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十五光年より遠くない

著者:新馬場新

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2025年、人類観測史上最大の太陽フレアが発生。突然の磁気嵐が地球を襲った。その影響によって起きた大規模停電による混乱が発生する。そんな中、元自衛官の星板陸は渋谷で初恋の女性・浅野水星と再会する。パニックの中、陣痛が始まってしまった水星と子供を救うべく、陸は水星の妹・金星とともに奔走することとなって……
作中で、色々とSF映画ネタとかが入っている、というのはわかった。ただ、私は映画はほぼ見ていない人間だし、ついでに言えばSF作品にも詳しくない。なので、そのネタの扱いがどうなのか、というのは評価できない。
できないのだけど、なんか、物語の流れに乗れなかったな、という感じ。
物語としては、渋谷の街で陸が、水星、その妹・金星と再会するところから。ところが、その直後、太陽フレアにより通信をはじめ、様々な機器が使えなくなってしまう。陸にとって水星は初恋の相手だが、すでに結婚、妊娠をしている状態。そして、陣痛が始まってしまう。混乱の中、水星を病院に連れていくべく動き出す。しかし、病院は非常電源でかろうじて動いているが心もとない。さらに、金星によれば、日本、それも東京にアメリカの人工衛星が落ちてくる可能性があるという……
そこでどう転ぶのかな? と思ったら、横須賀の米軍基地にあるはずの血液製剤を採りに行こう! という格好に。勿論、いきなり人工衛星をどうにかする、というは無理なのはわかるけど、人工衛星が落ちてくる、という大きな問題を提示した割に中盤までは、陸と金星が横須賀への道中というなんか、えらく地味な方向へ。しかも、金星は天才肌で、かつ陸は姉からの連絡とかを遮断し、いきなり姉の前から消えた存在だ、ということで出会った直後から罵倒の連発。ここで書いた背景よりも先に、金星の罵倒が始まるので、初見では「何だこいつは!」という感じになってしまった。
そこでちょっと入り込めなくなったのだけど、危機的状況下とは言え、横須賀へ向かうために漁師に頼んで、違法な出航をさせたりとかするので「うーん……」という気持ちが……。そうして、横須賀へ辿り着き、さらに、人工衛星の東京衝突を何とかするために……というのもちょっと強引な感じに。
そもそものところとして、空自のエースパイロットだったけど、政治的な問題で退職せざるを得なかった陸。さらに、人工衛星の落下にしても、国際問題を孕んでいる……という背景がありつつ、終盤、その国際政治問題がどこ行った? という部分があるし、道中で協力してくれた漁師とかも、その後のフォローなし。最後は、陸自身まで……と、何か、色々とフォローされずに終わった感がある。それを含めてB級映画的な楽しみ方ができる、と言えばそうなのだろうけど、自分にはちょっと合わなかったかな。

