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著者:犬君雀



クリスマスを間近に控えた12月初旬。先輩に振られた僕は、「クリスマスなんてなくなってしまえば良いのに」という言葉を発する。そんなとき、僕の前に現れた女子高生は言う。「できますよ」と。彼女の持つノートは「望まない願い」のみを叶えることが出来るという。ノートの力を発揮させるため、偽の恋人として僕と彼女は付き合うこととなって……
第14回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。
これはまた、なかなかヘビーというか、ビターというか……
冒頭に書いたような形で始まる二人の関係。家出をしている、という少女と、大学生ではあるが出席もせず、ダラダラとした日々を送るだけの僕。二人は、なだれこむような形で同棲をすることになるが、少女は僕のことを「犯罪者さん」と呼ぶなど、偽の、と言いつつもとても恋人とは思えない関係性。恋人とか言いつつ、僕の側は何かにつけて、振られた相手である「先輩」のことばかりを思い浮かべる。そもそも、その先輩との関係にしても、身体の関係とかがあるけれども、恋人なのか? というような状態。そして、主人公の僕は、なかばストーカーのような行為に明け暮れている状況。そういう意味で、どこまで行っても爛れた、というか、下向きな関係性が続く。
しかし、そんな中でだんだんと明らかになっていく少女の状況。その中で、それまでと同じように振舞いつつも、少しずつ変化していく僕。それは、少し、前向きと言うか、そういう風にもとらえられるように。話だけを書けば、そういう感じになるのだけど、元々、現実的なのか、そうではないのか? という雰囲気だったものが、より、儚い、曖昧としたものになっていく雰囲気が強く印象に残る。そして、それは終わり方もまた……
独特の、夢うつつが……という雰囲気と、その中にある作品全般を通して感じられるビターな雰囲気。それが独特の味わいをもたらしているように思う。

No.5527

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帝都地下迷宮

著者:中山七里



廃駅めぐりが趣味の公務員・小日向は、ある夜、趣味が高じて廃駅となっている地下鉄万世橋へと潜り込む。不法侵入をして訪れたそこで、小日向があったのは地下で暮らす人々。その人々に拘束された小日向は、彼らが「ある事情」でそこで暮らしている、ということを知る。普段は入ることのできない場所、そして、人々の境遇を知った小日向は、「名誉市民」として通うようになるのだが、そんな地下空間で殺人事件が発生して……
今年(2020年)、著者は12か月連続で新刊を刊行する、ということで、その1作(ちなみに、『騒がしい楽園』も、その1冊)
とりあえずいうと、政府の側の事情で地下で暮らす人々・エクスプローラーの存在を知った小日向。役所で、生活保護などの申請受付をしながらも、実際に困っている人に手を差し向けられないもどかしさとか、そういうものを感じていた小日向が、微弱ながらも、その知識を生かして彼らを守ろうと動き出し、職場でもおかしなことに異を唱えていく、というような部分は面白かった。
面白かったのだけど……はっきり言って、かなり荒唐無稽な話。それも、荒唐無稽でも、一種のファンタジーとか、SFとかとして割り切って読める作品ならば良いのだけど、先に書いたように公務員としての知識を生かして……とか、そういうところが、現実的なだけに、却って現実離れした印象を受けずにはいられなかった。
以下は、ネタバレにはなるので、その点については注意してほしいのだけど……

(ネタバレ)エクスプローラーは、国の政策の失敗によって日光を浴びることができなくなった存在。そして、それをひた隠しにするために、地下で暮らすことになった。彼らは国に対して恨みはもっている。しかし、ほとんどが老人という状況で何かをする、ということは出来ない。しかし、そこで起きた殺人の被害者が、実は公安刑事であったことで、彼らが公安からマークされている存在であること。一方で、その事件により、捜査一課も捜査を開始することで、警察の2つの部署からマークされていく……という展開になっていくわけである。
でも、その病気の設定などはともかくとして、そうなったから、と言って「地下鉄の廃駅に住め」ってことになるかい? という感じが……。
また、終盤、廃駅マニアの小日向が、その知識をもとにエクスプローラーからの逃走を図るのだけど、ただのマニアが知っている知識なら、地下鉄の会社とかに資料とかあるよね? 警察が、そういうのを使わないわけがないじゃないか、という気もする
(ここまで)

また、殺人事件についても、取ってつけたような解決。単行本で280頁ほどの作品で、色々と詰め込んだ結果、何とも中途半端な形になってしまったように思う。
「かってこれほど書くのに難儀した作品はありませんでした」と著者が宣伝文句としてつけているのだけど……。申し訳ない、それ、悪い意味で受け取ってしまった。

