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名探偵のはらわた

著者:白井智之



警察にも頼られる探偵・浦野の助手を務める原田亘。幼いころ、浦野に助けられた過去を持つ彼は、岡山の神呪寺で起こった放火殺人事件の捜査をするため、その地へと向かう。6人が死亡し、生き残った1人も重体という事件。死傷者は拘束された様子はない。なぜ、こうなってしまったのか? かつて、30人以上の死傷者を出した地で何が起きたのか?(『神呪寺事件』)
から連作短編形式で綴られる物語。
いきなりネタバレな話になって申し訳ないのだけど、1編目と2編目以降がガラッと変わってしまう。
かつて、30人以上の死傷者を出した津ヶ山事件。そんな事件の村で再び起こった事件。かつての事件は今なお、村の人々に大きな傷跡を残し、その関係者に対する攻撃とか、そういう反応も発生した。そんな村で起きた窃盗と放火事件。そのエスカレートなのか、それとも? このエピソードに関しては、どストレートなミステリという感じで、こういう過去の事件のテイストで綴られていくのかな? と思いきや、最後の最後に思わぬ方向へ転がって……
1編目の現実的な路線から話の方向性が打って変わって、オカルトを前提にした物語に。
次々と起こる、過去の凶悪事件を模した犯罪。その犯罪には、ある法則が存在しており、そこから誰が犯人なのか? その犯行は何なのか? というところへと焦点が移っていく。まぁ、オカルト前提とは言え、その世界観のロジックがしっかりと存在しており、その世界観のルールの中で仮説の構築と半鐘をしていく中で論理的に結論へと至っていく様はしっかりと本格ミステリとして成立していくのは流石。
さらに言うと、主人公である亘。彼と共に行動する探偵の姿。そして、事件。過去の事件とか、そういうものを参照しながら、それを追っていくのだけど、当然ながら記録とか、そういうものがすべてを言い表しているわけではない。誇張されていたり、反対に省略されていたり、なんていうことは日常茶飯事。過去の事件と関係がある、という中で、記録と現実の乖離とか、そういうところも一つのテーマになっているのかな? なんてことも思ったり。

No.5636

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著者:初美陽一



人類不可侵領域に住むナクトは、魔物に襲われていた王女にして姫騎士であるレナリアを助ける。装備の強さが、すべてを決めるこの世界で、強力な魔物をすら一撃で葬り去るだけの力を持つナクトの姿は、どう見ても「全裸」で……。
変なカテゴライズなんだけど、シュール系作品……とでも言えばいいのかな?
粗筋にも書いたように、装備が強さを決める、という世界。その中で、レナリアの危機を救ったナクト。その姿は「全裸」そのもの。ナクトは、「世界」を装備している、というのだけれども、どう見ても理解できない。そして、世界を回り、魔物を退治していくのだけど、そこで出会う面々は皆、「全裸」こそが最強の装備であると勘違いして……
ナクトは、全裸である、という以外は基本的には真面目なキャラクター。なのだけど、その格好のせいで、周囲の面々はおかしな思想に。全裸こそが最強の装備だ、と勘違いして奇行へ。全裸に、と思いつつも、まだその域に達していない、と、全裸に近づいた格好はするけれどもまだ脱いでいるわけではない。聖女と言われるリーンは、街の人々に、週に一度、下着を付けない日を設ける……などなど……。光の魔法を使えるレナリアが、その力で「謎の光」で……って、アニメなどのアレだよね?(笑)
基本的に、ナチュラルに狂ってやがる! という世界観に笑わせてもらった。
……まぁ、物語として、その狂った世界観を楽しむ、ということになるのだけど、ナクトがなぜ人間のいない「神々の死境」という地にいたのか? なぜ、そこで「世界を身にまとっている」という形で全裸状態だったのか? そういうところは、基本的に全く解決されていない状態ではある。その辺り、どういうことなんだろう? この辺り、新シリーズということで、今後、明かされるのかな?

