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著者:知念実希人

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残暑厳しい9月。小鳥遊と鴻ノ池が当直を務める救急外来に運ばれてきたのは心肺停止状態の男性。トランクス一枚だけを身に着けた身元不明のその男性は間もなく死亡するのだが、その死因はなんと凍死。不可解な状況に司法解剖を求める小鳥遊達だったが、やってきた刑事の反応は芳しくない。そんな話を聞いた鷹央は、独力で調べようとするが……
シリーズ第16作。
読んでいて思ったこと。このシリーズ、この手の団体、よく出てくるなぁ……。勿論、各作品で事件の切り口とか、トリックとかは別物になっているのだけど。
で、冒頭に書いたように、残暑厳しい9月だというのに凍死という形で発見された男性。身元を示すものはなく、警察は司法解剖の提案を拒否する。そんな状況の中、鷹央は独自に(勝手に)その遺体を観察し、その身体の病状などから男性の身元を特定する。だが、ようやくたどり着いたその男性の遺族は、行政解剖を拒否してしまう。さらに、その男性の自宅から何者かが荷物を持ち運んでしまっていた。何かがおかしい。しかし、これ以上、手の打ちようがない。そんなもどかしい状況ができるが、再び、凍死の遺体が発見される。
事件化されなかった最初の遺体。しかし、再び同じような変死体が発見されたことで、一気に事件として注目を浴びる。だが、第2の遺体は、何者かによって拘束された形跡があるなど、第1の遺体とは明らかに異なる様相。そもそも、どうして凍死という状況ができたのか?
メイントリックと思われた凍死の謎。これが中盤でいきなり明らかにされる、という展開に驚かされた。しかし、一つ、謎が解明されたものの、じゃあ、それでスッキリ解決か? というとそれは否。一つの謎が解明されることで、却ってつじつまが合わなくなったり、不可解な部分が明らかになる、という流れが魅力的。そもそも、今回の話って、いつものように強引にでも鷹央が事件現場に突っ込んでいって……ということができないため、協力を求めてくる桜井、成瀬と言った刑事からの情報提供待ち。読んでいる最中、常に鷹央と同じく、もどかしさを感じさせる流れ、というのが印象に残る。
そして、被害者の正体。その背景にあったもの……で、一気に物語の規模が大きくなるのだけど、第1の遺体と第2の遺体にあった相違点の理由とかで、さらなるサプライズへ。流石にこの辺りは医学的な、化学的な知識が無いと想像することはできない。でも、メイントリックと思われたものが、もう一つ出てきた、ということに驚かされた。
その上で、この巻の終盤で出てくる鷹央の言葉だけど、司法解剖などが最初に出来ていれば……。今回のテーマは、結局、そこに行きつくのだろうな、とも感じられた。

No.6984

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Tag:小説感想知念実希人

著者:二月公

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「佐藤、泊めて」 由美子の元へやってきたのは、母から一人暮らしを反対されたことに怒った千佳。そんな彼女の心にあるのは、母が自分の活動についてどう思っているのか、という疑問。そんな中、今度は同じような問題を抱える双葉ミントが現れて……
ここのところの話が、声優としての活動。もっと上手くなりたい。売れたい。そういう部分をクローズアップしたエピソードが多かったのだけど、今回は久々に「声優という職業」についての周囲の反応と言った印象の巻だったな、という感じ。
第1巻、2巻時点で描かれていた千佳と母親の関係性。声優という職業に良い思いを抱いていない千佳の母親。それでも、活動そのものは認めた形に落ち着いた。けれども、その言葉からは、今でも納得できていない様子が見受けられる。そして、それが衝突の原因に。そして、同じように双葉ミントの母親もまた……
「声優活動」に対する反対は同じ、ということでミントに肩入れする千佳だったが、しかし、その実は色々と異なっていて……。
千佳の母親が考えているのは、声優という職業の不安定さ。人気商売であり、安定して仕事があるかどうかもわからない。そんな不安な仕事を続けさせるべきなのか? というもの。一方のミントの母スミレの口から出るのは……
「声優なんて、俳優になれない人がやる職業でしょ?」
というもの。不安定さとか、そういうものであれば、対話によって解決することも可能。けれども、そもそも、それを職業として認めていない人間との間に対話はできない。それでも、ミントを守るために千佳たちは解決策を考えるが……その中で、由美子は、ミントの母・スミレの考えについても考えて……
スミレの考えの根源。わからないではない。わからないではないけど、でも、どちらに転んでも残酷だよな、と感じてしまうのは自分だけかな? 女優である自分と同じように、演劇について教え、子役として活動をさせていた。しかし、そこでスミレが感じたものは……。自分と同じ道を歩ませることは、自分と常に比較されるということ。それならば……。それ自体は一つの愛情だとは思う。思うのだけど、自分が娘に歩ませた道。娘もまた、そこを歩みたいと思った矢先に……っていうのは、すごく残酷だと思うんだよな。確かに、それで苦しむこともあるはず。でも、娘が自分の意思でそれを覚悟しているのであれば……。自分は親の立場じゃないから、どうしてもミントの側に肩入れしてしまって……っていう部分があるからこその感想だとは自覚しているけれども。
それにしても、元々、色々と気が付く由美子だけど、今回の活躍っぷりって、高校生どころか完全に落ち着き払った大人みたいな言動になっていたような気がする。完全におかんやん!