No.5526

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著者:二丸修一



黒羽の記憶喪失を巡り大喧嘩してしまった俺。そんな中、群青同盟の活動として、沖縄でミュージック・ビデオを撮影することが決定。黒羽が遅れてくる中、空港に現れた白草の雰囲気がいつもと違っていて……
前巻が黒羽のターンならば、今回は白草のターン。
CM撮影の中、記憶喪失を装って距離を詰めていった黒羽。しかし、実はそれは嘘で、という形で終わったのだけどその結果の喧嘩。そして、その間に白草が……
MVの撮影。二泊三日の合宿。しかも、黒羽はしばらく留守。だからこそ、という中で色々と計略を練る白草。そのなかで、想定外の失敗などもあるのだけど、それすらもが末晴の気持ちをつかんでいく。しかも、他の真理愛であるとかのように、芸事に慣れているとか、そうことがない白草は、ダンスなどでも後れを取る。でも、一生懸命に、末晴のアドバイスなどを手に入れ……。結構、ヘッポコなところがある白草だけど、でも、そのヘッポコさが逆に、っていうのは、完全に好循環と言える状態になっているなぁ……
一方で、遅れてきた黒羽。そもそもが、1巻ラストで思わず断ってしまった、というところがあったからこその記憶喪失という嘘。でも、末晴は察してくれない。そんな挙句の喧嘩。互いが気まずい状況で、しかも、意固地になっている。しかし、そんな中でも、末晴の試験対策のためにテストを作るとか、甲斐甲斐しく世話を焼ている。この巻だけだと、完全に「負け幼なじみヒロイン」になっているけど。
そんな中で、末晴のことを想っているが、黒羽、白草に対立させておいての漁夫の利を狙う真理愛とか、面白そうで色々と策を練る友人。結構、カオスなことになっているなぁ……と。

No.5525

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誘拐屋のエチケット

著者:横関大



誘拐屋――人を誘拐し、指定された場所へと送り届ける――を営む田村は、組織からの命令で、根本という新入りの教育係を受け持つことになった。一人のほうがやりやすい、と思う田村だが、相手に過剰に感情移入する、余計なことをすぐに請け負う根本に振り回されることになって……
というような感じで進んでいく連作短編形式の作品。全7編。
いかにも著者らしい作品。誘拐屋……冒頭でちょっと説明したけれども、相手を無理やりに拉致して、指定された場所へと送り届ける。勿論、借金から逃げている相手を、という場合もあるけれども、スキャンダルにまみれた芸能人を誘拐してマスコミなどから守るとか、そういう面もある。非合法ではあるのだけど、悪人である、という印象もあまり受けない。で、田村たちは、その誘拐を請け負うのだけど、同時にその裏なども見つける、という形で進んでいく。
例えば1編目。田村と根本が請け負うこととなったのは、年下の俳優との不倫スキャンダルが発覚した女優の誘拐。新人の根本と組まされ、その根本に振り回されながら、その誘拐を請け負うのだが、そのスキャンダル自体の背景は……。なんか、こういうスキャンダルあったよな……というのを思いつつ、田村、根本両者のキャラクターをしっかりと覚えさせるのが出来たのは流石。
そして、エピソードを続けていく中で感じるのは、田村の存在。目立たないように、しかし、格闘技をやっていて「仕事」に対してはストイックな存在。当初は、根本のことを鬱陶しい、と思いつつも、しかし、何だかんだで根本の願いなどもかなえていく。そして、言葉の上ではクールに振舞いつつも、どんどん積極的にお節介を焼くようになっていくのが微笑ましい。
そんな感じで田村と根本がいいコンビになってきた、と思ったところで、突如、根本が組織を離れてしまって……
6編目から唐突に入ってくる結婚を前にしたカップルの話。6編目の事件に無関係というわけではないのだけど、直接の関係者ではない。そして、そんな事件の裏で、なぜか根本が暗躍している様子が見られる。そして、7編目。そのカップルの結婚式になぜか招待されたそれまでの事件関係者。相次ぐトラブル。根本の行動の真相……。そこまでの事件でちょっとずつあった伏線がしっかりと回収された結末は見事の一言。
各編40頁程度の話なので、誘拐に関する準備とか緊張感とか、そういうものはない。また、根本がどうやってこの組織に入ったんだ? とか、ツッコミどころはある。あるのだけど、それぞれのエピソードの中にある謎。そして、それが繋がっていって、温かい気持ちになれる読後感。著者の良さがしっかりと感じられる。

