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―異能―

著者:落葉沙夢



自他ともに認める凡庸な高校生・大迫祐樹には、成績優秀で野球部のエースである赤根凛空と、学校一かわいい月摘知海という友人がいる。二人と仲良くしつつも、彼が思うのは、自分は二人の間を取り持つモブキャラなのだ、ということ。そんな中、知海と二人で映画に行くことになるのだが、その矢先、見知らぬ少年から「異能を持つ者」によるバトルロワイヤルへの参加を言われる……
第15回MF文庫Jライトノベル新人賞・審査員特別賞受賞作。
いや、これは凄いわ。
冒頭に書いた粗筋だと、主人公は大迫みたいに見えるのだけど、これがなぁ……
物語は章ごとに視点が切り替わるリレー方式を取っており、その都度、別の形で綴られていく。何を書いてもネタバレになりそうな気がするのだけど、とにかく、このバトルロワイヤルに参加する者たちの想いが次々と……。自分は「主人公たる存在」という自覚を持ち、そのために努力を続ける者。ただただ、自らの強さを追い求める者。この戦いに疑念を抱き、どうにか生き延びようと策を練る者。ただ、世界を煩わしく思う者。そのような中で、それぞれが死んでいく。そして、その戦いの果てに……
最初の主人公たる大迫の「自分も主人公に?」という思い。一体、この戦いは何のために行われているのか? 物語の中心になるのは、当然、各主人公たちの、目の前の戦いに向けて、なのだけど、その裏のアレコレが結びついていての決着の仕方は素直に気持ちが良い。この辺りのまとめ方の上手さは見事だと思う。
ネタバレという観点から、書けることが限られているのだけど、一つ言えるのは……
面白いよ!
ってこと。

No.5395

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大絶滅恐竜タイムウォーズ

著者;草野原々



『どうぶつデスゲーム』1回戦から3か月。それを生き残った星智慧女学院の生徒たちは、再び宇宙リライトに巻き込まれる。デスゲーム2回戦の開始。人類の進化を守るため、6600万年の白亜紀末期へとタイムトラベルし、知性化鳥類との戦争がはじまり……
『大進化どうぶつデスゲーム』の続編となる話。
ではあるのだけど、結構、印象が異なる話になっている。前作は、知性を得た猫を全滅させるため、と言う形の物語だったのだけど、いきなり戦いに巻き込まれた女子高生たちの諸々が物語の主軸になっていた印象。友たちを守るために手を尽くす。バスケ部のエースという自分のイメージを守るために無理をして……などなど……
それに対し、本作は、物語開始からいきなり殺伐。いきなり目の前に現れる進化した鳥類。そんな存在と戦いをしながら、クラスメイト達と合流。勿論、その中にそれぞれの思惑もある。それでも、何とか合流を果たすのだが……。いきなり始まる、文字通りのデスゲーム。前作とは違い、文字通りに進化をした鳥類たち。しかし、人間のような思考があったり、はたまた、コミュニケーションを取ることが出来るわけではないそれとは、それこそ、現代の猛獣たちとの戦いと言う印象。ところが、そんな中で女子高生たちは「理由」を喪ってしまって……
そこからは、人間と言うことすらをも忘れたような進化をした女子高生たち。その中で、彼女たちは「理由」を手にするために学習し、行動を行っていく。そして……
第三者視点のようで、やたらと詩論などを弄んでいく「地の文」。そして、世界を守るために、次々と生物などを「絶滅」させていく面々。正直なところ、何だかよくわからない部分はある。ただ、生物の進化において、絶滅と言うのもその歴史には必要であり、そういうところを辿っていっているのだろう、というのがよくわかる。ヘンテコな進化とか、そういうのは、デビュー作『最後にして最初のアイドル』でもあった展開ではあるけど、それをさらに深く掘り下げた作品のように感じる。
まさに、ジェットコースター展開、とでも言うようなものを感じる作品だった。

