕事、の中でその線引き自体もズレていく。何よりも、自分を引きずり込んだ因幡。危機の中で手を組まざるを得なくなった暴力団員・蒲生と言った面々もまた、自らの思惑などの中で脱落していく。そして、そんな彼らを切り捨てていって……
嫌々ながらも生活の為に。詐欺をしているのは確かだが、しかし、という一線を引いた活動。その中で出来ていくしがらみの中、それでも……という線引きをしながら一歩を踏み出していく。常にギリギリの綱渡りであるが、しかし、しぶとく生き残っていく。そして、その中で隠岐自身も図太さというようなものを身に着けていく。そして、国家レベルをも巻き込んだ、大規模な計画が出発するが……
いつも通り、順調に進み始めたと思われた計画。しかし、思わぬ形で表出した綻び。さらに、自分が守ろうとした家族の中にも出てくる危機。その時に……
常に、「家族の為」ということを言っていた隠岐が、しかし、その前提が破壊されつつある……となって、どう決着するのか? と思ったら……。なんか、その危機自体は去ったものの、「あれ? これで終わり?」っていう感じなんだよな。
あくまでも個人的な希望としては、良いにしろ、悪いにしろ、隠岐には、その人生の決着をつけてほしかったんだけど、何か拍子抜けな終わり方になってしまった、というか……。ある意味、皮肉な部分はあるのだけど……。
単行本で500頁あまりの分量で、一気に読ませるだけの勢いもあるけど、最後はちょっとモヤモヤとした。

No.5362

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著者:山本巧次



ロシアの武装商船の船員が日本に漂着。一度は捕らえたものの脱走してしまった。江戸と東京での二重生活をするおゆうらは、江戸市中に侵入した可能性がある、ということで緊急配備に召集される。口外禁止により、捜査もままならない中、その船員・ステパノフの移送責任者の配下が死体となって発見され……
シリーズ第6作。
ある意味、これまでで一番、地味な形で話が進むエピソードになっている気がする。
粗筋で書いた通り、逃亡した外国人の捜索から物語は始まる。ただ、捜索をする、と言っても写真とかがあるわけではないし、そもそも、幕府にとって外国人が、なんてことは口外できない。ただ、大柄で怪しい奴を視なかったか? という聞き込みばかり。また、その後、そのロシア人をとらえることが出来たものの、幕府側の庇護下に入ってしまい、接触そのものも制限されてしまう。抜け荷疑惑などが湧いてくるものの、捜査そのものは遅々として進まない……
今回、どうして「地味」と感じたか、というと科学捜査という部分がどうしても地味なものになりがちなため。
途中で起きた殺人の凶器らしきものを科学鑑定する、とか、そういうところはあるんだけど、防犯カメラとかがないから、その映像解析をする、とか、はたまたDNA鑑定をするとか、そういうところに持っていくことが出来ない。僅かに、盗聴器を仕掛ける、とかその程度。勿論、実際の、現代の警察の捜査とかもそういう地味な部分の積み重ね、ってところはあるんだろうけど、江戸時代という舞台ゆえにより、そういうものがしづらい形が強調された形になったのかな? と感じる。
ただ、逆に言うと、おゆうのステパノスに対する接触とか、そういうところで地道に捜査を進める過程が楽しめた、ともいえる。物証とか、そういうもんがないからこそ、ちょっとした行動の違和感とか、そううものを積み重ねる。そして、現代のように様々なデータなどがない時代だからこその人間関係のひっくり返し。タイトルにある「科学捜査」が出来ないが故の描き方と言えるのだろう。
まぁ、真相とか、その辺りは、結構、荒唐無稽な感じはするんだけど、それは小説だし、これはこれで良いのかな?
その上で、毎回、最後に出てくる、おゆうを巡る話。鵜飼と宇田川が連戦状態になっていて、そこに笑った。

