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(書評)あかね雲の夏

著者:福田栄一

あかね雲の夏あかね雲の夏
(2006/09/21)
福田 栄一

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勤めていた会社が倒産し、無気力な日々を送る俊太。そんなある日、親族、本家の大叔母が亡くなった、という連絡を受ける。葬儀のため、郷里へ戻った俊太だが、そこで彼は、その大叔母が使っていた屋敷の管理を請け負うことになり…
という風に書くと、なんか、そこには座敷童が住んでいました、とか言う風に続けたくなるんだけど、勿論、そういう話ではない(当たり前)
本当、何がある、というわけではない。ただ、そこにいた愛想の悪い犬の世話をして、殆ど何もしゃべれない少女・智穂と釣りをして、生臭坊主の恵慧と酒を飲み、雑貨店のおばちゃんや隣家のおっちゃんと雑談を交わす。それだけの日々。
この作品の主人公・俊太の性格も、結構お人好しで、これまでの作品の主人公と似ている部分はある。また、ヒロイン(といって良いと思う)の智恵の過去の話とかもある。でも、決して、謎解きとか、トラブルシューティングとか、そういう話ではなく、ただ、ゆっくりと見守るだけ。そんな雰囲気で、ゆったりと流れる空気が非常に心地よい。
正直なところ、田舎育ち、田舎生まれの私にとって、こんな田舎は幻想だ! とか、思わないでもない部分はある(笑) もっと、内面、どろどろとした人間関係とかあるよなぁ…とか、どうしても思ってしまう(笑) ただ、主人公が外部の人間で、期間限定、というようなところとかもあるのだろし、そもそも、そういうものを描く作品じゃないから、もの凄く筋違いな意見だし、また、物語の中だからこそ、こういう世界があって良いのだろう、という風に思う。
のんびりとした田舎の風景。その中で再生し、歩み出そうとするラストシーン。これも、元気を取り戻した、という感じがある一方で、夏休みの最終日に感じるようなちょっと寂しい空気もほんのりとして、なんか、懐かしい気分にさせられた。
決して派手さのある作品ではないのだけど、じんわりと、温かい気持ちになれる佳作だと思う。

No.1683

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