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(書評)黒祠の島

著者:小野不由美

黒祠の島 (新潮文庫 お 37-8)黒祠の島 (新潮文庫 お 37-8)
(2007/06)
小野 不由美

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「3日で戻る」 そういって失踪した作家・葛木志保。彼女とコンビを組み、仕事をしてきた調査員・式部は、足取りを追い、彼女の故郷と思しき「夜叉島」へと辿り着く。同年代のもう一人の女性と、島へ渡ったという志保だが、聞き込みには「知らない」という答えばかり。しかも、その島では…
小野さんの作品を読んだのは、これが『屍鬼』に次いで2作目なのだが、どちらにも共通するのは、閉鎖的な、閉じたコミュニティとしての「田舎の風景」。物語の展開も、その描き方も異なってはいるのだが、どちらもそれが極めて大きな意味を持っており、そして、そこへの強い印象を残す、ということ。
本作の舞台となる夜叉島。明治政府によって作られた国家神道から外れた神を祭り、外界と断絶された世界。その中では、独自の進行が芽生え、そして、そのシステムの中で、網元である神領家を中心としたコミュニティが形成される。その中で起こった事件。冒頭にも書いたとおりに、主人公は、その島とは関わりのない人間。だからこそ、見えてくるもの、そして、だからこそ外れるものがそこにある。その「ルール」。半信半疑と言いつつも、その習俗に縛られる島民たち。言葉とは裏腹に、いや、言葉を言うこと事態が、その習俗の、宗教の影響力を示すという描き方は印象的。
その一方で、その宗教にありながら、「ごくごく普通の」世俗的な事件の見方も付随している辺りも面白い。習俗、宗教といったコミュニティを支える価値観の違いはあれど、一方で、どの世界でも起こる世俗的な出来事。両者の差異というのは、自分の属するコミュニティを、他の文化から見たら…というような、そんなことを想起させる。
その両者がせめぎ合って判明するその解決。それは、私たちの考え方からすると、やや相容れないようにも思う。しかし、それすらも、その世界観ではありなん…と思わせるのは、それまでの世界観の構築があってこそではなかろうか。
ミステリとして、というよりも、その中で描かれるコミュニティというもの、そういうテーマ性を考えさせられる作品であるように思う。

通算1448冊目

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