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(書評)七週間の闇

著者:愛川晶

七週間の闇 (講談社文庫)七週間の闇 (講談社文庫)
(1999/11)
愛川 晶

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テンペラ画家・磯村明の妻・澄子が自宅で死亡した。チベット仏教の装飾で満たされた一室の壁際で、像に抱かれるような形で。自殺とも、他殺とも言えないような様子のその場であったが、縊死であったこと。そして、病魔に冒されており、動機もあると言うことで、割り切れないものを残しつつも自殺として捜査は打ち切られる。それから、5年、磯村の後妻となった亜矢子を、当時の刑事・馬目が追い…。
うーん…こういう風に来るか…。
冒頭から、心霊体験に纏わる文章、奇妙な装飾に彩られた現場と特殊な雰囲気を醸しだし、しかも、一気に時間を飛ばし、かつ、物語の視点も刑事・馬目と、磯村の後妻・亜矢子を行き来する。そして、非常に様々な要素を詰め込んだ、という印象が強い。
ミステリーとしては、トリックをメインとしたもの、というよりも、プロットのひねり方で勝負するタイプか。
磯村の妻殺しの犯人を追う馬目。追われる側の亜矢子。彼女が犯人であることは序盤から早々に明かされる。どん底の生活から、人気画家の妻となった彼女の半生、そうなるために抱えた秘密と、その秘密によって追い詰められていく様。そして、それらの背後にあるもの…。
不妊治療を巡る内部告発としての部分と、物語を冒頭から彩るチベット仏教という思想。その二つが上手く融合し、そして、それゆえに読者が感じる狂気と、その結末のまとめ方は上手い。サスペンス色の強さで一気に読まされた。
正直、今から読むと、それほど目新しさを感じる結末、世界観とは言い難い。これは、発表から十年以上の時を経た結果、といえるのかも知れない。ただ、テーマ、物語のまとめ方のうまさ、読ませる勢いのようなものは十分に評価出来るものだと思う。

通算1541冊目

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