著者:柳田邦男
雑誌、『新潮45』に連載されているコラムをまとめたシリーズ第4弾。今回は、タイトルにもあるように「気づき」がテーマになっている、と言える。
このシリーズ、私は一貫して批判的な文章を書いてきている。で、本書であるが、書いてあることの一つ一つに関して言えば、「なるほど」と思える部分は少なくない。ただし、著者の言動そのものがそこからかけ離れていたり、はたまた、無理矢理、「IT批判」「ネット批判」に結び付けて「おいおい…」と思うところも多くある。
書いてあることはその通りなのだが…という部分で言うと、『専門家の偽装数値に気づけ』と題された部分などがそれに当たる。『あるある大辞典』の事件から、韓国でのクローン技術の捏造事件などを題材にして、その捏造の問題点、そして、その背景にあるものを考察する…というもの。組織全体、国全体からの期待を一身に受け、自らも野心などがあり、かつ、失敗が許されない…そういう状況の中では、捏造に手を染めるように囁かれてしまう。しかも、そのようなものをチェックする体制にも問題があり、見逃される形になりやすい…などと言う。この内容は実にその通りだ、と感じる。
ところが、著者は、自らが絶賛している「ゲーム脳」であるとか、「脳内汚染」に対して、そういう部分を働かせようとはしない。それどころか、検証すべきだ、と言う意見に対して「人体実験に等しいから、とにかく禁止すればよい」とすら言ってしまう。これらは、専門家どころか、素人から見ても問題点がわかるようなものなのにも関わらず、である。故に、どうしても「ちぐはぐさ」を感じてしまう。
また、無理矢理ネット批判、なんていうのは、最初の章である『心を成長させる「気づき」の瞬間』などが典型例だろう。
著者は、「最近の若者は…」と言うものについて、「IT依存や加害者の心理分析などで愕然とすることがある」が、「スポーツ選手や芸術家の活躍を見るとすてたものではないと思う」といい、「一部の事例で、今の若者は…と判断すべきではない」と述べる。そして、著者が審査を行った看護学生のエッセイの紹介を始める。そこでは、実際に現場に立ち、そこで感じたこと、気づいたことが率直に綴られ、そういう体験の重要さが描かれる。
ここまでであれば、実に良い内容だった、と思う。ところが、本章のまとめは、「ネットを用いた教育ではこうはいかない。ネット教育はダメだ」と言う形になってしまう。何故、そこで、ネット批判にする必要があるのか理解に苦しむ。ネット教育が万能でないのは当然。その欠点を取り上げてネットはダメだ、と言うのは揚げ足取りのようなものである。
ついでに言うのならば、著者が言うように、一部の少年犯罪などを取り上げて「今の若者は…」と一般化するのはダメであるが、反対にスポーツ選手や芸術家を出して「今の若者も悪くない」と一般化するのもこれもまたダメだろう。どちらも、極端なものを一般化している、と言う意味では同じなのだから。ついでに言うと、他の章では「ITなどで若者の精神が偏っている」などと連呼し、結局、「今の若者は…」と著者が連呼しているだけ、ということは指摘しておきたい。
他にも、組織事故が起こる理由と、その原因究明が進まない理由についての考察だとか、納得できる部分は多い。それだけに、より、著者のIT嫌い、IT批判の部分でのおかしさ、ちぐはぐさを感じずにはいられない。そういう部分を早く、著者に「気づいて」欲しいものである。
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