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著者:一色さゆり

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スギモトがルーヴル美術館にやってきた理由。それは、ルーヴル美術館の地下で発見されたダ・ヴィンチの予言的作品『大洪水』とみられるものの鑑定。晴香は、スギモト、ルーヴルのキュレーター・ルカと共にその謎を解くべく調査を開始するのだったが……
前巻の最後で明かされた「ダ・ヴィンチについての調査」を描いた物語。ただ、ひたすらダ・ヴィンチの素描と思われるものを調べるのではなく、そのために調査をする中で「調査する代わりにこれを調べてくれ」とか、そういう別件調査が挟まれたりする。なんか、RPGで「このアイテムを手に入れよう!」→協力する代わりに、この問題を解決してくれ」みたいな流れだった。
その中で印象的だったのは、まず1編目『指紋』。キュレーター・ルカの案内により、その師匠の元へ向かった晴香たち。そんな中、その師匠は重要な資料が盗まれてしまったから、それを探してほしい、という。そして、その盗まれた資料のもとには、暗号文のようなものが残されていて……。という、暗号解読の物語に。それ自体は、そこまで複雑なものじゃないのだけど、明かされたときに判明する師匠の現状。さらに、真贋の解明の決定打と思われた素描に遺された指紋の欠点……。確かに、指紋って決定的な証拠になりそうだけど、絵画とか、そういうものに残ったものって状態が悪かったりする。しかも、現代人ならばともかく、数百年単位のものだとすると……。その部分が印象に残った。
2編目『血筋』に関しては、謎解きとかよりも、そこに関わった人々の後が印象的。歴史上の偉人の子孫とか、その故郷の人々。そういう場所で、その人物が神聖視される。決しておかしな集団ではなくて、地域の英雄として皆に慕われる。(あくまでも日本人作家の創作だけど)中国の諸葛亮の地元とか、そういうのを見ていると、こういうのもさもありなん、と感じられる。
そんな中で、本来、『大洪水』の素描を所有している大英博物館に存在が知られて……という状況になっての『来歴』。物語としてのまとめになるのだけど、色々と引っ張った割に、ちょっと曖昧な終わり方になったかも、と言う風に感じる。なぜ、大英博物館のものがルーヴルに、という部分の謎は解かれるし、その理由もロマンは感じる。感じるのだけど、「ダ・ヴィンチの素描の真贋を探れ」というスタートからするだけに、ちょっと期待していた野とは違う方向に進んでしまったな、という印象が残る。

No.6992

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Tag:小説感想一色さゆり

血眼回収紀行

著者:可笑林

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両義眼の義眼職人・イルミナの用心棒として旅をする元軍人のヴィンセント。旅の目的は、稀代の天才義眼職人であった先代のイルミナが遺した禁忌の魔法義眼を回収すること。その義眼は、超常的な力を装着者にもたらすとともに悪意や狂気を増幅させてしまう、という代物。そんな中、二人は「他者を操る目」の噂を耳にするのだったが……
第36回ファンタジア大賞・銀賞受賞作。
うん、面白かった!
まず、この作品の良さは、ヴィンセントとイルミナ、さらに途中で合流するヴィンセトの幼馴染・エレクトラと言った面々の人物像。
魔法義眼という、特殊な力を与える義眼を作るイルミナ。普段は心優しい常識人な彼女だけど、悪事とかを見逃せず、それを見ると思わず暴走してトラブルに巻き込まれてしまう。そんなイルミナのお目付け役的な立場のヴィンセント。ただ、それだけだと普通の人っぽいのだけど、面倒くさがり屋でだらしない。そして、エレクトラは、というとそんなヴィンセントのお目付け役的な立ち位置になるけど、性格はイルミナに似ていて結局、ヴィンセントを振り回す。この三者のやりとりがすごく楽しい。何しろ、「他者を操る目」の噂から、インチキ占い師の集会に潜入したところで暴走して騒動を起こしたりとか、そりゃヴィンセントも頭抱えるわ……
ただ、そんなところから、近く、国政に進出するのではないか、という敏腕市長と、彼が中心になって作られた電波塔破壊テロ計画という大きな事件に巻き込まれていくことに。インチキ占い師と市長をつなぐ連絡役のアジト潜入。その家で見た異常な状況の謎。連絡役の正体は誰なのか? ドタバタな導入から、不可解な状況についての謎解き。さらに、終盤のバトルへ。途中でガラッとカラーが変わる、のではなくて、あくまでも根底にある空気感は変わらないのだけど、その空気感の中で色々な方向で物語が展開していくというバランス感覚が大好き。その中での、ヴィンセントやイルミナの行動とかも、ちゃんと説得力があるものになっているし。
本当、キャラクター、彼らが作り出す雰囲気が大好物で楽しい作品だった。まだまだ、集めなければならない義眼は残っている状態だし、ふたりの旅の続き、というのも読みたい。