No.6983

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Tag:小説感想電撃文庫二月公

光る君と謎解きを 源氏物語転生譚

著者:日部星花

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就活中の大学生・紫乃は、その最中、地震によって皇居のお濠に転落してしまう。意識を取り戻した紫乃がいたのは、なぜか平安時代の貴族の館。しかも、幼い姫君の姿に転生していた。それどころか、その世界はただの平安時代ではなく、『源氏物語』の世界で……
ということで『源氏物語』の世界に転生してしまった紫乃が、若紫として生活をしつつ、光源氏と共に謎を解く、という形の物語。4章構成なのだけど、一応、それぞれ謎の提示と謎解きがあるので、連作短編に近い形式になっている。
ただ、タイトルに『源氏物語転生譚』とあるように、序盤は前半の2章は謎解きよりも、転生モノという趣が強いかな? という印象。そもそも、現代日本から平安時代に転生してしまった。しかも、姫君だ、と言われれば、そりゃ混乱するに決まっているし、しかも、その世界が歴史上の話ではなくて、『源氏物語』の世界だ、となれば余計に。その様子が強く描かれている。一応、何かがおかしい人形、街中で起きた殺人、という謎はあるけど、各編の終盤に謎が提示され、すぐに解決するのでミステリー要素は少なめ。
それが、3編目、4編目で、夕顔、葵上の死というものについて。出産の末の死という葵上。そんな様子もなかったはずなのに、という夕顔。そんな二人がなぜ亡くなることになったのか? 「呪い」という言葉が出てくるのだけど、当然、現代人である紫乃は、それでは納得が出来ず……
これは、根本的に私が悪いのだけど、多分、自分はこの作品を完璧に楽しめていないと思う。というのは、私、『源氏物語』を通して読んだことがないから。源氏物語をモチーフにした小説とか、そういうのはいくつか読んだことがあるけれども、原作を知らないので、夕顔とか、葵上といった人物が登場していることは知っているけど、それだけ、という感じなんだよな。そのため、真相とかは理解できるのだけど、源氏物語の不可解な部分を解釈する、という歴史ミステリなどにあるような楽しみ方が出来ていないため。
それでも、謎解きなどは楽しめたのは確か。
でも、登場人物の相関図とか、そういうものを何となく頭に浮かべるだけで、それ以上にはいけていないな、という風に思えてならない。そういう意味で、ちょっと楽しめ切れなかったな、というのが素直な感想であったりする。