No.5361

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著者:櫛木理宇



こよみを家に招く。そんなことに気持ちが舞い上がる森司。そんな森司たちの大学に、アイドルのように人気を集める霊能者・巧が現れる。その巧は、自分の力が低下しており、引退を決意。最後の仕事するにあたり、森司らの「視る」力で手助けしてほしい、と依頼してきて……
からの3編を収録。シリーズ第16作。
今回は、引き継いで、より強化された想い、とでも言うようなものなのかな?
とにかく、その力が圧倒的なのは、冒頭に書いた1編目『塁ヶ淵百貨店』。冒頭に書いた通りの形で、心霊番組に参加することになったオカルト研究会。ロケ地として赴いたのは、かつて映画の撮影中に女優や子役らが死亡する事故の起きた廃百貨店。様々なモノがいる仲、何とか安全な場所へ、と誘導しようとするが……
依頼人である巧。その巧を巡る家族関係。嫌々ながら、仕事に就く巧と、それにおんぶにだっこな両親。そして、そのせいで不登校になった妹。さらには事故で死亡した女優の抱えていた事情。そういうものが重なりに重なって……。何となく、こういう構図なのかな? というのは見えてきて、実際、それに近い形で決着したと思ったら……。これだけ、オカルト研究会が「何もできなかった」終わりっていうのは久々な気がする。
一方の3編目『赤珊瑚 白珊瑚』。一緒にしておかねばならない一対の珊瑚珠の一方を、別れた元同棲相手が持っている。しかし、その同棲相手は、ブラックバイトで連絡がつかない……。一見、霊とは関係のなさそうな話。実際、森司は、こよりとの方を優先せよ、という形になる。しかし、その珊瑚珠を最初に送られた双子の置かれた厳しい運命。
人買い、かつての工場労働者たちの置かれた状況。その中で培われた女工たちの想い……。流石に……という気がしないでもないけど、でも、生活のためにバイトをしなければ……という現在の大学生と、それを上手く利用するブラックバイトをさせる企業。その中で、リーダーとか、そういうもので立場を分断して……という構図。それって考えてみれば、雇い主側に都合の良い状況を作るっていうのは間違いない。それって、決して健全とは言えないわけで……。結構、社会問題とか、そういうものを反映した話と言えると思う。
その上で、森司とこよみについては……
こよみさん、最早、具体的な将来を考えすぎ!(笑) そして、一番のライバル的存在が……
何もしてないのに、なんか、一歩進んでいるぞ、おい!(笑)

No.5360

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竜と祭礼 魔法杖職人の見地から

著者:筑紫一明



師匠が死亡し、店をたたみ、旅に出ようとした半人前の杖職人・イクスの前に一人の少女が訪れる。その少女・ユーイは、師の作った魔法杖の修理を依頼するために訪れたという。師の遺言により、修理を請け負うことになるイクスだったが、伝説の職人と言われた師の作は見たこともない材料で作られていた。ユーイ、姉弟子・モルナらの手助けもあり、その材料を特定することは出来たが、その素材は、千年以上前に絶滅されたとされる竜の心臓で作られており……
第11回GA文庫大賞・奨励賞受賞作。
あ、これ、私の好きな奴だ! 読み始めて、まずそう思った。
物語はどちらかというと淡々と進む。冒頭に書いたように、師の遺言により、師の作った杖を修理することになったイクス。師の作った杖の材料は何なのか? その材料は「竜の心臓」というのだが、竜ははるかむかしに滅びたはず。そもそも、竜とは一体何なのか? 資料や伝承といったものを頼りに、一歩一歩、その正体へと迫っていく。地味な展開と言えばそう。でも、その地味に調査をする中で、作品の世界観とか、そういうものが少しずつ見えてくるのが心地よい。
そして、そんな中でちょっとした違和感が……と言う中での、杖がなぜ壊れたのか? なんていう部分でのひっくり返しがあったりとか、地味ながらも、ちゃんと物語の起伏があるのも好印象。その点で、ちゃんとユーイの成長物語としても機能している、っていうのも個人的には好きなところ。
あとがきで、「映し出す範囲」が少し狭くせ呈されている、とあるけど、確かに世界観などを後から、という点では多少「ズルい」と思う部分はある。ただ、あるんだけど、別に唐突に、後付けで、というわけではなく、物語の展開を考えるうえで、こちらの方が読者を引き込むことができるため、という計算なのはよくわかる。実際、「そりゃないだろ」とか、そういうのは全く感じなかったし。
最初にも書いたけど、私、この作品、大好き。続巻あるなら、それも期待したい。

