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BUG 広域警察極秘捜査班

著者:福田和代



乗客乗員合わせて560名が死亡した航空機墜落事故。その事故を引き起こしたとして、16歳の少年・水城陸は逮捕され、死刑判決を受けた。冤罪であるにも関わらず。それから10年。陸は、その高いハッキング能力を買われ、命と引き換えに国家を超えて捜査をする広域警察の極秘捜査班、通称「BUG」に加わることになる。ところが、最初に命じられたのは老数学者の身辺調査。その老数学者は、陸が犯人とされる墜落事故で死亡した、とされる人物で……
冒頭の通りに物語は始まるわけだけど、最初に言えるのは、陸自身は決して、自由の身になったわけではない、ということ。水城陸は、死刑が執行された、とされ、本人は、別の身分を手に入れてBUGに。だが、身の自由はなく、常に監視された状態。監視をする警察官・蛯名、永瀬は厳しい視線を浴びせている。そして、同じくBUGのメンバーもまた、同じような境遇にいるようで……
スリリングさ、という意味では文句なし!
ターゲットとなった老数学者は、自分が起こした、とされる事故で死亡したとされる人物。そのことで、数学者を調べ始めるのだが、個人的な接触の中で、その数学者は、事故は自分を殺害する目的で起こされたものであること。そして、陸の逮捕に絶望して自殺した、とされる陸の父は、長瀬に殺害された、ということを告げる。父と学生来の友人である長瀬は敵なのか?
実際問題として、自分の置かれた状況は最悪と言える。長瀬自身も陰で蛯名と共に、自分に対して酷い物言いをしている。そもそも、老教授の言葉には惹かれるが、それは正しいのか? そもそも、どちらが敵で、どちらが味方なのか? しかも、BUGの中にスパイもいるようだ。何が正しくて、何が嘘なのか? そして、誰が味方で、誰が敵なのか? という中で右往左往していくスリリングさは間違いなく面白い。
ただ、何と言うか……終わってみると、何だったのだろう? というところもあるのは確か。
老教授、世界的なIT業界の大物、さらには陸の父。そういった面々が目指しているもの。そして、それに対する長瀬らの行動の理由というのがイマイチよくわからない。なぜに、陸が生かされていたのか? とか、そういう部分については一応の説明はあるのだけど、そもそもの部分は……という感じなので。
そういう意味では「あれ?」という感じかな?

No.5148

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著者:吹井賢



ある怪事件とともに、国家機密ファイルも消えた。唯一の手掛かりは、事件現場で目撃した大学生・戻橋トウヤだけ。内閣情報操作室に設置された「特務捜査」部門の新米捜査官の球子はトウヤに接触をする。そして、彼の協力を得て、ファイルの捜査に当たることになるのだが……
第25回電撃小説大賞・メディアワークス文庫賞受賞作。
物語としては、特殊能力が使える存在が世の中におり、その特殊能力による事件を捜査する部署に配属された珠子が、トウヤと共に……という形。そして、どうやら、トウヤ自身も何らかの特殊能力を持っているらしい、ということがわかるのだが……
物語の最後にひっくり返しはあるし、また、そこに至るまでの中には帯にも書かれたトリックというのも存在はしている。しているのだけど、どちらかというと、トウヤというキャラクターの強烈さ、というのが印象に残ったかな?
敵となるのは、犯罪者組織であるフォウォレ。そのボスであり、「悪しき眼の王」と呼ばれるウィリアム・ブラックという男。その情報を手に入れるために、違法賭博組織のリーダーだったりと、勝負を繰り広げていくことになる。しかし、そのたびにトウヤは……。
とにかく、トウヤのやることなすことが無茶苦茶。しかも、その無茶苦茶っていうのは、例えば、笑いに走る、とか、そういうことではなくて、文字通りに「無茶」をする。自分の命などどうでもよい、とばかりに命を危険にさらす行為を取るし、命とはいかなくとも、指を落す、とか、そういうレベルでの無茶は日常茶飯事。そのことについて、珠子はやめるように言うのだけど全く取り合わない。そして、そんなトウヤだからこそ、どうしても放っておけなくて……という関係性になっていく。正直なところ、ブラックとの対決を終えたあとの珠子とトウヤのやりとりは、そんな関係のある意味では究極形といえるんじゃないだろうか?
そして、そこからのひっくり返し……。まぁ、確かに、トウヤの言う通り、なんだよね。その中での珠子の決断というのも考えると、「正義」という言葉で自分を奮い立たせていた珠子の成長物語だった、ということになるのかな?

