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著者:神田夏生



高校を卒業したばかりの春休み。最愛の人である三日月緋花里を僕は喪った。そんな僕の元へ届いた緋花里からの手紙。「もう一度あたしに会いたければ、世界で一番キレイなものを見つけて運命をリセットして」 彼女らしい突拍子のない内容を訝しみながらも、僕は、猫の被り物をした怪しい男・クレセントと共に思い出の地を巡る旅に出る……
ということで、恋人である夕斗が亡くなった緋花里との思い出の地を巡る物語。
こう書くと、凄く雑で、大雑把な言い方になるのだけど、話の流れそのものは多分、結構、ある話じゃないかと思う。失意の主人公が、その思い出の地を巡って……って、ざっと考えるだけでもいくつか頭に浮かぶと思うし。ただ、その「よくある話」だからこその良さが凝縮していると感じる。
とにかく、旅をする中で描かれる思い出、というのが強烈。ヒビの入ったガラスを木っ端みじんに破壊してみたり、はたまた、すぐに会いたいから、と二階から飛び降りてみたり……。顔は綺麗だけど、周囲からは「変人」として遠巻きに見られている、という緋花里のキャラクターがこれでもか、と強調される。そして、一見、クレイジーな言動をしているのだけど、でもしっかりと夕斗への想い、というのも伝わってくる。勿論、普通の言動で、という恋人を喪った、ということだったとしても失意は大きいはずだけど、緋花里みたいな相手だったら……。それが強く感じられる。
さらに言うと、この旅のギミックというのもうまく機能していると感じる。物語の舞台は、首都圏の色々な場所。それこそ、普通にそこを巡る、というのならば恐らく1日。長くても、2~3日くらいで出来るはず。しかし、「リセット」のためには、全て徒歩で移動しなければならない。何の準備もなくいきなり始まった旅。日本地図で見れば大した距離ではなくとも、数十キロ単位を歩きとおさねばならない。疲労していく肉体。でも、それでも緋花里に会いたい。だからこそ……行く先々での思い出も大きくなっていく。
リセットの意味。これは、「多分こうだろう」と思った通り。しかし、強烈な緋花里のキャラクター。しかも、見た目以上に過酷な旅。それをしっかりと描いたからこそ、ちょっと捻くれた緋花里の想いが強く伝わってくるのだと思う。
タイトルの通り、「美しい世界」を堪能させてもらった。

No.5055

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著者:加藤元浩



元アイドルの捜査一課刑事・七夕菊乃と変人捜査官・深海安公がバカンスに出かけたのは、かつて不老不死の研究が行われていた、という記科学島。ところが、ついて早々、連続殺人が発生して……
シリーズ第3作。
これまでの話は、本格モノの形はとりつつも、キャリア組である菊乃に対するアレコレみたいな要素が入ったりしていたのだけど、今回は、そういうのは極力排除し、島で起こる連続殺人の謎を解く、という話。島で過去にあった因縁。そして、不可解な事件の様相。そして、事件の被害者である島の有力者・海龍路家に纏わるアレコレということで、横溝正史作品的なカラーを持っている。
そもそもが、高瀬舟で運ばれた生首。さらに、即死状態のはずなのに、炎に巻かれながら動いて飛び降りた遺体。それは、本当に不老不死研究の成果なのか? その辺りの事件のギミック。そして、その中での一人の女性を巡ってのアレコレ……
上に書いた不可能殺人の謎そのものも面白いのだけど、むしろ、この作品のキモは、人間の錯覚とも言うべきもの。
それぞれの事件の現場に残された一人の女性を示す話。しかし、あまりにもあからさまなそれは、本当に犯人を示すものなのか? さらに、一定の法則に従って起こる事件。それを見るからこそ、一定の方向へと誘導されてしまう。それを突く、っていうのは王道のトリックではあるんだけど、先に書いた不可解状況での殺人のインパクトがあるからこそ、なのだと思う。実際、あれだけ露骨に痕跡があったら、そりゃ……って感じだし。ある意味、ミステリとかを読み慣れているからこその落とし穴、と言えるのかな?
それらが判明しての、終盤の怒涛のひっくり返し。これ、怒涛ですげぇ! って感じではある。
あるんだけど、ちょっと怒涛過ぎてゴチャゴチャと感じられた部分もあったりする。ちょこはちょっと残念だったかな、と。

