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楽園の真下

著者:荻原浩



日本でいちばん「天国に近い島」と言われる亜熱帯の島・志手島。本土から船で19時間。マリンスポーツが盛んなそんな島で、ギネス級の大きさを誇るカマキリが発見された。珍しい動物についての本を執筆していたフリーライター・藤間は、取材のため、その島を訪れる。だが、彼の本来の目的は、2年間で12名もの人間が自殺をしている、と言う部分の取材であった……
うん、完全にとあるジャンルの映画だった(笑)
物語の中心となるのは、巨大なカマキリの存在と、島で相次ぐ自殺。とりあえず藤間は、当初の目的であるカマキリの取材に赴く。動物学者である秋村と共に山に入る。そして、その中で、島に生息する動物が減少している、と言う話を耳にする。そして、自殺者が相次いでいる、という泉で、巨大なカマキリを発見する……。そんな矢先、今度は新たに不審な死を遂げる者が現れ……
結構、早い段階で、カマキリ。そのカマキリに寄生し、不可解な行動をとらせる存在、というのが明らかになっているので、こうなんじゃないか? という想像をすることは出来る。そして、その予想は中盤でその通りだった! というのも……
ただ、著者の、普段の作品では「ゆるさ」とも感じさせるのほほんとした物言いとか、そういうのが中盤以降は良いアクセントになっていく。自殺事件、そして、野生動物などの減少。その理由について、藤間と秋村にとっては明らか。だからこそ、必死に危機を訴えるのだが、島の人々の反応は遅い。そして、いざ、山狩りに、となっても、その巨大なカマキリの映像などを見せても、人々の反応は昆虫採集の延長線。しかも、観光に影響が出るから、と応援要請を渋ったり……。これ、藤間視点で見るからこそ、歯がゆさを覚えるのだけど、実際、当事者になったらぴんと来ない、っていうのはあるだろうし、結構、現実にもこういうことがあるんじゃないかな? というのを思わされる。
……で、終盤の展開は……うん、あのジャンルの映画だった(笑)
よくよく考えると、なぜ、そのような状況になったのか、という原因とかは不明だし、藤間自身も……っていう部分は残ったままだし、そして、オチ部分は……
一気に読ませる力があって、面白い。それは確か。……と同時に、完全にあの手の作品を踏襲したっていうのは……狙って、だろうな……多分……

No.5315

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僕が僕をやめる日

著者:松村涼哉



「死ぬくらいなら、僕にならない?」 生きることに絶望していた立井潤貴は自殺寸前のところ、一人の青年に声をかけられる。そして、その青年・高木健介として本人変わり、大学生活をすることに。誰にも知られない二人だけの秘密の日々。だが、それから2年。ある殺人が発生し、その青年は姿を消してしまう……
奇妙な状況で始まった同棲、変わり身生活。しかし、本物の高木について知っていることは、覆面作家として活躍している、ということくらい。そんな中で発生した殺人事件で、高木として暮らしている立井は犯人としてマークされてしまう。自身が犯人ではない、というのはすぐに証明されたものの、自身が身分を偽っている身。さらに、犯人隠匿の疑いまで……。そんな中で、立井は、高木の過去について調べ始める。
その中で明らかになっていく、高木の過去。小学生の頃になって、ようやく戸籍を手に入れ、学校に通うこともままならなかった。さらに浮かびあがってくるのは、高木が何人もの人々を殺害しているのではないか、という疑惑。しかも、調査を進める中、立井に対して調査を中止するように、という脅迫まで来るように……
前作『15歳のテロリスト』もそうなのだけど、社会問題などを取り入れながら、という作風が板についてきたかな? という感じ。無戸籍の人間が抱えている問題。その背景にある貧困、DVなどと言ったもの。それらを描きながらも、立井の、自分を救ってくれた高木に対する感謝と疑惑という二つの入り混じった感情。その辺りが上手くアクセントになって、どんどん読み進めることが出来た。
真相そのものに意外性がある、っていうわけではないのだけど、でも、だからこそ、立井と高木の関係性が……と言う風にまとめたのも上手い。デビュー作からそうなのだけど、著者は、やっぱりこういうタイプの作品が合っていると感じる。

