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(書評)演じられた白い夜

著者:近藤史恵

演じられた白い夜 (Jノベル・コレクション)演じられた白い夜 (Jノベル・コレクション)
(2008/08/20)
近藤 史恵

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ミステリ劇のために行われる、冬の山荘での合宿。演出家である神内匠は、配役による犯人捜しがされないため、畑違いの人間、無名の役者ばかりを起用する。そして、そこには、匠の妻・麻子も。役者にも先の見えない台本と、それに沿った形で事件が起こり…
著者のデビュー作『凍える島』同様、閉ざされた山荘での事件を描いた作品。しかも、劇中作である『マウス』で、孤島での事件というものまで描かれる。
役者たちにも結末の知らされていない台本。その台本は、どこか、現実の人間関係、現実の役者の立ち位置を彷彿させるものがある。そして、役者が死んだ、そのときに、実際にその通りに。犯人は誰なのか? そして…
という形ではあるのだが、やはり、描きたかったのは、その中の人間模様なのだと思う。著者自身があとがきで、「演劇をしていた」とあるのだが、そのように、役者たち、女性の執念、諦観、エゴ…そういうものがぶつかりあう。ただ、そういう醜い感情を描きつつも、不思議と静かな印象を覚えるところが、魅力になるのかも知れない。
ボリューム的なところもあってか、ミステリとしてのトリックであるとか、そういうものは、非常にシンプルですっきりとした印象。そういう部分も含めて、静かな、雪の夜の雰囲気がよく似合う。

通算1501冊目

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