No.5635

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空想クラブ

著者:逸木裕



幼いころ、祖父から「見たい風景を見ることができる」力を貰った空想好きの中学生・吉見駿。そんな彼は、かつて、いつも一緒にいた仲間の一人・真夜が川で溺死した、という一報を耳にする。葬儀の帰り、彼女が事故死したという河原を訪れた駿は、そこで幽霊のような状態でいる真夜と再会する。真夜は、夜の河原で少女を助けようとして溺死。しかし、その少女の姿は見えない。謎が解けない限り、河原から出られない、という真夜のため、彼女の死の謎を解こうとするが……
著者の作品はデビュー作から追いかけているけど、かなり色々な作風を持っているんだな、というのをまず思ったり。
物語の中心にあるのは、真夜の死に関する謎を解く、ということ。しかし、それには駿一人だけの力では不可能。そこで、駿、真夜ら、いつも一緒にいた「空想クラブ」の面々の力を借りて……ということになるのだけど……
空想好きで、冒頭に書いたような力を持っている駿。今でも駿と仲が良く、運動神経抜群で面倒見の良い隼人。そして、博識で、好奇心の塊で、気になったことがあると猪突猛進な真夜。最初から、三人は協力的。けれども、あと二人は……
小学校の頃の仲良しグループ。しかし、中学へ進学。文字通りにバラバラになり没交渉に。その中で絵が上手く、しかし、頑固だった圭一郎は、中学生になり、ある意味でエキセントリックな行動に。また、周囲への気遣いが優れていて、真夜の親友だった涼子は、ある時から真夜と距離を置き、不良グループと行動を共にするように……。そんなかつての仲間の協力を得るために動き出す。
進路が分かれ、没交渉になる。そして、その中で以前のイメージとは全く違う方向へ。これって、ここまで極端ではないにせよ、誰でも経験していることじゃないかと思う。そんなかつての仲間を集める最中で、彼らの抱えている問題を……という駿のやさしさ。しかし、一方で、自分が「強い」と思っていた真夜も、決してそうじゃなかった、という発見。何かノスタルジックな雰囲気と、でも、真夜は死んでしまった、という残酷さ。両方が混在した物語の雰囲気が何よりも印象に残った。
そして、その真夜の死の真相。これは、とことん……といって良いほどに残酷なもの。真相がわかったから……と言って、じゃあ、と納得できるような類ではない。その中で、でも……という希望へ繋ごうというまとめ方も良かった。多分、キャラクター設定とかを入れ替えれば、駿の能力というファンタジー的な要素を省いても終盤までの話は作れると思うのだけど、この結末だけは、この設定があったからこそ、だと思う。
とことん残酷。けれども、かつての仲間たちと一歩を踏み出す希望を見いだせる結末。その両方が上手くかみ合った作品だと思った。

No.5634

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妖の掟

著者:誉田哲也



盗聴器の仕掛けがバレ、ヤクザに袋叩きにあう情報屋の圭一。そんな彼を気まぐれで助けたのは、坊主頭の欣二と、美貌の女・紅鈴。そんな縁から、圭一の部屋に転がり込む二人だったが、彼らには秘密があって……
という風に書いては見たけど、あんまり内容に合致していないような気がする。
物語としては、著者のデビュー作『妖の華』の前日譚となる物語。……それだけで、わかるかも知れないけれども、紅鈴、欣二は、不死の存在である「闇神」。そして、『妖の華』で起こったという組長連続殺人事件の顛末を描いた物語と言える。
前作の感想で、主人公のヨシキが可愛い、というような感想を書いたのだけど、本作の場合も同様のことを圭一に対して思った。
暴力団抗争が起こりつつある状況。その中で一方の暴力団の情報屋として、活動をしている圭一。だからこそ、もう一方に追われることとなった。そんなところを闇神の二人に救われた。風俗嬢として働く紅鈴と、そのヒモという欣二。しかし、二人とも年齢の割にやけに年寄りじみた言動が目立ち、さらに行動も不可解なことばかり。そして、その中で、二人が人外の存在である、ということを知るのだが……
アッサリと受け入れる圭一、すげぇな!
しかも、パソコンなどについて教える中でだんだんと打ち解ける三人。欣二には情報収集の仕事も手伝ってもらい、仕事も順調。だが、それでも抗争は激化。その中で、圭一は、自分の雇い主に思わぬ仕事を依頼されて……
その事件までを含めて順調な三人の関係。勿論、その仕事の報酬を、というときに色々あるだろう、というのも想定済み。だから、その準備もしていた……はずだったのに……。秘密を抱えた闇神の二人と、そんな二人と素直に打ち解けた圭一。その絆をもって幸せな方向にも進める、と思ったのに……
『妖の華』の中での設定へと進んでいく、というのがわかるだけに、どうしても答え合わせ的な感じになるし、そこで感じた不可解なところなども解消はされている。そういう意味では、前作を上手くフォローしている、と言えるのだろう。ただ、ちょっと駆け足という感じもするし、また、どうしてもこうなるよね……とも。
単独で見ると、ちょっと終盤が……とも思えるのだけど『妖の華』と合わせると、上手く補完しあえているな、というのを思う。

