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著者:二丸修一



幼馴染の黒羽に告白し、見事に玉砕した末晴。あそこまで行っていてフられるのか? そんなモヤモヤした気持ちを抱える末晴だったが、その様子は、SNSで拡散。そんなとき、子役時代の後輩・真理愛が現れ、さらに末晴の芸能界復帰の話も持ち上がり……
あー……もう、面倒くさいな、こいつら!
新キャラである真理愛の登場っていうのはあるんだけど、何よりも、黒羽の存在が面倒くさい。
そもそもが、末晴のことが好きで、告白されたら……と思っていたのに、いざ告白されたら勢いで断ってしまった! そのことに悶々と……。さらに、白草やら真理愛やらが現れてのさや当て合戦が……。もう、この時点で面倒くさい、の一言。そんな中、黒羽が記憶喪失に? そして、末晴の芸能界復帰の話まで降って湧いて……
前半は、もう面倒くさいなこいつら! と言う感じだったのが、末晴の芸能界復帰を巡ってのアレコレが出てきて、熱い方向へ。
末晴の、そして、黒羽の意向を無視して芸能界入りを進めるプロダクション社長。明らかに、見下した物言いをしてくるその社長の言動に怒り、WEBCMの再生数対決をすることになって……。細かくルールを定め、違反が出来ないように、と言う中での対決。そのルールの隙をついての策略。前半のただ、ひたすらに悶々とした話、というところから一気にカラーがかわり、その中での末晴の真っすぐさとか、そういうのが明らかになってくる鮮やかさってうまいよな、と素直に思う。そして……
でも、それだけで終わらずに最後にやっぱりひっくり返す、っていうのがこの作品の凄さ、になるのかな? 何か仕組まれているんだろうな、とは思ったけど、こういうひっくり返し方があったか……。やっぱ、油断ならねえ…・・・

No.5355

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左遷捜査3 三つの殺人

著者:翔田寛



刑務作業中の事故で病院へと護送中の受刑者が逃亡した。逃亡した暴力団員・国生を追うことになった目崎と棟方だったが、その中で、棟方の捜査は明らかに暴走していく。そして、その事件には、目崎の父も関わっていて……
シリーズ最終作。
正直、ちょっと忙しかったかな? と言う感じが残る。
物語としては、冒頭に書いたような形で、6年前、殺人未遂で逮捕され、収監中の暴力団員・国生が逃亡。懲役8年という中、もう少しいれば、と言う中での逃亡は、国生が所属していた組の関係者にとっても思わぬこと。ところが、そんな中で、その組の幹部の一人が独自に、国生について調べ始めている、ということが判明する。そんな中、暴走しはじめる棟方。さらに、目崎の父が死亡した15年前の事件も関わっていることが判明していって……
現在、6年前、そして、5年前。3つの時代が錯綜して、という構成は、著者の得意とするところ。その通り、過去のパートなどを挿入しながら展開していく。
目崎の父が殺されながら、なぜか黙殺されてしまった15年前。優秀な捜査官であった棟方が日陰者になってしまったきっかけとなる6年前。そこに関わっているという国生ら、暴力団員達。そして、その中で見え隠れする、警察内部でのアレコレ……
かなり詰め込まれていて、それ自体の読みごたえは十分にある。単純な事件ではなくて、警察内での権力争いであるとか、そういうものまで関わってくるわけだし。ただ、その一方で、なんか、一気に表に表出しすぎかな? とも思える。目崎は殉職した刑事の息子。棟方は、優秀だったが、現在は……。そういう過去とかは、これまでのシリーズの中で出てきていたし。でも、具体的な話とかは、ここまでほとんど出ていない中で、文庫で300頁余りの中に、それをすべて詰め込んだために、どうしても……っていう感じがするんだよな。
いや、決して悪い作品ではないのだけど、シリーズを通しての掘り下げとか、そういうのを、と思ってしまうのだ。そこが引っかかった、というか……
いや、多分……
目崎、棟方コンビのアレコレを、もっと読みたかった、っていうのが大きいのかな? という部分によるのかも……