No.5314

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宮本サクラが可愛いだけの小説。3

著者:鈴木大輔



ヒカルとの一線を越えるべく、熱海旅行へと向かったサクラたち……。それが出来ないと、世界は滅びてしまう!?
相変わらず、ストーリーを説明するの難しいな……これ……。だからこそ、「可愛いだけの小説」なのだろうけど。
一応、ヒカルとエッチなことをしないと、ヒカルの中に封印されている(?)オーディンの力が解放されてしまい、世界が滅びしてしまう、ということが示され、そのために色々と行動をする、という話ではある。しかし……
やっぱり、サクラさん、へっぽこ~!!
旅行先で妙にテンションが高くなっている。自分が好きなレトロゲームなどについて、妙に熱く語ってしまう。そして、エッチなことを、というので勢いだけで女体盛なんぞをやらかして、しかし、冷静になってパニック。……挙句に、自分を……と思って、瞑想しようとして普通に爆睡。……どんだけへっぽこなんだよ!!
……というか、そんなサクラを見て、ドン引きするわけでもなく、ただ、女体盛状態の刺身を(ここ重要!)、ただ美味しく頂いた、っていうヒカルも、ヒカルでなかなかのものだとは思うのだけど。
そんなへっぽこさはありつつ、花火大会へと誘い、一応、告白を……となったのだけど……
ここまでのストーリーでは、オーディンの生まれ変わりって? とか、そういうところがあったのだけど、今回はその辺りにも多少、踏み込んでいて……。何か、この辺りの終盤の展開って、『文句のつけようがないラブコメ』シリーズにも通じるところがある様に思う。著者、そういうのが好きなのかな? 最後の最後で、ある事実が判明するわけだけど……このへっぽこさ、っていうのもそのせい……なのか?

No.5313

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美少年蜥蜴 【光編】

著者:西尾維新



眉美を除き、全員がいなくなってしまった美少年探偵団。彼らを探すため、眉美は、リーダー・双頭院学の兄であり、探偵団の創設者でもある踊の元を訪れ、アドバイスを求める。そのアドバイスは、「美術室へ戻れ」というもので……
シリーズ最終編の前半戦、ということになるらしい。
……まぁ、ぶっちゃけ、「物語」シリーズとか、最後、と思わせておいて全く終わっていないシリーズも多いので、どこまで信用して良いのか悩むところではあるのだが(笑) ただ、前作辺りから見え隠れしていたテーマ性みたいなものが、かなりはっきりと見えてきた、というのは感じる。
物語は冒頭に書いた通り、美少年探偵団の面々が失踪してしまって、それを眉美が探す、という形で始まる。探偵団の面々がいなくなり、なぜか、「普通の」学校の生徒たちのようになった指輪学園の生徒たち。聞き込みをしようにも、何か、及び腰な態度を取られてしまう。そして、探偵団の創設者である踊は、探偵団を「卒業」したという人物で、勿論、弟たちを心配はしているのだが、なぜか枯れた、という印象を漂わせる。そんな中で、踊のアドバイスを頼りに美術室を訪れ、そこからヒントを得るのだが……
元が江戸川乱歩の「少年探偵団」ではあるのだけど、前作から見え隠れしていた「卒業」という言葉。そして、ある意味では「井の中の蛙」というような諺。そういう部分に焦点が当てられている、というのを感じる。これまでのエピソードにおいて、突出した才能、というのを示していた探偵団の面々。しかし、それは学校という小さな世界の中だからではないか? そして、そのような流れに、探偵団の面々も? そのようなものが示される中、眉美は、探偵団の面々を探し求める。そうじゃない、と信じて。
一応、最終編の前半戦、ではあるのだけど、話のテーマははっきりとしているし、一つのエピソードとしてはしっかりとまとまっている。これはこれで、一つの作品としてアリなんじゃないかと思う。
勿論、これで何か打破して物語が完結、と言うのでもよいと思う。ただ、これまでのエピソードの中で、この作品世界において、教育システムとか、そういうものが一見、現代のそれっぽく思えたけど、全く違うのだ、なんていうのも示されているわけで、そういうところをどう回収してくれるのかな? なんていう期待をしてみたいところ。