No.5359

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僕と彼女の嘘つきなアルバム

著者:高木敦史



故郷の街に息苦しさを感じ、東京の大学に進学した可瀬理久。彼が敬愛する写真家・綿引クロエが立ち上げた創作サークルへに入会。しかし、既に廃部寸前で、活動もしていない。そんなところに現れたのは、クロエの娘・真白。彼女は、会ったことのない自分の父親を捜している、という。そして、彼女には「写真越しに目の合った相手と会話が出来る」という不思議な力を持っていて……
スニーカー文庫じゃなくて、角川文庫での刊行。レーベル的には一般文芸ということになるんだろうけど、真白が一種のサイコメトラーである、ということを考えても、設定的にはライトノベルレーベルっぽい感じがした。
物語は、本編たる4編と、その間に掌編を含めた形で綴られ、それぞれのエピソードで謎があり、それを解消して、という形になっている。ただ、それらは、真白の父を探す。真白と母の関係性を、というところで貫かれており、連作長編というのが正しいのかな? という気はする。
例えば1編目は、可瀬、そして、真白がサークルの部室へとたどり着いたところ。部室には、クロエが残した、という写真があったはずなのだが、なぜか、それが消失。その中で、クロエのファンである可瀬が盗んだのではないか? という疑惑が湧いてしまう。そんな中で、真白は、その部室にいた面々の、それぞれが嘘をついている、ということを指摘して……。それぞれの嘘。その中での破綻。そんなところを描きつつ、真白が、どういう存在なのか、というのを示すエピソードになるのだろう。
で、そんな感じなので、各エピソードの感想を、というよりも、全体を通しての印象が強くなのかな?
娘である真白からしても、厄介な存在、である母。幼いころから、自分に父親がいないことが疑問であったが、そのことについてまともに語ったことは一度もない。だからこそ……。そして、真白自身が、自分に正面から向き合ってもらっていない、ということを感じていた。故に、どうしても感じる距離。そんな中、可瀬や、サークルの仲間たちの協力によって父について調べていく中で……
ぶっきらぼうで、自分に対して正面から向き合ってくれない、と感じていた母の真意。それでも、真白が、ちゃんと幸せになってほしい、という思いが込められていた……という辺りは素直に良かった。サークルメンバーが良い人過ぎる、という気がしないでもないけど、それは気にしちゃいけないとして……。そこは確かに感じた。
ただ……正直、ちょっと読みづらい、っていうのを感じた部分もある。というのは、物語の視点が唐突に切り替わる部分が何度かあるため。基本は、可瀬視点なのだけど、突然、真白視点と思われる部分になったり、母親視点になったり……とか、そういうのがあった。読んでいれば、っていうのはあるんだけど、「いつの間に、こっち視点に?」と思われる部分があったのはちょっと気になった。

No.5358

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著者:赤松利市



大阪でニューハーフ店を営む桜。63歳になった彼女は、23歳で、同じくトランスジェンダーでもある沙希を娘のように可愛がりながら、慎ましい生活を送っていた。そんな桜の前に現れたのは昔の男・安藤。FXで大きな利益を上げている、という安藤は、自分に投資の運営をしないか、と持ち掛けて……
凄くひきこまれた。
冒頭の粗筋だけだと、どういう話なのかわかりづらいので、もう少し先まで書くと……
安藤は、桜にとっての昔の男。しかし、自分を捨てて、女性と結婚をした相手でもある。そんな安藤が自分の前に。何をいまさら……そうは思いつつも、しかし、安藤のことが気になって仕方がない。また、還暦を過ぎ、自分の健康などにも不安を抱く日々。その中での老後資金は心もとない。ならば……。しかし、そんな安藤の存在を快く思っていない沙希。安藤を巡って諍いになった挙句、桜が安藤に預けようと思った金をもって失踪してしまう。桜は、安藤と沙希を追うことに……ということになる。
SNSに、まるで自分を追ってこい、とでも言うかのように残される沙希の現在地。当然、桜は安藤とそこへ向かうわけだが、その中で見える安藤の暴力性、短気さ、そして、胡散臭さ。沙希が言っていた通り、この男は……。そういう思いを強くするが、しかし、離れることは出来ず、しかも、時折見せる安藤の弱みに、自分が支えてやれば良いのでは? なんていう甘い考えも浮かび上がる。虐待によるマインドコントロールとか、そういう部分もあるんだろうけど、桜の、しっかりしているのか、そうではないのか? そういう心情描写が凄く生々しい。
ただ、これだけなら、主人公がニューハーフである、という必要性はない。女性でもよいはず。しかし、その旅先、沙希の過去なども出てくる中で、しっかりと、ニューハーフである、という面も意味を持っているのが印象的。自分が、ということを家族などにも言えず、日陰者としての人生を過ごしてきた桜。そんな桜にとって、自分のことを家族に打ち明け、家族も認めてもらっている沙希は幸せじゃないか、という思いを抱いている。しかし、沙希にとっては……。「ちゃんと理解しているよ」 これは、確かに、幸せに見えるかもしれない。でも、女として生まれた人が、周囲の人に「君が女性だってのはわかっている」なんて言う風には言われない。当たり前のことだから。攻撃はされない。でも……という無言のプレッシャーの息苦しさ。そして、安藤との旅の中で桜自身もそれを自覚していく……。そして……
そんな中で沙希とも再会、和解をし、安藤の手を離れることもでき、今後のことへ……となっていって……での結末……
これが、うーん……
なぜ、桜はそういう動きをしてしまったのか? ある意味、分かっていても……と言うの部分が桜の弱さだった、ってことなのかもしれないけど……。なんか、最後がちょっと腑に落ちなかったな……とも感じた。