No.6940

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Tag:小説感想ガガガ文庫新馬場新

薬師寺ロミの推理処方せん

著者:平野俊彦

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大学附属病院の前で営業をする成都調剤薬局。そこに勤める薬師寺ロミはおせっかいで、ちょっと短気な薬剤師。いつかは難病治療の研究に携わりたいと思っている彼女の前には……という連作短編集。全6編を収録。。
著者の作品を読むのはこれで3作目。本作は薬科大の名誉教授という著者の得意分野で勝負してきたな、という感じ。薬剤師の仕事……勿論、その中では、病院から出された処方箋に従って薬を処方する。その際に問診などをし、本当に患者に良い薬なのか? なんていうことを考えて……というのが中心にはなるのだけど、薬学部に通う学生相手の研修だったりとか、そういう業務も。
中でも、ロミが学生に行う「薬学トリビア」という名の講義。これ、もしかして、著者が教授時代に授業でやっていたんじゃなかろうか? なんていうことを思ったりして。
そんな1編目『肺の腫瘍が消えた!』。ロミの元を訪れた患者2人。一人は、肺にあった影が消えたと明るい表情。一方の患者は、肺に影が、と落ち込んだ表情。二人は名前もそっくりで、同じ病院の同じ医師の診察を受けていた……。勿論、これは読者の側でも、「患者の取り違えでは?」と思うところだけど、問い合わせに対し、それはないと医師は断言。それは……。これ、2編目、3編目くらいの方が良かったんじゃないか、とまず思ったり。ちょっとモヤモヤとする結末なだけに。まぁ、実際の医学の現場でも、なんかよくわからないけど、っていうことは多いのだろうけど。
個人的に好きなのは3編目『冷めた実習生』。ロミの元に実習生としてやってきた大学生・森野。薬学の知識は抜群で、物覚えも良い。しかし、どうにも冷めた態度で、薬剤師なんてロボットでもできる仕事と言い放つ。なぜ、彼はそんなに冷めているのか?
あんまり考えたことがないけれども、薬学部に入る学生の中には、別の方面を目指していて……という人もいるのは盲点だった。そして、先に書いた薬剤師の日常を見ると、医者の下請けのように思える部分も。丁度、ネットとかの中でも、ロボットで十分みたいな意見もあるし。そこへのアンサーと言えるようなエピソードだな、と感じた。
4編目『しばたたく患者』も、3編目のエピソードをさらに広げたような印象。ロミの元へ患者としてやってきた男性。自分は、薬学部の研究者で、薬剤師でもある。だから薬の効能などもわかっており、説明は不要という。しかし、ちゃんと薬を服薬しているのに病状は良くならない。そんな中で、ロミは……。3編目の「ロボットで十分」じゃないけど、その道の専門家であっても……の見落としがある。第三者が関わる必要性。それを感じさせる。
ただ、その後は、ちょっと医学研究とか、そっちの方向に行ってしまったかな? という印象。6編目は病院の専門薬剤師として、治療に用いる薬とかに関わるし、その中での問題提起とかもあるのだけど、5編目は(関連性はあるけど)ちょっと別分野の話のように感じられたため……
薬剤師がテーマのミステリというと、相手の病などを見破って、というタイプのイメージだけど、薬剤師の色々な面を見せてくれた、という意味で興味を惹かれる部分が多かった作品だな、とは感じる。

No.6939

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Tag:小説感想平野俊彦

白き帝国1 ガトランド炎上

著者:犬村小六

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様々な種族が争いを続ける葡萄海。頭部に猫耳を持つ「ミーニャ族」が支配するガトランド王国は、その圧倒的な武力によってその最大勢力となっていた。そんなガトランド王国の王・ダダの里子として人間族による黒薔薇騎士団の団長・イリアスの娘・アルテミシアが入る。だが、それこそが……
滅茶苦茶久しぶりの著者の新シリーズ。何しろ、
読み終えてまず思ったのは、500頁超の分量ながらも、「ザ・序章」という感じだろうか。
物語の舞台は、二つの半島に囲まれた葡萄海と言われる湾がある、という世界。そこでは、人間族と「ミーニャ」と呼ばれる亜人族が争っている世界。そして、『仁』『義』『礼』『忠』『信』『孝』『悌』という8つの聖珠が存在し、それを受け継いだ者は、それに呼応する力を手にする。そんな世界で、最強の武力を誇るのがミーニャ族が治めるガトランド王国。63歳ながら、今なお最強と言われる王・ダダが治め、その子供である4兄弟が王子・王女として存在している。力による統一を狙うダダと、しかし、全ての種族が共存する世界を夢見る第2王子のトトと第2王女のルル。そんな弟を理想主義と冷ややかに見る第1王子のガガ。そんな兄弟の元へ父の里子として、アルテミシアが入る。トト、ルルは、彼女のことを実の兄弟として扱うが、それから半年後。反乱鎮圧のため、艦隊を動かしたガガらに待っていた運命は……
理想主義を掲げるトト、ルルの前に立ちふさがる策謀の数々。それぞれの心の中に渦巻いているもの。トト、ルルの想いとは裏腹に、人々の間にある種族間の差別意識。その中で、主人公かと思われた人物があっさりと命を落としたり、と思わぬ展開も。
正直なところ、第1巻の時は、物語がどこへ進んでいくのか、というのがわからなかったのだけど、最終的に物語の方向性がはっきりと示される形でこの巻は終了する。そういうところが、冒頭に書いた「ザ・序章」という印象を与えるところ。
当たり前のことだけど、人間族、亜人族ということでそれぞれが一枚岩になっているわけでなく、それぞれの中でも愛憎とかが渦巻いている状態。さらに、8つの聖珠を巡っての攻防戦というのも1巻以上に交錯していくはず。種族の壁を越えて……そんな理想に向けて、どうなっていくのか今後も楽しみ。