No.6991

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Tag:小説感想富士見ファンタジア文庫可笑林

刑事王子

著者:似鳥鶏

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50代を迎えたベテラン刑事・本郷は、ある夜、怪しげな動きをする外国人を発見する。尾行の末、格闘になってしまうのだが、なぜかその事件は上層部によってもみ消されてしまう。翌日、上司から呼び出された本郷が目の当たりにしたのは、前夜、格闘戦を演じたその外国人だった。北欧の小国・メリニア王国の王子であるというその男・ミカとコンビを組み、サポートせよ、というのだが……
鉄板の設定、という感じかな。まず思ったのは。
冒頭に書いたように、怪しげな外国人ということで追尾した末に格闘戦となった相手とコンビを組め……というか、世話をしろ、と命じられた本郷。その相手・ミカは16歳の少年で、日本の漫画とかが好きで、でも、日本文化などについては殆ど知識が無い状態。そして、何か偉そうなミカに振り回されることに。そんな二人の前に不可解な事件が起きて、という連作短編形式。
1編目『嫌われる人は恨まない』。密室状態のアパートの一室で女性が殺害された。女性は首を手で絞められて殺されていたが、その密室から手は手が届かない。別居状態の夫に疑惑が及ぶが……。このトリック、かなり強引。大分、力業な気はする。ただ、そこまでやってくれると逆に面白くなってくるトリックだな、というのが素直に思うところ。そして、この事件の裏にいた存在こそ、ミカがわざわざ日本に来て、事件捜査をするという理由だったことも判明する。
2編目『胡乱な不在』。暴露系配信者が殺された。容疑者としてピックアップされたのは、その配信者によって過去の事件を暴かれた3人の人物。しかし、それぞれの容疑者には、その事件の際にアリバイがあって……というアリバイ崩しの物語。こちらも、トリックはなかなかの力業。作中でも言われているんだけど、これ、どんだけ資金があったんだよ! という感じのトリックではあるし。ただ、トリックそのものよりも、犯人の動機が印象深い。SNSとかに自分の愚行を晒し、それが炎上して、なんていうのはしばしば起きているけど、その背景には、こういうパターンもあり得るのだよな。その部分が何よりも印象に残った。
そんな感じで、何だかんだと文句を言いつつも絆が強くなってくる二人だけど、その事件の背景にいる存在がクローズアップされていって……。最後の王子、そして、本郷が黒幕に対していう台詞は素直に格好良い。ただ、1編目は(力業だけど)本格モノのテイストが強かったのが、2編目、3編目と進む中でだんだんとキャラクターモノのテイストが強くなっていった気がする。それはそれで面白いのだけど、当初の期待とはちょっと違う感じになったかな、とも思ったりはした。

No.6990

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Tag:小説感想似鳥鶏

攻略できない峰内さん2

著者:之雪

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廃部の危機は何とか逃れた『ボードゲーム部』。しかし、小柄で可愛い先輩・峰内風を入部できないことに悩む高岩剛。けれども、一緒に登下校をする仲となっていることを喜んでいる部分もあって……。そんな中、剛のクラスに交換留学生のレインがやってきて……
新キャラであるレインは出てきたものの、テイストとしては前巻と同じような感じかな?
ボードゲームで対戦し、剛が勝てば風は入部する。そんな条件での対戦を続ける二人だが、結果としてはいつも風が勝利……という日々。入部はしてくれないけど、一緒にゲームをし、登下校することが楽しくも思える。しかも、ちょっとしたやり取りの中の剛の「かわいい」とか、そういう言葉でいつも勝手に意識してしまう。
そんな中で、風の友人である由衣は、二人のことを勘違い(?)して、二人の仲を進展(?)させようと後押ししたり、はたまた、過去の風を知っているレインは、風のことを「ワンターンキルウインド」と呼び、ひたすらに傷を抉る。しかも、本人は「エターナルエンペラー」と自称する。そして、イケメン留学生と思っていたら、実は女子……
なんか、やっていること自体は、1巻とそれほど変わっていないのだけど、個人的に、今回楽しかったのは、剛視点で綴られるエピソードの合間合間に挟まれる風視点での『風の独り言』。その直前のエピソードで描かれた内容について、風が自分で語るのだけど、本音ダダ漏れです! しかも、自分で自分のことを「アダルトな魅力」とか、そういう風に言うのだけど……言えば言うほど、墓穴を掘っていますよ! その辺りが可愛いのは間違いないのだけど。
一応、終盤でレインのある行動によって、剛と風の関係が進展しそうな終わり方をするのだけど、さてさて、この二人だしなぁ……っていう感じがしないでもない。
でも、1巻と同じように、日常の中のちょっとした描写。そこで描かれる風の可愛さ。それが堪能できたので満足。