No.5633

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十字架のカルテ

著者:知念実希人



正確な鑑定のためにはあらゆる手を尽くす。日本でもトップクラスの精神鑑定・影山の助手に志願した新人医師・弓削凛。精神疾患が疑われる犯罪者と対峙する中で、彼女が見るものは……
という精神鑑定を題材とした連作短編集。全5編を収録。
刑法39条「1.心神喪失者の行為は、罰しない。」「2.心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」。ミステリ作品……だけでなく、実際の犯罪の際などにもその是非などが色々と語られるもの。ただ、その是非についてを問題視した作品というのは色々とあるけれども、本作の場合は、そこではない。そうではなく、その精神鑑定そのものを題材にした話。勿論、フィクションであるので誇張とか、そういうものはあるのだろうけど、その一端を垣間見ることが出来たような気がする作品だった。
例えば、1編目。新宿の街中で、大学生が刃物を振り回し、死傷者が多数出た。しかし、しばらく前から統合失調症の症状が出ていたという。そして、服薬により、症状は収まったが、それで安心したため、服薬を辞めていたという。典型的な統合失調症の症状を示す容疑者に対して……。精神疾患は勿論、相手との対話などから調べていくもの。しかし、それでは詐病などもある。その中で、どういう部分に注目するのか? そういうところをしっかりと描いた導入篇としてもしっかりとしたエピソード。
3編目『傷の証言』。統合失調症と思われる引きこもりの青年が姉を傷つけた。精神疾患は怠けだ、という父親の言葉もあり、精神科などに行くこともなく悪化した青年。症状は、まさしく統合失調症そのものである。しかし、被害者である姉の証言は何かおかしい。その真相は……。ひっくり返しそのものもさることながら、その中で描かれる人々の精神疾患に対する意識。そして、家族を始めとして周囲の願いなどを無碍にしてでも真実を探さねばならない鑑定という立場。そういう部分が印象に残る。ただ、このケースでは、光の見える結末なのが救いではあるが。
そして、凛が精神鑑定の道を志した理由が明らかになる5編目『闇の貌』。正直、凛がこの事件に……という部分はかなりご都合主義だと思う。
ただ、精神鑑定をする側が、その相手に特別な思い入れがある、ということから生じる問題などを明らかにする。ただ、一方で、容疑者が抱えている疾患も一筋縄ではいかない。解離性同一性障害……いわゆる多重人格があると思われるが、犯人と思しき人格は現れない。そんな中、鑑定医失格とされた凛が取った方法は……。そこまでの4編と比べると、5編目はかなりエンタメ面を重視したような印象。ただ、ここまでの物語がひっくり返しはありつつも、専門的な話が多かった中で、一つのカタルシスとしても機能しているのかな? という風に感じた。

