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2008/07/04 (Fri) 17:58
(書評)密室に向かって撃て!

著者:東川篤哉

密室に向かって撃て! (光文社文庫 ひ 12-2)密室に向かって撃て! (光文社文庫 ひ 12-2)
(2007/06)
東川 篤哉

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突発的に発生した自作の改造拳銃流出事件。その流出した拳銃によって、一人のホームレスが犠牲に。犠牲となったホームレス・金蔵と交友のあったフリーター・流平は、「名探偵」の鵜飼と遺体の発見場所を訪れる。そして、そこで近くに住むお嬢様・さくらと知り合い…
烏賊川市を舞台としたシリーズ第2作。物語そのものは、前作『密室の鍵貸します』を読んでなくとも大丈夫だが、人間関係などを把握するには、読んでいたほうがベター…というところだろうか。
前回に引き続き、今回も密室を舞台にした事件。ただ、今回は海へ突き出た岬に立つ建物での事件。鍵が掛かっている、と言うわけではなく、入り口に人々がおり、そこから出ることが出来なかった、というもの。そして、凶器は拳銃。
物語のカギは、銃弾の数。8発の銃弾。改造拳銃でそれ以上はない。そんな中での銃声と、見つかった銃弾の数。そして、それでは謎のままの事件。そこをどう埋めていくか…。前作同様、どうにも飄々とした、ツッコミどころ満載のやりとりで行われながらも、しっかりと論理的に解明されるのは実に楽しい。
このトリックを使った際、かなり厳密な科学鑑定をすればわかるのではなかろうか? と言うちょっとした疑問はあったものの、実に手堅く、楽しめる本格ミステリに仕上がっているのではないかと思う。

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2008/06/30 (Mon) 12:57
(書評)監禁

著者:福田栄一

監禁 (講談社ノベルス フL- 1)監禁 (講談社ノベルス フL- 1)
(2007/06/08)
福田 栄一

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「助けてくれ、カンキンされている 警察に連絡を」 リサイクルショップで働く美哉は、仕入れた机の中から、そう書かれた1枚の紙切れを見つける。「悪戯」 と言う周囲の声を押しのけ、一人、調べてみることに…。家を飛び出し、一人で暮らしてきた女性・棗との婚約を決めた義人。だが、叔父夫婦の希望もあり、棗の両親と結納を交わすことに。連絡を断った両親を探すことにするのだが…。トラブルで会社を飛び出し、食うにも困っている青年・泰男。そんなとき、ふと出会った老婆に「命を狙われているから、助けて欲しい」と持ちかけられ…
『監禁』と言うおどろおどろしいタイトルの本作であるが、冒頭に書いたよう、それを示唆するのは美哉の物語から。3つの物語が平行して進行する形のパズラー作品。
どういう風に書けば良いだろうか、とちょっと悩む。というのは、3つの物語そのものの組み合わせ、そして、関係性で物語の全体像がハッキリする、と言うタイプの作品であり、それも一気に、というよりはジワジワと全体像がにじみ出てくるように繋がるため、物語の内容を話すこと自体がネタバレにつながりかねないため。
私がこれまで読んだ著者の作品と言うと『A HAPPY LUCKY MAN』など、どちらかと言うと明るい、ユーモラスな雰囲気の作品が主であるが、本作はその冒頭から暗い雰囲気をまとう。関係のなさそうな物語2編も次第に不穏な空気が流れ、そして、少しずつ繋がっていく。タイプは違うものの、3つもの物語が重なり合ってくスピード感は面白い。
ただ、終盤、事件の真相が判明してくる段になって、都合の良い形で情報提供者が現れたり…というのはちょっと気になる。また、最後があまりにアッサリとしているのも勿体無い。これだけ大掛かりな事件なら、首謀者一人についてで完結するとは考えづらく、周囲についても書いて欲しかった。いくつかの部分が投げっぱなしになってしまっている。
序盤からどんどんと読み込めただけに、余計に最後のアッサリとしすぎているのが惜しい。