No.6982

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Tag:小説感想日部星花

人狩人

著者:長崎尚志

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郊外の森林公園で身元不明の遺体が発見された。そんな中、捜査に加わっていた神奈川県警捜査一課の刑事・桃井小百合は県警本部に呼び出される。そこで命じられたのは、迷宮入り事件の捜査を担当する特命中隊の赤堂栄一郎警部補と組むこと。捜査一課にいたころ、エースであった赤堂だが、その一方でその金遣いなどに汚職の疑いもあるという。赤堂の汚職についての内偵を兼ねつつ捜査をする小百合だったが、複数の遺体が山中に埋められていることを発見し……
読了後に改めて物語冒頭の粗筋を読むと、そうか、こういうところから始まったんだっけ……という感じ。
神奈川県警の刑事である小百合が、赤堂の内偵を兼ねてコンビを組む、というところから始まる物語。その一方で、母親が娼婦だ、と言われイジメられている少年が、母の失踪をきっかけに祖父を名乗る男に引き取られるパート。妹を殺した犯人たちに復讐を果たした男・黒川が犯罪者を匿ってくれるキンブルホテルという施設に行く話……というパートを繰り返す形で進行していく。
そんな中でメインとなるのは、小百合と赤堂。一介の警察官ではとても払えないような高級料理を食べ……など、疑わしいところは多々ある赤堂。しかし、一方で事件に臨む姿は真面目そのもので、汚職に手を染めているとも思えない。そんな中で発見した多数の他殺体。そこで何があったのか? を探る中、人間を狩る組織の存在が浮かび上がってきて……
少年のパートでも出てくる娼婦という存在。戦後のGHQの支配下におかれ、米兵たちが入ってきた日本。そんな米兵のために、と集められた娼婦と、その制度の廃止。しかし、一方で傍若無人に振る舞う米国兵たち。そんな彼らに対する反発。そこから結成され、連綿と受け継がれてきた組織の存在。しかし、その時代を経る中で、その存在は変遷していってしまう。
この辺りは組織というものの脆弱性とか、そういうのを感じるところではある。志を持って作られた組織。しかし、それは時代を経て、メンバーの加入脱退を繰り返す中でだんだんと変わっていってしまう。理念の中にある大事な部分は抜け落ち、ただ歪んだ思想と、組織を守るという意思だけが残り……。元々、かなりおかしな団体ではあるのだけど、それがさらに変遷したあとは、ただただおかしな団体というだけになっていく。そんな組織を暴きたい赤堂と、赤堂をどこまで信じられるのか? という思いを抱きつつも、同調していく小百合の戦いは面白かった。
正直なところ、この組織の存在。はたまた、犯罪者を匿うキンブルホテルの設定。そういったものが100%、活かされていたのか? というと、なんか都合よくつかわれたような気がしないでもない。もうちょっと掘り下げればよりよかったんじゃないか? という思いはある。
と、気になるところはあるのだけど、一気に読ませるだけのものはある。その辺りが魅力だよな、と感じさせてくれる。

No.6981

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Tag:小説感想長崎尚志

ひきこまり吸血姫の悶々13

著者:小林湖底

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「白極連邦統括府へ来い」 侍女であるヴィルヘイム、妹のロロッコらに振り回されるコマリの元へ届いた手紙。それは、プロへリヤ・ズタズタスキーからのものだった。コマリと同じようにアイランやネリア、アマツ・カルラも招集された白極連邦はしかし、夏にも関わらず吹雪に見舞われていた。そして、白極連邦では最高権力者の書記長が更迭され、ズタズタスキーは革命を推し進めており……
今回は、前後編の前編と言ったところかな?
今回の中心となるのは白極連邦のプロヘリヤ(というよりも、ズタズタスキーの呼び方がしっくりくる)
前提として、彼女は白極連邦の革命を進めており、その中で彼女らの活躍により、トップである書記長が更迭され、さらに、新たな秩序を作り出すために六戦姫とのエンタメ戦争を開始する。六戦姫の二人と、白極連邦の将軍・ズタズタスキー&アレクサンドルの二人が率いる部隊での戦争。戦いは、将軍のどちらかが死亡した時点でそのチームの敗北。その一回戦で早速、コマリが出陣するが……
あっさりとコマリが負ける、という形で物語が進み、その結果、コマリはズタズタスキーのメイドとして身近で接することに。
ここまででも、ズタズタスキーの登場シーンはあったけど、どちらかというと脇役的な立場。それもやられ役的な。しかし、白極連邦において彼女の人気は非常に高く、しかも、彼女もまたそれに応えるようにアクティヴに活動を続ける。子供への音楽レッスンだったり、はたまた、街の雪かきなどなど……コマリがウンザリするほど。そんな彼女が、なぜ新たな秩序を構築しようとしているのか? そして、何を急いでいるのか? その中にあった彼女自身の運命……
ここまでのエピソードでは全く描かれることのなかったズタズタスキーの人間性。そして、そんな彼女が目指しているもの。それは確かに芯の通ったもの。けれども、果たして、本当にそれはズタズタスキー自身の希望と言えるのか? そんなことを考えるコマリ。そんな中で2回戦も勝ち進んだズタズタスキーだが、3回戦で……
話としては最初に書いたように前後編の前編。ズタズタスキーがどういう人物なのか? そして、そんな彼女が抱えているものが明らかになった、というところで終了。色々と見えてきているものはあるだけに、とにかく他者に対してこれでもかと感情移入するコマリがどういう風に動いていくのか楽しみ。