No.5312

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失われた過去と未来の犯罪

著者:小林泰三



女子高生の梨乃はある時、記憶が短期間で消えてしまう、ということに気づく。この現象は、世界中で同時多発的に発生し、世界はパニックに陥った。……それから十数年記憶する能力を失った人類は、外部記憶装置なしでは生きられなくなって……
SFと言えば、SFなのか……。
裏表紙の粗筋には「ブラックSFミステリ」とあり、確かにそれであっていると思うのだけど、同時に、結構、色々と考えさせれる作品だ、といのも感じる。
物語は2部構成になっている。第1部は、冒頭に書いたように、ある時、自分の記憶が数分しか持たなくなってしまった、ということに気づくところから始まる。ふと気づくと、「自分は何をしていたんだっけ?」という状態になる。そこで、ノートに自分の行ったことを記録していく、ということになるのだが……勿論、そうはならずに、同じことを繰り返す者もいて……
そして、第2部では、長期記憶が出来なくなったため、人々は外部記憶装置を着けることに。だが、その記憶装置の取り違いが起きたり、はたまた、死者の記憶装置を身に着けて、死者と再会できるという「イタコ」という職業が生まれたり……
ギャグと言う面もある。実際に、同じことを繰り返す天丼的なギャグがあったり、ドタバタとか、そういう面もある。あるのだけど、読んでいて思うのは、アイデンティティって何だろう? ってことだったりする。特に第2部の内容。自分で記憶を維持することが出来なくなった人類。外部記憶装置をつけることで、というのだけど、それはパソコンでいうところのHDDと同じ。それを他の肉体につければそちらが自分の肉体のように思えてくる。そうなると……。事故にあった子供を助けるため、自分の肉体に子供の記憶装置をつける者。不慮の事故で好感されてしまった者。自分の肉体と記憶、意識の違いに戸惑いながらも、その生活を続ける中でやがて、自分自身はどこにあるのか? ということを忘れていってしまう。そのようなエピソードを繰り返していって……
物語の結末としては、さらに一歩踏み込んで、というところで、今度は人間とは何か? とか、そういうところへと行くわけだけど、そういう点も含めてアイデンティティについての物語、なんじゃないかな? と思えてならない。

No.5311

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著者:SOW



皆に祝福され、結婚式を挙げたルートとスヴェン。そんなスヴェンの願いは、機械として、ではなく、人間としてルートと同じ時間を歩みたい、ということ。だからこそ、スヴェンは、人化の方法を知るマイッツァーを探すのだが、そのマイッツァーは保安部の手によって誘拐されていた……
シリーズ完結編。
これまで、ある意味で小出しにされてきた世界設定とかのネタが一気に回収されるのに驚いた。
物語としては、人化をしたいスヴェンがマイッツァーを追いかけて、というところから。そのマイッツァーを拉致したのは、聖女とされる存在。そして、マイッツァー自身がその聖女と並び立つ「悪魔」。だが、世間一般で言われているそれらの伝承とは逆の状態。さらに、ゲーニッツの意思を継ぐ、というよりも、ゲーニッツの思惑をさらに曲解し、ただただ戦争をしたいがために動く者たち。聖女の信者たち。そして、第二次世界大戦へ向おうとする国際情勢……
世界観としては、世界規模そのものなのだけど、ルート、スヴェンにあるのは、あくまでも「共に歩みたい」という思い。敵となる聖女にあるのも、歪んだ自己顕示欲とでもいうべきもの。さらに、ソフィアやブリッツドナー、ダイアンと言った面々の想いも……。それぞれ、立場もあるし、国に関与もしている。でも、結局は、本人の想いと言う部分が強調され、それが自らの「意志」へと繋がって……という最後の戦いが面白かった。そして、その戦いの中で消息を絶つルートとスヴェン……
一瞬、バッドエンドかな? とも思わせておいて、ちゃんとハッピーにまとまるところとか読後感も良かった。いい最終巻だった。
……と思う一方で、やっぱり、日常エピソードが最後に欲しかったな、と思ってしまうのも事実だったりする。「人」となったスヴェンの戸惑いとか、ルートとの結婚生活でのアレコレ。ルートに変わってトッカーブロートを切り盛りするミリィ……。色々と描けそうな話は色々あると思うんだよね。番外編短編集みたいな形で後日談エピソード、出してくれないかな?