No.5147

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14歳とイラストレーター7

著者:むらさきゆきや



「せんせ、あたしとVチューバーやろ? 返事はYESだけ」 イラストレーターを目指す乃ノ香のライバルとなると思われた水織だったが、悠斗に対して思わぬ行動に出る。一方、錦は、会社が倒産? 白砂は、音信不通のマリィを訪ねることにして……
今回は、水織関連でのVチューバー話が多め?
乃ノ香が悠斗の元に通っている、ということもあって、悠斗の元へと接近。そして、そこで要求したのが、Vチューバーとしての活動の会い方になること。ただし、その活動は、悠斗が女性キャラをやる、というバ美肉? 自分自身は、Vチューバー……というか、生身で配信をするユーチューバーも含めて全く詳しくないのだけど、結構、作家さんとかが、っていうのを聞いているだけに、そういう情報とかを踏襲して、ことなんだろうな。
勿論、その水織と乃ノ香の、イラストレーターとしての切磋琢磨、というのも継続中。合同誌を作れ、という話になり、しかも、その表紙は二人がそれぞれイラストを描いての対決へ……。しかも、審査員は悠斗ということになって……? ちゃんとイラストを見る目は、ということになるけど、ナチュラルに鬼畜仕様っていうのが(笑) その他に、事務所とか、そういう辺りのアレコレもあったり……これは、Vチューバーに限った話ではないと思うけど。
その他にも色々とあるわけだけど……その中で笑ったのはナスさんかな? 以前、男性関係でトラブルがあったので……と条件を付けたのに……。そして、そんな危機を救ったのが、まさかのハラミ(笑) そりゃ……いきなりそんな恰好で現れたらねぇ。というか、『妹さえいればいい。』もそうなんだけど、この業界は、裸族とか多いのか?
今回は、純粋なイラストに関する話はちょっと少なめだったかな? という気がする。ただ、そこに一種の流行とか、そういうのを取り入れてきた巻、という感じなのかな? と。

No.5146

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予言の島

著者:澤村伊智



ブラック企業勤めで心を病んだ宗作を励ますため、友人らと共に旅に出た淳。行き先は、瀬戸内海に浮かぶ島・霧久井島。そこは、20年前、当時、一世を風靡していた霊能力者・宇津井幽子が最後の予言を残した場所だった。しかも、旅に出たその時期は、彼女の予言により、「霊魂六つが冥府へ堕つる」時だという。島へ降り立って早々、宿泊予定の旅館から、「怨霊が下りるから」という理由で宿泊を拒否。かろうじて宿を見つけることには成功したが、翌朝、旅をしていた友人の一人が遺体となって発見され……
なるほどね~……
著者は、日本ホラー小説大賞の大賞を受賞してデビューした人。そして、これまでの作品というのは、社会問題などを取り入れつつ、しかし、超常現象が起こる、という形での話だったのだけど、今回は大分、毛色を変えてきた、という印象。
物語そのものは、冒頭に書いたような形で始まる。かつて、一時代を築いた霊能者が最後に訪れ、予言を残した島。島には、そんな霊能者に心酔するもの。否定的に思う者もいる。さらに、島の人びとは不思議な因習を守りつつも、何かを隠していて……
この作品のテーマとしては、「呪い」とは何か? というところだろうか。
「呪い」で、著者がホラー作品を書いている、というと、文字通りに禍々しい印象を抱くのだけど、そういうことではない。そうではなくて、ある言葉が存在しているからこそ、肯定にしろ、否定にしろ、何らかの形で意識してしまう。「呪い」というか、「言霊」というか、そういうものの力って、そういうものなのだろう、と感じてしまう。しかも、霊能力とかとは関係なく、ある意味、先天的な直観力などで、心理学的な方法で人を引き付けるだけの力を持っている人であれば余計に。不穏な空気と、その中の合理的な考察というもののバランスが絶妙で面白かった。そして、そんな「呪い」についての考察がされた中で……
これについては何も書かない(笑) 多分、びっくりするはず。
……これでもネタバレになっちゃうかな?