No.5394

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絶対小説

著者:芹沢政信



伝説の文豪・欧山概念が残した原稿「絶対小説」。それを手にした者には、比類なき文才が与えられる。売れない新人作家・兎谷三為は、その原稿を先輩作家・金輪際から見せられる。だが、その原稿はどこかへと消えてしまい、見せてくれた先輩までも失踪してしまう。金輪際の妹だというまことと共に、三為は奇妙な大冒険に巻き込まれていく……
著者は、かなり昔に読んだ『ストライプ・ザ・パンツァー』の著者・為三氏としてデビューし、本作で再デビューとなった人物。その作品は、基本的にギャグ作品ながら奇妙な世界観を作り出していたことを思い出すのだけど、本作も同様。
冒頭に書いたように、「絶対小説」なるものが消え、秘密結社から追われることになった三為。先輩小説家・金輪際の妹を名乗るまこととそれを調査するのだが、なぜか河童の村に辿り着いたり、まこと自身の存在が先輩作家の妹だったり、後輩作家だったり……と二転三転していく。そして、その秘密結社のやっていることも文豪・概念の作品の世界観を再現しようとするマニアだったり……と奇妙な存在ばかり。
この世界観の揺れ動きというか、ドライブ感というか、そういうのが物凄い。次々と奇妙な世界観がこれでもか、と現れ、場面が次々と切り替わっていく。文字通りに奇妙な大冒険。そして、その中で出てくるテーマが「小説を書く、というのは何なのか?」というテーマ。そもそもの話しとして、文才を得たとして、それは果たして、自分の小説と言えるのだろうか? まして、概念の存在を妄信している者たちの期待に応えたとして、それは果たして? そんな中で、自分で書いた記憶のない文章が出てきて……
そんな想いなどを抱きつつ物語は進んでいって……
一つの決着がついたと思ったら、今度は、全く思ってもいなかった方向から物語が転がりだし……。この点については書かない。
最早、何でもアリのジェットコースター展開。しかし、その中に、小説、物語を紡ぐこと、へのこだわりがこれでもかと詰められている。そんな作品。

No.5393

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巴里マカロンの謎

著者:米澤穂信



清く慎ましい「小市民」を目指し互恵関係にある小鳩君と小佐内さん。そんな二人の周りには、不思議な出来事が起きて……
11年ぶりに刊行されたシリーズ第4作。
流石に、大分、記憶があいまいになっている部分があったのだけど、これまでのシリーズだと小佐内さんがかなりドロドロというか、怖い印象が残っているのだけど、本作についていえばそういうところがマイルド。著者の作品にありがちなビターな後味と言う部分もマイルドな印象を受けた。
1編目の表題作。名古屋へと進出してきた有名パティスリーへと訪れた二人。その店のティー&マカロンセットで選ぶことのできるマカロンは3種類。ところが、ちょっと目を離した隙に、なぜか1つ増えていて……。一体、なぜ増えたのか? どのタイミングで? 犯人は? そういうのをその時の状況から推理していくわけだけど、その裏には……というのがある。一応の決着がついて、その上でのもう一丁、というところにビターさはあるものの、アクセント的な印象だろうか。
2編目『紐育チーズケーキの謎』は、他校の文化祭に遊びに来ていた二人。しかし、そんな中、小佐内さんが男たちに連れ去られてしまった。その直前、男子生徒が他の生徒か追いかけられており、CDを追ってのもので、小佐内さんは、そのCDを渡された、と思われてのこと。しかし、小佐内さんは持っておらず、CDは消えてしまい……。CDがどこへ消えたのか? というのが焦点になるわけだけど、このトリックはなかなか思いつかない。……というか、かなりの賭けのはず。もし、ちょっとでもミスをすれば……なわけだし。その大胆なトリックが印象に残った。
3編目『伯林あげぱんの謎』は……詳しくは語らない。話に直接出てこない小佐内さんがどうなったかを考えるとかわいい(笑)
4編目『花府シュークリームの謎』。ビターさ、という点ではこれが一番かな? 1編目とのつながり等があり、その中での停学処分。勿論、本人はやっていないというのだが……。人の話を聞かない教師。大人の側の劣等感……。そういうものが入り混じっており、なかなか胸糞の悪い話。とはいえ、無事にハッピーエンドになるわけで、そういう意味では後味の悪さはそれほど感じないかな?
シリーズ4作目、だけど、結構、ここから入っても、入りやすいんじゃないだろうか?