No.5354

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ノッキンオン・ロックドドア2

著者:青崎有吾



不可能な謎専門の倒理。不可解な謎専門の氷雨。そんな二人の探偵の元には奇妙な謎が舞い込んで……
タイトルの通りのシリーズ2作目。
前作を読んでから3年ぶり、ということもあって、読みながら「こういう設定もあったな~」なんていうのを思い出した。流石に、倒理と氷雨については覚えていたけど、腐れ縁の刑事・穿地。宿敵となる美影。その4人が、同じゼミに学んだ関係で……なんていう設定、読みながら思い出す形になってしまった。まぁ、終盤のエピソードでは、その辺も関わってくるんだけど、それは関係なしに読んでも良いのかな? とも思う。
例えば1編目。DIYを趣味とする男が、その作業小屋で殺害された。扉には鍵が掛かっており……と言うのを見ると密室殺人のようにも思われるが、その作業小屋にはDIY用の工具によって巨大な穴が開けられていて……
なぜ密室状態の小屋に、大きな穴をあけたのか? 壁に返り血がついた? そんなことを考察しながらの真相は……はっきり言ってバカミスっぽい(笑) でも、それが良い。
真面目な謎解きとして面白かったのは、3編目『穿地警部補、事件です』。フリーライターの男が自宅マンションから転落して死亡した。事件、事故、自殺? 色々と考えられる中、事件の目前に一人の老人が男が、女性とベランダにいた、という証言をして……。これも、密室殺人ということではあるのだけど、そのアレコレも論理的。さらに、男のやっている仕事と過去が交錯してのひっくり返しは素直に上手い。
そんな中で、「チープ・トリック」によって殺人をプロデュースする美影の存在などが出てくる中、美影が依頼人となり、5年前の事件について……となる。それは、ゼミ生たちの中で起きた事件で……
正直なところ……これ、ある意味で「最も気持ち悪い」関係と言えそう……。なんか、理解できなくもないような、いや、でも……。そんな感じの後味が残った。

No.5353

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さよならの儀式

著者:宮部みゆき



全8編を収録した短編集。一応、テイストとしては近未来、SF設定というものを用いた話である、ということになるだろうか。ただ、そのSF的な設定があっても、いや、設定があるからこそ、現代の社会問題などをより際立たせているのかな? と言う感じがする。
例えば、『戦闘員』。毎朝の散歩を日課にしている老人・達三。ある朝、彼は、防犯カメラを破壊しようとしている少年を発見する。その場は、少年を叱り飛ばして終わった話だったが、その事件をきっかけに、町中に防犯カメラがあることに気づく。そして、少年と話をする中で……。正直、「ここで終わり?」と言う感じの終わり方ではある。あるし、また、この作品の設定は突飛ともいえる。けれども、防犯などのために、というカメラが悪用されるリスクとか、そういうのを十分に考えさせられる。
物語として印象に残ったのは表題作かな? 家事や介護などをするロボットが一般的になった社会。老朽化したそれを処分する施設に勤める主人公の元に持ち込まれたのは……
ものに対する感情移入。こういうと何だけど、例えば、人形とか、ぬいぐるみとかに感情移入をする人、というのは多い。また、ペットを家族に、なんていう人も多い。そんな中、ロボットが出てきたら……。見た目は人間そっくり。AIなどでコミュニケーションも可能。実際、目の前で、人間と同じように動いている。けれども、老朽化の影響ははっきりとある。むしろ、動くからこそ、危険である。主人公は、その危険性を感じているが、しかし、持ち込んだ側は納得しない。そんなやりとりの末で、主人公が願うのは……。実際にこんなことが増えそうだ、というのを感じざるを得ない読後感だった。
ちょっと異色だったのは『聖痕』。調査員である主人公の元を訪れた一人の男。男が依頼したのは、息子のことについて。離婚した妻に引き取られ、劣悪な環境で育った息子。その結果、息子は、母とその夫を殺害し、当時、センセーショナルに報じられた。少年院での時を過ごし、現在は真面目に生きている息子だったが、自分の過去の事件についての情報を調べたところ……
これは、SF設定というよりも、今現在、現実に起こり得ることじゃないか、という気がする。WEB上に溢れる様々な情報。真偽怪しいものもあるが、しかし、そんなセンセーショナルな事件だからこそ、それを崇拝する人々まで現れて……。実際、こういう事件において……っていうのはこれまでにも起きたことだし……。これに関しては、SFじゃなくて、素直に社会問題を描いた話だと思う。
と、ここまで書いてきて、SFと現代ものの差って何だろう? なんて思えてきた……