No.5145

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著者:七色春日



河川敷で生活する平助。転移した異世界で、たこ焼き屋を開業し、一山を当てたものの、「タコが嫌い」という王女の一言により、その事業は破綻してしまった。ホームレス生活のある日、かつて拾った奴隷であり、現在はバーガー屋を経営するサーファイアと再会し……
何となくタイトルに惹かれて手に取った書。おいらのHNは……(阿呆)
とりあえず、サーファイアさん、とりあえず、窮地に陥ったら犯罪方面の計画を立てるのはいかがなものかと……
物語としては、かつて奴隷として拾ったサーファイアと再会した平助。そこで知ったのはサーファイアの経営するバーガーショップが窮地に立たされている、ということ。貴族の経営するバーガーショップが、その資金力にモノを言わせて攻勢をかけ、売り上げは激減。このままでは……。さらに、そのショップについて調べると、貧民を無茶苦茶な形で働かせていることを知る。そのため、店の存続をかけたイベントでの対決をすることになって……
異世界転生とか、そういう作品って、主人公が圧倒的な力を持っていて、その力で無双していく、というような話が多いのだけど、この作品の場合、現代日本の知識、というのはあるけど、じゃあ、それで圧倒的になるわけじゃない、っていうのがポイントなのだと思う。そもそものスタート地点からして、「たこ焼き」という新たな料理で一山当てたけど、王族という権力者の逆鱗に触れておじゃん。しかも、本編が始まってのバーガーショップの話にしても、資金力では当然に負けるし、そこまで奇抜なアイデアがあるわけではなくて……という部分で、設定の印象に反して、地に足のついたやり方になっている、というのが好印象。さらに言えば、その中で、王位継承権争いなどにも巻き込まれていくわけだし。そういう部分を含めて「世知辛い」という帯の言葉はその通りだと思う。
基本的には、ギャグ多めではある。あるんだけど、決して一流とは言えない平助の(時には外道な場合も含めた)ちょっとした策などもありつつ、でも、基本的には、相手に料理を楽しんでもらいたい、という想いというのも一貫している。そういう意味では、凄く気持ちの良い読後感を得られた。これも長所と言えるだろう。
派手さはないけど、しっかりと読ませる作品だと思う。