No.5632

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著者:池田明季哉



音楽活動を再開したヨシ。そんな彼の元にやってきたのは、かつてのバンド仲間でボーカリストのネリナ。時を同じくして、ブリストルの街では、ミュージシャン・カブリエルの言葉もあり、グラフィックの排斥運動が巻き起こる。そして、ブーティシアのグラフィックも何者かによって消されてしまい……
グラフィティVS音楽、という言葉が帯にあるけど、こういう風に展開するか……
物語としては、ヨシを巡ってのブーティシア、ネリナの争いと、ミュージシャンのぶつかり合い、というようなところが軸になるだろうか。
そもそもの、ヨシが日本を離れ、音楽から離れた理由。それは、ネリナの発した「魂がない」という言葉。そういったこともあり、ヨシはネリナから距離を取ろうとするわけだけど、突如現れたネリナは、日本にいたころと同じくヨシを振り回す。そして、ネリナからすれば、ヨシを奪ったブーティシアに対し、対抗心を燃やす。勿論、ブーティシアもまた、ヨシから音楽を奪った存在としてネリナを……。そんな中、ヨシは、ネリルとともに、ガブリエルの新たなプロジェクトに参加することに……
ヨシに対して言われた「魂がない」。それは、何を伝えたいのか、というようなビジョンがない、ということ。ガブリエルもまた、そのことを伝える。しかし、一方で、ガブリエルが見抜いたのは、そんなヨシは周囲が引っ張り、それをサポート、そこに追いつきたい、というような意思がある、ということ。決して、それが悪いわけでもない。それこそが大切な仲間、ともいえる。しかも、ガブリエルとのやり取りの中で、ネリナもまた、何者かになるため、必死にあがいている、ということを知ることになる。ブーティシアら、ブリストルで出会ったグラフィティ・クルーと同様に。
何を伝えたいのか? それって、確かに創作活動において、大切なことだとは思う。思うけれども、しかし、それだって色々な形がある。明確にこれ、という場合もあれば、とにかく、自分の憧れやら何やらがあり、そこへついていきたい、追いつきたい、なんていうこともある。後者も決して否定されるべきではない、というのも大切なことだろう、というのを思う。
そして、その一方でのグラフィティとの対立。これ、グラフィティの負の部分、とでも言うべきところを突いた話と言える。反抗の文化とか、色々という。けれども、勝手に他人の所有物に絵を描く。これって、ただの破壊じゃないのか? というのはヨシも認めるように正論ではある。そして、ガブリエルが過去に体験したことと、ブーティシアが見落としていたこと、という現実は確実にあるだろう。
……ただ、個人的には音楽はそんなことはない、はどうか、って思いもあったりはして(笑) 確かに、他人の家の壁とかを傷つけはしない。でも、ストリートミュージシャンとかが歌っているのを聞いて「うるさい!」と思ったことはあるからなぁ。静かな環境が欲しいとき、近くで大声で歌うストリートミュージシャンがいる、っていうのは「静かな環境」を破壊しているわけで……と、物語に直接関係のない想いなんかも覚えたり(笑)
ただ、ヨシの、「魂がない」を巡っての話から、創作の中にあるもの。そして、その対決を通して、両者が分かりあう……というところへ、しっかりと物語をまとめ上げるのは見事。2巻も完成度が非常に高く、満足感のある読後感だった。

No.5631

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著者:皆藤黒助



妖怪嫌いのはずなのに、なぜか「妖怪研究同好会」に所属している皆人。ハル先輩に振り回されながら迎えたのは文化祭。妖怪の街・境港の学校だから、という理由で文化祭のテーマも妖怪。そんな文化祭の中で奇妙な事件が発生。生徒会長は、実は文化祭の前に、犯行予告のようなメールが届いていたことを告白し、皆人らにその阻止を依頼してきて……
シリーズ第3作。それ以降、シリーズが刊行されていないので、これで完結(打ち切り?)……なのかな?
とは言え、今作は初の長編ということになる。と言っても、予告されていた4つの妖怪にまつわるトラブルが発生し、それを解き明かしていく形なので連作短編っぽいカラーもあるのだけど。
「水虎」「覚」「野槌」「狸囃子」という妖怪をモチーフとした事件が起こるのだけど、文字通りイタズラレベルという感じの事件。というか、事件と言えるのか? というようなものまで。例えば、最初に出会う「水虎」。水族館という展示で飾られていた「松葉ガニ(ボイル済み)」。ところが、見に来た人から上がったのは「松葉ガニいないじゃん」の一言。慌てて確認に行くと、しかし、そこにはちゃんとあって……。そのまま考えると、何者かがカニを盗み、しかも戻した、ということになる。でも、どうやって? 真相自体は、イタズラとすら言えない。
そんなイタズラみたいな事件の中で浮かび上がってくるのは、皆人らが入部する以前、妖怪研究同好会にいた、という先輩の話。しかも、その先輩は、文化祭で、売り上げを盗んだ、という疑惑を受けて定時制へ。そして、そんな先輩と、イタズラが結びついていって……
今回は、ハル先輩は店番やら何やらがあって出番が少ない。けれども、そんな先輩の話などが出てくる中でだんだんとその事件の真相へ。そして、真相を知った皆人はある行動に出て……。過去の事件の概要そのものが二転三転していく様。そして、その中で、普段は色々と文句を言いつつも、ハル先輩を守りたい、という皆人の行動が印象的。結局、皆人は妖怪が嫌い、と言ってもハル先輩自体が嫌いではないし、むしろ……っていうことになるんだろう。
そして、その行きついた先。……ハル先輩、あなた……(笑) 皆人の心、ハル先輩は理解できない、ってか(笑)