No.5352

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天才少女Aと告白するノベルゲーム

著者:三田千恵



大好きなフリーゲーム製作者「A」に会うため、ゲームを製作した桜山学園ゲームに入部した水谷湊。しかし、ゲーム制作の中心を担っていた部長の菖蒲は不登校状態。そこで、菖蒲の幼馴染で、変わり者として知られる由井と共に菖蒲の復帰を促すことにするのだが、そんなとき、湊の元に一本のノベルゲームが送られてくる……
どんどん引き込まれた!
物語のスタート地点は上に書いた通り。湊の元へと届いた一本のノベルゲーム。そして、そのゲームの名は『バッドエンドを探せ』。その内容は、かつて、ゲーム部が制作した『鬼が島』というソフトを巡って、菖蒲、由井らの過去を綴った告発モノ……。
最初に整理しておくと、かつてゲーム制作部が発表した『鬼が島』。同人ゲームであるが、その内容は高く評価され大きな人気を集めた。しかし、その一方で、そのゲームに影響された、と報道される自殺事件が起きていた。そして、その自殺したのは菖蒲のかつてのクラスメイト。さらに、ゲーム制作を巡って、菖蒲が由井の作ったシナリオを盗用した、なんていう疑惑まで出てきて……
そもそも、湊の目的であったのはAという人物と会うこと。名前からして、菖蒲ではないかと当たりをつけるのだが……。そんなところに、生まれ育った田舎町を離れる、というときに湊が経験したことなども含めてそれぞれの想いが丁寧に綴られて行き、終盤はひっくり返しの連続へ。序盤の、ゲーム制作部の隠された人間関係から引き込まれたのだけど、後半に入って、ちょっとしたヒントから湊が隠されていた部分を明らかにして、物語が次々とひっくり返っていく様は文字通りに圧巻。
読後感も良くて、読み終わって、素直に思う。面白かった。

No.5351

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著者:木犀あこ



都心に建つ、老舗ホテル・ウィンチェスター。創業90年を超えるここには、人間だけでなく、様々なモノがやってくる。そんなウィンチェスターでコンシェルジュとして働く友納は、ありえないトラブルに振り回されながらも、最高のおもてなしのために奔走する……
そんなウィンチェスターでの事件を描く連作短編集。全4編を収録する。
著者の作品を読むのは、デビュー作以来。そのデビュー作について、心霊現象とかは起こるけれども、「怖さ」は殆ど感じなかった、という感想を書いた。そして、本作も作風としてはそれに似ている、ということは言える。
というのも、粗筋でも書いたように、物語として、このホテルには「人でないモノ」。つまりは、亡霊とか、そういうもおが数多く住み着いている、というのが前提。主人公である友納の周囲には、常に傍らにいてゴチャゴチャと話しかけてくる(勿論、友納にしか察知できない)「嗤い男」とか、ついつい色々なモノを盗んでしまう「スニファー」なんていうのがいて、そういう存在とやりとりをしながら不可解なトラブルの真相を探っていく、という形で綴られていく。
ということで、心霊現象そのものは、怖くない。ただ、それぞれの事件はかなり陰惨なものだし、現象そのものは解決したけれども……という後味の悪さが印象的。
例えば1編目は、客室で突如、血が滴ってきた、というところから始まる。なぜ、何もないところから? 調べるうちに、他にも突如、モノが現れる、という事象が起きていたことが判明。そこから、現象そのものが全く反対であることがわかり、そして、その上で……。現象そのものは判明したけれども……という余韻が印象的。
そんなのが最も強烈なのは3編目。54年前、ウィンチェスターで起きた霊能者の変死事件。火を起こすことが出来る、という霊能者が、ショーで失敗。しかし、その後、部屋で発火をし、足首を残して全て死亡してしまった。そんな事件の現場を、その事件の生き残りである女優がTV番組の撮影で訪れて……。女優の置かれた陰惨な子供時代。そして、こうだと思われていた事件そのもののあり方がひっくり返って……の鮮やかさと、その上での後味が印象的。
で、そんな上で4編目はちょっと美しい形で締められて、それまでの後味の悪い物語がちょっと浄化されるような……
キャラクター同士の掛け合いとかは明るく、でも、事件そのものは結構、陰惨で……。そして、1冊の本としての構成もまとまっている。すごく良かった。

