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(書評)ファミリーポートレイト

著者:桜庭一樹

ファミリーポートレイトファミリーポートレイト
(2008/11/21)
桜庭 一樹

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ママの名前はマコ。若く、美しく、奔放な魂の持ち主。そんなママとわたしは、いつも一緒。呪いのように。少女・コマコの5歳から34歳までを描く…。
何を書いて良いのだろう…。読み終わって、色々と思うことは数多いのだが、それを文章として、記事として表現するのにはどうするのが最適なのだろうか、とどうしても考えてしまう。
冒頭にも書いたように、物語は、コマコが5歳から34歳になるまでを描いた一代記とでも言うべきもの。そういう意味では、『赤朽葉家の伝説』のようにも思える。しかし、本作のカラーは、全く異なる。いや、それぞれの部分で、また別にカラーを見せる、と言っても良いかも知れない。
本作は2章構成になっており、第1章は、5歳~14歳まで、第2章は17歳~34歳という形。
第1章は、ママとコマコの物語。何者か、から逃げながら全国を旅するマコとコマコの母子。美しく、エネルギッシュで、でも、問題もあるママが大好きで、彼女とともに各地を回るコマコ。その旅する先は、雪に閉ざされた老人ばかりの村、奇妙な風習の残る海辺の村、入植者たちが開いた畜産業の村に、古くからの歴史を重ねた町…それぞれ、まるで異国の、ファンタジーの世界であるかのようなそんな雰囲気が印象的。その中で、時間を重ねるごとに失われていく母の美しさ。そして、突然の別れ…
第2章では、一転して、現実的な都会の日々。母と離れ、養ってくれる者はいるものの、家を飛び出して放ろうする日々。そこでも思うのは、ママのこと。文壇バーでの日々と作家デビュー、少しずつ消えていく自分の中のママの姿…。こちらは、ファンタジーとしての要素はあるものの、作家デビューや、そこでの文学賞受賞前後の様子は、桜庭さん自身のこととも重ねて考えてしまうし、また、文壇バーでの会話などにも、それぞれ、桜庭さんの文学観のようなものを考えずにはいられない。文壇バーの人々を、コマコは「文芸病棟」と呼ぶのだが、その辺りの表現などは特にそれを感じる。また、それとは違うのだが、文壇バーで、コマコが語る物語に何とも言えない味わいを感じるのは私だけだろうか?
物語の着地の仕方であるとか、そういうものを考えれば、やはり、マコとコマコ、そして、家族についての物語と言えるのだろう。随所に、それを感じさせるものはある。ラストシーンも、非常に美しい。ただ、そこだけでなく、その中に詰め込まれた様々な要素の1つ1つを、別の意味に解釈できる宝石箱、というか、おもちゃ箱というか、そんな作品であるように思えてならない。
やっぱり、上手くまとまっていないなぁ…(^^;)

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COMMENT 4

きりり  2009, 01. 18 [Sun] 14:18

む~今ひとつ乗り切れずに読了しました 世界観的には今までの作品とそんなに違わないんだけど なんと言うか舞城とか読む時の"我慢"とか"忍耐"のコトバが必要なほど、ちょっと読むのがつらいと言うか.. 第二章もなんとなくヒイてしまい..と微妙な感じが残った本でした

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たこやき  2009, 01. 19 [Mon] 18:40

きりりさんへ

たまに、そういうこと、ありますよね。
特に、雰囲気とかで、似ている作品とか、そういうのを思ってしまったときなどは…。

個人的には、第1章の方が好みだったかな、と思います。
第2章は、物語ではあるのですが、ある意味、桜庭さん自身の私小説的な要素も入っていて、ちょっと妙な感覚になりました。
ラストシーンは、すごく好きですが。

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エビノート  2010, 01. 15 [Fri] 21:25

こんばんは。
遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。

苦しくて苦しくて、読むのやめたいと思いながらも読まずにはいられない第一部から、別の意味でそういう展開なの?とビックリさせられる第二部とひき込まれて読むことが出来ました。第二部はどうしても桜庭さん自身と重ねてしまいますね。

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たこやき  2010, 01. 19 [Tue] 01:15

エビノートさんへ

こんばんは。

第1部、第2部、それぞれが対照的で、全く異なる物語のようで、でも、共通するものがあって……という特異な組み合わせが印象的でした。
本当、第2部は、桜庭さんの自叙伝のように感じるところが多くありました。

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