No.5630

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楽園とは探偵の不在なり

著者:斜線堂有紀



数年前、突如、世界に降臨した「天使」。二人以上を殺害した者は、「天使」によって即座に地獄へと落とされる、という世界が出来上がった。探偵・青岸焦は、天使を崇拝する富豪・常木に誘われ、彼の所有する常世島を訪れる。ジャーナリスト、政治家、天国研究家、医師などが集まったその島で、青岸を待っていたのは「起きるはずのない」連続殺人だった。
本格ミステリ、という触れ込みで、実際、クローズドサークルでの連続殺人は起こるのだけど、そこが主眼なのかな? という感じはしたかな?
とにかく、物語の最大の特徴は、その世界観。「二人以上の人を殺したものは地獄に落とされる」という部分。そのため、連続殺人鬼というような存在は、物理的に存在することが出来ない。さらに、この「殺す」というのは、故意、過失などを問わない。例えば、自分では毒と思っていないものを誰かに食べさせて二人以上の人を殺してしまった。こういうケースもまた、地獄へと落とされてしまう。その一方で、殺人の道具となる物を開発したりすることは、殺人としては見做されない。
そんな状況の中で起きた殺人事件。一人が殺された時点で、もう次はないだろう、と見るが、しかし……
正直なところ、この理屈自体に結構、穴があるし、また、二人以上を殺す方法というのもあり得る(これは、真相としても語られる) その上で、トリック自体は結構シンプルであるとも言える。その部分だけだとちょっと物足りないかな? と。
ただ、それ以上に、この世界観というのが印象に残る。二人を殺せば地獄行き。言い換えれば、一人までであれば許される。さらに、「どうせ殺すなら」で多くの人々を巻き込んでやろう、という自暴自棄になった存在の事件も頻発。かつて、数々の難事件を解決した青岸だったが、そんな事件の中で、かけがえのない仲間たちを喪ってしまった。自分がしていたのは何だったのか? そもそも、探偵がいる意味とは? そんな想いが常に付きまとう。しかし、そんな中で……
本格ミステリというのが強調されている割に、その部分はちょっと弱い。けれども、その特殊な世界観と、だからこその青岸の悩み。そういう部分の読みごたえがあった。