No.6938

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Tag:小説感想ガガガ文庫犬村小六

一線の湖

著者:砥上裕將

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篠田千瑛と争った湖山賞から2年。大学3年となった青山霜介は、水墨画家として成長をしつつも、自らの進路に悩んでいた。水墨画家として生きるべきなのか、それとも別の食に就くべきなのか。そんな中、篠山湖山の弟子による揮毫会で霜介は大失敗をしてしまい……
著者のデビュー作である『線は、僕を描く』の続編……というか、2年後を描いた作品。
前作は何よりも「水墨画とは何か?」という部分が印象的だったのだけど、今回は文字通りに霜介の画家としての、いや、人間的な成長というのが印象的。
粗筋でも書いた通り、湖山賞を受賞し、水墨画家としてさらなる精進をしている霜介。しかし、千瑛が水墨画の新星として活躍する中、自分は一体、どうすべきなのか迷っている。さらに、揮毫会で失敗をし師である湖山から「しばらく筆をおけ」と言われてしまう。だが、それでも、一人、修行に励む日々。そんな中、兄弟子である西濱から、小学校への水墨画講座をすることになって……
小学生に教える中で、霜介自身が学んだこと。思わぬ形で筆を握ることが出来なくなった日々。その中で出会った、湖山の元を去っていった兄弟子との邂逅。師匠から託された一本の筆。思わぬ形で知った亡き母親の足跡……。そんな様々な出来事が霜介の前に起きたことによって、彼自身が知ること。そして、少しずつ定まっていく自らの進むべき先。
画家としての活動って、そもそものところで、安定した職とは言えないし、また、自由と言えば聞こえが良いが、それを活かせるかどうかは状況による。ただ「自由だ」と言われても、却って迷いの中に突入してしまう。さらに、技術というのは修練によって得ることはできる。けれども、修練を重ね、技術だけが身についた時にできてしまうのは……
前作同様、湖山を始めとして、周囲の面々は霜介に対して非常に優しい。けれども、その大事なことについて、軽いヒントは与えても解くことはしない。勿論、言葉で説いたところでそれに納得できるのか、と言えば違うって言うのもあるだろう。その辺りの霜介を上手く導いていく過程、その中での成長が何よりも印象的だった。
……しかし、霜介の決めた進路。大学3年でその進路。……可能なのだろうか? とちょっと思ってしまったり……

No.6937

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Tag:小説感想砥上裕將

ほうかごがかり

著者:甲田学人

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『ほうかごがかり 二森啓』 小学6年の少年・二森啓は、ある日、教室の黒板に謎の係名と共に自分の名前が記されていることを目撃する。その日の深夜、突如、自室に学校のチャイムが鳴り響き、暗闇に囲まれた異次元の学校『ほうかご』へと誘われる。そこで、学校中に棲む「無名不思議(ななふしぎ)」という異常存在の世話係を命じられるのだった……
久しぶりに読んだ著者の作品。相変わらずの雰囲気。
冒頭に書いたように、『ほうかご』と呼ばれる異世界へと誘われた啓。そこには、同じように「ほうかごがかり」に選ばれた6人の少年少女と、顧問だという太郎という謎の少年が。さらに、その少年たちの中には、かつて仲良くしていたものの、1年前、突如として疎遠になった(元)友人の惺も。疎遠になった理由は、啓を巻き込まないようにするためだったことも判明する。そして、それぞれが、それぞれの怪異の記録をつけることになる中、啓が記録を取る相手は「まっかっかさん」となって……
怪異の卵、とでも言うべき「無名不思議」。その記録を取り、どういう存在なのかを明らかにすることで、それが怪異となることを防ぐのが係の仕事。渋々ながらもその仕事を始める啓だったが、「まっかっかさん」の姿は日常にも現れるようになっていき……。そんな「まっかっかさん」の正体を巡っての考察。その中で明らかになっていく、自身の過去、願いとの関連性……。啓は、そんな自分の過去と真正面から向き合う。一方で、同じく怪異と立ち向かうことになる見上真絢は……
啓にしても、真絢にしても、多かれ少なかれ、普通の人々が抱えている葛藤なんじゃないかと思う。自分が何をしたいのか? 自分は一体、どういう存在なのか? 勿論、大きな問題を抱えていない人は、ここまで深刻なことになることはないと思う。でも、誰でも感じることがある普遍的な想いじゃないかと思う。その辺り共感できる人は沢山いるのではないだろうか。
そんな啓、真絢。二人のエピソードが描かれた上で明らかになる『ほうかご』に関する残酷な事実……。主人公である啓は、とりあえずのところ、自分の危機を回避した。しかし……という物語の引きも含め、今後、さらに嫌な予感にさせる終わり方。顧問である太郎に対しても、どこまで信用して良いのか、とも思うし。ここから、どういう風に展開していくのか怖いような、しかし、楽しみなような……