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2008/06/12 (Thu) 17:51
(書評)ゲッベルスの贈り物

著者:藤岡真

ゲッベルスの贈り物 (創元推理文庫)ゲッベルスの贈り物 (創元推理文庫)
(2001/08)
藤岡 真

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「ドミノを探せ」 世間を騒がせている謎の覆面歌手・ドミノ。映像製作会社勤務のサラリーマン・藤岡は、その正体を探り、出演交渉をするよう命じられる。様々なガセをつかまされながら、千田と言う男、コンピュータ工学者の長谷部の名を知るが、そんな矢先、千田が自殺したとの一報が入り…
うん…なかなか面白かった。
冒頭、プロローグで「最終兵器」を持ち帰ろうとする軍人の話が出るので何事かと思うものの、物語としては至って普通のミステリー。勿論、「最終兵器」も関わってくるのだが…。
物語そのものは、謎の歌手・ドミノの捜索を行う藤岡の間に、次々と有名人を殺害していく「わたし」の視点の物語が挟まれる形で進行する。「ドミノ」と言う歌手、友人の自殺、その背後に見え隠れするフィクサー…。「最終兵器」とは何か? さらには、物語そのもののに存在する仕掛けと、確かに文庫の紹介文にあるように「アクロバティック」な作品になっている。
実のところ、物語の3分の2くらいまで読み、少しずつ「最終兵器」が明らかになってきたところで、「これ、もしかしてトンデモ方向か?」と構えたところはある。…が、そういう部分も、ちゃんと現実的なところへと着地してくれて、「なるほどな〜」と思わせてもらった。ちょっとやりすぎかな? と思える部分がないとは言わないが、個人的には許容範囲。
この作品、単行本で出たのが1993年。既に15年も前。ただ、この作品で描かれているある「社会現象」は、現在の方が深刻化している状況にある。そういう部分での先見性も感じられた。

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2008/05/29 (Thu) 18:30
(書評)アクセス

著者:誉田哲也

アクセス (新潮文庫 ほ 17-1)アクセス (新潮文庫 ほ 17-1)
(2007/01)
誉田 哲也

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親友の尚美の死。悩む可奈子のもとへ執拗に掛かってくる嫌がらせの電話。ネット、携帯が無料になる、というサイトに登録した少年たちに次々と事件が起こり…
携帯電話のサイトに登録した少年たち。口コミで紹介する形で広がっていくネットワーク。そして、次々と起こる事件。ネット上の異世界、悪意、そこから現実世界へ…というような物語は決して目新しさがあるわけではないものの、手堅く纏めてきたな、という風に思う。
ただ、中盤、大きな事件が起こった辺りから、ちょっと想像とは違った方向に行ってしまったな、というのを思う。そこまででも、これは科学的な意味のあるものなのか? それとも…というようなものだったのが、アッサリと説明されてしまい、あとは、ヒロインである可奈子がどう助かるのか、に絞られてしまう。その部分についても、一応は解決したものの、根本的な解決になっているのか、と言うとちょっと疑問の残るもの。
前半は面白かっただけに、どうも後半の展開が残念と感じてしまった。

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2008/05/27 (Tue) 21:49
(書評)探偵小説のためのエチュード 「水剋火」

著者:古野まほろ

探偵小説のためのエチュード「水剋火」 (講談社ノベルス フJ- 4)探偵小説のためのエチュード「水剋火」 (講談社ノベルス フJ- 4)
(2008/04)
古野 まほろ