No.5629

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法廷遊戯

著者:五十嵐律人



法曹の道へ進むべく、ロースクールに通う久我清義と織本美鈴。そんなある日、清義の過去を告発する差出人不明の告発状が届く。そして、そこから奇妙な事件が頻発する。研究者の道を歩む結城馨の協力も得て、その事態の打破を図るのだが……
第62回メフィスト賞受賞作。
物語は2部構成。第1部は清義らがロースクールの学生である時代。ロースクールとは言うが、レベルは低く、司法試験の合格者はずっと出ていない状況。そんな中で、清義、美鈴は久々に合格できそうと期待されている。そういう状況の中、スクールでは模擬法廷を使って裁判のようなゲーム・無辜ゲームが行われていた。だが、そのゲームの裁判官役である馨はある時、そのゲームを封印することにし……
物語のテーマとしては「冤罪」。
ロースクールで行われていた無辜ゲームは、裁判のような形をとっているが、犯罪を証明、だけでなく、無罪を証明する、ということも必要となる。そして、施設で共に育った清義、美鈴にも封印された過去があった。それもまた……。そして、その美鈴が、馨を殺害した、として逮捕され、第2部へと入っていく。
かつて罪を犯した清義と美鈴。それは一人の男を冤罪へと陥れた。そして、そのまま死を与えてしまった。そして、その相手の関係者が馨。自分の過去を知られた美鈴が口封じのために馨を。それが警察のストーリー。しかし、美鈴は、清義に対して頑なに口を閉ざしながらも無罪を訴える。美鈴が嘘をついているのか? それとも……。美鈴の無罪を訴えながらも、どうしても湧き上がる疑念。その中で……
冤罪を作り出す状況。それは犯行だけ、ではなく、目撃者の訴えだったり、取り調べをする警察だったり、はたまた周囲の目だったり。そういうものが総合された結果。馨のいう「復讐」は何を狙っているのか? このあたりの狙いは面白かった。
もっとも、読者視点ではイマイチ、美鈴のキャラクターがつかめないため、そこまで律義に口を閉ざす必要があったのか? とか思うし、事件解決に大きな影響を与えるホームレスの窃盗犯の設定にもちょっと無理があるように感じた。冤罪というテーマなどは読ませるものがあったのだけど、ちょっと引っ掛かる部分もあったかな?

No.5628

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著者:アサクラネル



魔族に支配されてしまった都市。魔王は、自分が満足する料理を提供することを人々に求めた。場末のコックであるロインは、その料理を作ることを依頼される。勿論、満足させられなければ即処刑。万策尽きた……そう絶望するロインの前に現れたのは、「塩」の人造精霊・ソルティ。彼女の作り出す塩は、あらゆる生物を虜にする、という。しかし、その塩をつくるには、彼女を性的に絶頂させ、分泌されたものを精製する必要があって……
電撃文庫でも、こういう作品出すんだ……
というかね……塩を精製させるのに、女性(の精霊)を絶頂させる……って……明らかにその一発ネタで書いたろ!
まぁ、一応、書いておくと、本書の粗筋では三流料理人とされているロインだけど、父は精霊の力を借りていたとはいえ、周囲から絶賛される名料理人と言われていた男。そして、ロイン自身も、父によって修行をさせられ、料理人としての腕はしっかりと持っている、という存在。なので、ここで言う「三流」っていうのは、場末の飲食店で働いていた、くらいの意味で捉えた方が良いのかな? という風に思う。
で、物語の軸は、魔王を満足させる料理を出す、ということなのだけど、いきなり魔王に出すのではなく、その前に魔族による審査がある。それを通らなければならない。勿論、この段階での失敗でも即処刑(というよりも、そこで魔族に食われる) ドラゴン、直ぐに腐ってしまう魚しか食わない存在……そんな相手をまずは満足させる料理を出す必要がある。
正直なところ、人造精霊を絶頂させて……という部分と、何を食べさせるのか? という部分がそれほどかみ合っていないような……
審査をする魔族が何を食べるのか? 何を好んでいるのか? という情報を手にし、それを食材とする。勿論、人間とは全く味覚が異なる、とか、そもそも、料理とすることも、なんていう食材もある。そんなものを研究し、何を作るのかを決める。そして、その過程で、塩、だけでなく、酢、香辛料、蜜と言ったような精霊の作り出す調味料を加えて料理を完成させる、という形になる。その前半の、食材を決め、どう調理するのか? なんていう部分は面白く読めた。ただ……正直なところ、そこから人造精霊を絶頂させる方法とかの考察が加わって……っていうのはちょっとイマイチ。ヒロイン的な存在が4人いるわけだけど、それぞれを……っていうので逆にテンポが悪くなったように思えてしまった。さらに、人造精霊と最後の一線を越えてはいけない、とか、その辺りもイマイチ物語に活きていないし……
個人的に、どの食材を使い、どう料理するのか? というのが面白かっただけに、ヒロインをソルティならソルティだけに絞って、その「塩」を活かすような形で描いた方が、物語が広がったんじゃないかな? というのを思ったのだけど……

No.5627

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