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蜂に魅かれた容疑者

著者:大倉崇裕



新興宗教団体に関わる事件で警視庁が緊迫感に包まれる中、都内近郊ではスズメバチが人を襲う事件が連続して発生。しかも、高速道を走行中の車に、蜂の入った箱が投げ込まれるという悪質な事例も。窓際警部補の須藤は、動物好きの新米巡査・薄と共に捜査を開始して……
というわけで、シリーズ第2作になる長編。
前作でもそうだったのだけど、相変わらず、薄がひたすらに話を横道にそらすのは、ちょっと鬱陶しいな。蜂に襲われた、で、どんな蜂なのか? とか、そういうところはまだしも、会話の途中の慣用句を、完全にワープロの変換ミスみたいな感じで言い間違えてのボケとか、流石にそれは無理がありすぎるだろう、という感じがするだけに。長編なのだけど、そういう小ネタの連発が多くて、ちょっとテンポを悪くしている感は否めず。
そんな中での事件。冒頭の粗筋で書いているように都内近郊で連続して起こる、スズメバチによる事件。ただの事故かと思われていたものも多い中、薄は、スズメバチの生態などからちぐはぐな部分を発見する。そんな中、高速道を走行中の車に蜂の入った箱が投げ込まれる事件が……。状況から考えて、殺人? しかし、流石にスズメバチに特定の相手を狙わせる、ということは不可能。ということは、無差別テロ? しかし、それはそれで奇妙なものを感じて……
そもそも、スズメバチで事件を起こしているのは何者なのか? そして、その目的は? 宗教団体とのかかわりは?
捜査を進める中で仲間もまた、危機に陥ってみる。はたまた、終盤、真犯人を追い詰めるための駆け引きなど、抑えるべき部分はしっかりと抑えられていて面白く読むことが出来たのは確か。ちょっと真犯人の掘り下げとかは弱い感じはしたが。というか、これ、やっぱり短編くらいの分量で良かったんじゃないかな? という感じがしないでもない。

No.5204

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宮本サクラが可愛いだけの小説。2

著者:鈴木大輔



正式にヒカルと付き合うことになったサクラ。しかし、どうすれば良いのかわからない。そんな中、三姉妹はサクラに、ヒカルと同棲するようけしかけて……
うん。第1巻以上に何を書いて良いのかわかんねぇや。
とりあえず、言えるのは、宮本サクラ……無茶苦茶にチョロインだな(笑) 基本的に、ヒカルのことが大好きである、というのは1巻時点でも明らかになっているわけだけど、それで何をして良いのか、というのがよくわかっていない。そして、学校の友達やら、はたまた、モデルとしての仕事をしている仲間に相談をするわけだけど……ちょっとした挑発とか、そういうのに簡単に乗せられてしまって……でのアレコレが描かれていく。
その結果、アッサリと風呂に一緒に入ることになったり、はたまた、同棲しろ、と言われてその気になってみたり……。明らかに周囲に流されすぎ(笑)
しかも、モデルとしての活動をしているのだけど、その理由も、ヒカルを振り向かせたい、とか、そういう部分が多々。なので、事務所との契約で恋愛禁止となっているのだけど、そこは完全無視。「見つかったらどうする?」「モデル辞めるからよい」とか、そういうのを見ていると……なんていうか……第三者として、「ごちそうさま」としか言えないのですが……。むしろ、そんなサクラをライバル視し、忠告を与えて、さらに、ヒカルとのデートを邪魔しようとするユカリの方に共感を覚えるのだけど。……ていうか、サクラとイチャイチャしているだけならともかく、三姉妹と同棲していて、しかも風呂とかも一緒に入っていて……と聞いて、しかも、それをサクラが容認している、となれば、そりゃあねぇ……(笑)
相変わらず、そんな話の裏側で、世界が滅びる、とか、そういう話が出ているんだけど、これは1巻に引き続き、よくわからん。
そういう意味で、確かに、宮本サクラがかわいいだけの小説、であり、名は体を表しているんだろうな。