No.6980

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Tag:小説感想GA文庫小林湖底

互換性の王子

著者:雫井脩介

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準大手飲料メーカー・シガビオの御曹司・志賀成功。若くして取締役への昇進も噂される彼は、父の命題として参加したゴルフコンペの帰り、何者かによって別荘の地下室に監禁されてしまう。何もできないままに動きを封じられて半年、ようやく解放された彼が見たのは、以前とは会社における以前とは全く別の立場。自分が勤めていた事業部長には一度しかあったことのない腹違いの兄・実行が就いていた。成功は、奪われたものを取り戻すべく、奔走することとなって……
いきなり監禁される、という展開から物語が始まるのだけど、物語のメインとしてはむしろ、ビジネス小説という感じ。
冒頭に書いたように、何者かに半年間、監禁されてしまった成功。その間に、社長である父からは会社を辞めたものと思われ、自分がいた立場にいるのは、ほぼ面識のなかった腹違いの兄。部長という役職から、一営業マンとして一から出直すことを要求され、それでも奪われたものを取り戻すために奮闘することに。そして、そんな営業職から、会社の新商品開発のプロジェクトに、兄と共に加わることとなって……
自分が監禁され、その間に、同業他社の社員であった、そして、立場的には「他の家の子供」という状況になった兄がその職に。兄が仕組んだことなのか? という思いも抱きながら、その兄への対抗心を感じる成功。しかし、プロジェクトの中で、さらに自分の想い人を巡っての感情を含んだ対抗意識、というのは確かにある。けれども、新商品開発という状況では同じプロジェクトの参加者として協力をしていく。しかし、ライバル会社の動向。そこに企業スパイが情報を出しているのではないか? なんていう疑惑も出てきて……
この辺りのライバルではある。しかし、何よりも新商品を成功させよう、という思いでぶつかりつつも協力体制を築き上げていく話は面白かった。対抗心はある。でも、双方が、色々と考えて、試行錯誤をし、その上でより良い、売れるものを作ろう、という流れは凄く健全だし、決して、相手を貶めるわけじゃなくて(ダメ出しすることはあるけど)、ちゃんと建設的な話し合いの末なので、そこまで嫌味な感じはなかった。そして、色々なことがあっての末、父である社長が下した決定は……
この辺りは良かったのだけど、そもそもの部分に無理があるよなぁ……という印象。冒頭での、成功が監禁された部分。物語の中盤でその真相が明らかになるのだけど、それは流石に無理やりでしょう! だって、これ、普通に刑事事件ですぜ? さらに、同業他社とか、そういう人間関係も親族関係とか、そういうのがちょっと近すぎないか? という感じはする。同族経営の大手企業とか、そういうのは現在の日本でもあるけれども、関わっているメーカーとか、そういうのがすべてそう、というのは流石に、と思うし。
ツボは抑えていると思う。でも、なんかちょっと無理がある設定を感じる。

No.6979

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Tag:小説感想雫井脩介

著者:鏡遊

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学校一のギャル・葉月葵や、お嬢様・瀬里奈瑠香と「エッチ遊び」を楽しんでいる湊寿也。しかし、2学期の期末試験。葵がまさかの赤点を取ってしまう。追試に向けての勉強で、しばらく「エッチ遊び」はお預けとなる湊。そんなとき、彼は、王子様として慕われるイケメン女子の生徒会長・伊織翼の仕事を手伝うことになって……
だんだんとこの作品がどこへ向かっているのかわからなくなってきた。
前の巻辺りからわかっていたのだけど、この作品世界の倫理観というか、貞操観念って何? という感じのところがあるんだけど、やけにピュアなところと、でもやっていることは体の関係ばかり、という両極端な状況に。
で、今回のメインヒロインと言えるのは、生徒会長の伊織翼。クールで格好良く、女子生徒たちから絶大な人気を誇っている。そんな彼女の手伝いをすることに。確かに、見た目通り、ボーイッシュでクールな部分はあるが、湊が惹かれたのはむしろ、そんな中で時々見せる女の子らしさの方。さらに、レトロゲームが好き、というような意外な趣味などもあり、だんだんと打ち解けていく。そして、そんな彼女の、「女の子」らしい姿を見せたい、という本当の願いを知ってしまい……
本当は誰よりも、「女の子」らしくいたいと思っている翼。けれども、周囲は「王子様」として自分を慕ってくれる。そんな周囲の期待に応えなければならない……。周囲の期待と自分の本音の間のギャップに苦しむ翼。そんな翼に対し、「女の子」であることを肯定し、「女友達」としてかかわりあいたい、という湊がいて、そんな彼に惹かれてしまう……。ここは、素直にピュアでまっすぐなラブコメの展開だな、という風に思う。
思うのだけど……そっから一足飛びで身体の関係に進展するなよ! という感じもする。女の子としての翼に惹かれた。だから、パンツを見せてくれ! さらにはエッチしたい! って……普通にドン引きすると思うんだが……でも、翼もあっさりと応じてしまう。この辺りの展開がやっぱりぶっ飛んでいるんだよな……
本当、このシリーズ、どこへ向かっていくんだろう?