No.6936

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Tag:小説感想電撃文庫甲田学人

四面の阿修羅

著者:吉田恭教

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晴海ふ頭近くの空き地で、男性のバラバラ遺体が発見された。顔には「生ゴミ」という貼り紙までされ、解剖の結果、その傷にはすべて生活反応が。被害者は生きたまま四肢を切られたことが判明する。そんな中、捜査を担当する東條有紀の前に、タブロイド紙の記者・工藤夏美が現れて……
槙野・東條シリーズ第7作。とは言え、今回はほぼ東條有紀のみの物語。
冒頭に書いたように晴海ふ頭近くで発見されたバラバラ遺体。被害者は素行が悪く、前歴もある、ということは判明したという中、東條の前に現れた工藤は、情報交換を持ち掛ける。そして、その場で、被害者は3年前のOL殺害事件の犯人の知人であると知らされる。そして、そこから、そのOLの元同僚、さらにはそのときに証言をしていた最初の被害者周辺で失踪者が出ていることがわかり……
殺人の被害者、さらには加害者側……それぞれの中に見えてくる接点。そこにあったのは4年前に起きた交通事故ということが見えてくる。しかし、繋がりは見えてきても、立場としては相反する双方から死者、さらに行方不明者が次々と。一体、そこで何が起きているのか?
さらに、その中で、被害者の一人が東條自身とも因縁のある相手であることが判明し……
繋がりは見えてきても、しかし、犯人が一体、何を目的としているのかがわからないというもどかしさ。さらに、警戒心が強く常にボディガードをつけていたはずの暴力団員が殺害されたという不可解な謎も登場。ハウダニットという部分もさることながら、フーダニットの方が混迷を続けていく様に惹きつけられた。その中でようやく見つけた突破口だったが……
物語が終わってみると、物語の中心人物とでも言うべき存在の闇の深さが印象に残る。とにかく、短絡的で、自己中心的で、しかし、行動力だけは極めて優秀。そんな存在に翻弄され、命を落としていった面々。その中で、文字通りの阿修羅と化した人間。主人公である東條が、一度は犯人に同情し、しかし、その残虐な行為に考えを改め、でも……という心情の変化があるのだけど、読者としてもそれと同じ気分になってくる。
作中で描かれる拷問シーンとか、結構、グロテスクな部分もあるのだけど、それでも面白かった。東條と情報交換をする新キャラ・工藤もなかなか魅力的な存在だったし。
と言ったところで、前作、『MEMORY 螺旋の記憶』の引きにあった槙野側での引き。これが全く解消されていないのだけど、これは次回作へ、ってことなのかな?

No.6935

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Tag:小説感想吉田恭教

変人のサラダボウル6

著者:平坂読

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ヤクザと半グレ、カルト教団。戸籍と共に剣崎命として3つの組織を束ねることとなってしまったリヴィア。当然、その存在は警察から強くマークされるものになってしまう……。一方、芸能界からスカウトを受けたサラは、惣助と共に東京の事務所を見学しに行くこととなって……
物語として、一つ、大きな転換点を迎えた巻だった。
まず、リヴィアに関しては……意外と上手くこなしているのが印象的。だって、これまで徹底的に自堕落な方向へと転んでいた彼女。だとすると、3つの組織のリーダーになっても……と思わざるを得ないもん。でも……いや、なぜかヤクザの組長兼半グレ組織のリーダーなのに食品デリバリーのバイトをし、その流れで外国人犯罪者組織を壊滅させる……。さらに、ヤクザはまともな社会生活ができない制度があると聞いて、そのヤクザ組織を解散。やっていることは意味不明。……だけど、警察をも混乱させることで、って結果論として上手くいっているのが何とも…・・
一方のサラは、というと、芸能界にスカウトされ、事務所見学のために上京。その道中、異世界での逃走劇の経験について、とかシリアスなところはないわけじゃないけど、新幹線の中でひたすらはしゃいでいたりとか、年相応の子供らしさを発揮。事務所では、ぶりっ子をしながら……という同世代の少女を相手に……。裏表がある相手に堂々と渡り合って、しかも打ち解けるとか、この辺りのコミュ力お化けっぷりは流石。そんな中、将来、探偵になりたいという夢を語る友奈の相談に惣助が答えたり……
というところから、物語は一気に2年後に飛んで……
やっぱりリヴィアが成功している!? 結構な無茶ぶりをしたりもしているんだけど、周囲のフォローとか、謎のカリスマ性とか、そういうので上手く回る方向へ。周囲の人々が優秀だから、ということもあるのだろけど、こんな成功しているリヴィアはリヴィアじゃない! と思ってしまうのは自分だけ? ただ、今度は政界との関りとか、そういう方向へと話も進んでいって……で、最後の最後に示された新展開。正直なところ、物語がどこへ進んでいるのかわからなくなってきた。