No.5350

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著者:支倉凍砂



娘たちを追い、旅に出たロレンスとホロ。小金両替のために訪れたヴァラン司教領で再会したのは司祭となったエルサ。司教領の財産管理のために訪れたという。両替の見返りとして、呪われた山の調査を請け負うことになるロレンスだったが……(『狼とどんぐりのパン』)
など、3編の連作短編集形式ではあるんだけど、1編目と2編目の『狼と尻尾の輪舞』は繋がった形で話が進むので、実質2編と言っても良いのかな? と……
その1編目。かつて鉄鉱山として栄えた町。しかし、その発掘、さらに製鉄の燃料として木々を消費したことで生物がすめない山と化してしまった。司教領の財産を管理するためにも、その山を売りたい。そんなところで、ロレンスが調査に向かうと、木々が生い茂っている。そして、それを復活させたのは、栗鼠の化身であるターニャ。木々も生い茂った山ならば……。でも、そのままでは過去の過ちを繰り返すだけにもなりかねない。何よりも、復活させたターニャが……
種族は違えど、故郷を喪った、という過去を持つホロ。そんな過去から、そのまま、というのも気にかかる。司教領のためにも、山を、という点と、山の保護という間での綱引き。そして、そんな提案を精査するエルサ。そんな中での各キャラクターの性格とか、そういうのが出ていて良かった。というか、何気に、ターニャの健気さが可愛いんだよな。
そして、2編目は、そんな中で各商会、組合間で、代金の支払いが滞る、という事態が発生。それぞれ「あいつらが……」という中でロレンスは……。これは完全に連鎖倒産とか、そういうのを描いた話。このシリーズらしい感じ。
3編目『狼たちの結婚式』。これは、コルとミューリの話ということで、『羊皮紙』で描いてもよさそうな気がしないでもない。
訪れた町で、結婚式の司祭役と介添え人役を頼まれた二人。しかし、花嫁が言うには、家族は相手を疎ましく思っており、指揮のイベントの中で殺そうとしている、という……。まぁ、話としてはありがちなコメディタッチな話なんだけど、イラストの花嫁が強そうで、どうにも笑ってしまう。

No.5349

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線は、僕を描く

著者:砥上裕將



両親を喪い、喪失感の中にる大学生・霜介は、バイト先の展覧会場で一人の老人に声をかけられる。老人は、水墨画の巨匠・篠田湖山。絵についての感想を言っている中、湖山に気に入られた霜介はなぜかその場で、彼の内弟子にされてしまい……
第59回メフィスト賞受賞作。
いいね、これ。
と書いた直後に何だけど、結構、物語の導入は無理矢理感はある。展示会のバイトをしていたら、巨匠に声をかけられる。そして、気に入られて内弟子に。勿論、霜介の感性は独特かも知れないけど、霜介は水墨画はおろか、絵などについても全く知らない素人。湖山の孫であり、自らも水墨画家である千瑛こそ、それに反発するものの、他の弟子やらは霜介に協力的で……って、流石にねぇ……。その辺にどうしても違和感を覚えたのは確か。
でも、面白い。
自分の場合、芸術、特に美術とかはサッパリなのだけど、それでも、水墨画というものの特殊性とか、そういうところに引き込まれた。油絵とか、水彩画とかの場合、下書きをして、そこに絵の具などで色を重ねていって……。そんな形で作品を作り上げていくのだろうけど、水墨画は筆に墨をつけ一気に描き上げる。勿論、墨の濃淡とか、そういうものはある。でも、方法論として全く異なっている。だからこその緊張感。そして、技術とは別に、何を描き、何を描かないのか? そういう部分に存在するセンスとでもいうべきもの。
そして、当初は違和感を覚えた、周囲が協力してくれて……という状況。しかし、そんな状況に甘えるではなく、素直に研鑽していく霜介。その中で、突きつけられる自分という線。絵を描くことは、自らと向き合うこと。自らが投影される、ということ。そんなメッセージと共に、いつの間にか自分を支える存在が多くいる、ということにも……
すごくきれいな話。ただ、著者自身が水墨画家ということもあっての、専門的な内容を、決して難しい言葉を使わずに読者へ理解させ、そして、爽やかな物語として描き切った、というのは見事の一言だろう。

