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(書評)スタバトマーテル

著者:近藤史恵

スタバトマーテル (中公文庫)スタバトマーテル (中公文庫)
(2004/06)
近藤 史恵

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高い技術を持ちながらも、極度のあがり症のため、声楽家への夢を断念せざるを得ない状況にいる芸大の副手・りり子。同級生であり、かつての恋人だった西とのことも忘れられないある日、気鋭の版画家・瀧本大地と出会う。大地に惹かれていくりり子だったが…
「ミステリ」と言えば、そうだし、しっかりとひっくり返しだとかもあるのだけれども…なんか、そういう雰囲気は非常に薄いと感じた。
プロを目指しながらも、なれずにいるりり子と、視力を失った母の下、ただ、その職人として作品を発表する版画家の大地。二人とも、惹かれるものの、瀧本の家から、りり子は歓迎されない存在。そして、始まる嫌がらせ、そして、瀧本の周囲に聞こえる黒い噂。その中で、毅然と立ち向かいながら、一方で、そんな彼女を最後まで支えようとする西との間での揺れ動き。形はミステリのそれではあるのだが、これまで読んだ数作とも同じように、その中での、りり子の、その揺れ動きをメインとした恋愛小説という印象が非常に強い。
作中で、「りり子は、大人であるように見えれば、一方で非常に危なっかしい」「りり子は、ガキ」なんていう表現が出てくるのだが、物語の主人公であるりり子の、一見、自分を持っているように見せながらも実は、非常にもろく、純粋である、そんなところが作品の特色になっていると思う。同じように、脆さを感じさせる大地との組み合わせ、それだけで、何とも読者ははらはらと感じてしまう。
真相における一種の狂気、一種の情熱…というのは、私にはちょっと理解しがたいところもある。それが、親から子への、母から子への、情愛の強さ、なのかも知れないが…。
脆く、危なっかしい恋。そして、そんな中だからこその揺れ動き。近藤さんらしさが強く出ているのではないかと思う。

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