No.5310

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ブログ開設15周年を迎えました

12月7日をもちまして、旧ブログの開設から丸15年を迎えました。

この数年は、相変わらず、ただ淡々と書籍感想を書いているだけのブログとなっていますが、この1年に関していえば、書籍感想にリンクを貼るためのサイト用に使っていたジオシティーズがサービス終了した結果、FC2へとお引越しをしたり(ちなみに、そのサイトはこちら)、はたまたMF文庫Jさんの新人賞受賞作『探偵はもう、死んでいる』(二語十著)の推薦文を書かせていただいたり、とか、結構、色々とあったなぁ、と感じる1年でした。

今現在は、コミケ原稿がヤバいことになっているのですが(毎年、言っている気がする)、とりあえず、無事、今年も大きな抜けなく更新し続けられたことが何よりだと思います。
16年目もよろしくお願いします。

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著者:田中静人



「うちの社長は笑いません。ですが、お客様の笑顔のために努力しています」 転職を考えていた森野美優は、訪れたミヤタ電器店の求人広告に心惹かれる。そこでは、家電に詳しいが人の心の機微を理解できない店長・宮田と共に、「なんでも対応」をポリシーに家電に纏わる不可思議な出来事と、その裏側にある人々の想いを解き明かすことになって……
という連作短編形式で綴られる物語。
まず思ったこと。
オタク?
いや、この作品の「オタク」は所謂、漫画とか、アニメとかが好きな人、じゃなくて、家電オタクということになると思うのだけど、この作品に登場する宮田の場合、「家電オタク」というよりも、アスペルガー症候群とか、そういうものじゃないかという気がする。
という形で始まるのだけど、物語の流れと言うのはある程度、パターン化されており、ミヤタ電器店に持ち込まれる家電に纏わる不可思議な謎。相手の家などに行って、なぜ、その現象が起きるのか? というのを宮田が見抜く。しかし、心の機微とかに疎い宮田には、なぜ、そのことが起こされたのか? というものがわからない。そこで、美優がその動機を解明していく……というもの。
例えば2編目。空気清浄機が動いているはずの部屋で、その家の子供がカビが原因の体調不良になってしまった。なぜ、体調不良になったのか? と言う原因は宮田が解き明かす。でも? その家に起こっていた変化。そして、その中での原因となった人物の複雑な想い。その辺りが、かなり上手く描かれていたエピソードだと思う。
そんな中、美優自身の周囲でもおかしなことが。作中、「幕間」と称して、美優をストーキングしている人物が描かれ、さらに、美優自身もつらい過去を持っていた。そんな思いが重なっていって……。ちょっとした仕掛けと、そこからのひっくり返し、っていう部分は上手く機能している。そして、そういう面があるのならば……という点で納得することも出来る。出来るんだけど……なんか、まとめ方が綺麗過ぎる気がしないでもない。そこまでされて、素直に引き下がるか、とか、被害者側は……とか、そういうのを思うと……
まぁ、野暮なのはわかっているし、話をまとめる、という意味では、こちらの方が良いのは確かなのだけど……