No.5144

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黄昏旅団

著者:真藤順丈



妻・娘と共に施設に入所した桧山優作。だが、なぜか幼い息子だけは置き去りに。人生の大半を路上で過ごしてきた「落伍者」の青年・グンは、タイゼンと共に心象風景を示した「道」を歩み……
著者の作品は、それなりに読んでいるのだけど、その中でも特殊な設定、話のような感じがする。
まず言うと、物語を読み始めて、これはどういう物語なんだ? という戸惑いから始まったりする。というのは、主人公のグン。そんなグンを拾ったタイゼン。そして、アイラアイラという3人が出てくるのだけど、優作との関係はいったい何なのかよくわからない。そして、よくわからないままに優作の「道」へと入り込んでいく。そこは、その人間の人生を心象風景を通して辿っていく道……
最初はいったい何なのか? というところから、しかし、優作という人間の人生を辿る心象風景の旅が印象的で引き込まれ、だんだんと、優作の一家がどういう状況なのか? というのが明らかになってくる。そして、今度は、同じ団体の施設に監禁されている娘、妻の心象風景に入り込む中で、今度は、グン、タイゼンというのがどんな存在なのか? というのも明らかになっていって……
恐らく、読者が最初に感じるであろう戸惑い、というのも計算のうちなのだろう、というのを感じる。最初は何だかよくわからない。でも、心象風景を通した人生をたどる旅、というもので引き込めば、そこから一気に手の内に! という部分。そして、実際、その手口にまんまとハマってしまった、というのも読んでいて感じたところ。そうすれば、それまで明らかになっていなかった様々な設定の一つ一つが今度はサプライズとなって読者に降りかかってくるわけだから。どんどん読むスピードが加速していった感じだ。
物語全体を通してみると、「で、結局、何だったの?」と思える部分もあったりはする。ただ、人間っていうのは、生きているうちは、常に何かがあって、そのたびに心象風景も変わって……というのを繰り返すのだと思う。そういう意味では、ある意味、中途半端で終わったように感じるのも、グンの人生というのが、これからも続くから、ということなのだろうか? すごく好意的な評価をしている、という風に自分自身思うのは確かなのだけど。
人によっては「設定が活かしきれていない」とか、「中途半端」とか言う人もいると思う。というか、自分自身、そう思う部分はあるし。でも、この話、何か好きなんだよな。

No.5143

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著者:真保裕一



横浜市港湾局みなと振興課。横浜港関連の様々な事象が舞い込み多忙を極める暁帆らの職場に、待望の新人が配属される。その新人・城戸坂は、国立大出身で、様々な難問を難なくこなしてしまう有能な若者で……
なんか、構成として『遊園地に行こう!』とかみたいな感じだな、というのを感じる。
物語は5章構成で、序盤の3章は、それぞれ、カンボジアからの研修生の失踪事件だったり、フォトコンテストの不可解な出来事だったり、はたまた、横浜港に寄港した豪華客船で起こる幽霊騒動だったり……とそれぞれ独立した謎を解いていく、という形。しかし、だんだんとその中の未解明だった部分が明らかになっていって……という形に。
まぁ、暁帆と城戸坂のやりとり、というのが楽しかった、というのは確か。上の粗筋でも書いたように、語学は堪能だし、企画の資料作りなどもソツなくこなしていく有能な新人。しかし、その一方で、仕事熱心過ぎる上に、何かを調べているような不自然な気配も見え隠れ。そんな城戸坂に暁帆は振り回されることになって……
それでも、序盤の話は、それぞれ独立した謎だし、それぞれではっきりと真相が明らかになるのだけど、その城戸坂が目指しているものが明らかになってくると……ちょっと無理矢理かな? という感じ。そもそも、その目的だけのために公務員になったのか? という部分があるし、(名目上は)上司と部下という関係にはなるけど、市長と新人が気軽にやり取りをするような関係になるか? とか、思えてくる。また、その城戸坂の行動を妨害してきた地域の重鎮とかについていえば、そこまで一人の人間に対して執着できるのか? とか思えてくる。わざわざ「私は怪しい者です」と宣伝しているようなものだからなぁ。さらに、調査を続ける中で、だんだんと「こうだろう」というものが明らかになるけど、あくまでも「恐らく」だけで終わってしまうのも……。ある意味では、それがリアリティだ、ともいえるかもしれないけど、小説としては……
そういうのも含めて、序盤のちょっとした事件の方が好みだったかな? 先に挙げた『遊園地に行こう!』でも、同じような感想を書いていたのを思い出す。

