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スーサイド少女

著者:衛元藤吾



立ち入り禁止の屋上を主な生息地にしているひねくれ者の因幡文。そんな彼の目の前で、屋上から飛び降り自殺をしようとし、やめた先輩・鈴鹿涼子を目撃する。死の間際にありながらも、何の色も示さない鈴鹿の瞳に興味を持った因幡は、いじめられていて、球体関節人形と因幡にしか心を開かない後輩・小刑部と共に鈴鹿のストーキングを始めるのだが……
講談社ラノベカップ優秀賞受賞作。
とにかく、登場人物がそれぞれ、ナチュラルにくるっている、というか、そんな印象を受ける。登場人物は最小限の3人なのだけど、それぞれがどうにも拗らせている、とでも言うか……
ヒロインにあたる鈴鹿は、いつも「死にたい」と思っている存在。一方で、小刑部は小さなころから酷いいじめを受けて、その状況をそのまま受け入れている存在。そして、因幡は、と言えば、ただ傍観者として周囲を見たい、という存在。なので、鈴鹿が死にたい、というのを止める気はないし、死ぬところを見たい、とすら言い放つ。さらに、後輩の小刑部が暴力などを受けているのを見ても助けたりはしない。
そんな3人の関係性。因幡と小刑部は、ただひたすらに鈴鹿にストーキングをする。そして、鈴鹿もまた、二人のことを知りながら、いないものとして過ごす。そんな日々が続く中で……
物語の大雑把な流れ、そして、その中でも終盤の部分については、そうなるだろうな、という感じだったし、ちょっと一足飛びに、という感じがした部分がないでもない。
その中で、個人的には、鈴鹿よりも、小刑部の方に感情移入する感じになっていった。酷いいじめを受け、もう、それを諦め、ただ受け入れているだけの彼女。そんな彼女が、因幡にだけは心を開いている、という時点で彼女の心にあるものというのは明らか。そして、因幡を助けるために、色々と智慧やら道具やらを貸して……。でも、それをすればするほど、因幡の心は鈴鹿へ。最低な学園生活。けれども、全てを諦めているわけじゃない。自己矛盾、そして、それだけの因幡がアプローチをしても、応えない鈴鹿への苛立ち。それが爆発して、という終盤の暴発はすごく分かる気がする。勿論、因幡の方も色々と問題があるのは確かなのだろうけど……
かなり特殊な設定のキャラクターばかりだし、人によって共感できる部分が異なる、っていうのは確かだと思う(共感できない、というのも含めて) その中で、個人的には、小刑部が印象的だった。

No.5207

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著者:北森鴻



全4編を収録した連作短編集。タイトルの通り、シリーズ第3作。
前作を読んだのは、実に6年前だったことに驚愕(笑) そのおかげで、何となく雰囲気を覚えているかな? というくらいだったのだが、読み始めて、キャラクターなどについても一気に入り込めた。
今回は、比較的、三國を始めとした周囲の面々の活躍が多かったかな? という印象。そもそも、三國が那智の調査の下調べと称して、問題となっている地へと赴き、そこで事件に遭遇し、最後の最後に那智が出てきて……というパターンが多いため。どちらかというと、同じ研究室に属する由美子との絡みの方が多いかな? と思える。また、どちらかというと天敵のように描かれていた狐目の事務員が意外な活躍を見せるのも見どころかな?
例えば1編目『憑代忌』。大学内で三國の写真を形代にした願掛けのようなことが流行っている。そんな中、三國は、大名主の家に伝わる人形についての調査を命じられる。ところが、その肝心の人形は紛失し、惨殺体のような状態で発見される。さらに、その当主が人形と同じように殺害されて……
これ、ミステリ読みこそ、騙されるんじゃないだろうか? まず、人形が殺害され、それと同じように実際の人間も。所謂「見立て殺人」。そう思っていたら……。考えてみると三國の推理には穴がありすぎるわけで、それを上手く制した謎解きが面白かった。
正直なところ、民俗学というものがイマイチ何だかよくわかっていない自分がいるのだけど、資料の中にある様々な事柄。さらに、それを実際の事件に関わらせて一つの解釈を得る。それが、本当に、その通りの真相なのかはわからない。けれども、そうとしか思えない。そういう独特の味付けは、やっぱりこのシリーズの醍醐味だな、というのを想わざるを得ない。