No.5203

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ぬるくゆるやかに流れる黒い川

著者:櫛木理宇



6年前、無差別殺人で家族を喪った香那。大学生となった彼女の前に、クラスメイトで同じ事件で家族を喪った小雪が現れる。小雪は、事件の犯人で、取り調べ中に拘置所で自殺した犯人・武内譲について調べないかと香那を誘う。育ての親から「淫売の血が流れている」と半ば虐待されて育った譲。そんな情報を知る中、譲の大叔父が何者かに殺害され……
カテゴリでいえば、間違いなくミステリ作品、と言える作品。でも、謎解き、とか、そういうのとは違った作品と言った印象。
物語の中心となるのは、犯人である譲。そして、その祖父・和偉、その弟・昭也と言った人々と「女性」との関係。犯行の前、SNSに譲が残した発言の数々。それは、必要以上に女性を敵視し、それを害したい、というもの。そして、その背景には祖父による虐待があった。そんな祖父はなぜ、譲を虐待していたのか? そして、譲の母は……
譲の話から、その母、祖父、その弟へと犯人の一家を巡っての過去を突き止めていく、という形で描かれるのだけど、その中で感じるのは、「女性の立場」とでも言うべきものなのかな? 家を守る存在。女に学などいらない。そんな言葉は、現在でも決して死んだわけではない。ひっそりと生き残っている。ただ、その一方で、作中で譲が言っているように、フェミニズムとか、そういうものの台頭で、却ってヘイトをためる存在もいる。そして、その背景にあるルーツとでも言うべきもの。しかも、戦前、戦後時代の、西日本、九州における貧しい女性の運命。これまた、「家を守るため」で行われていたことだが、しかし……。
単純に言えば、世間そのものの背景と、その中でも、特殊な武内家の事情が、不幸な形で合致してしまった。そして、それが凝縮されて、ということになるのだろう。ただ、そんな一言で片づけてはいけないんだろうな。あまりにもその中で行われていたことはおぞましいものだし、それが極めつけの特殊事例ってわけでもないのだろうし。
一応、その背景とか、そういうものは明らかになっているし、そういう意味では謎は解けているのだけど……どうしても、モヤモヤという気分が残る。

No.5202

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著者:持崎湯葉



「真面目系クズ」――真面目そうに見えながら、実態は怠惰であさましく、取るに足らない存在。そんな存在である八卜悠楽は、クラスメイトから貰った手作りクッキーを飼育小屋のウサギに与えていたところを、性格の悪さに定評のある黒内人花に見つかってしまう。そして、彼女の「クズ活」に付き合うことになって……
なんか、すげー作品だな。
真面目系クズ、つまり、周囲の空気とかを読むし、授業なども一見、真面目に受けている。けれども、実際には怠惰だし、本音は別の場所にある。見つからないところでは、とことん、悪態だってつく。そういう裏表の激しい存在。そんな八卜が、その裏の顔を黒内に見つかり、「真のクズ」になるための活動に付き合わされて。
結構、この八卜の立ち位置って共感できるんだよな。黒内みたいに、周囲と対立してまで、本音で何かをしたいわけではない。でも、色々と不満とかあるし、面倒くさいとか、そういう想いも沢山抱いている。程度差はあるだろうけど、誰にだってある感情だし、聖人君子と呼んでいる白庭さんについて、傍から見ている分には良いけど、ガッツリ傍にいると鬱陶しい。そういう気持ちもよくわかるし。
そんな中でのクズ活。正直なところ、かなり「しょーもない」ことも多いのだけど、そのしょーもなさも含めて、クズっぽさを感じる。
実際、物語的にも、ある意味で、何なの、コレ? って部分がある話ではある。あるんだけど、その辺りの諸々を含めてこの話らしい、と感じてしまう。色々とヘンテコな話。でも、その中で、八卜の「真面目系クズ」っぷり。そこへの共感など、思うところは色々とあったな、という風に思う。
妙な疾走感のある作品、戸でも言えばいいのかな?

