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(書評)夢見る黄金地球儀

著者:海堂尊

夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア)夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア)
(2007/10)
海堂 尊

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1988年。バブル絶頂期の日本で、各地にばらまかれた「ふるさと創生基金」。それは、首都圏の端にある桜宮市にも舞い込んだ。その1億円は、地球儀の一部にはめ込まれ、赤字を出し続ける水族館の片隅に…。2013年の夏、8年ぶりに現れた悪友は、その黄金を盗もう、と誘う…
あれ、こういう作品なんだ。まず、思うのは、それ。これまで、色々と形を変えながらも医療分野を舞台に作品を発表していた著者が、そこから外れた作品を出してきたのだから。
物語は、最初にも書いたように、水族館の片隅に置かれた1億円の黄金を盗む、というコンゲーム。ただ、その話を持ちかけたジョーこと、穣治は全く頼りにならない。一方、持ちかけられた平介は、といえば、ただの平凡なサラリーマン。そして、計画も行き当たりばったりのへっぽこ道中。これまでのシリーズも、白鳥とか、田口を初めて、キャラクターの個性に頼っていた部分はあるが、本書は、それをメインに添えたように感じる。
普通、こういうコンゲーム作品というのは、いかに厳重な警備をかいくぐって目的のものを手に入れるか、という物語になるわけだが、本書の場合、その要素は非常に薄い。むしろ、どんどん都合良く転がっていくので、先にも書いたような、キャラクター小説的な印象がより強くなるのだ。
正直なところでいえば、8割くらいまで、「あれ、これで終わり?」という印象が強くて微妙なところだった。それだけに、終盤のひっくり返しなどで、「安心した」というようなところがある。そのくらい、ミステリとしての印象が弱かったのである。
ただ、ちょっとだけ気になったのが、作中で語られている言葉遣いなど。例えば、テレビゲームを「ファミコン」と称しているのだが、30代前半の主人公であっても、「ファミコン」はぎりぎりではないだろうか。他にも、ちょっとしたところの例えが80年代くらいの存在で「?」と思ってしまった。ちょっと古いのだ。
なんか、細かいところで、シリーズとの関連づけや、それを感じさせるところがあって楽しいのだが、しかし、著者がこれを書く必要があったのだろうか? という感じはする。無論、新しい方向への挑戦、その中に感じる「らしさ」はよくわかるが。

No.1620

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