No.5206

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ハル遠カラジ2

著者:遍柳一



AIの精神をむしばむ病・AIMD。その治療が出来る医工師を求め、チベットを訪れたテスタたち。イリナと触れ合う中、徐々に人間世界への興味を抱くハルらを伴い、難民街の廃校へ立ち寄った一行は、そこで人間の遺体を積んだパワードスーツの襲撃を受けて……
エラく積みまくっていた2巻。
第2巻は、文字通りに、AIたちと、主人の関係っていうところ、かな?
1巻で、テスタがハルの「お母さん」的な立ち位置で、っていうのが綴られたのだけど、今回は襲撃してきたAIのアニラ。さらに、訪れた先の喫茶店でマスターとして店を守るピングー。そのピングーの店へ物資を運び込む「運び屋」のピピン。人々が消失した、世界で、それでもマスターの思いを引き継いで、その日常を守ろうとしているAIたち。イリナとの出会いもそうなのだけど、AIたちとの出会いの中で、少しずつ年相応の少女らしさを芽生えさせていくハル。勿論、随分とあらっぽかったり、はたまた、人間社会のルールから逸脱した部分はあるけど、それでも……。そして、そんなハルを見守るAIたち。
冒頭、そして、終盤にバトルそのものはある。けれども、それ以上にこの巻で印象に残るのは、AIたちの主人、そして、人間に対する想い、といったもの。テスタと違って、ズケズケとモノを言うアニラだけど、それはちゃんとハルのことを想ってのものだったり、はたまた、主人が残した想いをしっかりと引き継いで、客の来ない喫茶店を守り続けているピングーあたりは特にそれを強く感じさせる。
そんなAIたちと、ハルのやりとりを見てテスタが思い出すのは、ハルを拾った日、友として日々を送った友のこと。
人間とAIの関係性っていうのがテーマになっているんだけど、こうなってくるとAIたちが、人間と変わらない、っていうのが強く感じられる。確かに、主人のために、というのはある。でも、例えば、家族などのことが第一で、その上で周囲の人々とも付き合って、というと人間だって同じはず。そう考えると……
そして、終盤に出てくるモディン。彼は、本当に、「人間らしさ」というか、なんか、親近感が沸く、というか。皮肉屋で粗探しなどをしながら、しかし、じゃあ、ハルについて、何もしないのか、というとそんなことはない。でも、本人は、自分は責任を負っていない、という意識があって……。
相変わらず、色々と荒っぽいけど、でも、テスタを始めとして仲間の為なら……というハルのまっすぐな「本質」という締めも良い。
世界観そのものについての謎とかも色々と示唆されてきているのだけど、それ以上に、AIたちと人間の関係性というのが掘り下げられていて、面白かった。

No.5205

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蜂に魅かれた容疑者

著者:大倉崇裕



新興宗教団体に関わる事件で警視庁が緊迫感に包まれる中、都内近郊ではスズメバチが人を襲う事件が連続して発生。しかも、高速道を走行中の車に、蜂の入った箱が投げ込まれるという悪質な事例も。窓際警部補の須藤は、動物好きの新米巡査・薄と共に捜査を開始して……
というわけで、シリーズ第2作になる長編。
前作でもそうだったのだけど、相変わらず、薄がひたすらに話を横道にそらすのは、ちょっと鬱陶しいな。蜂に襲われた、で、どんな蜂なのか? とか、そういうところはまだしも、会話の途中の慣用句を、完全にワープロの変換ミスみたいな感じで言い間違えてのボケとか、流石にそれは無理がありすぎるだろう、という感じがするだけに。長編なのだけど、そういう小ネタの連発が多くて、ちょっとテンポを悪くしている感は否めず。
そんな中での事件。冒頭の粗筋で書いているように都内近郊で連続して起こる、スズメバチによる事件。ただの事故かと思われていたものも多い中、薄は、スズメバチの生態などからちぐはぐな部分を発見する。そんな中、高速道を走行中の車に蜂の入った箱が投げ込まれる事件が……。状況から考えて、殺人? しかし、流石にスズメバチに特定の相手を狙わせる、ということは不可能。ということは、無差別テロ? しかし、それはそれで奇妙なものを感じて……
そもそも、スズメバチで事件を起こしているのは何者なのか? そして、その目的は? 宗教団体とのかかわりは?
捜査を進める中で仲間もまた、危機に陥ってみる。はたまた、終盤、真犯人を追い詰めるための駆け引きなど、抑えるべき部分はしっかりと抑えられていて面白く読むことが出来たのは確か。ちょっと真犯人の掘り下げとかは弱い感じはしたが。というか、これ、やっぱり短編くらいの分量で良かったんじゃないかな? という感じがしないでもない。