No.5054

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信長の原理

著者:垣根涼介



生まれた時から癇の強い子供であった織田信長。幼き日の彼は、母を始めとして、周囲から疎まれ、ひとり、外で遊ぶような日々。周囲の言う「常識」に疑問を抱いていた彼は、蟻を見ていてあることを思う……
『光秀の定理』の続編というか、そこと関連する歴史小説。
まず言うと、『光秀の定理』について、私が綴った感想というのはいかのようなもの。「歴史小説……なのか?」。つまり、信長の傘下に入るまでを描いたわけであるが、しかり、分量は、確率論と言うようなものなどが多く、「ものの見方」とでも言うべきものを主題にした作品、という風に思ったわけである。そして、本作……
物語としては、歴史小説そのものである。織田信長の生涯を描いているわけだから。ただ、その上で、この作品の場合も、ちょっと違う、とも思う。
物語としては、前半、後半で大分、印象の変わる物語と言える。
前半は、とにかく信長視点の部分が多い。先に書いた事情により、それまでの伝統とか、そういうものに疑念を抱く信長。しかし、その一方で、何か、世の中に法則性というものがあるのではないか、という好奇心も持っている。そんなときに見たのが、幼き日に見たアリの行列。懸命に仕事をする者が2割、とりあえず仕事をする者が6割。怠けている者が2割。それは、自分が見た戦でも同じ。そして、自ら育てた馬廻り衆の働きっぷりでもまた……。世の中とは……。数々の戦などを経てそんな原理を知り、それを領国経営に用いようとしていく、というのが前半といえよう。
そうしての後半。勿論、信長は、自ら確信した、その法則を感じつつの領国経営を実践していく。だが、ここからは、その信長のやり方に振り回される部下たち視点の物語が大きな分量を占めていく。直接的に、その考え方を信長に聞いたわけではない。しかし、その沙汰などから、それぞれが、どういう形で采配がされているのかを感じていく。「使えなくなったものは切り捨てられる」 では、それにどう対処すればよいのか? 切り捨てられないような形を作ろうとする者。とにかく、一生懸命にやるしかない、と思う者。自分は大丈夫、と驕る者。そのような中で……
勿論、物語の結末は史実の通り。光秀の謀反の理由も、ある意味では決して珍しいものではない。しかし、パレートの法則、そして、その中に振り回された部下たち、という部分を入れることによって、信長の部下の把握術とか、そういうものの限界、とでも言えるものを示している、というのを感じる。そういう意味での味付けのインパクトは大きい。
ただ……、序盤、弟・信勝、そして、その弟を溺愛する母への苛立ち、というのが大きく綴られてきただけに、後半、息子を始めとした、織田の直系についての自身の想いというのをもうちょっと肉付けしてほしかった、とも感じた。「使える」「使えない」という部分は、身内に対しても出てくるはずだし、逆に、それを無視している、というのも一つの味になるはずだから。

No.5052

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デスペラード ブルース

著者:江波光則



神座市で起きた一家惨殺事件。生き残りである筧白夜は、その記憶から逃れるようにその日暮らしをしていた。そんなある日、不良たちに絡まれてしまう。そんなことで、自分の力を同僚・長谷川黒曜に知られてしまう。同じ神座出身であるという長谷川により、神座の覇権をめぐる騒動へ、白夜は巻き込まれて行って……
相変わらず、なぜにこれをライトノベルレーベルで出すのか? という感じがする物語だなぁ。
設定としては、冒頭に書いた通り。殺人術と言われる拳法の修行に明け暮れ、その留守中に家族を殺害された白夜。その犯人を捜し、復讐をしたい、という想いは抱いている。抱いているが、しかし、その具体的な方法はなく、ただ、流されるままに暮らす日々。そんなとき、長谷川に正体を見破られ……
とにかく、白夜の「流されるまま」という部分が印象的。正体がバレた、とはいえ、微妙な距離感のままの白夜と長谷川。しかし、そんなときに、一人の女性と仲良くしろ、という命令が入る。その女性とは、ソープ嬢の歌織。正直なところ、彼女との関係は面倒くさい、と感じることもある。しかし、彼女自身は善良な存在であるし、「普通に」生きてほしい、という思いも常にある。しかし、そんな歌織は、自身の知らないところで、ヤクザの抗争に巻き込まれて……。この辺りの流れも、白夜の「周囲の流される」というのを端的に表している、と言えるだろう。
とにかく、おぼろげながらも自分のしたいことはある。しかし、何かに巻き込まれ、流されるだけの白夜。でも、歌織の死などで、自分の明確な意思も芽生えつつ……という中で、1巻は終了。その意味では、プロローグ的な様相もかなり1巻と言えるのかな? と思う。自分が何をしたいのか。それをはっきりと自覚していく様。それが、今後の物語のカギになっていく……のかな? もちろん、周囲も食えない奴らばかりなので、そういうところからも、今後が楽しみである。