No.6934

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Tag:小説感想ガガガ文庫平坂読

著者:友井羊

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早朝にひっそりと営業しているスープ屋「しずく」。常連客である理恵は、ついにシェフである麻野に想いを告げる。そんな理恵に対し、麻野は「待ってほしい」と言われ……
というプロローグから始まる連作短編シリーズ第8作。全4編を収録。
プロローグがいきなり理恵の告白シーンから始まるのだけど、本編はいつも通り。
1編目『春待つ芽吹き』。春、慎哉の勧めにより、麻野らと共に山菜採りへと参加することになった理恵。一通りの採取を終了し、山の持ち主で、いつもキッチンを借りている老人の家を訪れるが、そこで知ったのは、その老人が数か月前に急死していたこと。老人の孫を名乗る女性は、祖父はこの家に「お宝」を遺している、ということだったのだが……
このエピソードは二段階の話が印象的。老人の孫を名乗るが、何かおかしなところのある彼女の正体。それを山菜に纏わる知識で喝破し、さらに焦点である「お宝」の正体へ。本来、麻野の専門分野ではないけれども、料理の知識から応用して。そして、その孫の職業から、という流れが見事だった。
露の友人・亜子が弁論大会の代表になったが……という3編目『秋に君の言葉を聞きたい』。かつて、亜子は感情の抑制が聞かず、相手をひっかいてしまう、というようなことをした時期があった。そのときの記憶は多くの人に戻っている。そして、代表を争った同級生の身体に蚯蚓腫れが出来ていたことから、ライバルをひっかいたのではないか? という噂が流れて……という話。
このエピソードは、謎解きそのものは、このシリーズの定番だな、という感じ。パターンから、こうだろうと予測できたし。ただ、理恵視点が基本のこのシリーズで、麻野の娘・露視点で、というのが新鮮だった。
そして、4編目『答えは冬に語られる』。余った食材をフードバンクに寄付しようと考えた麻野。だが、そこで告げられたのは麻野の亡き妻が、一人の少女をきつく取り押さえたことがあったという話題。警察官であった麻野の妻。しかし、そのようなことをする人物ではない。麻野はわからない、と態度を保留するが、理恵はそのことを調べて……
このエピソードで、プロローグと物語が繋がることに。その謎自体もさることながら、季節の移ろいと共に物語が描かれているはずなのにちょっと残る「?」とか、そういうものが結びついていく。そして、麻野の亡き妻への疑念を晴らすことで、麻野への自らの想いを表現することとなった理恵。短編形式ではあるが、そこ自体の仕掛け、というのが印象に残る。
これでシリーズ完結編という感じもしないでもないような終わり方。ただ、それだとちょっとあっさりとしすぎな気もするので、もう1作くらい出るのかな?