No.6989

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Tag:小説感想GA文庫之雪

魔女たちのアフタヌーンティー

著者:内山純

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不動産会社の営業としてキャリアを積んできた前屋敷真希。しかし、とあるミスにより閑職に回されてしまう。それを挽回するには……。東京白金台の一等地に立つ洋館の取引を成功させることを目指す彼女は、ひょんなことからそんな洋館で催されるティーパーティに招待されて……
という連作短編形式の物語。全5編を収録。
物語の形は、著者のデビュー作である『Bハナブサへようこそ』とか、『土曜はカフェ・チボリで』に似たような形式だな、ということ。洋館の主である双子の女主人たちが主催するティーパーティ。そこに集う年齢も属性も異なる人々。そんな人々の悩みを聞き、皆で話しあって……という話。ただし、上に書いた作品とは異なり、謎を解く、のではなくて、悩みを抱えた人々へのアドバイスをする、という形になっている。
1編目『魔女の屋敷でダージリン』。ひょんなことから、館のティーパーティに招待された真希。そんなパーティーに参加していた少年は、少し前に、今の自分に悩み、思わず池に飛び込んでしまったという。別に自殺願望があるわけではない。しかし、何かモヤモヤとした不安。
小さな頃から真面目な優等生であったその少年・蒼悟。けれども、最近は成績が伸び悩み、部活でもイマイチ。そんな中、素行の悪い兄から、お前のような知人が死んだ、という。そのため、自分はこのままでいいのか、という不安に苛まれているという。この蒼悟くんの悩みに対する皆の回答が印象的。「いい子」であることは、ある意味での生存戦略。そもそも、どうなりたいのか? 結構、ぶっちゃけたもの言いではあるのだけど、だからこそ心に響く。そして、主が言う「いい子でいるためには……」として語られるティーパーティの歴史。
ティーパーティに関する蘊蓄。参加者の悩みを聞きながら露になっていく、二人の女主人のそれぞれの違い。その中にある不可解な部分。一方で、仕事の上でも、プライベートでも真希は追い込まれて行って……
こういうと何だけど、各編のエピソードとしてすっきりと解決するものの方が少ない。2編目なんて、ある意味では見捨てているような感じだし。ただ、そういうのを含めて「相談」らしい、と言えるのかも知れない。何事もすっきりと解決する、ということは少ない。ただ、相談をする。それをしたことで、本人がどう考えるのか、というのが大事だし、相談をした本人だけでなく、周囲の人も、そこで感じる部分がある。相談というのは、そういうものなのだ、というのを感じさせてくれる。そして、それこそが、1編目で語られたティーパーティの発端である、というところにも繋がっていく。
人と話をする。相談をする。そういったことの意味。それを考えさせられた。

