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(書評)黒と赤の潮流

著者:福田和代

黒と赤の潮流 (ハヤカワ・ミステリワールド)黒と赤の潮流 (ハヤカワ・ミステリワールド)
(2009/02)
福田 和代

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阪神大震災から半年。事故により、選手生命を絶たれた元陸上選手の大学生・祐一は、遊び仲間であったタイ人の青年・ドゥアンが、死んでいたことを探偵を名乗る男から知らされる。半年間で、様相の変わった留学生・タオ、周囲に現れる怪しげな男たちに、祐一は、ドゥアンについて調べ初め…
「海洋冒険サスペンス」というようなコピーがついているのだけど、あまり、冒険サスペンスという感じではなかったような…。
過去の福田さんの作品というと、ハイジャック事件を中心にして、多視点から真相へと迫っていく『ヴィズ・ゼロ』、何者かの手によって、首都圏が大規模な停電にさらされてしまう『TOKYO BLACKOUT』と、極めて大きなスケールでの事件を中心に添えた物語だったのだが、本作は、震災後の神戸を舞台に、仲間を殺された若者が、その真相へと迫っていく、というこれまでとは異なった展開の作品に仕上がっている。
物語の中心となるのは、祐一、そして、20年前の事件で追われる身となった元刑事の探偵・古賀。仲間の死に、その真相を知りたいと願う祐一の若さ、そして、20年前の事件に関して瑕を持つ古賀ら、過去の人物たち。それぞれが、触れられたくない瑕を持ち、その中でそれぞれが少しずつ結びついていく。
この作品、主人公は、事故によって選手生命を絶たれ、腐っている祐一ではあるのだが、それ以上に、古賀ら、大人たちの姿が印象的。自らの過去との決着の付け方。その中で、自らの姿を、若者である祐一へと示す終盤は実に「熱い」。そして、それを受けた祐一が、一歩を踏み出すラストシーンも。
ミステリとしての謎は、それほどないし、また、事件へと首を突っ込もうとする祐一の動機が、ドゥアン、タオらと関係だとかがあまり描かれないので、イマイチ弱いような感じもする。これまで同様、キャラクターの登場・退場についても、多少、「?」があったりする(メインと言えないような人物がメイン以上に目立ったり、というのがいくつかある) ちょっと、そこら辺は弱点かも。
ただ、それでも終盤の熱い展開は、読み応え十分。

No.1643

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