No.6978

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Tag:小説感想角川スニーカー文庫鏡遊

著者:内藤了

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帝王アカデミーの所業を暴露した小説『スマイル・ハンター』がついに刊行された。そんな矢先、雨宮縁の担当編集者・真壁の同期・森山が何者かに殺害される。遺体が発見される前夜、真壁は森山と共に会社を出たばかりだった。さらに、今度は縁を熱烈に支持する書店員にしてブロガーの女性も殺害されてしまう。二つの遺体の顔には、スマイルマークと思われる傷痕が残されていて……
シリーズ第4作。
物語として、大分煮詰まってきたな、という感じのエピソード。
冒頭に書いたように、雨宮縁、真壁が敵対している帝王グループ。その帝王グループの起こした事件を暴露する形の小説が刊行された直後に、真壁の周辺で起きた殺人。タイミングから見て、これは縁に対する報復? そして、最初の被害者・森山は真壁と間違われて襲われた? そんな疑念が浮かび上がる。元々、帝王アカデミーが危険な存在、ということはわかっていたが、具体的に自分の命の危機が迫っている、ということに戦慄する真壁。一方、自分の書いた小説によって、無関係な人を巻き込んでしまった、という怒りに震える縁。
ただし、帝王アカデミーが直接、事件を起こした、としては奇妙な点も。顔を傷つける、ということで犯行をアピールするのは「いかにも」という感じだが、一方で、その傷が見えないようにうつぶせに遺体をするなど、なぜか隠している様子も見受けられる。帝王アカデミーそのものの犯行なのか? それとも? そんな犯人の正体に対する考察。さらに、そんな犯人をおびき寄せるために縁が取った決断は……
犯人の性格などを考慮した上での大胆なトラップ。その意味で、今回のタイトル「トラップ・ハンター」はこれまでの帝王アカデミー側が「狩る」側ではなく、縁の側が「狩る」側へと変貌した、というのを意味しているのはよくわかる。それでも、縁の周辺で犠牲者を出してしまった、という意味で、傷は浅くはないのだけど。
そんな一方で、自身も狙われる側になってしまった真壁だけど、帝王アカデミーの正体だけでなく、秘密裏に縁についても調査を深める。正体不明の作家・雨宮縁。さらに、その秘書である庵堂。両者と帝王アカデミーの関係性を調べる中で見えてきた両者の関係。さらには、その因縁。そんな答えが見えてきた中、真壁もまた縁から……
縁の正体。倒すべき巨悪。そして、真壁の決意。
シリーズ完結に向けて、いよいよすべてのピースが揃った、と感じさせる巻だった。