No.5357

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卒業タイムリミット

著者:辻堂ゆめ



『欅台高校、3年8組担任、水口里紗子を預かった』 ウェブ上にUPされた動画。その動画に、卒業式を間近に控えた新設私立高校は騒然となる。そんな中、不良として睨まれていた3年生・黒川の元へは「誘拐の謎を解け。真相は君たちにしか分からない」という挑戦状が。同じ挑戦状を受け取った元サッカー部のエース・荻生田、学年一の美少女・澪、黒川の幼馴染の優等生・あやねは、協力して、水口を探すことになるが……
結構、エグい話ではある。
「生徒、一人一人に居場所を」 そんな理念を掲げている高校。しかし、教員たちは、理事長の顔色を窺い、ただ生徒を抑圧するだけ。理事長の理念によってつくられた「告白カード」は、何も書かなければ呼び出し、真面目に書けばやっぱり呼び出し、という罰ゲーム。そんな学校にあって、奔放な言動で人気を集めていたのが、誘拐・監禁された水口だった。
若手教師の伊藤の協力も得て、その水口はどういう人物だったのか? を調べ始める四人。しかし、その実態は他の教師から言われるように自堕落なもの。そして、その中で浮かび上がってくる容疑者候補は、水口と対立していた、そして、四人からも嫌われている同僚教師。1日に3回、決まった時間に配信されることから、彼らのアリバイを調べ始める。そんな描写と、その中に挿入される深刻な「告白」。黒川自身の想い……
丁度、ちょっと前に、小学校でベテラン教員が、集団で同僚に嫌がらせなどをしていた、というのが話題になっていたけど、学校と言う空間の中での教員同士のイザコザ。さらに、新設校で、勉学、スポーツなどをについての実績を、と言うことの中での不正。さらに、教員の特定の生徒へ対する贔屓……。そういうものが露わになってくる。……正直、これ、自分の生徒時代とかに、自分自身も体験したことであり、物凄く身に覚えがある、っていう感覚になった。探偵役となる四人についても、秘密を抱えていて、それがどう結びつくのか、というのも興味を惹かれる形になったし、それらの伏線がしっかりとまとめ上げられる、という丁寧さは見事の一言。
ただ……読み終わると、何か気持ちが悪いんだよな(苦笑) 綺麗過ぎる、というか、独善的すぎる、というか……
犯人の想い、っていうのはわからないでもない。ないんだけど、そもそも、そんなギリギリになるまでなぜ犯人は何もしなかったのだろう? もっと他に打つ手があるんじゃないの? また、黒川自身についても、ちょっと唐突というか……。そこまで、学校内での結構、エグいやりとりとかがリアリティも伴っているだけに、結末に違和感を覚えてしまった。
話の構成とか、そういうのはしっかりと出来ている。だからこそ、かな?

No.5356

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著者:二丸修一



幼馴染の黒羽に告白し、見事に玉砕した末晴。あそこまで行っていてフられるのか? そんなモヤモヤした気持ちを抱える末晴だったが、その様子は、SNSで拡散。そんなとき、子役時代の後輩・真理愛が現れ、さらに末晴の芸能界復帰の話も持ち上がり……
あー……もう、面倒くさいな、こいつら!
新キャラである真理愛の登場っていうのはあるんだけど、何よりも、黒羽の存在が面倒くさい。
そもそもが、末晴のことが好きで、告白されたら……と思っていたのに、いざ告白されたら勢いで断ってしまった! そのことに悶々と……。さらに、白草やら真理愛やらが現れてのさや当て合戦が……。もう、この時点で面倒くさい、の一言。そんな中、黒羽が記憶喪失に? そして、末晴の芸能界復帰の話まで降って湧いて……
前半は、もう面倒くさいなこいつら! と言う感じだったのが、末晴の芸能界復帰を巡ってのアレコレが出てきて、熱い方向へ。
末晴の、そして、黒羽の意向を無視して芸能界入りを進めるプロダクション社長。明らかに、見下した物言いをしてくるその社長の言動に怒り、WEBCMの再生数対決をすることになって……。細かくルールを定め、違反が出来ないように、と言う中での対決。そのルールの隙をついての策略。前半のただ、ひたすらに悶々とした話、というところから一気にカラーがかわり、その中での末晴の真っすぐさとか、そういうのが明らかになってくる鮮やかさってうまいよな、と素直に思う。そして……
でも、それだけで終わらずに最後にやっぱりひっくり返す、っていうのがこの作品の凄さ、になるのかな? 何か仕組まれているんだろうな、とは思ったけど、こういうひっくり返し方があったか……。やっぱ、油断ならねえ…・・・

