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2008/06/06 (Fri) 20:16
(書評)サイレント・ボーダー

著者:永瀬隼介

サイレント・ボーダー (文春文庫)サイレント・ボーダー (文春文庫)
(2005/02)
永瀬 隼介

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「悪魔が降りてきた」。フリーライターの仙元は、離婚した元の妻が、息子の家庭内暴力によって怪我をしたことを知り、仕事を投げて、その息子を引き取ることにする。その仙元の助手をしている南田は、仙元の仕事を引き継ぎ、そんな中、渋谷で活動する「シティ・ガード」に接近する…。
読んでいて楽しくなる作品ではないな…。物凄く「暗い」作品。
物語は、冒頭に書いた仙元を中心にしながら、多視点で展開する。妻子を捨てて家を飛び出したライターの仙元。過去、事件を起こし、今はただただ祖父の介護ときつい仕事に甘んじる勇志。一発、大仕事を狙う南田。仙元に出会い、その息子に関わっていく医師のちづる。そして、そんな彼らの中心にいる「シティ・ガード」のリーダー・航…。
一線を越えてしまった、境界を越えてしまった者。そうなってしまうのは、環境か? 物理的なものか? 作品の雰囲気としては『手のひらの蝶』(小笠原慧著)などと似たものを感じた(参考文献に福島章氏の著書があったりする辺りも共通しているし)
「虐待の連鎖」というのはよく言われるが、本書でもそれが描かれる。いや、それだけではなく、次々と犯罪・暴力までもが連鎖して続いていく。そのたどり着く先にあるもの…。
実際の凶悪犯罪者が、幼年期に女装などの虐待がされていた、と言うエピソードで感じさせるプロローグの少年は誰か? というためにも、ある程度は仕方が無いのだろうが、登場人物の殆どが、皆、過酷な過去を背負っている…などと言うのはさすがにちょっと出来すぎな印象。また、好みの問題もあるのだろうが、あまりにも人が死にすぎのような…。
ちょっとその辺りが気になった。

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2008/06/05 (Thu) 20:35
(書評)セカンド・サイト

著者:中野順一

セカンド・サイト (文春文庫)セカンド・サイト (文春文庫)
(2006/04)
中野 順一

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新宿のキャバクラで働くボーイ・タクトは、入ったばかりの新人・花梨に言われた「おめでとう」の言葉の意味に戸惑い、ふと気になっていく。そんなとき、店のナンバーワン・エリカにストーカー退治を依頼される。また、新宿付近では、水商売の女性を狙った事件も起こっていて…
著者のデビュー作で、以前に読んだ『ロンド・カプリチオーソ』のシリーズの前作に当たる作品。
読んでいてまず思ったのは、「ああ、失敗した」ということ。上に、シリーズの続編を先に読んだ、というのを記したわけだけど、そのおかげで、事件の中心部分についてはともかく、そこに色を添える部分、例えば、花梨という人物の謎について、だとか、そういうところが既に判明してしまっていたため。少なくとも、序盤の物語を引っ張る要素であるだけに、ちょっと勿体無かったな、と言うのはある。
そんなところはあるのだけれども、本編の方は、新宿、キャバクラなんていうものを舞台にした青春モノ、と言って良いのだと思う。店のキャバクラ嬢から頼まれた何気ない仕事。そこから始まって、ドラッグ、中国人マフィア、暴力団…アンダーグラウンドの世界へと広がっていく。とは言え、ノワール小説というわけではなく、あくまでもそんな中でのタクトの奮闘、正義感と言ったものを描いた青春小説、と言うことになるだろうか。それほど凄惨な描写だとかがあるわけでもないので、そういう描写が苦手な人でも大丈夫だと思う。
ただ、いくつか投げっぱなしの部分があるのは気になる。例えば、タクトの特技なんかは、彼の生まれとかと関係しているのだけど、花梨の力を示すちょっとした部分としてしま役立っていない。また、序盤、一つのポイントになる事件にしても、あまり本編には関わらず、ちょっと肩透かし感を感じる。この辺り、私が順番を逆に読んだから、余計にそれを感じるところがある、と言うのはあると思うのだが…。
テンポの良さとか、そういうのはあるのだけど、もうワンパンチほしかったかな、と。

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2008/05/12 (Mon) 16:47
(書評)ぷいぷい8!