No.5052

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赤レンガの御庭番

著者:三木笙子



将軍直属の情報機関「御庭番」を務めた家に生まれ育った探偵・入江明彦。米国帰りの彼は、容姿端麗、頭脳明晰で、周囲でも評判。しかし、それ故に心許せる友はいなかった。そんな彼が、訳アリの美青年・ミツと出会い……
著者の作品を読んだのは久々だったのだけど、やっぱり、こういう人物配置なのね(笑) 頭脳明晰な探偵役が、訳ありな人間と出会い、共に事件を追う、というのはバディモノの定番なんだけど、美青年と美青年というのをわざわざ強調するとか、どうしても、BLモノの匂いを感じるんだよな……。特に、本作の場合、ミツの初登場は、女装していて、絶世の美女に見えた、ってものだし。
で、物語は、横浜を舞台に、明彦とミツのコンビで事件を解決していく連作短編形式。そして、その裏には、「灯台」という犯罪コンサルタント的な存在が関わっている、ということになり、そことの対決、として描かれる。
その「コンサルティング」のバラエティの豊富さが魅力的。
例えば2編目。希少価値が出て、高額な金額で取引されている切手を所有している人物の家からそれが奪われた。それはどうやって? ある意味では、現代的なやり方なのだけど、この時代であれば……ということが言える。ネットなどもない時代だからこそ、というのも含めて。
また、3編目もある意味では、現在、ある意味でのトレンドとなっているもの。この辺り、現代的な題材を上手く、明治時代というものに落とし込んでいるな、というのを感じる。
その上で、エピローグまで含めて好きなのは1編目かな? 事件の真相を明らかにした明彦。しかし、その舞台となっていた理容室の女主人は……。犯罪に関わっているかどうか。そういうものは関係なく、利用できるものは利用してやろう。そんな女主人の強かさ、というのが何よりも印象に残った。
各エピソードの謎解きについては、ミツがある意味、問答無用で情報を手に入れて、という形なので、ちょっと謎解きのドキドキ感に欠けるかな、っていうのも思った部分はあるのだけど。

No.5051

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著者:藍藤唯



ドラマでも人気の俳優・佐藤セイヤ。しかし、彼は女性が怖くてたまらないオタクだった! そんなセイヤの周辺で、脚本家や作家が倒れてしまう事件が続発。それは、「推しのヒロインが幸せになれない!」というサブヒロインファンの執念がウィルスとなり、関係者を蝕んでいるのだという。セイヤは、俳優として培った技術と、オタクとしての知識を見込まれ、「サブヒロイン」を幸せに導く任務に就くことになって……
うーん……狙いとしては面白いと思うのだけど……
物語の設定としては上に書いた通り。小説とか、アニメとかで、幸せになることが出来ない「サブヒロイン」を、本来のルートから外れて、幸せにする(恋愛エンドにする)ということをする話。ナビゲーターである紗理奈の手助けをしながら、その対象となるサブヒロイン攻略を開始する。結構、ヘッポコなところがあるセイヤだけど、いざ、演技モードに入るとしっかりとイケメンを演じたり、そもそもが、オタクなだけあって、そのヒロインの魅力を十分に理解していたり、とか、そういう部分での安定感は流石。ちゃんと設定を活かした物語づくりがされているなぁ、と言うのを感じる。
ただ……どうしても感じてしまうのは、作品の限界とでも言うべきもの。
つまり、作中、セイヤ(を始めとしたファン)にとっては、「当たり前」のキャラクター、作品世界が読んでいる側にはよくわからない、っていう部分があるんだよね。その辺り、作者もわかっているから、丁寧に説明はされているのだけど、どうしてもそこでテンポが悪くなってしまうし、それをされても、概要がわかるだけで……っていう部分がある。
ある意味、これでやっているのって、PCゲームのファンディスクとか、そういうのである「あのサブヒロインが!」っていうものに近いのだと思う。それって、結局、そのゲームを楽しんでいる、という前提があるからこそ楽しめるわけだし……
それが薄い分、何か、普通の「ヒロイン」を攻略している、という感じになってしまった。
いや、それで狙い通り、と言えば、そうなのかもしれないけどさ。