No.5524

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怨毒草子 よろず建物因縁帳

著者:内藤了



仙龍を救うためにも、まずは曳家とは何かを学ぶことにした春菜。仙龍とは別の会社による曳家を見学することになったが、その直後から、その現場近くでは怪異の目撃談が相次ぐことに。調査に出た春菜だったが、彼女が見たのは無残な死様の遺体が転がる、という幻視。仙龍は、春菜が幻影を見ているときに、地獄を描きたい、という欲求があることに気づき……
シリーズ第7作。
タイトルだけを見ると、建物じゃない! っていうか、いわゆる不動産ですらない! 本だよ!
と、変なテンションで書き始めてみたのだけど、話は面白かった。事件の発端は、寺の持仏堂の曳家を行ったことで怪異が始まった、ということ。建物そのものには特に因縁などはなく、春菜自身も特に嫌な気配などを感じることもなかった。しかし、実際に、その直後から始まっているのだから、何か関係があるはず。
そんな中、小林教授が見つけたのは、その寺にある、という「宝」の存在。あるらしい、ということは伝わっているが、しかし、実際にその場には存在していない。それは一体、何なのか? そして、春菜がサニワの力によってみることとなった地獄のような光景。その光景の意味するところは? 起こっている怪異と、地獄のような光景の共通点。さらに、教授らによって明らかにされていく、宝の正体……。これまでの作品だと、予算が、とか、そういうところが入るのだけど、今回は、そういう部分がなく、純粋にその寺、宝にまつわる因縁と、怪異の正体、という部分にスポットが当たっており、純粋なホラーモノとして引き付けられた。
ある意味、俗悪趣味な絵を描いていた絵師。その絵師の「描きたい」という想いと、そのために実行していた行為に対する罪悪感。「異常である」と言えばその通りなのだけど、理性と本能の鬩ぎあいとか、そういうものが強い想いへとつながっていく、という部分の生々しさが非常に魅力的。
その一方で、春菜と仙龍の関係性。惹かれあっているが、しかし、そこに横たわるのは仙龍の寿命と言う運命。それを何とかしたい、と思う春菜と、そういった努力を続けながらもどうしてもできなかった過去の事例。そこからできてしまう亀裂。主人公が春菜だから、勿論、春菜の想いには共感できるのだけど、一歩、引いて考えてみると仙龍側の想い、っていうのもよくわかる。物語の主軸の一つが二人の関係なのだけど、今回、その関係が新たな局面に入ってきた、というのは間違いないだろう。そして、ラストシーンでの春菜の行動。
怪異に関してのアレコレという部分の面白さ。そして、二人の関係性の進展と言う部分。双方ともに引き付けられた。

No.5523

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著者:石川博品



大白白帝国。野球の巡業で身を立てていた白白人が興した国。その皇帝暗殺を胸に秘める少年・海功は、少女に身を扮し、後宮へと入り込む。新入り宮女となった彼が見たものは、帝国中から集められた少女たちが帝の寵愛を受けるべく野球に熱狂する姿だった。野球少年であった海功もまた、その熱狂の渦に巻き込まれることになって……
著者の初期作品を読んでみているのだけど、やっぱ、ものすごくクセの強い作品だなぁ……
物語の流れとしては、冒頭に書いた通りなのだけど、ただ野球をするだけなのか? と言えばさにあらず。後宮に入ったカユク。彼は、当然、新米であり、その中の地位としては最も格下。その中で、当然のごとく、下に見られ、中には露骨に嫌悪を露にするものも。一方で、帝の寵愛を手にするために派閥争いなどもあり、各チームは各チームでの派閥争いのようなものも存在する。しかし、その中でも野球に勝って、帝に注目をされて……という部分では一致する。
そして、物語の主人公であるカユク自身のこと。極貧の中で育ち、大好きだった野球も取り上げられ、皇帝暗殺のために後宮へと入れられた存在。勿論、その目的を忘れているわけではない。しかし、新米として忙しく働く日々と、色々とありつつも大好きだった野球をすることが出来る状況。その中に、このままでも良いのではないか? なんていう感情も見えてくる。しかし、実際には男であるし、このままではいられないのも間違いがないわけで、その状況のギャップとでも言うべきものを常に抱えている。このあたりの状況というのが、独特の作品世界観を作り出している、というのは確か。
読んでいて、確かに面白い。色々な要素がごった煮になっているのに、なぜか闇鍋にならず、ちゃんと調和している、とでもいうか……。この独特の感覚はなかなか味わえないものだと思う。
ただ……逆に言えば、これ、どういう風に説明すればよいのだろう? という気分にもなる。
例えば、カユクが、皇帝暗殺を何よりも狙っていて……というのであれば、まだ違うのだろうけど、結構、日常に馴染んでいるわけだし、ただ野球をしている話か、と言えばそうでもない。わかりやすさ、というのがあまりないのが、セールスポイントとして欠けてしまっていたのかな? なんていうことを思ったりはした。