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「人殺しだから」 過去の過ちを背負って、実予へと転校してきたあかね。そんな彼女は、実予の人々に温かく受け入れられる。そして、そんな実予では、謎の連続放火事件が起きていた。そして、彼女の目の前で爆発、転落事件が起こる。陰陽を操る美少女・小諸るいかと共に事件に挑む…
ぞなもし、ぞなもし、はふぅ…(ぉぃ)
『天帝』シリーズ3部作が完結した、ということで新シリーズの本作。ただ、世界観そのものは、同じであり、また、直接、物語に関わるわけではないものの、『天帝』シリーズの面々の名前があったり…というようなリンクはされている。
さて、物語の方は…というと…。正直、デビュー作である『天帝のはしたなき果実』を読んだとき同様の疲労感をまず持った。デビュー作も、かなり独特の言い回しで慣れるまで読みづらさを感じるのだが、本作にしても同様。テンションの高さなどは同じで、そして、最初にも書いたような「ぞなもし」な独特の言い回しでの会話、やりとりが続き、事件そのものが起こるまで全体の半分近い頁数が使われる。そのため、『天帝』シリーズで大分慣れた、と思っていても苦労した。ここから入る人は、余計に疲れると思う(しかも、世界観などの説明も少ない)
ミステリー小説と言う意味で言うならば、(最後に陰陽師としての調伏とかあるけど)極めてオーソドックスな格好。部室棟で起こった爆発事件と、ほぼ時を同じくして起こった生徒の転落事件。あかね、るいか、警部の3人で目撃証言や物証を探り、そして、それが出揃ったところで…と。
純粋にトリックだけを言うのであれば、比較的簡単。読んでいて、恐らく、この人が犯人で、こういう形でやったんだろうな、と言うのは想像できた。実際に、それが可能かどうかは、ちょっと微妙だけど、物理的に絞り込んでいって、の解明は論理的であるし、そういう意味での文句はなし。
が、それだけに、前半で書いた、それ以外の著者独特の部分をどう評価するか、と言う話になるのではないかと思う。私自身、嫌いではないけれども、疲れた、と言う感想をどうしても言ってしまう。
『天帝』シリーズもそうだけれども、購入するなら、先に少し立ち読みをして決めることをお勧めする。

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2008/05/26 (Mon) 22:15
(書評)狼と香辛料8 対立の町・上

著者:支倉凍砂

狼と香辛料 8 (8) (電撃文庫 は 8-8)狼と香辛料 8 (8) (電撃文庫 は 8-8)
(2008/05/10)
支倉 凍砂

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自分を出し抜いた女商人・エーブ、そして、「狼の骨」の噂。ロレンスたちがたどり着いたのは河口の町・ケルーベ。川を挟んで南北の対立のある町で情報を仕入れるのだが…
前巻が番外編だったので、結構、久しぶりの本編と言う感じがする。そして、物語の方も、久しぶりに商売という部分を前面に押し出してきたところ。とは言え、今回は上下巻の上巻、ということもあって、導入編と言う印象だけど。
なんていうか…キーマン、恐ろしい子! そして、エーブ、もっと恐ろしい子! ですか?(笑)
「狼の骨」の情報を巡って情報収集に勤しむロレンスたち。そんな町の背景にある南北の対立と、そこで儲けを企む者たち。ロレンスが凹んでいる場面があったけど、完全に今回のエピソードでは、その勢力に挟まれ、弱小商人であること、そして翻弄される存在である、っていうのが浮き彫りにされた形だし。キーマン、エーブ、どっちにも今回に関して言えば、いいように弄ばれているもんなぁ…。これまでのシリーズの中でも危機はあったわけだけど、今回の場合、ある意味ではこれまで以上かも知れない。
という感じで本編があるわけだけど、一方で、ロレンスとホロのやりとりは今回、ちょっと甘さ控えめかな? と。6巻で同行することになったコルが出てきたおかげで、これまでと比べて「あからさまに甘い」やりとりが弱くなった感じ。それでも、そこかしこに、二人の関係を感じさせるものはあるし、また、それを見て赤面するコルがかわいい、みたいな部分もあるんだけどね。まぁ、最初の頃から知っているから読者は、ニヤニヤするだけで良いんだけど、コルみたいな立場だったらオロオロもするだろうな、と思う、うん。
ともかく、今回は「上巻」ということで、早く続きが読みたいぞ、ということで。

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2008/05/25 (Sun) 20:18
(書評)玉響荘のユーウツ

