(書評)陰摩羅鬼の瑕

著者:京極夏彦

分冊文庫版 陰摩羅鬼の瑕(上) (講談社文庫)分冊文庫版 陰摩羅鬼の瑕(上) (講談社文庫)
(2006/09/16)
京極 夏彦

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分冊文庫版 陰摩羅鬼の瑕(中) (講談社文庫)分冊文庫版 陰摩羅鬼の瑕(中) (講談社文庫)
(2006/09/16)
京極 夏彦

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分冊文庫版 陰摩羅鬼の瑕(下) (講談社文庫)分冊文庫版 陰摩羅鬼の瑕(下) (講談社文庫)
(2006/09/16)
京極 夏彦

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信州、白樺湖畔に立つ旧華族・由良家の洋館、通称「鳥の城」。その主、由良昴允は、5度目の婚礼を控えていた。過去、4度、新妻を迎えたその初夜に新妻を失った昴允。それを防ぐため、探偵・榎木津は、関口とともに「鳥の城」を訪れる。発熱のせいで、一時的な失明状態の榎木津らが到着したその日…
京極堂シリーズの第7作。
なんというか…非常にシンプル。これまでのシリーズを読んできて、まず感じるのは何よりも、そのことだと思う。大ボリュームのシリーズに違わず、極めて複雑に入り組み、複雑に絡み合ったこれまでの作品らと比べると、驚くほどにシンプル。そして、(恐らく)読者も途中で真相に(一端としても)気づくような形で作られている。少なくとも、ミステリとしてのカタルシスとでも言うべきものはあまりないのではないかと思う。ただ、それだけに、それぞれの心中、そして、その厄介さがにじみ出てくるように感じられる。
幼い頃から、館の外に殆ど出たことがなく、膨大な書籍に囲まれて育った「伯爵」。紳士的で、聡明で、そして、理知的な人間。けれども、そこにある違和感。そして、その中の瑕。23年前から、そこでの事件に関わり、そして、仕事に追われて妻を喪い、やはり瑕を持つ、元刑事の伊庭。かつての事件の瑕を残す関口…。
テーマとしては、「内と外」、「生と死」、「儒教」と言った辺りになるのだろうか…。それらが全て絡み合っての真相も、実にシンプル。でも、だからこそ、難しい、という典型。そうだろう、とは思えても、直視できない、そんな物語に仕上がっている。
形としては、完全に「ミステリ」としての形で作られている。でも、これは、そこを中心にした作品ではないように思う。ミステリとしての形を取りながら、蘊蓄、キャラクター…そういったものを融合させた結果としての物語、なのではないかと思う。シリーズではありながら、それまでの作品とは、全く違う印象を受けた。

通算1408冊目&1409冊目&1410冊目

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COMMENT 2

記憶喪失した男  2008, 10. 22 [Wed] 08:30

「陰摩羅鬼の瑕」はアイデアはよかったと思うんですが、中身が薄く、京極夏彦の分厚い本としては冗長になってしまい、意外性もいまいちで、京極堂シリーズの最低作になってしまったと思いますねえ。短編集も入れれば、もっとつまらないのは「百器徒然袋ー風」だと思いますが。「風」は本当に駄作です。読むべき価値のある要素がひとつも見当たりません。
ちなみに、おれは「魍魎の匣」を二十一世紀に決める十大小説の一冊に選ぶことにしました。よかったら、他の十大小説も読んでみてください。

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たこやき  2008, 10. 23 [Thu] 20:34

記憶喪失した男さんへ

こんばんは、コメントありがとうございます。
流石に、ちょっとボリュームと作品としてネタとしてのバランスはちょっと、っというところがありましたね。(ファンの要望とかもあるのでしょうが)もう少し、すっきりとまとめても良かったように思います。
一応、京極さんの作品、京極堂シリーズ以外はまだ数作しか読んでいないのですが、そちらも少しずつ読んでいこうと思っているところです。

お勧めの作品、まだ読んだことがないものが多いので(『イリヤの空』は読みましたが)、また、何か作品選びをするときに参考にさせていただきますね。
ありがとうございました。

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  •  『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦
  • いや~長かった。 だいたい1200頁。 ここまで来ると頁数じゃなくて、「厚さ何センチ」とか「重さ何百グラム」って方がしっくりくるかも。 相変わらずの衒学趣味でして、葬儀屋の教則本みたいになってます。 今回のテーマは仏教と儒教を生と死。 かなりコッテリ書か...
  • 2008.10.07 (Tue) 13:37 | 時間の無駄と言わないで