著者:夏緑

ぷいぷい!8 (MF文庫 J な 1-24)ぷいぷい!8 (MF文庫 J な 1-24)
(2008/04/23)
夏緑

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ヘロディオンを目指して日本を発った陣たち…だが、翌日にはヘリが墜落。砂漠の中に取り残されてしまう。そんなとき、オアシスを見つけたシエラはアルフだったが、アルフが攫われてしまい…
前巻でそろそろ完結が近付いてきた、というような感想を書いた気がするんだが…思いっきり脱線してやんの(笑) なんだこの、全編通してのカオス会話は。まぁ、陣辺りは、活躍しているんだが…その、何だ…砂漠の砂だけで、甲骨文字を想像して恍惚の表情をしてしまうってどーなのよ、人として?
今回、実は影の主役だったのは本田さんかと。確かに、彼女がラスボスという説、有力だと思いま〜す! だって、この人一人でパワーバランス破壊しているし、何か腹黒いし、メガネっ娘だし(違)
今回もサロメによって復活したゾンビやらで、戦いはあるんだけど、本当、物語としては前巻で大きく動いた分、今回は足踏みという感じ。まぁ、ひたすらに繰り広げられるカオスな会話に笑いながら読み進められることが出来たから良いんだけどね。今回は、かなりギャグとして楽しめた。
…しかし…親父コンビ&ニコライが案外役立たずなのはどーしたものか(笑)

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2008/05/08 (Thu) 16:00
(書評)文学少女と神に臨む作家・上

著者:野村美月

“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫 の 2-6-7)“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫 の 2-6-7)
(2008/04/28)
野村 美月

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2月、恋人として付き合い始めた心葉とななせ。遠子先輩は、相変わらず文芸部に顔を出す。そんなとき、二人が立て続けに、心葉の家へ来ることに。そして、そんな状況に流人は…。
シリーズ完結編の開幕。
なんか、物凄い勢いで乙女です。ななせさん、滅茶苦茶乙女してます(笑) そして、その滅茶苦茶にいじらしい様子があるだけに、読んでいる側としては、どんどん彼女の立場の苦しさを痛感せずにはいられないわけで…。
ということで、完結編は、その心葉とななせの、非常にたどたどしい、微笑ましい様子から始まるわけだけど、そこへと介入してくる流人の意思。そこで少しずつ明らかになっていく遠子先輩、流人の家庭の事情。それを巡る状況。それを知れば知るほどに揺らぎ、さらに追い討ちをかけるようにかけられる「小説を書いて」の言葉。あとがきで、著者が「ものすごい勢いでへたれてます」と書いてて、確かにその通りなんだけど(笑)、あの流人の介入の仕方をされれば、それは当然ではないかと。ただ、その部分に触れる、というわけじゃないからね。
親友同士だったはずの流人の母であり、作家である叶子と、遠子の母の結衣。そして、遠子の父で、編集者であった文陽。流人の母の書いた小説はどこまでが事実なのか? そして、日記に書かれていた言葉。さらに、流人の最後の告白…と、様々な部分でどれが真実でどれが嘘で、っていうのがわからない状況が次々と生み出される。この辺りはラストエピソード、という感じではあるんだけど。
とにかく、気になる、っていう意味じゃ、これほど気になる終わり方もないと思う。というか、「完結編」ということで、もう、この1冊で終わると思っていただけに(読み始めるまで「上」って文字を見落としてた)、余計に、ってのはあるんだけど。

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2008/04/06 (Sun) 19:45
(書評)零崎曲識の人間人間

著者:西尾維新

零崎曲識の人間人間 (講談社ノベルス ニJ- 21)零崎曲識の人間人間 (講談社ノベルス ニJ- 21)
(2008/03)
西尾 維新

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殺し名の序列三位、零崎一賊。殺人鬼一族である零崎の中にあって「変わり者」と呼ばれる零崎曲識。「少女趣味」にして「菜食主義者」、そして「音楽家」…。
「戯言」シリーズ番外編である「零崎」シリーズ3作目。戯言シリーズの物語の前から始まり、シリーズ終盤の部分までの時系列を描いた4作の連作短編。
明らかな変態である(笑)零崎双識、どちらかと言うと人間くさい零崎軋識のあとだけにどうなることか、と思ったのだが、なるほど、「悪くない」。零崎曲識がどういう「殺人鬼」なのか、という紹介がされる『ランドセルランドの戦い』、零崎曲識が「少女趣味」となった経緯を描いた『ロイヤルロイヤリティーホテルの音階』、そんな彼の「人間臭さ」を感じさせる『クラッシュクラシックの面会』、そして、その最期を描く『ラストフルラストの本懐』という構成がまず巧い。
最初にも書いたけれども、キャラクターの濃さでは、双識がいるし、人間臭さでは軋識がいる。極めて限定的な相手しか殺さないし、戦い方も特殊なもの。けれども、そんな彼の個性、人間性が読めば読むほど滲み出てくる。そして、そんな彼の最期の、最大の望みがかなう形になるラストシーンは凄く印象的。ジーンと来るんだ、これが。
うん、面白かった。
…そういえば、「人間人間」って、どういう意味?(笑)