No.6988

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Tag:小説感想内山純

著者:西条陽

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夏休み明け、夏目幸路は小学校5年生の女の子に「犬として」飼われている。風町鈴という少女にランドセルで殴られ、気絶した俺を例の能力により、周囲から犬に見えるようにしたたためだ。そんな彼女は、ある事件の証人として出廷予定があることで、国家権力から命を狙われている。送り込まれる殺し屋。さらに、雪路も幼女誘拐犯として指名手配される中で……
相変わらず、酷いサブタイトルだな! 実際、作品の内容を表しているのは確かなのだけど。
ということで、冒頭に書いたように、風町鈴に気絶させられ、なぜか彼女に「犬」として飼われることになってしまった雪路。鈴は、祖父と二人で暮らし、ランドセルを背負っているが学校には行っていない。そして、彼女の能力によって周囲の人々から雪路は犬として認識されている。そんな彼女が何かを隠していることを知った雪路は、彼女を守るために動くことになる、というのが大雑把な物語。
前巻は、予知能力を持った雪見を守るため、その法則性などを調べる、という部分が多かったのだけど、今巻はひたすらに送り込まれてくる殺し屋たちからの逃亡劇。そして、裁判所までの移動というのが描かれる。本当にヘンテコな殺し屋たち。それが山のように現れ、時に殺し屋同士での争いなども繰り広げられる。さらに、メディアでは、幼女誘拐犯として、本来、少年法で氏名などを晒されることはないはずなのに指名手配犯としてマークまでされてしまう。
物語冒頭の、雪路が犬として飼われている、というシーンは色々と変態的な描写なのだけど、今回は逃亡劇ということで今回はそこまでエロティックな描写は少ないかな? 今回は、月子らに心配をかけまい、という意思と、そもそもの連絡手段がない、ということもありエロ描写の中心だった月子の「反動」解消シーンはないし。まぁ、だからこそ、苦戦をする、という部分も無きにしも非ず、なのだけど。そんな中で、意外なしたたかさを見せる鈴。さらに、全ては陰謀だ、という引っ越し屋のおじさんの活躍が光っていた。特におじさん、なんかすっげー格好良いんだけど。
物語の終盤には月子や、白瀬さんも合流し、特に月子の無双っぷりもあって、戦いという点では形勢逆転。けれども、そもそもの裁判での証言という点では危機的状況に。そんな状況をひっくり返す方策は……
前巻ほどの変態的要素、謎解き要素は少なかった。けれども、その分、緊張感のある、スピーディな物語の展開というのを楽しむことができたかな、という風に感じる。

No.6987

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Tag:小説感想ガガガ文庫西条陽

1(ONE)

著者:加納朋子

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大学生である玲奈は打ち込めることも、得意なことも、友達すらいないことに劣等感を抱いていた。そんな折、仔犬のゼロを飼い始めることになるのだが、ゼロを溺愛した玲奈は、その出来事を小説としてサイトに投稿することに。ファンも出来、やり取りをするようになった中、彼女の周囲で不審な出来事が起きるようになって……
20年ぶりの駒子シリーズ第4作……と言って良いのかな? 著者が前書きで「ストレートな続きではない」と書いているように、世界観などを共にするスピンオフというか、番外編というか、そういう位置づけの方がしっくりと来るような気がする。
で、物語としては、冒頭の粗筋では、玲奈自身の視点で綴られているように思うのだけど、飼い犬であるゼロ、さらには先代犬のワンの視点で綴られる。物語の概要は冒頭の流れになるのだけど、玲奈のことを守るべき存在と考えるワンはゼロを鍛えようとするし、ゼロはゼロでワンの指導を受けながら、玲奈を守ろうとしていく。一応、玲奈の周辺で異変が起きて、という形ではあるのだけど、犬たちの玲奈に対する想いとか、そういう部分が印象に残るエピソードになっている。ワンの存在というサプライズもあるし。
そして、その先代犬であるワンの物語である『ONE』の3編。
小学生である「ぼく」が父の仕事の関係で引っ越してきた家出の出来事を綴った『前編』。賃貸の一軒家の隣家には、同い年の少年と、彼の家で飼われている一匹の犬・シロがいる。けれども、隣家でのシロの扱いは……。犬を飼いたい、と思うが、それが出来ない「ぼく」と、犬を飼っているけど、扱いの酷い隣家の事情。母の協力もあって、色々と解決しようと思った結果……。一つの短編ではあるけど、ちょっと悲しい部分もあったり、で、『中編』に行き、さらに『後編』へ……
多分、シリーズを読んでいない人は、途中で出てきた「駒子」という呼び名にピンとこないところはあると思う。これは、完全に過去のシリーズを読んでいる人向けの演出だと思うから。ただ、本作を読んでいる人でも、作中に出てくるこの人物の考え方とか、行動とかに魅力を感じると思うし、また、そんな彼女をサポートする人物にも魅力を感じると思う。そうしたら、過去作である『ななつのこ』『スペース』『魔法飛行』を読んで欲しいな、という風に思う。感じ方は色々とあるのだけど、シリーズを追いかけてきた身としては、どうしてもそう感じるような作品になっているから。
そして、先代犬であるワン。新入りであるゼロ。この2頭の犬たちの想い。
勿論、これは著者が想像したことだと思う。思うのだけど、でも、そうかも、とも思えるのだ。私の家では犬を飼ったことがないが、実家ではずっと猫を飼っている。猫もまた、飼っていると、「この人が、この家のトップ」みたいな感情を持っている、というのがよくわかる。それこそ、私が小学生低学年の頃に実家で飼い始めた初代猫なんて、「お前は厄介者」くらいの態度だったし(ワンとは違い、私を守るどころか、近寄れば威嚇された。ただし、初代猫が年老いた中学、高校くらいになったときは、それなりに認められた気がする) 人間により従う犬ならば、そういうのもあるのかな? なんてどうしても考えてしまう。
著者の、そして、シリーズを通しての優しい雰囲気はそのまま。そして、犬たちの想いについては、自分の家で飼っていた猫たちの様子から、「そうかも」と想像させてくれた。