No.6933

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マーダーでミステリーな勇者たち

著者:火海坂猫

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長い旅路、激しい戦いの末、勇者一行はついに魔王を討伐した。これでようやく世界は平和に……。そんな想いと共に魔王城で休息をとる勇者たち。だが、そんな思いもつかの間、翌朝、発見されたのは聖女の遺体。犯人はこの中にいる?
これ、思うんだ……目次が思い切りネタバレになっている、と……
それはともかく、物語は、魔王討伐に成功した翌朝、仲間の一人である聖女が何者かに殺された。そこで、勇者は、仲間たちに事情を聴き、聖女を殺した犯人は誰なのか? というのを探っていく、という流れ。
この作品、読んでいて何よりも思うのは、世界観、世界設定というのをしっかりと構築してきた作品だな、ということ。世界に魔王が現れ、支配を目指して侵攻してくる。そんな人類の危機に対し、普段は諍いの絶えない国々は聖剣に選ばれた勇者を支援すべく協力をする。だが、魔王を倒した後は……?
世界の危機に対して、聖剣とか、神とかに選ばれた勇者が立ち上がる。これって、本当に最初のころの『ドラゴンクエスト』とか、昔のRPGの定番と言えるような設定。ただ、その頃から思っているのは、なんで少人数の勇者一行だけで旅立たせるの? っていうこと。もっと軍隊とかを組織して、武器や防具を提供して、ってやればいいやん! そう思ったことがある人は私だけではないはず。
けれども、「国」という単位を考えると……
魔王を倒す。そこまでは良い。けれども各国は、それぞれ自分たちの利益を追求する存在。軍隊などを派遣し、そこに損害が出ればそれは大きく国力を失っている、ということ。まして、勇者という最強の戦士がどこかに加われば……。勇者一行に加わる騎士、魔法使い、武闘家……それぞれに課せられた国益を求める別命を課せられている。そして、同時に彼女らは、勇者に対する純粋な想いも抱えて……。その中で、ある意味では妥協点と言える存在が聖女だった。その聖女が喪われ……。いかにも王道な魔王討伐モノ、のスタートから一挙に現実的な国益争いなどの話へと移ろっていく流れが秀逸。
まぁ、一応、ミステリらしくアリバイとか、そういうのはあるけど、誰が犯人なのかは早い段階で気づくと思う。そこから、今度は、ファンタジーだからこそのひっくり返しへ。ここはちょっと強引な気がしないでもない。
ただ、勇者一行が魔王討伐へ。そんな昔ながらのRPG的な設定を上手く物語に落とし込んだ流れは好き。

No.6932

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Tag:小説感想GA文庫火海坂猫

四重奏

著者:逸木裕

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音大を卒業したものの、しがない漫画喫茶の店員として日々を過ごす坂下英紀。そんな彼は、「火神」とも呼ばれる異端のチェリスト・鵜崎顕が率いる四重奏団のオーディションを受ける。鵜崎四重奏団は、かつて英紀が想いを寄せていた黛由佳が所属していた楽団。だが、そんな由佳は鵜崎の下では、英紀が憧れた自由な演奏を失い、様子がおかしく、そして、不可解な死を遂げていた……
最近、音楽関連の作品が多くなっている著者。本作もクラシック音楽というのが題材。
物語の中心にあるのは、英紀が由佳の死の謎を解く、というもの。よくクラシックを語る際に言われるのが、その音楽をどう理解するのか? とか、そういう言葉。基本に忠実な音楽をやってきて行き詰ったかつての英紀は、自由過ぎるくらいに自由な由佳の演奏に惹かれた。だが、鵜崎の元にいた彼女には……。一体、そこで何があったのか? それを探るためにも、オーディションに参加することに。そんんな謎があるのは間違いないのだけど、それよりも、音楽の「解釈」を巡る考察が印象的。
由佳が所属しており、また、英紀がオーディションを受ける楽団の主催者・鵜崎。彼の答えは単純明快。「オリジナリティは不要」「音楽家の仕事は客に解釈を与えること。そのために必要なのは、技術と演技力」そう断じる男。故に音楽界には敵が多く、異端の存在とも言われている。
自分は音楽はサッパリわからない人間だけど、だからこそ、この鵜崎の主張が刺さる。
この曲は、作曲者がこういう心境で作ったのだ、とか、そういう解説とかあるけれども、その中には眉唾なものもある。そもそも、オリジナリティと言っても、素人が聞いて、誰が演奏しているのかすらわからない。結局は模倣の連鎖。当然、反発する人はいるけど、素人の感覚では納得できる部分がある。勿論、「解釈」って他のことにもある話ではある。例えば、文学とかだって、そういう面がないわけじゃないはず。けれども、例えば、「激怒した」と書かれているものを「激怒」以外に解釈することはないはず。その背景に、「悲しさ」とか「くやしさ」とかの感情があることはあっても、「激怒した」を「歓喜した」と解釈することはないはず。でも、音楽では?
さらに権威主義とでもいえるもの。「あの指揮者だから」「あの演奏家だから」と言った情報でありがたがる。勿論、その音楽家は素晴らしい技術はあるのだろう。けれども、演奏は一回一回で違うものになる。人間だからミスもある。衰えもある。しかし、客たちはそこまで理解しているのか? その状況での葛藤とか、そういうものが何よりも印象に残った。
そういう意味では、中心である由佳の死についても通じている。由佳の演奏に惹かれ、彼女を理解していると思っていた英紀。しかし……
鵜崎の露悪的な、しかし、ある意味では核心を突くような言葉が突き刺さる。

No.6931

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Tag:小説感想逸木裕