No.5204

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宮本サクラが可愛いだけの小説。2

著者:鈴木大輔



正式にヒカルと付き合うことになったサクラ。しかし、どうすれば良いのかわからない。そんな中、三姉妹はサクラに、ヒカルと同棲するようけしかけて……
うん。第1巻以上に何を書いて良いのかわかんねぇや。
とりあえず、言えるのは、宮本サクラ……無茶苦茶にチョロインだな(笑) 基本的に、ヒカルのことが大好きである、というのは1巻時点でも明らかになっているわけだけど、それで何をして良いのか、というのがよくわかっていない。そして、学校の友達やら、はたまた、モデルとしての仕事をしている仲間に相談をするわけだけど……ちょっとした挑発とか、そういうのに簡単に乗せられてしまって……でのアレコレが描かれていく。
その結果、アッサリと風呂に一緒に入ることになったり、はたまた、同棲しろ、と言われてその気になってみたり……。明らかに周囲に流されすぎ(笑)
しかも、モデルとしての活動をしているのだけど、その理由も、ヒカルを振り向かせたい、とか、そういう部分が多々。なので、事務所との契約で恋愛禁止となっているのだけど、そこは完全無視。「見つかったらどうする?」「モデル辞めるからよい」とか、そういうのを見ていると……なんていうか……第三者として、「ごちそうさま」としか言えないのですが……。むしろ、そんなサクラをライバル視し、忠告を与えて、さらに、ヒカルとのデートを邪魔しようとするユカリの方に共感を覚えるのだけど。……ていうか、サクラとイチャイチャしているだけならともかく、三姉妹と同棲していて、しかも風呂とかも一緒に入っていて……と聞いて、しかも、それをサクラが容認している、となれば、そりゃあねぇ……(笑)
相変わらず、そんな話の裏側で、世界が滅びる、とか、そういう話が出ているんだけど、これは1巻に引き続き、よくわからん。
そういう意味で、確かに、宮本サクラがかわいいだけの小説、であり、名は体を表しているんだろうな。

No.5203

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ぬるくゆるやかに流れる黒い川

著者:櫛木理宇



6年前、無差別殺人で家族を喪った香那。大学生となった彼女の前に、クラスメイトで同じ事件で家族を喪った小雪が現れる。小雪は、事件の犯人で、取り調べ中に拘置所で自殺した犯人・武内譲について調べないかと香那を誘う。育ての親から「淫売の血が流れている」と半ば虐待されて育った譲。そんな情報を知る中、譲の大叔父が何者かに殺害され……
カテゴリでいえば、間違いなくミステリ作品、と言える作品。でも、謎解き、とか、そういうのとは違った作品と言った印象。
物語の中心となるのは、犯人である譲。そして、その祖父・和偉、その弟・昭也と言った人々と「女性」との関係。犯行の前、SNSに譲が残した発言の数々。それは、必要以上に女性を敵視し、それを害したい、というもの。そして、その背景には祖父による虐待があった。そんな祖父はなぜ、譲を虐待していたのか? そして、譲の母は……
譲の話から、その母、祖父、その弟へと犯人の一家を巡っての過去を突き止めていく、という形で描かれるのだけど、その中で感じるのは、「女性の立場」とでも言うべきものなのかな? 家を守る存在。女に学などいらない。そんな言葉は、現在でも決して死んだわけではない。ひっそりと生き残っている。ただ、その一方で、作中で譲が言っているように、フェミニズムとか、そういうものの台頭で、却ってヘイトをためる存在もいる。そして、その背景にあるルーツとでも言うべきもの。しかも、戦前、戦後時代の、西日本、九州における貧しい女性の運命。これまた、「家を守るため」で行われていたことだが、しかし……。
単純に言えば、世間そのものの背景と、その中でも、特殊な武内家の事情が、不幸な形で合致してしまった。そして、それが凝縮されて、ということになるのだろう。ただ、そんな一言で片づけてはいけないんだろうな。あまりにもその中で行われていたことはおぞましいものだし、それが極めつけの特殊事例ってわけでもないのだろうし。
一応、その背景とか、そういうものは明らかになっているし、そういう意味では謎は解けているのだけど……どうしても、モヤモヤという気分が残る。