No.5142

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著者:柚本悠斗



『誕生日おめでとう。今日着でプレゼントを送った』 孤高を極め、お一人様生活を謳歌する俺の元に、親父の企みでレンタル家族としてやってきたのは、見知らぬ美少女・朱莉。しかも、同じ高校にまで転校!? 学校では優等生なのに、家では俺の風呂を覗いてきたり、タオル一枚で俺に迫ってきたり……
最初に言うと……朱莉さん、あんまり「ナニか」していませんがな。というか、同居生活、という風に書かれているけれども、設定的には週末だけ、という感じだし、「ナニか」と言いつつもせいぜい、家事を担当する終末が終わると主人公・颯人のパンツがなぜか消えている、というくらい。ナニかしている、という感じではないんだよな。
……と言いつつ、話自体は楽しかった。
なし崩し的に始まった、終末だけのレンタル家族という颯人と朱莉の関係。朱莉が泊まるのは週末だけ、とはいえ、クラスメイト達にバレるわけにはいかない。そんなことをやっている中、朱莉を愛している妹の雫に襲いかかられたり、はたまた、ぼっちキャラである颯人にも気軽に関わってくる戸祭に気に入られたり……
途中から、颯人と朱莉の関係について何者かが、情報を流出させて……というものがあり、ある意味では、そこがメインになっているのだけど、そこまでのアレコレで、登場人物それぞれのキャラクターが、性格とか、そういう部分において掘り下げられており、その上で、どうやって犯人を特定するのか? というところもしっかり(ギャグ交じりで)描かれていて、うまいなぁ、というのを素直に感じた。親父と担任も良い味を出しているんだよな。
まぁ、でも、この作品……読んでいる時は、それほど感じないけど、読み終わってみると変態ばかりだな(笑) 朱莉の妹・雫は、あからさまだけど、実は朱莉もまた……っていうのは読んでいてわかるし、ストーカーそのものも……。この辺りが明らかになって、より色々と楽しいことになりそう。そうなれば、文字通り「ナニか」していそうだし。それに、颯人と朱莉の関係とか、軽く触れられているとはいえ、なぜ颯人が「おひとり様」を、っていうところも色々と掘り下げることが出来るだろうし、そういう部分も楽しみ。

No.5141

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キリングファーム

著者:島田明宏



北海道は羊蹄山の東、支笏湖に連なる山間で競走馬を育成する風死狩牧場。企業に失敗した藤木祐介は、そこで働き始める。まるで要塞のように塀で囲われ、地元の人びとからは不穏な噂を耳にした祐介だったが、しかし、サラブレッドの育成、そして、その馬の活躍にだんだんと惹かれていくことに。だが、そんな中でスタッフが次々と失踪。さらに、失踪したと思われた元スタッフが次々と変死体となって発見されて……
ちょっと待てい!!
思わず、そうツッコミを入れたくなるような結末だと思ったのは私だけか?
物語の大筋の流れは冒頭に書いた通り。物語の序盤は、本当に、全く競馬という世界を知らなかった祐介が、生産牧場に就職し、そこでの生活に慣れるまで、をかなり丁寧に描いている。各地から集まってきた牧場のスタッフ。いきなり敵意を向けてくるような青年もいるし、言葉にどもりがありながらも、一生懸命に馬たちを見ている獣医もいる。ちょっとおかしなところはあるし、肉体労働であるがゆえに、人の出入りも激しい。けれども、実際、牧場が生産した馬がレースで活躍する姿を見て、そのやりがいを感じる。そんな生産牧場での日々、というのが続いていく。
しかし、そんな中、祐介は、牧場の近くで失踪したというスタッフの遺体を発見してしまう。最初のそれは、自殺として処理されるが、やがて、第二、第三の変死体が見つかり、さらに、少しは心が通じたと思われた同僚までいなくなって……。牧場の土地に工場を作りたい、という製菓メーカーの思惑。さらに、そもそも、牧場の規模に対して明らかに多すぎるスタッフは何なのか? などという疑惑まで出てきて……
元々、怪しげな部分がありつつも、サラブレッド生産の世界の清々しさ、という流れから始まり、今度は一気に疑惑が深まって……という物語の流れの捻り方はなかなかお目にかかれないもので見事の一言。後半は、色々と後ろ暗いところがあるのだろう、というのが明らかになり、どう着地するのか? という興味がわき、一気に読み切ることが出来た。そういう意味で、読ませる力は見事の一言。
ただ……このオチは良いのか? という気分になるまとめ、でもある。作中で描かれているこの辺りのルールが本当にOKなのかどうかはわからない。ぶっちゃけ、それをすること自体はマイナスと思っていない。けれども、そのために、どれだけ犠牲者を出しているのか? そして、そのことを祐介自身、さらに、疑惑をもって牧場に来た騎手は受け入れられるのか? というとかなり疑問。どーしてそうなった? という風に感じられてならないのだ。さらに言えば、これだけ失踪者、変死者を出していて、警察やらは何もしないのか? とも……
物語の緩急のつけ方。どこへ向かうのかわからない恐怖感。そういうもので、読ませる力は十分にあるのだけど、流石に設定などに無理がありすぎる、とも感じた。