No.5522

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箱とキツネと、パイナップル

著者:村木美涼



大学を卒業した坂出は、就職先のスポーツショップが入るショッピングモールにほど近いアパート・カスミ荘に入居した。一見、ごく普通のアパートであるが、姿は見せないもののマメな大家、さらに個性的な住民たちがいる場所だった。住人たちとの楽しい日々を過ごすことになる坂出だが、おかしなことも沢山起こって……
第6回新潮ミステリー大賞・優秀賞受賞作。
なんだかんだ言いながらも追いかけている新潮ミステリー大賞。これまで読んだ歴代の受賞作は、ヘンテコな作品が多いのだけど、本作も結構、ヘンテコな話。以前の受賞作でも言われていたけど、この作品も、選考委員である伊坂幸太郎氏の作品が頭に浮かんだ。
物語の一番の魅力は何と言ってもカスミ荘の住人との交流かな? 粗筋にも書いたけれども、物語の中心となるのは、同じアパートに住む個性的な住人とのやり取り。引っ越しを手伝ってくれた友人の藤井。息子のことをやたらと心配する前原夫妻と、巨漢の息子・翔馬。コミュ障のコンビニ店長の村瀬、生真面目だけど、酒を飲むと……な北白川、夜の仕事をしているっぽい女性・進藤。さらに、住人ですらよくわかっていない謎の人物・鈴木。不可思議な出来事は起こるのだけど、それについて、(鈴木は出てこないけど)住人がアレコレと噂をしたり何なりと話をし、時に一緒に食卓を囲み、助け合い……というやりとりが何よりも楽しい。
そして、物語として、確固たる謎……とでもいうのかな? 例えば、「殺人事件が起こりました」っていうのならば、その犯人は誰なのか? みたいなものがあると思うのだけど、本作の場合、それはない。しかし、やりとりを重ねる中で、姿を現さないが、「回覧板メール」やらで、やたらとマメな大家は何者なのか? 姿を現さない「鈴木」は何者なのか? 隣の空き地を巡ってトラブルを抱えている隣人は何なのか? さらに、なぜかうまく機能しないインターフォンに、扉をたたく「こん、こん……」という音……。謎は謎だけど、でも、どこへ向かうのかはわからない。その不安定さ。だからこそ、どう決着するのかが気になった。
物語のオチとしては、一つの解決はしている。でも、すべての謎が解けて……というわけではなく、何かふわふわとしている感じはある。でも、希望の見える終わり方とかを含めて、意外と満足感のある終わり方だった。

No.5521

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シュレディンガーの猫探し

著者:小林一星



探偵は「真実」を求め、魔女は「神秘」を求める。そして、人は時に解かれたくない謎があり、秘密にしておきたい真実がある。探偵嫌いの守明令和は、文芸部部長の芥川くりすの紹介で、「迷宮落としの魔女」焔螺と出会う。謎こそを「神秘」ととらえる焔螺と、謎を解きたい「探偵」との対決が始まる……
第11回小学館ライトノベル大賞・審査員特別賞受賞作。
これはまた、変わった趣向の物語でございまして……
物語は3章構成で綴られており、1章では密室で起きた事件。2章ではクローズドサークルで起きた事件……という風に謎が提示される。そして、それぞれに「探偵」が現れて謎を解こうとするのだけど、それを令和、焔螺が「謎は謎のまま」にして解決するのか……という戦いが開始される。
なんていうか、これ、ある意味ではミステリー論とでも言うべきものだよな、というのを思わずにはいられない。
物語は各章、どういう状況があって、どういう部分が不可解な状況であるのか、というのが提示される。勿論、その状況整理はミステリ作品の推理そのもの。そして、令和たちも、そういうことを踏まえている。しかし、そこからのアプローチが違う、というか……。令和たちと対立する探偵側のアプローチは、普通のミステリ同様、その謎が合理的にどう説明できるのか? ということへと向かっていく。一方、令和、焔螺たちのアプローチは……
例えば、東野圭吾氏の『新参者』は、「真実が明らかになることで、次の一歩へと進むことが出来る」というようなメッセージが綴られていた。しかし、真実が明らかになることで、取り返しのつかない傷を負ったりすることもある。それよりも、謎を謎と残しても、その問題は解決できるのならば? このあたりのやりとり、アプローチの違いって、謎をどう扱うのか? というミステリー作品の在り方に繋がっていくものがあると思う。そして、例えば、第1章の結末とか、まさに、そのアプローチの違いを如実に示しているエピソードだと思う。
まぁ、このあたりの「謎をどう扱うのか?」という話において、その謎がどういう種類のものなのか? なんていう部分に委ねられる部分も大きいと思う。例えば、殺人事件が発生して、なんていうときには、誰が犯人なのか? とか、謎のままじゃあねぇ、っていうこともあるし。その辺の、設定とかも色々と考えられている、というのを感じる。
そういう意味で、ミステリ作品における、謎の扱い、っていうことに色々と思いを巡らせることになった。