No.6986

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Tag:小説感想加納朋子

著者:ハマカズシ

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「あなた、ガガガ好きなの?」 ライトノベルを読むのが大好きな早乙女青春は、クラスメイトからカラオケに誘われなかったことが悔しく、走ってい来る電車に向かって叫ぶ。「私にはガガガ(文庫)があるから大丈夫だし」 しかし、その叫びを同じ学校に通う同級生・田中京子に聞かれてしまい……
パンクバンド・ガガガSPのコラボ企画、という形で発表された作品。
正直なところ、自分、ガガガSPがどういう楽曲を発表しているのかよくわかっていなかったりする。多分、この曲がそうだよ、と教えてもらえば、「これか!」と思ったりはすると思うのだけど。
ただ、それを差し置いたとしても、楽しめた。
主人公の青春と、京子の出会いは冒頭に書いた通り。ただ、「ガガガが好き」とはいっても、青春はガガガ文庫で、京子はガガガSP。互いの勘違いはすぐにわかるのだけど、そんな青春に京子は提案する。自分は軽音部の創設したい。自分もまた、青春がラノベ部を作るのを手伝うから、互いに協力をしよう、と。あまり乗り気ではなかったのだが、京子に引っ張られる形で部員集めが始まって……
基本的な価値観は違うし、強引さもあるけど京子は決して嫌な奴ではないんだよ。青春の価値観とかを尊重するし、好きなものを否定することもない。それどころか、好きなものを楽しむのが一番と肯定。まぁ、青春は青春で、結構、暴走しがちだし、これはこれで良いコンビ。そんな中で、女装で正体を隠してベースを弾く和馬。その態度などから魔性の女と言われるドラマー(太鼓の達人)・明日香が加わり、部活創設の申請を出すのだが、ある条件を突きつけられる。
決して奇をてらった展開ではない。でも、青春、京子、和馬、明日香。それぞれが、周囲からの「こういう人」という偏見を打ち破り、本当の自分を曝け出して、という展開は素直に熱い。まぁ、最後のライブシーンに関しては、あの状況でよく歌えたな、という思いを抱かざるを得ないのだけど、それもまた「熱さ」に寄与しているはずだし。
最初に書いたように、自分はガガガSPに関しては、全く知識が無い人間。なので、多分、知っている人はもっと楽しく読むことができたんじゃないかな、という思いもある。