No.5392

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著者:有象利路



まさか、で刊行された第2巻。これ、粗筋とか書く必要ないよね?
何と言うか、1巻の時点で、色々とアレな作品ではあったのだけど、2巻になって、さらに悪ノリに磨きが掛かってきたような……
例えば8話(1編目)、訪れた存在が依頼したのは、「尻穴に挿れて、しっくりとくるモノ」。……もう、この時点で色々とおかしいから。しかも、そこでシコルスキが用意したものは「倍震(ばいぶる)」で、冒頭から、シコルスキとサヨナがそれを得物にして、どっちの尻穴にそれを挿れるのかを巡って壮絶なバトルを繰り広げる。……ギャグ作品ではある意味、お馴染みなシーン展開ではあるけど、ネタが直球過ぎて、どこをどうツッコめば良いのかわからない。
かと思えば、第10話『暴虐と弟子』では、シコルスキの薬を飲んだサヨナが幼女化(しかも、記憶なども当時のまま)して……。一応、サヨナが滅んだ国の王女であった……というのは1巻にも記されていたのだけど、甘やかされて育ち、とにかく滅茶苦茶な暴君だった、っていうのがこれでもか……。この話については、シコルスキ、ユージンの二人が無茶苦茶、まともな人間に見える、という逆転現象。
かと思えば、第13話『就活と弟子』については……ひたすらなメタネタというか……お葉書紹介コーナー? わざわざ、この作品にハガキを送っている人たちだから……やっぱり同じレベルだよ! っつーか、このラジオ番組的なノリ、なんか懐かしい(ぉぃ) 自分も昔、ラジオでちょっとした会話のところに悪ノリして、募集していないのにハガキを送ったりしたなぁ……(遠い目)
アーデルモーデルさんの話については一言。
同じKADOKAWAとはいえ、『通常洗体が全身洗体で二回口撃のお母さん』て……と思ったら、現在は別会社の社長である三木一馬さんまで出しおった!
……お前ら、一体、何と戦っているんだ?

No.5391

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消えてください

著者:葦舟ナツ



「私を消してくれませんか」 ある雨の日、僕は橋の上でサキと名乗る幽霊と出会った。彼女は、自分の名前以外は何も覚えていないらしい。「会うのは一日一時間」「またね、は言わない」 2つのルールを定めた僕らは、サキを消すために日々を共に過ごす……
なかなか解釈が難しい作品だな、というのが第一。
主人公の春人は、母を喪い、父との日々を淡々と過ごしている状況。自分の置かれた状況から歩みだせない。幼馴染は、自分の進むべき道を発見し、遠くへと歩みだそうとしている。しかし、自分は……。そんなときに出会ったサキという幽霊……
なんか、こういう形で始まると、所謂ボーイミーツガールもののように見えるし、そういう側面で語ろうと思えば多分、たかることはできる作品だと思う。思うのだけど、でも、そうじゃないよな、というのも思う。
彼女を消すための調査であるが、しかし、だからこそ、少しずつ、サキに惹かれていく春人。人生を歩んでいれば、出会いもある別れもある。それは当然のこと。けれども、それを消化できるか、割り切れるのか? そういう部分て絶対にあるし、その中で躓いてしまう、ってこともあると思う。そんな状況、さらに言えば、周囲から取り残されてしまう寂しさ……そういう部分が残った。
あんまりネタバレをするのもどうかと思うし、そもそも、凄く曖昧な感想になっているのは、自分自身が消化しきれていないから、だと思う。ただ、「さよなら」の意味を知る物語、というがまさにそうだ、というのは感じた。

No.5390

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著者:梶永正史



佃島で一人の男性の遺体が発見された。捜査本部に合流した警視庁捜査一課の青山愛梨がコンビを組むことになったのは、またしても元義父の吉澤。さらに、以前の事件で協力した精神科医・渋谷も合流し、早くも波乱含みの状況に。そんな中、唯一の目撃者となる成田が発見されるが彼はレビー小体型認知症を患っていて……
シリーズ第2作。
前後半で大分、スピード感が変わる話。
冒頭に書いたように、出入口の限られた深夜の佃島で発生した殺人。目撃者は成田だけ。その証言をもとに似顔絵が作られるものの、レビー小体型認知症による「幻視」の影響もあり、本当かどうかはわからない。そして、その似顔絵は、現在、疑惑の中にいる政治家。そして、被害者は、その政治家とも懇意にしていたコンサルタント……
前半は、その成田の証言が正しいのか? もし、「幻視」だとしたら一体何が引き金になったのか? 記憶が失われているわけではない。ただ、それを引き出すための回路に混乱が生じている状態。そして、何かの鍵によって、「幻視」が生まれてしまう。その鍵は何なのか? 渋谷によるカウンセリングなどを中心に、そんなところがじっくりと描かれていく。そして、その突破口にするため、その政治家と成田を面会させることになるが……
ここから一気に物語が急展開。成田の証言は偽証だったのか? しかし、だとしても不可解なところが。さらに、浮かび上がる「もう一人の容疑者」。成田は彼を庇っている? しかし、その接点は? さらに、その政治家の過去についての疑惑も浮かび上がってきて……。前半の、どちらかと言えばゆったりとした展開から、一気に急展開になっていく物語のギアチェンジが非常に印象に残る。そして、その真相に関する犯人の心情が非常に切ない。記憶があること。記憶を失うこと。それはどちらが辛いのか? そして、その双方の中での想い。その辺りが心に残る。
まぁ、過去の事件とか、その辺りについて、そんなに都合よくいくか? とか、そういうのはあるんだけど……
あと、主人公の愛梨についての過去の離婚歴とか、そういうの、やっぱりあんまり話に関わっていないよな……(せいぜい、吉澤、渋谷との漫才のネタになっているだけのような……)