No.5355

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左遷捜査3 三つの殺人

著者:翔田寛



刑務作業中の事故で病院へと護送中の受刑者が逃亡した。逃亡した暴力団員・国生を追うことになった目崎と棟方だったが、その中で、棟方の捜査は明らかに暴走していく。そして、その事件には、目崎の父も関わっていて……
シリーズ最終作。
正直、ちょっと忙しかったかな? と言う感じが残る。
物語としては、冒頭に書いたような形で、6年前、殺人未遂で逮捕され、収監中の暴力団員・国生が逃亡。懲役8年という中、もう少しいれば、と言う中での逃亡は、国生が所属していた組の関係者にとっても思わぬこと。ところが、そんな中で、その組の幹部の一人が独自に、国生について調べ始めている、ということが判明する。そんな中、暴走しはじめる棟方。さらに、目崎の父が死亡した15年前の事件も関わっていることが判明していって……
現在、6年前、そして、5年前。3つの時代が錯綜して、という構成は、著者の得意とするところ。その通り、過去のパートなどを挿入しながら展開していく。
目崎の父が殺されながら、なぜか黙殺されてしまった15年前。優秀な捜査官であった棟方が日陰者になってしまったきっかけとなる6年前。そこに関わっているという国生ら、暴力団員達。そして、その中で見え隠れする、警察内部でのアレコレ……
かなり詰め込まれていて、それ自体の読みごたえは十分にある。単純な事件ではなくて、警察内での権力争いであるとか、そういうものまで関わってくるわけだし。ただ、その一方で、なんか、一気に表に表出しすぎかな? とも思える。目崎は殉職した刑事の息子。棟方は、優秀だったが、現在は……。そういう過去とかは、これまでのシリーズの中で出てきていたし。でも、具体的な話とかは、ここまでほとんど出ていない中で、文庫で300頁余りの中に、それをすべて詰め込んだために、どうしても……っていう感じがするんだよな。
いや、決して悪い作品ではないのだけど、シリーズを通しての掘り下げとか、そういうのを、と思ってしまうのだ。そこが引っかかった、というか……
いや、多分……
目崎、棟方コンビのアレコレを、もっと読みたかった、っていうのが大きいのかな? という部分によるのかも……

No.5354

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ノッキンオン・ロックドドア2

著者:青崎有吾



不可能な謎専門の倒理。不可解な謎専門の氷雨。そんな二人の探偵の元には奇妙な謎が舞い込んで……
タイトルの通りのシリーズ2作目。
前作を読んでから3年ぶり、ということもあって、読みながら「こういう設定もあったな~」なんていうのを思い出した。流石に、倒理と氷雨については覚えていたけど、腐れ縁の刑事・穿地。宿敵となる美影。その4人が、同じゼミに学んだ関係で……なんていう設定、読みながら思い出す形になってしまった。まぁ、終盤のエピソードでは、その辺も関わってくるんだけど、それは関係なしに読んでも良いのかな? とも思う。
例えば1編目。DIYを趣味とする男が、その作業小屋で殺害された。扉には鍵が掛かっており……と言うのを見ると密室殺人のようにも思われるが、その作業小屋にはDIY用の工具によって巨大な穴が開けられていて……
なぜ密室状態の小屋に、大きな穴をあけたのか? 壁に返り血がついた? そんなことを考察しながらの真相は……はっきり言ってバカミスっぽい(笑) でも、それが良い。
真面目な謎解きとして面白かったのは、3編目『穿地警部補、事件です』。フリーライターの男が自宅マンションから転落して死亡した。事件、事故、自殺? 色々と考えられる中、事件の目前に一人の老人が男が、女性とベランダにいた、という証言をして……。これも、密室殺人ということではあるのだけど、そのアレコレも論理的。さらに、男のやっている仕事と過去が交錯してのひっくり返しは素直に上手い。
そんな中で、「チープ・トリック」によって殺人をプロデュースする美影の存在などが出てくる中、美影が依頼人となり、5年前の事件について……となる。それは、ゼミ生たちの中で起きた事件で……
正直なところ……これ、ある意味で「最も気持ち悪い」関係と言えそう……。なんか、理解できなくもないような、いや、でも……。そんな感じの後味が残った。

No.5353

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