No.5202

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著者:持崎湯葉



「真面目系クズ」――真面目そうに見えながら、実態は怠惰であさましく、取るに足らない存在。そんな存在である八卜悠楽は、クラスメイトから貰った手作りクッキーを飼育小屋のウサギに与えていたところを、性格の悪さに定評のある黒内人花に見つかってしまう。そして、彼女の「クズ活」に付き合うことになって……
なんか、すげー作品だな。
真面目系クズ、つまり、周囲の空気とかを読むし、授業なども一見、真面目に受けている。けれども、実際には怠惰だし、本音は別の場所にある。見つからないところでは、とことん、悪態だってつく。そういう裏表の激しい存在。そんな八卜が、その裏の顔を黒内に見つかり、「真のクズ」になるための活動に付き合わされて。
結構、この八卜の立ち位置って共感できるんだよな。黒内みたいに、周囲と対立してまで、本音で何かをしたいわけではない。でも、色々と不満とかあるし、面倒くさいとか、そういう想いも沢山抱いている。程度差はあるだろうけど、誰にだってある感情だし、聖人君子と呼んでいる白庭さんについて、傍から見ている分には良いけど、ガッツリ傍にいると鬱陶しい。そういう気持ちもよくわかるし。
そんな中でのクズ活。正直なところ、かなり「しょーもない」ことも多いのだけど、そのしょーもなさも含めて、クズっぽさを感じる。
実際、物語的にも、ある意味で、何なの、コレ? って部分がある話ではある。あるんだけど、その辺りの諸々を含めてこの話らしい、と感じてしまう。色々とヘンテコな話。でも、その中で、八卜の「真面目系クズ」っぷり。そこへの共感など、思うところは色々とあったな、という風に思う。
妙な疾走感のある作品、戸でも言えばいいのかな?

No.5201

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君死にたもう流星群4

著者:松山剛



自らのタイムリープを星乃へと告げた大地。しかし、そのことが原因となり、却って関係をギクシャクとさせてしまう二人。そんな中、不審な動きを見せていた黒井冥子が大地に接触する……
ということで、今回は、黒井冥子がメインとなる話。勿論、タイムリープを巡ってのアレコレも進行。
何と言うか、まず思ったのは、話として、結構、毛色が変わってきたな、ということだったりする。
ネタバレになってしまうのだけど、黒井冥子は、大地と同じように、未来からタイムリープしてきた存在。なぜ、彼女がタイムリープをしてきたのか? それは、自分が奪われた「小説家」としての存在を取り戻すため。元々、コミュニケーションが苦手であった冥子。しかし、文章を綴ることに喜びを覚え、小説家としてデビューすることも出来た。しかし、何者かにより、自分自身の文章を奪われ、盗作者としてその立場を奪われてしまった。そんな簒奪者から、自分の存在意義を取り戻すために……
てなところで、わかるように、これまでタイムリープしてきたのは(基本的に)大地のみだったのが、同じような存在が登場。そして、大地と同じように失われた過去を取り戻すことを狙う。その中での知識として知っていることと、実際にやった、という違いとか、そういうのは大きいのだけど……それが、今度は星乃とのアレコレに繋がっていく。
「タイムリープしてきた人間は、自分の後悔を変え、生き生きとしている」
となれば、今現在(作中の2017年)、同じような思いを抱いている星乃が自分も……と思うのは、これまた当然で……。作中、大地が、自分がしてきたことを悔いるシーンがあるのだけど、この辺りも、「知識としては知っていても」という部分に繋がるんだよね。ただ、大地や冥子と違って、星乃の場合は……
タイムリープに関してのアレコレとか、そういうのも含めて、星乃について、かなり物語が進展してきた印象。夢、とか、そういう部分がテーマではあるのだけど、本編とも言うべき、星乃自身についてが段々、中心になってきている、というのを感じる。