No.5201

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君死にたもう流星群4

著者:松山剛



自らのタイムリープを星乃へと告げた大地。しかし、そのことが原因となり、却って関係をギクシャクとさせてしまう二人。そんな中、不審な動きを見せていた黒井冥子が大地に接触する……
ということで、今回は、黒井冥子がメインとなる話。勿論、タイムリープを巡ってのアレコレも進行。
何と言うか、まず思ったのは、話として、結構、毛色が変わってきたな、ということだったりする。
ネタバレになってしまうのだけど、黒井冥子は、大地と同じように、未来からタイムリープしてきた存在。なぜ、彼女がタイムリープをしてきたのか? それは、自分が奪われた「小説家」としての存在を取り戻すため。元々、コミュニケーションが苦手であった冥子。しかし、文章を綴ることに喜びを覚え、小説家としてデビューすることも出来た。しかし、何者かにより、自分自身の文章を奪われ、盗作者としてその立場を奪われてしまった。そんな簒奪者から、自分の存在意義を取り戻すために……
てなところで、わかるように、これまでタイムリープしてきたのは(基本的に)大地のみだったのが、同じような存在が登場。そして、大地と同じように失われた過去を取り戻すことを狙う。その中での知識として知っていることと、実際にやった、という違いとか、そういうのは大きいのだけど……それが、今度は星乃とのアレコレに繋がっていく。
「タイムリープしてきた人間は、自分の後悔を変え、生き生きとしている」
となれば、今現在(作中の2017年)、同じような思いを抱いている星乃が自分も……と思うのは、これまた当然で……。作中、大地が、自分がしてきたことを悔いるシーンがあるのだけど、この辺りも、「知識としては知っていても」という部分に繋がるんだよね。ただ、大地や冥子と違って、星乃の場合は……
タイムリープに関してのアレコレとか、そういうのも含めて、星乃について、かなり物語が進展してきた印象。夢、とか、そういう部分がテーマではあるのだけど、本編とも言うべき、星乃自身についてが段々、中心になってきている、というのを感じる。

No.5200

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夏へのトンネル、さよならの出口

著者:八目迷



「ウラシマトンネルって、知ってる?」 海沿いの田舎町・香崎。夏のある朝、高2のカオルはそんな噂を耳にする。そのトンネルに入ると、年を取る代わりに欲しいものが手に入る野だという。そして、それらしきトンネルを見つけたカオルは、5年前に亡くした妹が取り返せるのではないかと思いつく。放課後、一人でトンネルの調査を開始するカオルだったが、転校生のあんずが現れて……
第13回小学館ライトノベル大賞・ガガガ賞&審査員特別賞受賞作。
序盤で読者を引き付ける力がすごいな、これ。
ある意味、自分の住んでいたド田舎にそっくりな印象の街の描写とでも言うか……。駅の近くには、それなりに家屋などもあり、人もいる。でも、ちょっと離れれば人も訪れない山の中。野生動物と電車がぶつかって、なんていう「田舎の鉄道あるある」。また、高校という環境も、ある程度の区分けはあるにせよ、同じ学校に真面目な生徒も、いわゆる不良と言われるような存在もいる。そんな描写が、まず、いかにも「田舎町」という雰囲気を感じさせてくれる。そして、その中で、過去に妹を喪った、という主人公・カオルの過去。
元々、不安定な関係にあったカオルの家。それを繋ぎ止めていたのが、両親の「本当の」子である妹。カオルにとっても大事な存在であり、最愛の存在でもあった。しかし、それを自らの不注意により……。崩壊した家庭。母は家を後にし、父は抜け殻のように……。だからこそ、妹の存在に執着するカオル。
一方、東京から転校してきたはじめ。周囲に溶け込めず、浮いた存在でもある彼女。そして、彼女もまた、自分の夢があり、それを理由に家族を喪っていた。そして、そんな思いから二人は協力関係を結ぶことになって……
浦島太郎の竜宮城のように、時間の流れが異なる異空間。数分間が数時間にもなってしまうその空間にいるため、わずかな時間が、数日とかという時間の経過になってしまう。そんな状況を共有する中で繋がっていく二人。そして、それぞれの望みをかけた計画を実行するときになって……
別れた運命。しかし、その間のアレコレがカオルとあんず、両者の間にしっかりとあって……。ちょっと後半がダイジェストっぽくなってしまった感じはあるけど、しっかりと物語がまとめ上げれており、気持ちよく本を閉じることが出来た。

