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(書評)13

著者:古川日出男

13 (角川文庫)13 (角川文庫)
(2002/01)
古川 日出男

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左目だけの色弱という特殊な障害を持つ響一。その特殊性の影響か、「天才児」としての資質を持つ彼は、しかし、学校生活という場で孤立した日々を送る。そんな彼が中学のとき出会ったのが、従兄弟の霊長類学者につれられ、日本へとやってきた狩猟民族の少年・ウライネ。中学を卒業後、響一は、ウライネの暮らすザイールのジャングルへと向かい…
以前から、古川さんの名前は知っており、読んでみたい…と思っていたので、デビュー作である本作品を手に取ってみた次第。
なんというか…この人にしか作れない世界観だろう…というのしか浮かんでこない。
物語は、第1部、第2部で大きく分かれ、第1部では、響一がザイールへと向かい、そこで、ジャングルの狩猟民族の中で暮らす…というような物語。土着信仰が生き残り、森の狩猟民と周囲の農耕民との間での呪術的な争いの残る世界。人々は、神の力を得るため、呪術の力を得るために、西欧化を受け入れる。土着信仰と西欧カトリック信仰の奇妙な融合。その中での西欧人と地元民の差異。些細なことがきっかけとなり、その融合宗教の聖母へと祭り上げられていく少女・ローミ。宗教、種族、さらには、響一自身の日々…が重なり展開する。そして、その矛盾の一つの帰結としてのラストシーンは印象的。
で、第2部になると、一気に時間は経過し、物語の舞台もアメリカ・ロサンゼルスへと移動する。物語の中心となるのは、新たな映画を作ろうとする気鋭の監督・マーティンと、同じく、気鋭の女優・ココ。
とにかく、第1部と第2部の与える印象そのものが全く違うことにまず驚いた。先にも書いたように、第1部は、宗教、民族、紛争が入り交じっての物語。多角的であり、要素も多いながらも「物語」としての進展は非常に理解しやすく、そして、その結末にも皮肉さを感じつつも納得する。しかし、第2部になると、時系列の違いも含めて一気に断章的になる。一気に時間が飛んだり、はたまた、場面転換が飛んだり…。しかし、色々と「?」と言うところもあるはずなのに、その中に不思議な説得力を感じもした。もう、この頃には、世界観に引きずり込まれていたのかも知れない。
文庫解説の千街晶之氏が「ジャンル分けなど無意味な作品」とあるが、まさしくそんな感じ。そして、あらすじを書いても、やはり意味がない作品だと思う。響一の色彩に関する表現であるとか、そういうものを含めて、著者の感性というのを強く意識させられた。「すごい」という陳腐な言葉以外に言葉が見つからない。

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COMMENT 2

tuna  2009, 08. 29 [Sat] 22:22

ストーリーやテーマというより、やはり世界観がすごいですよね。
読んでいて世界に引き込まれます。読書の喜びを感じさせてくれる作品ですよね。ほんとすごいです。

トラックバックさせていただきました~。

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たこやき  2009, 09. 03 [Thu] 01:28

tunaさんへ

本当、この世界を作り上げた、というのが何よりもまず、という風に思います。
これがデビュー作、というのに驚かされました。

TBありがとうございました。

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