(書評)漆黒の王子

著者:初野晴

漆黒の王子漆黒の王子
(2004/11)
初野 晴

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武闘派暴力団・藍原組。近年、勢力を伸ばすその組で、組員たちが眠ったまま変死する、という事件が続く。そして、組へは、ガネーシャと名乗る者からの脅迫文が…。インコの雛とともに地下へと迷い込んだ彼女。そこには、『王子』を初めとして7人の人々が暮らしていた。そして、彼女は『ガネーシャ』という名を与えられる…
初野さんの作品、これまで読んだ2作は、完全なるファンタジーの部分があった。では、本作は? 一応、すべて現実的と言える。でも、どこかしら、ファンタジーのような、そんな幻想的な印象が残る。そんな作品になっているように感じた。
物語は、「上の世界」「下の世界」という二つのパートに分かれ、3人の主人公の視点で展開する。
「上の世界」は、暴力団・藍原組の物語。直情的なヤクザ・秋庭と、組預かりという立場の水樹、2人の主人公。次々と、組員達が怪死する、という異常事態。その中で、文字通り「必死」にガネーシャを追う組員たち。秋庭は、仲間達が一人、また一人と倒れていく様に激昂し、水樹は、組長代行である紺野の側近と呼ばれる高遠の下で…。急激に力をつけた紺野の力の源泉はどこにあるのか? さらに、その状況を巡っての近隣組織との抗争…と物語は広く展開していく。
一方の「下の世界」は、文字通りに、地下の暗渠を舞台として展開。そこに住む『王子』ら、職業名で呼ばれる人々。ホームレスなどの中でも、特に弱い人々であり、そして、表に出ることの出来ない人々。そんな彼らの過去、暗渠の過去、そして、そんな人々と、彼女の交流。こちらも、決してファンタジーとは言えないのだが、しかし、舞台などからファンタジーのようなそんな印象を抱かせる。
こう言っては何だけど、謎解き、というような、そういうカタルシスはあまりない。謎の怪死などは、少しずつ見えてくるし、また、暗渠の過去などからもそれはわかる。ただ、その過程は丁寧であり、また、そこで語られる心情描写が主なのだろう。カタルシスがあまりなかったことについて、肩すかしを食らったような、でも、それで良かったような不思議な感じ(笑) ただ、いくつかの部分については、想像は出来るけど、確実にこうとも言えない…というところがある。これを余韻と取るか、投げっぱなしと取るか、は人それぞれかも知れない。
ただ、やはり、初野さんだからこそ、の作品に仕上がっているな、と感じた。

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