No.5520

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呪殺島の殺人

著者:萩原麻里



目覚めると、そこには女性の遺体が……。すべての記憶がない僕は、どうやら秋津真白という名で、死んでいるのは伯母で、屋敷の主・赤江神楽だという。穢れを背負った呪術者の末裔は、皆、悲惨な死を遂げる。そんな話が残る中、赤江神楽もまた、その呪術者の末裔であるという。甥に殺されたのもその呪いなのか? 真白は、幼馴染の古陶里と共に事件の謎に挑むが……
THE・クローズドサークル!
っていう雰囲気なんだけど、ちょっと違うのは、やっぱり設定の妙にあるんだろうな。
冒頭に書いた粗筋の通り、記憶を喪った状態で、伯母の遺体と共に発見された真白。部屋には鍵が掛かっており、状況的に真白が犯人であろう、という環境。しかし、真白自身は自分が誰なのかも記憶にない。そして、伯母にとって唯一の肉親である真白は、その莫大な遺産を受け継ぐ立場。わざわざ殺す必要があるのか? さらに、部屋に設置された防犯カメラのデータはなぜか奪われている。状況的には真っ黒だが、しかし、なにかチグハグ。
そんな中、館は台風によって孤立し、館へ続く山道で、島の駐在員の他殺体も発見される。さらに、館に集まった面々も次々と殺害されて行って……
そこだけだと、どういうトリックで? とか、そういうところがクローズアップされると思うのだけど、この話の面白いところは、話が進むにつれ、どんどん、事件の背景が明らかになっていく点。真白にとって、自分を擁護してくれると思われた存在が一転したり、はたまたその逆だったり。はたまた、島に来る前から、真白を脅迫している存在がいたり、でも、その脅迫者の目的を考えると、真白を犯人に仕立て上げることが得策とも思えない。いろいろな思惑がある。しかし、それがどんどん入り組んでいく様に引き付けられた。
事件の真相、黒幕の思惑についてはちょっと極端かな? と思ったところもあるのだけど、クローズドサークルの中にあって、それぞれの思惑が交錯していく様がすごくよかった。

No.5519

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著者:是鐘リュウジ



女神により、神聖空間に封印された魔王ジュノ。しかし、彼はその封印された空間で、300年の時間をかけ、史上最強の魔法「魔導調律」を編み出した! 復活を遂げたジュノは、相手に快楽を与え、絶頂させることで魔導経絡に介入し、相手を意のままにすることが出来るその能力をもって、再び、世界の支配に動き出す!
うん、エロ枠だな(笑)
復活を果たした魔王が、粗筋で書いた能力をもって世界征服を目指す、という話なのだけど、当然、能力が能力なだけに、快楽調教とでもいうべきものを行っているシーンがかなりの分量。魔王は魔王で、人間の身体を手に入れたことで、これまでと違った快楽などを知ることになって……となるので、こっちもこっちで余裕とかないわけだけど。
ということで、エロ方面に目が行くわけだけど、個人的には、敵対する女神側のへっぽこさ、というか、ダメダメさ、というか、そういう部分がギャグとして好きだったかな?
魔王復活の一報を聞いて、最初に攻め込んでくる王女スピカ。王女として、魔王と戦う、という使命を持っているわけだけど、周辺の面々は「こいつにやらせておけ」レベルで、あまり協力してくれない。さらに、本人のパラメータ的には知力20という物凄い脳筋。しかも、魔導調律をする中で、それがどんどん下がっていく。途中で、魔王側について、女神を迎え撃つときの、ポエムには大笑いした。
結構、直接的な描写はありつつも、だんだんとエロ描写に慣れてくるのか、最初の、魔王を復活させた直後のリリスとのアレコレが一番、エロスは感じたかな? それよりも、途中からはギャグ作品として楽しめた、という印象。

No.5518

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