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(書評)臨床真理

著者:柚月裕子

臨床真理 (このミス大賞受賞作)臨床真理 (このミス大賞受賞作)
(2009/01/10)
柚月 裕子

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同じ施設で暮らしていた少女の自死を受け入れられず、救命士に対して暴行事件を起こした青年・司。臨床心理士である佐久間美帆は、そんな彼の担当に抜擢される。なかなか心を開かない司であったが、忍耐強く対応した美帆に司が語ったのは、自分のある「力」、そして、少女の死が「自殺ではない」ということだった…
第7回『このミス』大賞大賞受賞作。
同時受賞の『屋上ミサイル』(山下貴光著)が、ミステリといいながらも、青春小説風の作風が強調された作品だったのに対して、今作は、少しのファンタジー的要素を取り入れながらの、正当派のサスペンス小説といった趣。文章自体は読みやすく、リーダビリティの高さがまず言える。そして、そのファンタジー要素である、司の「相手の言葉から、その感情を色として認識できる」という設定は面白い。そういう部分が評価されたのかな、と思う。
ただ、作品全体として考えると、ちょっと…というところが多くある。テーマそのものの設定は良いのだが、あまりに露骨にヒントが出過ぎていて、読者としてはその真相が大体想像出来てしまう。にも関わらず、主人公達だけが全くそれに気づかない、というのはちょっと冗長に感じる(無論、これは、読者は「ミステリ作品だから」という視点で読んでいる、などの違いがあるにせよ) また、終盤、主人公の美帆が危機に陥る過程があまりにお粗末過ぎたり、その際の犯人の行動が、数頁前と真逆ですがな、とか、探せば大量に欠点が見えてしまう。そういう意味で、完成度はあまり高くない。
ただ、それでも、終盤まで引っ張れる力自体は評価して良いと思う。(個人的に、特に『このミス』大賞では)文章そのもののクセが強くて、読むのが疲れる作品が結構あるだけに、より、それを強く感じるのである。欠点は多いモノの、受賞作として及第点はあげられるのではないだろうか。

No.1617

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COMMENT 2

そら  2010, 04. 06 [Tue] 18:14

たこやきさん,優しいなぁ。と思いましたです(*^_^*)

>それでも、終盤まで引っ張れる力自体は評価して良い

なるほど。確かに読みやすい文章でしたね。
うんうん。
…私も,そこに気づけばよかった(^^;)

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たこやき  2010, 04. 06 [Tue] 19:28

そらさんへ

優しい、というか……
『このミス』大賞の受賞作を読んでいると、(特に初期の作品は)文章そのものがかなりクセが強くて「読みづらい」と感じるものがあるので……

どちらかというと、『このミス』大賞への期待値が低い、っていう結果かも知れません(^^;)

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  •  「臨床真理」上下 柚木裕子
  • このミス大賞って,新人賞なのね。 知らなかった ★★☆☆☆ 臨床心理士の佐久間美帆は、勤務先の医療機関で藤木司という二十歳の青年を...
  • 2010.04.06 (Tue) 18:09 | 日だまりで読書
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  •  テーマ盛り沢山がすごい
  • 柚月裕子「臨床真理」(上・下)(宝島社文庫) (下巻はこちら) 第7回『このミステリーがすごい!』大賞の ダブル受賞作の片割れとのこ...
  • 2010.10.11 (Mon) 12:18 | うさんくさいblog