No.5050

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悲願花

著者:下村敦史



仲違いばかりしていた両親と仲良く遊園地へ。そして、好物の揃った夕食。そんな夢のような日の夜……両親は家に火を放った。一家心中事件。そこで、ただ一人生き残った幸子。町工場の事務員として過ごすある日、彼女は一人の男性と出会う。だが、自分は一家心中事件の生き残りと言えずにいた彼女は、両親の墓参りに行き、一家心中を図り、生き残ったという雪絵という女性と出会う……
著者の作品って、社会問題とか、そういうものを背景にしている作品も多いのだけど、本作は、そういうテーマを内包しながらも、これまでの話とはちょっと毛色が違うな、という印象。
物語は、幸子。雪絵。雪絵の娘である美香。そして、金融会社経営者の郷田。この4人のやり取りがメインになる。
先にも書いたように、一家心中事件の生き残りである幸子。そして、一家心中事件を起こしてしまった雪絵との出会いから始まる。「この人は、私の母親と同じ存在だ」 雪絵のことを知った幸子は、相談員を装って、彼女と接近する。シングルマザーとして頑張ってきたが、しかし、限界が訪れた雪絵。決して、一家心中を計画していたわけではない。しかし、一時の気の迷いで……。そんな雪絵の語りを聞き、「でも……」としか思えない幸子。そして、自分と同じく一家心中の生き残りであるその娘・美香にも接近する。さらに、かつて、自分の両親を追い詰めた郷田に対しての復讐も企てて……
ひっくり返しとかもあるのだけど、全体的な話としては、ちょっとご都合主義かな? と思える部分があるのは確かだったりする。でも、それでも、読ませるテーマ性というのは十分に感じる。
それは、「被害者」と「加害者」。正反対の存在であるように思える両者。しかし、「自分は被害者である」ということを武器にすることで、一方的に相手を攻撃できる存在となる。それは「加害者」と同じこと。そして、加害者は、加害者ということで常に叩かれる存在となり得る。そして、被害者が加害者に転じたときには……。
この作品の場合、実際の事件の加害者、被害者ということになるのだけど、SNSの炎上とか、ああいうのが世を騒がせているだけに、その辺りを頭に浮かべながら読んだ。

No.5049

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著者:花間燈



部費の使い込み分を返せなければ書道部は廃部! そのために、奮闘してきた彗輝たちだったが、些細なことで紗雪と言い争いになり、泣かせてしまった。そして、バイトもダメになってしまった。その埋め合わせをするために、慧輝が出したのは、文化祭でメイド喫茶を開くこと、で……
今回も、比較的、変態成分は抑え気味、かな?
前半はとにかく、文化祭の話。いくら説得をしても、学校に出てこない紗雪。そんな中で開いたメイド喫茶。しかし、その客入りはサッパリ……。急遽、という部分もある。立地の悪さもある。そんな中で、なぜかクマの着ぐるみを着た存在が現れ、その正体は……
生徒会に残ってほしい、という要望もある。けれども、彗輝は何のために生徒会に臨時で加わったのか。そして、そんな中で、色々とあったけれども紗雪もまた頑張ってくれた。となれば、勿論、答えは……。ここまでは細かい会話とかに変態成分とかがないわけじゃないけど、ここまではかなり普通の青春モノという感じ。
……が、打ち上げで食べたチョコレートボンボンで皆が酔っ払って……目が覚めると、紗雪と彗輝が同じ布団で……。しかも、その夜、唯花はその夜、二人がしていたことを目撃していて……
って、オチは予想通りだけどな! というか、何だかんだ言ってノリノリな彗輝っていうのがねぇ。お前、完全に染まってるぞ! そんな感じの、ある意味、日常的なやり取りが続いたのちに……。思わぬ伏兵が登場! なんか、紗雪先輩の話が多くて、そこが一歩リードしている感じだけど、この人は?
……どう考えても、何か持ってるだろ!