No.6985

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Tag:小説感想ガガガ文庫ハマカズシ

著者:知念実希人

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残暑厳しい9月。小鳥遊と鴻ノ池が当直を務める救急外来に運ばれてきたのは心肺停止状態の男性。トランクス一枚だけを身に着けた身元不明のその男性は間もなく死亡するのだが、その死因はなんと凍死。不可解な状況に司法解剖を求める小鳥遊達だったが、やってきた刑事の反応は芳しくない。そんな話を聞いた鷹央は、独力で調べようとするが……
シリーズ第16作。
読んでいて思ったこと。このシリーズ、この手の団体、よく出てくるなぁ……。勿論、各作品で事件の切り口とか、トリックとかは別物になっているのだけど。
で、冒頭に書いたように、残暑厳しい9月だというのに凍死という形で発見された男性。身元を示すものはなく、警察は司法解剖の提案を拒否する。そんな状況の中、鷹央は独自に(勝手に)その遺体を観察し、その身体の病状などから男性の身元を特定する。だが、ようやくたどり着いたその男性の遺族は、行政解剖を拒否してしまう。さらに、その男性の自宅から何者かが荷物を持ち運んでしまっていた。何かがおかしい。しかし、これ以上、手の打ちようがない。そんなもどかしい状況ができるが、再び、凍死の遺体が発見される。
事件化されなかった最初の遺体。しかし、再び同じような変死体が発見されたことで、一気に事件として注目を浴びる。だが、第2の遺体は、何者かによって拘束された形跡があるなど、第1の遺体とは明らかに異なる様相。そもそも、どうして凍死という状況ができたのか?
メイントリックと思われた凍死の謎。これが中盤でいきなり明らかにされる、という展開に驚かされた。しかし、一つ、謎が解明されたものの、じゃあ、それでスッキリ解決か? というとそれは否。一つの謎が解明されることで、却ってつじつまが合わなくなったり、不可解な部分が明らかになる、という流れが魅力的。そもそも、今回の話って、いつものように強引にでも鷹央が事件現場に突っ込んでいって……ということができないため、協力を求めてくる桜井、成瀬と言った刑事からの情報提供待ち。読んでいる最中、常に鷹央と同じく、もどかしさを感じさせる流れ、というのが印象に残る。
そして、被害者の正体。その背景にあったもの……で、一気に物語の規模が大きくなるのだけど、第1の遺体と第2の遺体にあった相違点の理由とかで、さらなるサプライズへ。流石にこの辺りは医学的な、化学的な知識が無いと想像することはできない。でも、メイントリックと思われたものが、もう一つ出てきた、ということに驚かされた。
その上で、この巻の終盤で出てくる鷹央の言葉だけど、司法解剖などが最初に出来ていれば……。今回のテーマは、結局、そこに行きつくのだろうな、とも感じられた。

No.6984

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Tag:小説感想知念実希人

著者:二月公

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「佐藤、泊めて」 由美子の元へやってきたのは、母から一人暮らしを反対されたことに怒った千佳。そんな彼女の心にあるのは、母が自分の活動についてどう思っているのか、という疑問。そんな中、今度は同じような問題を抱える双葉ミントが現れて……
ここのところの話が、声優としての活動。もっと上手くなりたい。売れたい。そういう部分をクローズアップしたエピソードが多かったのだけど、今回は久々に「声優という職業」についての周囲の反応と言った印象の巻だったな、という感じ。
第1巻、2巻時点で描かれていた千佳と母親の関係性。声優という職業に良い思いを抱いていない千佳の母親。それでも、活動そのものは認めた形に落ち着いた。けれども、その言葉からは、今でも納得できていない様子が見受けられる。そして、それが衝突の原因に。そして、同じように双葉ミントの母親もまた……
「声優活動」に対する反対は同じ、ということでミントに肩入れする千佳だったが、しかし、その実は色々と異なっていて……。
千佳の母親が考えているのは、声優という職業の不安定さ。人気商売であり、安定して仕事があるかどうかもわからない。そんな不安な仕事を続けさせるべきなのか? というもの。一方のミントの母スミレの口から出るのは……
「声優なんて、俳優になれない人がやる職業でしょ?」
というもの。不安定さとか、そういうものであれば、対話によって解決することも可能。けれども、そもそも、それを職業として認めていない人間との間に対話はできない。それでも、ミントを守るために千佳たちは解決策を考えるが……その中で、由美子は、ミントの母・スミレの考えについても考えて……
スミレの考えの根源。わからないではない。わからないではないけど、でも、どちらに転んでも残酷だよな、と感じてしまうのは自分だけかな? 女優である自分と同じように、演劇について教え、子役として活動をさせていた。しかし、そこでスミレが感じたものは……。自分と同じ道を歩ませることは、自分と常に比較されるということ。それならば……。それ自体は一つの愛情だとは思う。思うのだけど、自分が娘に歩ませた道。娘もまた、そこを歩みたいと思った矢先に……っていうのは、すごく残酷だと思うんだよな。確かに、それで苦しむこともあるはず。でも、娘が自分の意思でそれを覚悟しているのであれば……。自分は親の立場じゃないから、どうしてもミントの側に肩入れしてしまって……っていう部分があるからこその感想だとは自覚しているけれども。
それにしても、元々、色々と気が付く由美子だけど、今回の活躍っぷりって、高校生どころか完全に落ち着き払った大人みたいな言動になっていたような気がする。完全におかんやん!

No.6983

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