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2008/04/03 (Thu) 13:56
(書評)ロンド・カプリチオーソ

著者:中野順一

ロンド・カプリチオーソ (ミステリ・フロンティア 41)ロンド・カプリチオーソ (ミステリ・フロンティア 41)
(2007/12)
中野 順一

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「しばらくの間、新宿駅西口には近寄らないで」 予知能力を持つ恋人・花梨から受けた忠告。しかし、タクトは、その言葉に背いて西口へ行ってしまう。結果として、出会った女性、不可解な友人の死、次々と舞い込むトラブル…。
読み始めて知ったんだけど、この作品、シリーズものの2作目だったらしい。版元が違うので油断していた…。まぁ、特に問題なく読むことは出来たのだけれども。
うーん…どういう風に表現しよう。「どういう作品か?」と問われると、やっぱり「青春小説」「青春ミステリ」みたいなものに落ち着かざるを得ないのかな、というのがまず第一。物語としては、冒頭にも書いたように、予知能力を持つ恋人の言葉に背いて西口に言ったことを端緒にトラブルが次々と発生し、それがやがて繋がっていって…というもの。ヤクザやら、振り込め詐欺やらなにやら…というものを扱いながら進んでいくんだけれども、トリックというよりはプロットで綴ったタイプの作品だけに下手にかけないな…というのもあったり。
そんな中で、やっぱり目立つのは主人公・タクトの人柄であり、その周囲の面々の人柄じゃないかと思う。歌舞伎町のカフェでピアニストをしながら、仲間想いで、そのためには危険を顧みずに突っ走るタクト。とにかく、その部分が目立っていたように思う。いくつかの面において、あからさまに怪しいだろう、というところでもすっかり信じてしまうとかいう部分があり、読者としては「おいおい」と思うところはあるのだけれども、これも「仲間想い」「義理堅い」というような主人公の性格描写に寄与しているように思う。

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2008/04/01 (Tue) 21:17
(書評)白銀の鉄路 会津〜奥只見追跡行

著者:永嶋恵美

白銀の鉄路―会津‐奥只見追跡行 (祥伝社文庫)白銀の鉄路―会津‐奥只見追跡行 (祥伝社文庫)
(2006/12)
永嶋 恵美

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猪苗代湖畔で凍死した老夫妻。状況から心中として処理された案件だが、甥の訴えにより、生前の夫妻と面識のあった新米刑事・由香里は、ベテラン刑事の藤ノ木と共に会津へと向かう…。
なんか、タイトルやら「トラベルミステリ」なんて煽り文句だけを見ると、西村京太郎作品とかみたいなものを感じる部分があるかもしれないけど、あまりそういうタイプの作品とは言えない。多少、時刻表とかは出てくるものの、そこにトリックが…というわけではないし。
物語は、冒頭にも書いたように、老夫妻の足取りを探るところから始まり、住宅火災の現場から発見された夫婦ではない男女と、そこから逃走した老いた二人の捜索へ…と繋がっていく。会津へと向かった二組の男女。彼らは住所こそ近いものの、直接的なつながりは見つからない。その二組を結びつけるもの。そして、何故、二組は同じようなルートを辿ったのか…。
「清新な長編トラベルミステリ」なんていう紹介がされるものの、読み終わって爽やかとか、そういう感覚は全く残らない。むしろ、二組の男女、それを結びつけた存在の背後にあるドロドロとした感情に苦い後味が残る。逃げる男女に関して言うと、むしろ、悲壮さすら感じるほどに…。
正直、偶然…っていうのは展開上仕方が無いとは言え、ちょっとご都合主義と取れるかも。また、物語の発端だった猪苗代の方が途中からなおざりになっているような気がする。その辺りが、気になったといえば気になったところだろうか。
比較的、軽めに読めるのだけど、根底にあるものはずっしりくる。そんな作品。

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2008/03/30 (Sun) 17:08
(書評)タロットの御主人様.。2

