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(書評)上陸

著者:五條瑛

上陸 (講談社文庫)上陸 (講談社文庫)
(2008/04/15)
五條 瑛

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東北の温泉街、場末のスナック。ホステスたちのと会話の中で、金満が思い出すのは、二人の男たち。安二、アキムとの三人での日々、そして、そこで起こしたある事件のこと…
著者の作品は、これまで、長編ばかりだったのだが、本作は連作短編ということになるのだと思う。そして、これまで読んだのとは違った雰囲気を感じる。
父親のように慕っていた社長、兄のように慕っていたその息子…そんな会社を最悪の形で失った金満。短気で喧嘩っ早く、ギャンブルに目がない若者・安二。パキスタンから、出稼ぎに来て10年の不法滞在外国人のアキム。3人でチームを組み、3人で共同生活を送った方が便利、という理由で共に過ごしている3人。その3人の前で起こった事件。そして、彼らを結びつける格好になった事件…。
作品のテーマとしては、貧困、そして、外国人たちの日本に向ける視線。これを読んでいて、思い出したのが『黄金の島』(真保裕一著)である。『黄金の島』では、貧困にあえぐ、外国人が、日本にあこがれ、何とか、日本へ行きたい…という姿を描いていたわけだが、本作では、その後、という風に感じるのである。
あこがれであった日本。家族のため、故郷のため、真面目に働こうとやってきた外国人たち。しかし、そこで待っているのは、全く異質な世界。宗教、風習、文化…すべてが全く異なる世界。ある者は、そちらへと堕ち、そうでなくとも、変化を容赦なくされる。その結果として、彼らを待っているもの…。そんな彼らの姿に、そして、彼らに手を差しのばそうにも決して救いになれない金満らの哀しみ…。それぞれのラストシーンが実に切ない。
それだけに、文庫で書き加えられた後日談は何ともほっとした気分にさせられる。色々と裏切られてばかりの物語、でも、3人の信頼関係だけは…というラストシーンの暖かさにほっとした。

通算1505冊目

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COMMENT 4

そら  2009, 01. 06 [Tue] 13:39

たこやきさん,明けましておめでとうございます♪

>これまで読んだのとは違った雰囲気を感じる。

ですね~。五條作品にはつきもののスピード感とはまた違った,
抒情溢れる作品のように思いました。

きっとラストがいいんだね(笑)

今年もよろしくお願いします♪

…たこやきさんの『誘拐の果実』の書評,見つけちゃった。
相変わらずピシッと書かれているので,「おっ!」と思って,私のとこの記事に貼ってしまいました。(TBはしなかったけど^^)
閉鎖されたところの記事にそういうことって,
やっていいのか悪いのか,ちょっと迷うところなので,
もしかして「やめてほしい」ということだったら,教えてください。
さくさく外します(*^_^*)

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たこやき  2009, 01. 06 [Tue] 22:15

そらさんへ

こんばんは。あけまして、おめでとうございます。

>五條作品にはつきもののスピード感とはまた違った,
抒情溢れる作品のように思いました。

本当、そうですね。
スピード感とか、スリリングさとか(収録されたものを細かく見ればありますが)、そういうのとは違う、情緒に訴えかけるものを感じました。
締め方や、そこに至る構成など、それぞれのエピソードがすごく上手く活かされているのは間違いないと思います。

>…たこやきさんの『誘拐の果実』の書評,見つけちゃった。

いえ、TBなどは、全くかまわないのですが、ちょっと、今のプロバイダから変更しようかな、と思っているので、その辺りで、データだけWEBサイトの方に移していました。
数ヶ月後に、BLOGデータそのものが消えてしまうかも知れない、ということを了承してのことなら大歓迎です。

ともかく、今年もよろしくお願いいたします。

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そら  2009, 01. 07 [Wed] 20:33

たこやきさん,了解です♪
では,せっかくなので(?)このまま載せさせてくださいね(*^_^*)

データのお引越,膨大な量だけに大変でしょうね~(>_<)
がんばってねっ☆

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たこやき  2009, 01. 09 [Fri] 20:44

そらさんへ

はい、わかりました~。
書籍のデータの方は、8割方は、終わっているので、あとはのんびりやっていこうと思います。

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  • 2009.01.06 (Tue) 13:40 | 日だまりで読書
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  • 今回は福井晴敏的な感じ(漢・陰謀・武器)ではないのでかなり新鮮。 日雇労働者と密入国の連作短編集。 泥臭くて生々しいテーマだからエンターテインメント向きじゃないよね。 でもそれを娯楽小説にするあたりは流石。 ミステリーだったりクライムサスペンスだったり...
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