著者:福田栄一

玉響荘のユーウツ (トクマ・ノベルズ Edge)玉響荘のユーウツ (トクマ・ノベルズ Edge)
(2005/10/21)
福田 栄一

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経営したメイド喫茶を潰してしまい、借金の取立てに苦しむ志郎。そんなとき、資産家の祖母が残したアパートの相続が決まる。その土地を売れば借金は完済。けれども、そのためには住人たちに立ち退きしてもらわなければ。期限は4日後、志郎の奮闘が始まる…
物語の導入は冒頭に書いたものなのだけど、展開としては、これまで読んだ福田作品同様、ちょっとお人よしな主人公が、住人たちに立ち退いてもらうために奮闘。その条件として、住人たちが抱えているトラブルを解決していく…というもので、これまで読んだ『A HAPPY LOCKY MAN』や『エンド・クレジットに最適な夏』と同じようなパターンと言える。
アパートがなければ住む場所がなくなってしまう老婆、喧嘩騒動を起こして警察に追われているというオカマ、買った建物に「出る」ために住んでいる一家…などなど、住人は、それぞれに「出て行けない事情」がある。5日間、という限られた時間枠もあって、実にテンポ良く物語が進んでいき、そういう意味では一気に読むことが出来た。テンポの良さ、と言う意味では、これまで読んだ作品の中でも一番良いのではないかと思う。追い込まれている、とは言え、悲壮感などはなく、明るい雰囲気で展開するのも良い。
ただ、一方で、いくつか不満点も。まず、主人公とヒロインの美保は、メイド喫茶を、と言うのだが、そういう設定は殆ど活きていない。別に主人公が経営していたのが居酒屋でもキャバクラでも、普通の喫茶店でもこの物語は作れる。また、ちょっとご都合主義で、登場人物の人物像も軽いかな? と。分量が少ないので仕方の無い部分もあるのだろうが(普通のノベルズ版と比べて本作は文字が大きい)
もう少し分量があれば、より良くなっていたんじゃないか、と思うだけに惜しい。

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2008/05/04 (Sun) 12:42
(書評)サトシ・マイナス

著者:早瀬乱

サトシ・マイナス (ミステリ・フロンティア)サトシ・マイナス (ミステリ・フロンティア)
(2008/03)
早瀬 乱

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「行動を起こすのは少し待て。お前は何か忘れている。俺たちは不完全だ」 恋人のカレンとの結婚、美大への入学を母に報告しようとしたサトシの元にあったメモ。そして、その当日、意識を失ったサトシの元からカレンは消える。サトシのもう一つの人格、サトシ・プラスが目覚めた。何故、彼の人格は分かれたのか? 「完全」とは?
「もじゃもじゃしている」 というのは、この作品の中でしばしば使われる表現なのだが、読んでいる最中、私自身もそんな気持ちをずっと味わうことになった。
早瀬氏の作品は全て読んでいるが、本作はまたこれまで読んだ作品のどれとも印象が異なる。つかみどころがない、という意味では『三年坂 火の夢』に似ているような気もするが、やはり少し違う。
本作はミステリではある。ただ、殺人事件が起こる、だとか、そういう刑法上の犯罪であるとかを探るものではない。かといって、日常の謎、と言うわけでもない。物語の中心は、主人公であるサトシ自身。サトシ自身が「プラス」と「マイナス」に人格が分かれていることは序盤から示される。何故そうなったのか? その根源は何か? そして、メモにあった「不完全」とは? サトシ・マイナスの人格、カレン、サトシの友人であったオカベ、母…といった面々の視点を交え、現在・過去を織り交ぜながら進んでいく。様々な人物、時系列が出てきて、少しずつ解明とさらなる謎…という形なので、それだけでもかなり掴みどころがない感覚を味わうことになる。
「明るく爽やかな成長小説」とあるのだが、「明るく爽やか」かなぁ?(笑) いや、様々な顔、様々な面を持つ人間の多面性、そのギャップに苦しみ、自分の存在に疑問を抱く…そういう葛藤のようなもの、そして、そこでの…という辺りは理解できるんだけど…あんまり「明るく爽やか」ではないと思う(笑)
正直、様々な箇所にやたらと意味ありげに多用される太字フォントとかは、ちょっと鬱陶しい。また、終盤の展開が強引、というか、トンデモ気味になっているのも気になった。ちゃんと、まとめられてはいるんだけど…。