No.5140

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作家の人たち

著者:倉知淳



小説家、文壇のようなものを題材にした短編集。全7編を収録。
著者の作品というと、猫丸先輩シリーズを始めとした、ユーモアを交えた語り口で綴られるミステリ作品、という印象なのだけど、本作にミステリ要素はない。純粋に、ある種の内情描写メインの作品という感じか。ただ、シニカル、というよりも、ちょっとぶっ飛びすぎて……という感じがしないでもない。
それでも、比較的、前半のエピソードは楽しめたかな?
1編目の『押し売り作家』。主人公は、各出版社の編集者。有名作家の紹介で「話だけでも聞いてあげて」と言われ、面会することとなった作家。作家とは言え、全く売れておらず、その作品を出したいとは思っていない。しかし、話だけ、と言いながらも、妙にやる気だけはあって……。「新本格ブーム」とか、そういう中で、雨後の筍のようにデビューした微妙な作家たちの成れの果て、という状況自体は興味深かった。でも、オチはイマイチ。
話として、一番、リアリティがあったのは2編目『夢の印税生活』。作家を目指し、新人賞に投稿し続けて、ようやく念願のデビュー。編集者の評価も上々。次々と作品を発表していくのだが……。まぁ、オチはこうだろうな、という感じがする。ただ、その中で作家として生き残ることがどのくらい大変なのか? そういうものを感じさせる話ではある。
オチの部分で好きだったのは、『持ち込み歓迎』。新たな才能を発掘するため、新人賞だけでなく、持ち込みも推奨しよう! と始まった企画。編集者の主人公は、その持ち込み会に挑むのだが……。それぞれ、小説を書いてこない面会者たち。「面白い話だから」と口頭でひたすら話し続ける者。テレビに出たいから、自分を作家にしろ! 文章はゴーストに書かせろ! と言うもの。そんなどうしようもない面々に憑かれた中、ようやく、小説を書いてきた面会者が出たのだが……。1編目とのつながりもちょっとあるのだけど、新人賞云々とかの話とかでも、「小説じゃないよ」ってのを出してくるのがいる、とか聞くだけに、そのオチも含めて楽しめた。
ただ、後半の話は、ちょっとぶっ飛びすぎていて……という感じ。『らのべっ!』はいくらなんでもあり得ないレベルでの話だし、『文学賞選考会』もなんかなぁ……という感じ。前半のエピソードは、ぶっ飛んだ部分はありつつも、ギリギリ、こういうこともありそうだ、という風に思えたのだけど、後半は明らかにあり得ないところに進んでいる感じがするのだ。
出版不況とか、一時のブームとか、そういう部分を背景にしている話だと思うのだけど、ちょっと後半のノリにはついていけなかった。

No.5139

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