No.5348

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著者:アサウラ



高卒で就職をしたものの、これと言った趣味もなく、ただ日々を何となく過ごすだけの青年・貞夫。友人であるシノと共に偶然、立ち寄ることになったのは、エアガンショップである大野工房。店員である舞白菜花と璃良に惹かれつつ、それ以上に所狭しと店内に並ぶ、銃器の数々に、子供心をくすぐられて……
え~っと……これ、小説っていうのかな……?
いや、小説であることは間違いないのだけど、著者による(?)解説の数々とが多くて、サイバイバルゲームについての解説書みたいな感じがする。貞夫と友人のシノが、ひょんなことからサイバイバルゲームというものに出会って、初めて、その試合に参加するまで、と言う話であるだけに。
まぁ……自分は(今のところ)全く興味がない世界ではあるんだけど、多分、撃ってみたときの反動とかそういうの、楽しいんだろうな、とか、そういうのは想像できる。でも、実際のモデルガンの値札にウン万円とか書かれていて躊躇する、っていうことになるだろう、というのも。しかも、実際にモデルガンを購入しても、その他のアレコレとかでますますお金がかかる、となれば……。貞夫自身は、それを見越して、一歩、踏みとどまろうとするけど、シノが先にどんどんハマって、しかも、ショップの店員の口車に乗せられて……なんていうのを見て、「だまされている!」とかツッコミを入れるとか、結構、知らない読者の代弁者としての役割を持っている、っていうのが感じられる。
その上で……物語に多く挿入される解説文。どっちかと言うと、ここが面白かった。結構、著者自身の経験とか、そういうのが反映されているのかな? とか思えてくるし。
これ、素直に小説として評価して良いのか? とか思うところもあるんだけど、それはそれで楽しめた。

No.5347

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時空旅行者の砂時計

著者:方丈貴恵



瀕死の妻のため、謎の声に従い2018年から、1960年へとタイムスリップした加茂。妻を苦しめていたのは、その一族である「竜泉家の呪い」。加茂は、その発端となった、一族のほとんどが死亡した「死野の惨劇」を防ぐこと……
第29回鮎川哲也賞受賞作。
選評にも合った通り、『屍人荘の殺人』(今村昌弘著)が、空前のヒットを記録する中で執筆された作品。それを踏襲したわけ、ではないのだろうけど、本作もちょっと変わった趣向が凝らされている、と言う感じ。粗筋でも書いた通り、物語の前提としてタイムスリップというのが存在しているわけだから。
ということで、瀕死の妻を救うため、その原因を取り除くべく、過去へとタイムスリップした加茂。過去に辿り着いたそこでは、いきなり不可能殺人が発生したばかりの竜泉家の別荘。殺人鬼がいるのでは? なんていう中、竜泉家の孫娘・文香の機転もあって探偵としてその事件に関わることになって……
次々と発生する殺人。それぞれが不可思議な状況で発生。それぞれ、論理性を中心に推理をするが……。そんな中で判明する加茂をタイムスリップさせた「奇跡の砂時計」の秘密。それが原因となって、世界そのものを破滅させかねない計画。そして、加茂自身の存在とは? そんなところから、最初にタイムスリップはあったけれども普通の本格モノ、と言う感じだった物語がファンタジーを伴ったものへと転換していく。本格モノの作品って、場合によっては、前提条件の説明だったり、とかで事件が起こるまで、そこから……がちょっと長いと感じられたりするものもあるんだけど、状況がどんどん転換していくため、テンポよく進んでいく、というリーダビリティの高さは特筆ものだと思う。
そして、その真相。
メインは、先にも書いたように、ファンタジー要素があったこそ、ではあるんだけど、それ自体もちゃんとルールの中で論理的。さらに、その周辺でのは、ちゃんとその時代であっても……と言うものがちりばめられており、設定とかによっては、タイムスリップなしでも通用するものになっていて、変わり種のメインディッシュはあれども、前菜とかは、正統派なもの、というコース料理みたいに思えた。っていうか、奇跡なしでも、と作中で自ら言ってしまう辺りはちょっとメタ発言っぽくて面白かった。
うん、面白かった。

No.5346

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