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2008/04/26 (Sat) 17:36
(書評)密室の鍵貸します

著者:東川篤哉

密室の鍵貸します (光文社文庫)密室の鍵貸します (光文社文庫)
(2006/02/09)
東川 篤哉

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烏賊川市立大映画学科4年の流平は、映画会社に勤務する先輩・耕作の家で映画を鑑賞していた。だが、密室状態の家の中で先輩はナイフで刺されて絶命。しかも、同じ夜、元恋人の由紀まで何者かに殺害されていて…。
うん…なんていうか、非常に素直な本格モノだな、というのがまず第一。
自分以外は誰もいない部屋で殺された先輩。勿論、自分は犯人ではない。しかし、そう言っても信じてくれる人はいない。しかも、同じ頃、元恋人まで殺されている。何とかしなければ…。
導入部の展開がまず、ちょっと意表をついたところから、巧く物語に入り込んでいくことが出来た。密室の解明、真相の解明、流平の無実の証明。警察に追われながら流平と、その義兄である探偵・鵜飼が調査をしていく。
こういう展開だと、それをどういう風に描くか、というのも大きいのだけれども、非常に飄々とした、というか、軽い文体でテンポ良く進んでいく。実のところ、トリックそのものはある程度、読んでいる側からすれば予測できるものだし、また、多少、偶然に頼ったりしていて強引な部分もある。あるのだけれども、テンポの良さと文体によって目立たなくなっている。これは武器だよな…とつくづく感じる。
欠点がないわけではないのだけれども、楽しく読むことが出来た。

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2008/04/24 (Thu) 13:55
(書評)A HAPPY LUCKY MAN

著者:福田栄一

A HAPPY LUCKY MAN―長編小説 (光文社文庫 (ふ18-1))A HAPPY LUCKY MAN―長編小説 (光文社文庫 (ふ18-1))
(2007/03)
福田 栄一

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9月17日。必修科目の教授が病気になり、代わりの助教授からはレポート課題が。そんなときに限って、寮の管理人が入院するわ、バイト先でも事件が起こるわ…。(ゲームに負けてやることになった)寮長・幸也の怒涛の一週間が始まる…。
以前、『エンドクレジットには最適な夏』を読んだ際に、「著者のデビュー作も同じスタイルの作品」という紹介を見たのだが、なるほど、同じようなスタイルである。そして、本作の方が、より素直に物語の世界を楽しむことが出来た。
物語としては、必修科目のレポートを課されたところから始まり、寮の管理人が入院し、トラブル処理が舞い込んでくる、という展開。あることに手を出すと、芋づる式に次のトラブルが舞い込み、さらに、それを処理しようとすると次のトラブルが…。序盤で…どころか、中盤、後半に入っていくつか解決したかに見えたところからも新たな事件が…と言う展開に最後まで「どうまとめるんだろう?」と眼が離せなかった。勿論、それらがちゃんと片付けられる辺りも巧い。
何よりも、本作の良いところは、主人公も事件も、「日常的」、もしくはその「延長線上」にあることだと思う。主人公の幸也自体が、お人よしだけど、結構、怠け者で周囲に流されやすい…と言う、その辺りにいそうな性格の人物だし、また、事件…と言っても殆どが、仲間の恋人との仲裁だとか、騒がしい寮生に対する近所の苦情処理だとか、突然やってきた祖父の世話だとか…やっぱり「身近で起こりそう」なものばかり。おかげで、物語の中にすぐに入ることが出来た。一つ一つは、そんなに大事件ではないけれども、それが積もり積もっていく大変さに妙なリアリティがある。
正直、物語の発端であり(ある意味)最大の難関についての解決策が個人的に「あれ?」と思ったところがあるのだけど、これは好みの問題かな、と。欠点ではないだろう。面白かった。

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