著者:五條瑛
大都市・東京。そこには、流行のファッション、容姿に恵まれた蝶たちが絶えず集まる。そして、彼女らは、そこから姿を消す。人捜し専門の調査員・桜庭は、依頼を受け、調査に乗り出す…という、一応、連作短編というか、連作長編というか、そんな作品。
一応、物語としては、角川書店…ではなくて、光文社から出た『冬に来た依頼人』の続編に当たる。物語としては中途半端に感じた前作より、かなり面白かった、と感じたが。
作品の舞台となるのは、東京の繁華街。依頼される相手は、風俗嬢、キャッチセールス、水商売…そういう世界と隣り合わせの女性達。ヤクザ、外国人…そういうアングラな世界とも関わりがありながらも、他のシリーズと違って、スパイや謀略などはなく、あるのは、人々の孤独と、アングラの住民たちの利害関係のみ。そんな中で、同じフロアを共有する「逃がし屋」の二代目・檜林や、ヤクザの二代目・松村との掛け合いなどもある。
序盤は、ただの単発の依頼。けれども、その単発の依頼の中で垣間見えた人々の思いであるとかが、終盤、ヤクザの利害関係であるとか、そういうものと絡み合いながら表面化していく展開は面白い。連作短編ならではの盛り上げ方であるとも思う。
それだけに、最後の決着の仕方が、やっぱり中途半端な印象が残ってしまった。全体の8割、9割くらいまで盛り上げるだけ盛り上げて、そのまま宙ぶらりんで終わってしまった感じがするのだ。上手く着地してくれれば、非常に良い作品だった、と言えるのに…と、すごく残念な感じが残ってしまった。
2作目、ということもあってか、キャラクターだとか、そういうのもこなれてきただけに、最後がすごくもったいないな、とどうしても感じてしまう。
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