No.5389

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ザ・ロイヤルファミリー

著者:早見和真



父を亡くし、心に穴が開いた税理士の栗須は、ビギナーズラックで当てた万馬券が縁で、勝ち馬の馬主で、人材派遣会社の社長・山王に気に入られ秘書となる。山王の馬に関するマネージメントに関わる中、栗須は馬主の光と影を知ることになり……
2019年度JRA賞・馬事文化賞受賞作。
競馬はよくブラッドゲームと言われるけれども、それは、親から子へ、そして、その子へ……と血統が紡がれていく。だからこそ、「あの馬の子供が……」とかって馬を応援していくことになるし、また、「父はこうで、母はこうだったから……」と予想のファクターなどにもなる。そして、それは馬主という立場でも……
主人公・栗須が使えることとなった社長・山王。人材派遣会社の社長で、とにかく派手好き。家族からは道楽に……と言われながらも多くの競走馬を所有し走らせている。しかし、目立つということが周囲からの反感を買うこともあり、良くも悪くも周囲からは目立つ存在。なんか、表紙の男性の絵から、高額馬を買いまくっていた2人の某オーナーを足して2で割ったような印象を受けた。
物語は、そんな山王との出会い。その競走馬のマネージャーとして駆け出すところから。とにかくワンマンで、我の強いオーナー。しかし、一方で、馬に対する愛情はこの上ない。しかし、自ら言うように「馬を見る目がない」ため、高額馬を購入したは良いが……と馬鹿にされることも。そして、そんな山王のモットーとしては、馬を見る目はないが、人を見ることはでき。だからこそ、人に投資をする、というもの。そんなモットーの元、栗須の元恋人である加奈子の実家で生産された一頭の、血統的には目立たない馬・ロイヤルホープを購入して……
「物事には流れがある」という表現の通り、その一頭の馬との出会いにより上昇カーブを描いていく山王の馬主としての人生。しかし、頂点へとなったと思われたときに……。山王のこれまでの人生。その中で、栗須に「裏切るな」と言いつつ、山王自身が信じていなかったことへの苛立ち。はっきり言って、周囲にいる人間からすれば、山王という人間のそばにいたら……と思う部分はある。けれども、そのパワフルで、どこか泥臭くて……というキャラクターは、惹かれれば離れられないものなのではないかと思う。
そして、物語は第2部へ……。山王は死に、それを受け継いだのは……
感想の冒頭に書いた血統が紡がれるから、という部分。競馬の場合はサイクルが短いからより、っていうのはある。でも、それは実は人間でも同じこと。父の夢を……。そう思うが、しかし、世代も考えも違う存在。だからこそ、引き継いだとしても何らかの軋轢がある。それは、見守る側にも、受け継ぐ側にも……。栗須と後継者の間での葛藤などは、普通に会社の経営者とか、そういうところにも共通するのではなかろうか? 2代に使えることとなった栗須の目から見た、馬主の一代記というか、二代記。様々な葛藤と、しかし……という思いの交錯。そこに最期まで心を引き付けられた。