No.6977

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Tag:小説感想内藤了

帝国妖人伝

著者:伊吹亜門

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時は明治。文学で名を為さんとし、尾崎紅葉に師事するも、三文記事ばかり書いている那珂川二坊。今日も、ネタ探しのため、簡易食堂へ行くと、そこで話題となっていたのは、徳川邸に賊が忍び込んだ、というもので……(『長くなだらかな坂』)
から始まる連作短編集。全5編を収録。
著者の作品を読むのは、これが4作目。過去に読んだ作品は、歴史上の人物などを題材にした作品の印象。本作も、作中で様々な人物が登場するのだけど……主人公である那珂川二坊は架空の人物なのかな? ちょっとよくわからなかったのだけど。
作品の紹介文では、「犯人は誰? 探偵こそ誰?」という言葉があるのだけど、まさにそんな感じ。主人公の二坊が巻き込まれる事件。一見、傍から話題を耳にするのだけど、そこにいる人物が会話に加わって「こうではないか?」という推理が出る中、思わぬ人物が謎を解く、という形で謎が解かれるという構成をしている。
冒頭に挙げた徳川邸に入ったという賊の話。しかし、賊は何も取らずに逃走し、その逃亡中に塀から落ちて亡くなったという。何ともしょぼい事件。その目撃者だ、という男が登場したりして会話が進む中、それはおかしい、という声が掛かり……。まあ、あくまでも推論という感じではあるのだけど、目撃者の男のちょっとした言い回しから何かを隠している、というところを推察し、そこから……というひっくり返しが印象的だった。で、その後は、少しずつ時間が経過していって……
個人的に面白かったのは、3編目『攻撃!』。第一次大戦後のドイツへと赴いた二坊は、ギルディッシュ、現地にいた日本人大尉と打ち解ける。そんな中、大将を務めていた朽木が自殺した、と聞かされるのだが、大尉は自殺ではないはずだ……と言い出して……。第一次大戦で敗れたとはいえ、日本人、アジア人に対する偏見の残るドイツ。しかも、領地を巡っての互いのイザコザもある。そんな当時の空気感。さらに、文化の違いなどから出てきた状況への誤解が謎として立ち上がるという展開が「なるほど」と感じられる。そして、その上で行き着いた答えは……。文字通り「まさか!」という、それまでの印象がすべて反転する終わり方が好き。
そして、4編目『春帆飯店事件』。昭和20年2月、老境に入った二坊は、上海の宿を訪れる。そこは、物資の横流しにより死刑判決を受けた男と、彼を見張るための軍人たちが宿にしていた。そんな時、その死刑囚の男が何者かに殺害されて……
ここまで、様々な事件を目の当たりにしてきた二坊。その経験を買われ、取り調べに同行することになるのだが……。事件を実際に見聞きすること。しかし、それが本当に真相へ辿り着く推理へと昇華されるのか? 色々と経験をしてきた二坊だからこその挫折感という形で終わる結末が何とも悲痛だった。そして、それは5編目の行動にも繋がって……
事件が起きて、その謎を解く。その流れ自体はオーソドックスかもしれないけど、その探偵役がどこから現れるのか? という意外性。そして、最後に二坊に突きつけられるものの切れ味が最終的には大きな印象を残す作品集になっていたと思う。

No.6976

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君と笑顔が見たいだけ

著者:新田漣

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笑顔を見せないミステリアスな美少女・瀬音しずくの笑顔が見たい。高校入学から3か月。毎日のように、彼女を笑わせるために奮闘する市井晴比古。すっかり変人と認知されてしまった彼の前に一人の先輩が現れる。その先輩、中屋敷結羅は美人だが、数々の奇行により学校一の奇人と言われている人で……
第36回ファンタジア大賞・金賞受賞作。
凄くまっすぐな青春モノ、という印象。
クラスメイトである瀬音しずくを笑わせたい。そんな理由で、彼女に芸(主に裸芸)をしては滑っている晴比古。そんな日々なので、女子や妹からは冷ややかな目で見られているが、それでも挫けない。そんな彼に目を付けた中屋敷先輩は、漫才コンビを組まないか、と誘ってくる。当初は迷っていた晴比古だったが、中屋敷先輩が出演する大喜利で思わず入れてしまったツッコミでその快感を知って……
勿論、しずくを笑わせたい。そんな想いは変わらない。けれども、それと同時に、多くの人を笑わせたい、と考えるように。目指すは、プロの芸人も参加する漫才の全国大会。猛練習を続け、その予選に出場するが……
ひょんなところから、目指すものが出来て、そこへ向けて突き進む。しかし、そこで大きな挫折をする……。この辺りの物語のアップダウンというのは、王道中の王道展開と言えると思う。でも、晴比古を誘った中屋敷先輩の口説き文句である「他の人は、しずくを笑わせることをすぐに諦めた。しかし、晴比古だけは諦めていない。その姿勢が何よりも気に入った」という言葉。この当初の言葉が、挫折したときにすごく意味を為してくるところとが、この物語のすごく良いところ。
さらに、しずくに惹かれ、彼女を笑わせたい、というのが目的だった晴比古が、気づけば、それ以上に、「人を笑わせる」ということ自体に夢中になっていく様、というのも。それだけに、終盤の学園祭での二人の活躍が光っているのもたしかだし。
それと、この作品、お笑いのために頑張る、という描写がメインではあるのだけど、その一方で、じゃあ、それを突き進んだとして、売れなかったときにどうするのか? とか、そういうシビアな面とかもしっかりと描かれるなど、ただ「美しい」だけじゃない、っていうのも背景にあるからこそ、より、晴比古と結羅、二人の頑張りが光るのだろうな、とも思う。
面白かった。

No.6975

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Tag:小説感想富士見ファンタジア文庫新田漣