No.5199

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著者:小島正樹



警察官5人を殺し、死刑確定囚として独房にいながらも、優雅な生活をつづけながら、「闇探偵」として数々の難事件を解決してきた月澤。そんな月澤を収監する脳科学医療刑務所で殺人事件が発生。捜査一課の百成と共に、捜査を開始するが、所長が殺害され、刑務所は閉鎖されてしまう。治安維持部隊の突入が迫るまでの時間内で、事件の解決を図るのだが……
シリーズ第2作。
なんていうか、2作目で一気に物語が大きく動いたな、という印象。
今回の事件は冒頭に書いた通り、刑務所内。囚人たちの自由な行動も、さらに持ち物の持ち込みも制限されるそこで、立て続けに起きた殺人の方法は毒殺。しかも、その遺体には文字が……。さらに、所長までもが撲殺され、刑務所は閉鎖状態に。さらに、この刑務所の設立に尽力した元警察官僚も……
閉鎖された刑務所。その中で、ある程度、自由に動き回れる受刑者たち。さらに、持ち込みが出来ない毒物をどのように? さらに、遺体に刻まれた文字の理由は? 前作は、刑務所の外で起きた殺人を、刑務所内にいる月澤が指示を与えて、百成が……という形で綴られた前作とは異なり、今回は、実際に目の前で起きていく殺人。それを百成と月澤がコンビを組んで……。
そもそもが連続殺人犯である月澤とのコンビは大丈夫なのか? という疑問はある。しかし、百成の足りないところを教えてくれ、また、時にピンチを救ってくれる月澤。そんな月澤に対して、より信頼感を深めていく百成。そうして、その犯人を突き止めるのだが……
受刑者同士でのやりとりは出来ない、という前提はあるが、しかし、という刑務所運営の現実的な部分とか、面白いと感じるところはある。その一方で、メイントリックとなる部分に関しては、それ、検査がガバガバすぎない? と思えるところもある。その辺り、前者が一つの伏線にはなっているわけだが、それでも、ちょっと……と思うところではある。
そして、その上で垣間見えた月澤の本性。重要な位置を占めていると思われた所長たちの退場とかも含めて、一気に物語が動いたな、というのも同時に感じざるを得ない。

No.5198

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出会ってひと突きで絶頂除霊!5

著者:赤城大空



「近いうち、サキュバス王の性遺物がこの国に出現する」 ついに本免許を獲得した晴久らの元に届いた衝撃的なニュース。やる気を漲らせる晴久だったが、その矢先に、童戸槐という少女と出会う。そして、その日からラッキースケベが止まらなくなってしまって……
ということで、槐と触れてしまったことで、ラッキースケベ体質になってしまった晴久。その体質から元に戻るまで待つと、数週間程度かかるため、性遺物出現までに間に合わない。体質から戻るためには、槐に治してもらう必要が。しかし、その槐が、霊能犯罪者に拉致されてしまい、その救出をする必要があって……というような形での話。
ラッキースケベって何だろう?
漫画、ラノベなどではお馴染みの表現というか……、まぁ、何かをするとなぜか不可思議な力が働いてしまって、女性キャラのHな姿に遭遇する、ということを称するもの。一種の読者サービスみたいなものだけど、よくよく考えると、主人公にとっての「ラッキー」ではないよな……。しかも、当然のように、反撃を喰らったりするわけだし。そういう意味では、確かに「呪い」そのものだよな。特に、今回の話のような場合、純粋に仕事に支障をきたすわけだし。
そして……その霊能犯罪者の行動……
作者さん、名前を思いついた時点で、もう、何をやるのか完璧に決めてたでしょ!(笑) だって……アンチ・マジックミラー号て……。しかも、実際、その中ではこの作品らしいことを……って……ある意味、まんまじゃん! まぁ、ミホトが、とか、色々とあるわけだけど、どう考えても、アンチ・マジックミラー号から持ってきたように思えてならない。……なんか、こういう風に書いていると、自分がそういうのが好きみたいに見えて何か嫌。
ただ、物語的にも、やっていることは色々とアレだけど……と見せかけて最後にどん底に堕としてみたりとか、いよいよ佳境に入っていくのかな? というのを感じずにはいられない。