No.5309

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著者:藻野多摩夫



大磯にたつ鴫沢古物店。看板も出さず、古いものをひたすらに集める鬼である店主の鬼蔵と、しっかり者の妻・渚。古い物には魂が宿る、というが、そこで扱われた物について、奇妙な出来事が起こって……
と言う形の連作短編集。
まず思ったのが、非常に綺麗な話、っていうところだろうか?
昭和末期の時代を舞台とした作品で、義母との関係が上手くいかない少年が手にした真空管ラジオ。シングルファザーの父との関係に悩む少女が持つドールハウス。そして、鬼蔵と渚のなれそめを描いた話という形。
「道具は、使われてこそ美しい」
ある意味では、そこから始まっているのかな? と……。愛着があるからこそ、そこに想いが生まれる。そして、道具にも……。
特にそれを感じるのは、3編目。鬼蔵と渚の話に集約されているかな? 幼いころからやってきたピアノを諦め、家を飛び出した渚。そこで、声をかけられたのは鬼だという鬼蔵。そして、その鬼蔵と、亡くなった女性の遺品から夫婦茶碗を探すことになって……。勿論、どんな道具であっても使い込んでいれば傷もつくし、壊れてしまうこともある。特に、日常的に使う食器などは……。そんな中での、その夫婦の想いが込められた茶碗。僅かな時間しか共有していなかったが、しかし、想いは強かった。そして、人よりも遥かに長い時を過ごす鬼蔵にとっても、他者との出会い、別れは……。丁度、道具が傷ついていくのと同じように……。でも、それが一つの味となって美しさへ……
電撃文庫で出していた作品とは違い、派手さはあまりないのだけど、その分、落ち着いた、しっとりとした読後感を覚えた。

No.5308

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著者:山下泰昌



エンジェル・ライドの定期開催が決定。再び召集された雅文たち。オルとも再会し、再びペアを組もう、ということになるのだが、そこに現れたのは、オルのレースに憧れる少女・ミミ。「ミミはお兄ちゃんに憧れてるんよ」 そういう彼女は、オルと雅文の間に割り込もうと……。しかも、なぜかオルと雅文の同調が上手くいかなくなってしまい……
大分、久々に刊行された第2巻。
え? そういうことなの!? っていうのが、正直なところ、読み終わっての感想。
物語の主軸となるのは、前回のレースで同調をした雅文とオル。だが、再会した二人は、なぜか同調をすることが出来ない。そして、そんな間隙を突くように現れた、雅文に乗ってほしい、というエンジェル・ミミ。さらに、オルと雅文が、というのが許せないオルの兄弟・エル。そして、スキム……
文字通り、オル、雅文を巡っての争奪戦ということになるのだけど、その中で気になる雅文とオルのアレコレ。前回のレースの中で、オルは確かに雅文にキスをした。そのことが? それとも別の要因が? そういう、自分自身が気づかない心の変化が? とか、そういうのを想っていたら、ちょっと意外な理由だったので、そっちなんだ、と思ったというわけ。そこは、ちょっと残念な感じもした、というのが正直なところ。
ただ、その一方で、レースやらのアレコレは相変わらず面白い。オルとの同調が出来ない中、雅文はミミとコンビを組むことに。エンジェル、としては致命的にスピードのないミミ。しかし、エンジェルの姿になった彼女は、巨大で、とてつもなく力強い、という武器がある。レース中、相手の邪魔をすることも可能である、という特徴を生かせば、最高速で負けていたとしてもチャンスはある。その武器を最大限に活かす作戦を練る雅文。その結果、好成績を叩き出し、自信を強めていくミミ。そんなときに……
作品を巡っての背景となる世界情勢とか、そういうのはあるのだけど、個人的な好みでいうのならば、レース一本でも良いんじゃないかな? とはちょっと思う。正直なところ、同調を邪魔した存在の動機が、イマイチ、よく理解できなかった、というのがあるだけに。
ただ、レースそのものの面白さ。同調が上手くいかずとも、それでも、パートナーとなりたい、という雅文とオルの特訓。そういうところの真っすぐさ、っていうのが大好き、っていうのは変わらない。

No.5307

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