No.5388

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著者:二月公



偶然にも同じ高校に通う仲良し声優コンビとして始まった『夕陽とやすみのコーコーセーラジオ』。ほんわかラジオとして始まった番組だが、実際の二人はギャルのやすみと、地味で毒舌な夕陽という相性最悪な関係。相手を罵倒しながらも、なるべく嘘をつきたくない、とやりとりを重ねて……
第26回電撃小説大賞・大賞受賞作。
これが、今年の電撃小説大賞か……
こう書いちゃうと、何か期待外れみたいな印象を与えてしまいそう。そんなことはなく、しっかりと面白かった。面白かったのだけど、これまで電撃小説大賞の大賞受賞作ってフェンタジー色とかが強めのものが多く、現代社会を舞台に、異能力とか、そういうものが一切ない作品って珍しい気がする。なんか、こういう作品って銀賞あたりのイメージなんだよな。
で、本作の主人公は、歌種やすみこと佐藤由美子の方かな? 駆け出しの声優で大きな役などは殆どなく、学校ではギャルとして過ごしている。そんな彼女がラジオ番組のパーソナリティに抜擢。しかも、相手は同じ女子高生声優で、既に大きな役などを持っている夕暮夕陽。ところが、いざ、対面した夕陽は、クラスでも地味で、しかも毒舌で対立していた渡辺千佳だった。
実は仲の悪い二人が……みたいな感じで書かれているんだけど、そこまで、でもない気がする。初対面の関係は最悪。そもそも、アイドルとして、ではなく、キャラクターに声を当てる、と言うその部分だけで勝負したい千佳。そんな彼女の態度に苛立ちながらも、まず、目の前の仕事を、という由美子。色々と合わない部分はありつつも、番組のために行動を共にして……
由美子が目の当たりにする千佳の演技。先輩声優の凄さ。その一方で、千佳のヘッポコさ。世間知らずさ。千佳の仕事に対する親の反対。そういうものを目の当たりにして、どうしても感じる劣等感と、元来の姉御肌の気質。しかし、そんな中で……。結構、この辺りの関係性って、刑事モノの小説で、コンビを組んだ相手が最悪だと思いつつも、少しずつ信頼感を芽生えさせていくようなバディモノに近い気がする。
勿論、刑事モノの場合、事件を解決する、という目標に達することが出来れば……という部分があるけど、声優の場合はそうじゃない。同じ番組をしていても、アニメなどでは役を取り合うライバルでもある。だからこそ、由美子は嫉妬心もあるし……。そういう心情とかが上手く描かれていると思う。
終盤、ある事件が発生するのだけど、ちょっと急展開過ぎ&疑惑の真相がバレバレじゃないかな? とは思う。思うけど、欠点と言うほどの欠点でもない。その辺りでの完成度の高さは見事。
……むしろ……
ラジオ番組の打ち切り、存続って、そんなに簡単な話なのか? ってところの方がひっかった、元アニラジ番組投稿者のおいら(笑)

No.5387

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著者:天祢涼



大学を中退した壮馬は、神社の宮司となった兄の勧めで、縁結びのパワースポットとして人気を集める源神社で働くことに。そこで彼の教育係に任命されたのは、参拝者以外には笑顔を見せないクールな女子高生巫女・久遠雫。そんな神社の周辺では、奇妙な出来事が次々と起こって……
という連作短編形式で描かれる物語。
まぁ、こういう言い方をするとアレだけど、一見、昨今多い、ライトミステリかな? と言う感じ。実際、最初はツンとしていた雫に苦手意識を持っていた壮馬が、だんだんと雫に魅かれていく。でも、雫は……? みたいな展開も待っているし。
ただ、例えば、壮馬自身が、自分で感じているように神様とかに対する信仰心は皆無。源神社では、源義経を御神体として祀っている。しかし、現実の源義経はと言えば……。勿論、神社の経営という意味で、お金が必要なのはわかるが、拝金主義。そんな現実を見せつけられて……
そして、事件も、結構、社会問題とか、そういうのを含んでいる。例えば1編目は、源神社が管理している無人の神社が心霊スポットと言われ、若者が大騒ぎしているから何とかしてほしい、という依頼が入る。しかし、その背景には……。神社と言っても、無人のものとか、そういうものがあるけど、それは誰が守っているのか? なんていう蘊蓄と、それを訴えた側の、ある意味、おかしいのだけど、でも切実な想い。そういうのが印象に残る。
また、2編目は、祭を巡り、それを中止せよ、という手紙が……。一種の脅迫文であるが、祭というイベントがしかし、人によっては傷を抉ることになる、なんていうのもあるだろう。
厳密にいえば、最初の頃の事件も刑法犯罪に当たるのだけど、だんだんと文字通りの犯罪と言えるものに近づいていき、その中で、雫の危うさとかも露わに。そして、最終編で……
先に、恋愛要素などもあって……と言う風に書いたのだけど、その辺りの部分が、物語全体のひっくり返し。さらに言えば、壮馬自身の成長とか、そういうところに結びついているのが上手い。ある意味では、有耶無耶、なのだろうけど、テーマには合っているわけだし。
軽めのライトミステリというテイストを貫きつつも、著者らしさがしっかりと出た作品じゃないかな? と思う。

No.5386

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