(書評)楽園

著者:宮部みゆき

楽園〈上〉楽園〈上〉
(2007/08)
宮部 みゆき

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楽園 下楽園 下
(2007/08)
宮部 みゆき

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山荘での事件から9年。未だ、事件の衝撃を引きずったライター・前畑滋子。そんな彼女の元へ、奇妙な依頼が舞い込む。依頼主・萩谷敏子の亡くなった息子・等は、ときどき、奇妙な絵を描いていた。そして、その絵の一枚は、先日、発覚した親による娘殺しの事件ではないか? と。そして、等には、超能力があったのではないか、と。さらに、その中には、滋子を苦しめた山荘とおぼしきものもあり…。
『模倣犯』の主人公の一人である前畑滋子の物語。物語中にも、随所に、『模倣犯』の物語が描かれており、そちらを先に読んだ方が良いだろう(どうでも良いが、あれを読んだあとだと、本作は非常に「短い」と感じる(笑))
宮部さんの作品を読んだのは久しぶりだったのだが、「流石」というのを感じる。
未だ、息子の死のショックから立ち直れていない敏子。そんな敏子に依頼をされる滋子もまた、9年前の傷を抱えたまま。自らの回復のため、というのも含めて調査を開始する。等の力は本物だったのか? それを調べるには、事件そのものに向かうしかない…。
よくよく考えてみると、結構、話が横へとスライドしていく…とも言えなくはない。けれども、その移行過程が上手く、どんどん引き込まれてしまう。超能力の真偽の調査、しかし、丹念に調べれば調べるほど、事件に関わらずにはいられない。そして、その過程で、今度は事件そのものにも首を突っ込んで行かざるを得なくなる。取材、と言っても、様々な反応があり、一筋縄ではいかず…と、やりとりの1つ1つが、丹念に描かれ、それだけでも読み応えがある。
物語の中心となる事件そのものは、決して派手というわけではない。既に時効を迎えた事件。凄惨な殺され方をしたわけでもない。しかし、そこに何かを隠す加害者夫婦。それによって傷ついた妹。そして…。傷を背負った滋子、敏子…というそれぞれが傷を持ち、その傷と折り合いをつけながら、事件に対峙していく。
最後に明かされる土井崎夫婦の嘆き。却ってえぐり出されてしまった誠子の傷。「楽園から追放された存在」という部分は、そこにかけられているのだが、しかし、本作に登場するすべての人に、それは当てはまっているように思う。それでも、敏子の、滋子の希望を見いだせる結末に一抹の光を見いだすことができるのだが。
多少、真相に至る過程などが上手く進みすぎているかな? と感じるところがないわけではないが、殆ど気にせずに読めてしまう。そういうことも含めて、やはり感想としてはこう思う。
流石。

通算1528冊&1529冊目

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  •  楽園(上・下) 宮部みゆき
  • カバー写真は小山泰介。装丁は鈴木正道。産経新聞連載。 「模倣犯」事件から9年。深く関わりダメージが残るフリーライター・前畑滋子。 ...
  • 2009.02.02 (Mon) 03:44 | 粋な提案
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  • 「宮部みゆき」の長篇小説『楽園』を読みました。 [楽園] 『名もなき毒』に続き「宮部みゆき」作品です。 -----story------------- 進化し続ける作家「宮部みゆき」の最高到達点 ライター「滋子」の許に舞い込んだ奇妙な依頼。 その真偽を探るべく16年前の殺人事件を追う「滋子」の眼前に、驚愕の真実が露になる! 〈上〉 未曾有の連続誘拐殺人事件(「模倣犯」事件)から9年。 ...
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