No.5200

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夏へのトンネル、さよならの出口

著者:八目迷



「ウラシマトンネルって、知ってる?」 海沿いの田舎町・香崎。夏のある朝、高2のカオルはそんな噂を耳にする。そのトンネルに入ると、年を取る代わりに欲しいものが手に入る野だという。そして、それらしきトンネルを見つけたカオルは、5年前に亡くした妹が取り返せるのではないかと思いつく。放課後、一人でトンネルの調査を開始するカオルだったが、転校生のあんずが現れて……
第13回小学館ライトノベル大賞・ガガガ賞&審査員特別賞受賞作。
序盤で読者を引き付ける力がすごいな、これ。
ある意味、自分の住んでいたド田舎にそっくりな印象の街の描写とでも言うか……。駅の近くには、それなりに家屋などもあり、人もいる。でも、ちょっと離れれば人も訪れない山の中。野生動物と電車がぶつかって、なんていう「田舎の鉄道あるある」。また、高校という環境も、ある程度の区分けはあるにせよ、同じ学校に真面目な生徒も、いわゆる不良と言われるような存在もいる。そんな描写が、まず、いかにも「田舎町」という雰囲気を感じさせてくれる。そして、その中で、過去に妹を喪った、という主人公・カオルの過去。
元々、不安定な関係にあったカオルの家。それを繋ぎ止めていたのが、両親の「本当の」子である妹。カオルにとっても大事な存在であり、最愛の存在でもあった。しかし、それを自らの不注意により……。崩壊した家庭。母は家を後にし、父は抜け殻のように……。だからこそ、妹の存在に執着するカオル。
一方、東京から転校してきたはじめ。周囲に溶け込めず、浮いた存在でもある彼女。そして、彼女もまた、自分の夢があり、それを理由に家族を喪っていた。そして、そんな思いから二人は協力関係を結ぶことになって……
浦島太郎の竜宮城のように、時間の流れが異なる異空間。数分間が数時間にもなってしまうその空間にいるため、わずかな時間が、数日とかという時間の経過になってしまう。そんな状況を共有する中で繋がっていく二人。そして、それぞれの望みをかけた計画を実行するときになって……
別れた運命。しかし、その間のアレコレがカオルとあんず、両者の間にしっかりとあって……。ちょっと後半がダイジェストっぽくなってしまった感じはあるけど、しっかりと物語がまとめ上げれており、気持ちよく本を閉じることが出来た。

No.5199

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著者:小島正樹



警察官5人を殺し、死刑確定囚として独房にいながらも、優雅な生活をつづけながら、「闇探偵」として数々の難事件を解決してきた月澤。そんな月澤を収監する脳科学医療刑務所で殺人事件が発生。捜査一課の百成と共に、捜査を開始するが、所長が殺害され、刑務所は閉鎖されてしまう。治安維持部隊の突入が迫るまでの時間内で、事件の解決を図るのだが……
シリーズ第2作。
なんていうか、2作目で一気に物語が大きく動いたな、という印象。
今回の事件は冒頭に書いた通り、刑務所内。囚人たちの自由な行動も、さらに持ち物の持ち込みも制限されるそこで、立て続けに起きた殺人の方法は毒殺。しかも、その遺体には文字が……。さらに、所長までもが撲殺され、刑務所は閉鎖状態に。さらに、この刑務所の設立に尽力した元警察官僚も……
閉鎖された刑務所。その中で、ある程度、自由に動き回れる受刑者たち。さらに、持ち込みが出来ない毒物をどのように? さらに、遺体に刻まれた文字の理由は? 前作は、刑務所の外で起きた殺人を、刑務所内にいる月澤が指示を与えて、百成が……という形で綴られた前作とは異なり、今回は、実際に目の前で起きていく殺人。それを百成と月澤がコンビを組んで……。
そもそもが連続殺人犯である月澤とのコンビは大丈夫なのか? という疑問はある。しかし、百成の足りないところを教えてくれ、また、時にピンチを救ってくれる月澤。そんな月澤に対して、より信頼感を深めていく百成。そうして、その犯人を突き止めるのだが……
受刑者同士でのやりとりは出来ない、という前提はあるが、しかし、という刑務所運営の現実的な部分とか、面白いと感じるところはある。その一方で、メイントリックとなる部分に関しては、それ、検査がガバガバすぎない? と思えるところもある。その辺り、前者が一つの伏線にはなっているわけだが、それでも、ちょっと……と思うところではある。
そして、その上で垣間見えた月澤の本性。重要な位置を占めていると思われた所長たちの退場とかも含めて、一気に物語が動いたな、というのも同時に感じざるを得ない。

No.5198

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