No.5048

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盤上に死を描く

著者:井上ねこ



71歳の老婆が自宅で殺害された。片手に「歩」、ポケットの中には「銀」という将棋の駒。愛知県警捜査一課の女性刑事・水科優毅は、「ホストのようだ」と揶揄される刑事・佐田と共に捜査に当たるが、次々と同様の事件が発生して……
第17回『このミス』大賞・優秀賞受賞作。
著者紹介に、「趣味は詰将棋創作」とあるけど……この作品、完全に著者の趣味全開だろ!(笑)
と、さりげなくネタバレしてみたのだけど、物語は次々と冒頭に書いたのと同じような事件が発生。2番目の殺人事件の被害者遺族が相続のために殺したのでは? という疑惑が発生。さらに、老女連続殺人という疑惑が出るが、今度は男性が……。そして、その挙句に、水科が得たのは、殺害された人の性別、年齢、そして、持たされていた駒が、将棋盤の位置、駒の配置を払わしていて、「詰将棋」を示していたのではないか? という推理。やがて、その中で、一人の自殺した詰将棋作家の存在がクローズアップされて……
人が死にすぎじゃないか? という思いがないではない。ただ、それでも、「詰将棋」がクローズアップされていくまでの、被害者たちがなぜ殺されたのか? という疑問。さらに、その理由が「詰将棋」らしい、ということが判明したのちの、しかし、どうやって被害者の個人情報を手に入れたのか? という謎。そして、さらにようやく物語の核心が絞られてきてから……のひっくり返しへ……と、テンポよく描かれていくセンスが見事。その中に、詰将棋を巡る蘊蓄や、棋譜についての説明などが入るのだけど、それについてもそれほど読了ペースを乱さずに読ませるというのもうまい。正直、詰将棋については全く知識がないし、説明されてもよくわからない部分もあるのだけど、でも、そんなに気にならなかった。
ただ……気になったのは、黒幕の動機について……
何というか、理屈としてはわかるんだ。マニアックな世界。その中で、金銭的な報酬とか、そういうものはないが、しかし、その世界で認められたい。そういう渇望というのは、理屈の上ではわかるんだ。わかるんだけど……じゃあ、その世界に詳しくない一読者として、その名誉がどのくらいのものなのか。そういうのが肌感覚で感じられないのだ。
いや、難しいのはわかっている。自分自身、別に金銭的な意味では全くプラスのない同人誌作成とかやっているわけだけど、そこに充実感とかを感じているけど、それはなかなか理解されないだろう。ただ、主人公・水科が、詰将棋についての知識などがある(ついでに言えば、著者自身も)のだから、その詰将棋作成とかの過程とか、そういうものの描写などで、もっと身近に感じさせてほしかったな、というのも同時に思った。

No.5047

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ジャナ研の憂鬱な事件簿5

著者:酒井田寛太郎



「真実」への向き合い方についての対立から、すれ違ったままの啓介と真冬。まもなく真冬が卒業を迎える、というそんなとき、啓介は、ユリの提案でかつて旧ソ連の強制収容所でおきた「クリスマスの奇跡」についての考えを求められて……
シリーズ完結編。
なんか、思ったよりもアッサリとした形だったなあ、というのがまず思ったこと。今回も3作の連作短編形式。
1編目は、教会のシスターの夫が残した、という手記の記述から、その真相を。ソ連の強制収容所。思想犯が集うそこに一人の牧師見習い。ただ圧迫され、看守の気分次第でいくらでも収容者が虐待、殺害される、というそこで、その男は「クリスマスイベント」を目論むのだが……。
こういうと何だけど、男がやろうとしていたこと自体は、描写から「こうだな」というのは予想できる。しかし「事実に即して書いた」というその手記にシスターの夫はいない。となると、夫は何だったのか? それは……
以前、真冬との間で対立した「真実」を巡っての啓介の考えがここで変化をして……
ある意味で、あとの2編はエピローグというか、謎解き自体は、いつも通り、という感じではある。消えた婚約者は何者だったのか? という2編目。そして、学校のイベントで起きた不可解な事件の3編目。それぞれ、その背景に人間のエゴがあり、また、社会問題なども孕んだものではある。ただ、啓介自身、はたまた、真冬自身に直結した話なのか、というとそうではなく、あくまでも二人の目の前で起きた事件。それをどうするのか……という部分に主眼が……。そういう点でアッサリという感覚になる。
ただ、この作品、そもそもが、真実を知って、それをどう扱うのか? というのがテーマだし、真冬の事情とかは1巻でやってしまっている、というのを考えるとこの終わり方で良いのかな? というのも思う。言い方は良くないけど、派手さはない。でも、ほろ苦さなども持った青春ミステリ作品として最後までしっかりとしたものであった、というのは間違いなく言えるだろう。

No,5046

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