著者:七飯宏隆

タロットの御主人様。 2 (2) (電撃文庫 な 11-9)タロットの御主人様。 2 (2) (電撃文庫 な 11-9)
(2007/09/10)
七飯 宏隆

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「隠者」と「節制」のカードを封印して一週間。秋人は、取り付かれていた結夏、香澄に振り回されながらの日々を送っていた。そんな中、隣の名門女子高で不可解な「占い」と、それに伴う「事件」が起きていることを知って…。
うーん…1巻目もそうだったんだけど…どう見ても、結夏、「豊満ではないにしろ、普通の体型」をしていると思います…少なくともイラストを見る限り(せめて、その辺りはあわせようよ…)
作品としては、非常にオーソドックスなライトノベル、という感じ。解放されたタロットに取り付かれ、その能力を取り戻すため、手に入れたタロット(=能力を持った女の子)と共に戦う…と。そして、それを封印するのはキスで…。今回は、既に手に入れた形の2人で、やはり2人の少女と対決して…タッグ戦的な部分はまずまず…。
ただ…やっぱり、あまりにオーソドックスすぎて、インパクトは薄いなぁ、と…。そして、「C○さくら」だなぁ、と。
うん…なんだ…このペースで著者は全11巻構成でも狙っているのか、と…(ぉぃ) 前巻よりはそれでも素直に楽しめたんだけどね。

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2008/02/17 (Sun) 23:20
(書評)理由あって冬に出る

著者:似鳥鶏

理由あって冬に出る (創元推理文庫 M に 1-1)理由あって冬に出る (創元推理文庫 M に 1-1)
(2007/10)
似鳥 鶏

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僕の通う高校には芸術棟(と言っても、ただの古いだけの建物だ)がある。美術部員である僕もその一人。あるとき、吹奏楽部員の秋野から幽霊が出る、という話を聞いた。何故か、それを見極めることになった僕たちの前で実際に…。
学校の芸術棟に広がる2つの幽霊話。行方不明になった生徒が、幽霊として現れる、というものと、壁男が現れる、というもの。2つの事件を主人公・葉山と文芸部部長の伊神先輩、その周囲の面々による「にわか探偵団」でその解決を…という物語。
とりあえず、この「怪談」トリックの1つに関しては、読んでいてわかった。文体そのものもそうだけど、比較的、ライトなトリックなので、恐らく予想できる人は多いのではないかと思う。ただ、矛盾とかがあるわけじゃないし、しっかりとそこまでの道筋も示されているので文句は無い。意味深なタイトルの理由もしっかりとしめされるし。
ただ、その部分を含めた終盤の急展開っぷりはちょっと気になるところ。プロローグがあったので、何か関連するんだろう、とは思ったものの、ちょっと取ってつけた、と言う感じがしたのが残念。それが無いと、あまりにライト過ぎる、と言う気がするので痛し痒しなのだろうが。
まぁ、地味だけど、悪い作品では無いと思う。
…つーか、柳瀬先輩…の母ちゃん、すげーキャラだったなぁ(笑)

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2008/02/07 (Thu) 00:35
(書評)猫鳴り

著者:沼田まほかる

猫鳴り猫鳴り
(2007/08)
沼田 まほかる

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年を重ねてから妊娠した子を流してしまった信枝。そんな彼女の家の近くで聞こえる猫の声。生々しい子猫を遠くへ捨てに行く信枝だが、再び戻ってきて…。
と言うところから始まり、猫と、その周囲に纏わる3つの物語。
著者の作品って、デビュー作から、ミステリというタイプの作家ではなかったけれども、3作目の本作は完全にミステリから外れた。物語は、信枝・藤治夫婦の元へ一匹の子猫がやってきたところから始まり、3部構成の連作中編と言う印象。
鬱屈としたものを抱えた信枝を描いた第1部、衝動を抱えきれずにいる行雄を描いた第2部。これらが猫との関わりを通して変わっていく2つの物語も印象的なのだが、特に印象的だったのは第3部。
第1部から十数年。既に、妻・信枝は他界し、藤治とモンの生活。老境に入った二人(?)の生活。何があるわけではない、ただただの静かに老いていく。若い頃から全く手の掛からなかったモンと、それを見守る藤治。少しずつ、その生命の炎が消えていく。ただ「したいようにさせる」と言いつつも衰えていくモンに慌て、けれども、少しずつ、それを受け入れていく…。その葛藤、その心の動きが非常に印象的。
非常に静かに、けれども、強く心に残る作品だった。

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