No.5197

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歌舞伎町ゲノム

著者:誉田哲也



新宿の街に巣食う害虫を退治する「歌舞伎町セブン」。だが、仲間の一人を失い、活動を休止していた。そんなとき、メンバーの一人・ジロウは、恋人が強姦され、挙句に自殺されてしまった、という男と出会い……『兼任御法度』。
など、全5編を収録した連作短編集。
これまでのシリーズ(『ジウ』を含めた)って、長編エピソードだったのに対し、今回は、メンバーそれぞれの視点で綴られる短編作品。大ぶろしきを広げた割には、と思った過去の作品もある中、本作は、まさに仕事人的な印象で素直に楽しめた。
まさに、必殺仕事人、という印象なのは1編目。冒頭に書いた通りの粗筋なのだけど、婚約者を襲った相手はわかっている。被害届を警察にも出した。しかし、それは握りつぶされた。なぜならば、その犯人の親族には、元総理という大物政治家がおり、彼の圧力があったから。警察が手を出せないのならば……。シンプルな話なのだけど、こういうシリーズなのだ、というのがよくわかるエピソードになっていると思う。
歌舞伎町の元カリスマホストのお気に入りの外国人運転手が、母国へ帰る……という直前に殺された、という『凱旋御法度』も同様。外国人も沢山いる。勿論、問題のある人物もいるが、一生懸命に働いて、皆から愛されて……そんな存在も。そんな猥雑な歌舞伎町の空気の裏の事件ということでこちらも王道な感じはする。
が、そこからだんだんと雰囲気が変わっていって……いつの間にかメンバーに加えられてしまう掃除屋のシン。相手を殺した後、その後始末の専門家、ということで重要なのだけど、とにかく「汚い」現場ばかりを背負わされ、しかも、彼曰く、「雑になってないか?」と愚痴られる始末。そんな彼が主役の『改竄御法度』は……。ここまでは、シンプルに裁けない悪を、という形だったのだけど、たまたま助けた少女を巡ってのアレコレ。法律云々はともかく、裏社会のルールに則ったことが行われていただけ、というオチは、ただの義賊とか、そういうタイプではない話っていうのがよくわかる。
で、その話の中に、やっぱり『ジウ』シリーズの新世界秩序とか、そういうものの影が出てくるんだよね。5編目のラストシーンで、それを匂わせて終わり、とか、そういう部分もあるし。シリーズの中で、最も素直に楽しめた巻だった、っていうのはあるんだけど、やっぱり、『ジウ』の世界観とかにはちょっと馴染めていない、っていうのも感じた。

No.5196

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マツリカ・マハリタ

著者:相沢沙呼



学校の向かいにある廃墟ビルに住み、望遠鏡で校舎を観察しているマツリカさんに命じられ、学校の怪談を調査する日々を送る柴山。1年生のときに自殺した、という少女の霊が何年かに一度現れる、という噂が聞こえる中、写真部の部室から逃げ出した、という1年生が消える、という事件が起こって……(『落英インフェリア』)
からの連作短編集シリーズ第2作。全4編を収録。
1作目の『マツリカ・マジョルカ』は、各編が結構、バラバラな中で、主人公・柴山自身の謎へ……という形だったのだが、今回は、1冊全体を通して「1年生のりかこさん」という怪談が物語に関わり、さらに、学校に居場所を感じられていない柴山が親しくしている小西さん、新たに知り合った高梨くんと言った面々を中心にした写真部関連のエピソードが多め。そして、「学校」という居場所に関する部分のテイストが強く出ているな、というのを感じる。
例えば1編目。写真部に仮入部していた1年生が突如、姿を消してしまった。部室棟の部室は、写真部以外閉鎖されていて、そこから逃げてきた生徒は、必ず柴山と遭遇していたはずなのに、柴山は出会っていない。どこへと消えた? 謎そのものは密室トリックそのものなのだけど、そこが判明した後に明かされる逃げた少女の動機。学校という狭い空間。知り合いも沢山いる。そんな中で、一度ついてしまった立ち位置、そして自らに設定してしまった劣等感。特に後者は……それでも、ハッピーエンドになっているのが救いではあるのだけど。
その後も、密室状態の部室で、なぜか感光されてしまったフィルムとかも、同じような感じ。どちらかというとホワイダニットの方が印象的。
そして、そんな物語は、マツリカさん自身の謎へ……。今回の話の中でも、明らかに柴山を挑発している、としか思えないような行動と、同時に女王様的に命令を下していたマツリカさん。そんなマツリカさんが、突如として姿を消してしまう。廃墟ビルを撮影しに行った、という写真部の面々は、マツリカさんがいた形跡はなかった、という。そして、ひっそりと柴山が見たマツリカさんの生徒手帳には「りかこさん」の本名が……。マツリカさんは幽霊だったのか?
なんか、柴山の勘違いの原因の一つが、アンジャッシュのコントみたいなオチが紛れているような気がするのは秘密。けれども、読者としても、マツリカさんの個人情報とか、そういうものが全て謎で、柴山が得た情報を積み重ねると……というのはよくわかる。そして、何だかんだと文句を言いつつも、柴山にとって大事な存在になっていた、というのも。その辺りは凄くよかった。
……で、マツリカさんはいったい、いくつなんですか?(死ね)

No.5195

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