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(書評)聖遺の天使

著者:三雲岳斗

聖遺の天使 (双葉文庫)聖遺の天使 (双葉文庫)
(2006/07)
三雲 岳斗

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15世紀、イタリア。ミラノ公国の宰相・ルドヴィコは、芸術家・レオナルド・ダ・ヴィンチのもとを訪れる。彼の目的は、あるものの鑑定を依頼すること。そのものとは、ミラノ北部、湖水地方に立つ「沼の城」にある香炉。数々の奇跡を起こしたそれは、「聖遺物」では? と、噂され、各地の教会から調査団が派遣されている、という…
現れる天使。進入した敵軍を、一夜にして全滅させた事件。煙に現れる人影。あり得ない場所に貼り付けられた館の主の遺体。そして、忽然と姿を消す香炉…。この香炉は、聖遺物なのか? 聖遺物による奇跡なのか…? その謎を、レオナルド・ダ・ヴィンチが解く、というわけなのだが、ただ、歴史を題材にしたミステリという以上の味わいを感じる。
物語の探偵役にレオナルド・ダ・ヴィンチを置いた、というのは一義的には、芸術、科学などあらゆる方面にその才能を示していた、という彼の人物像が、探偵役に向いている、ということになるのだと思う。ただ、それが一義的な意味であったとしても、その中にある時代背景、つまり、現在の科学的な思考が世の中でも芽生え始めたルネサンス期という時代。諸勢力が危ういバランスで成り立っていたイタリアの事情。さらに、十字軍時代を過ぎ、宗教改革を前に、最も世俗化した教会のあり方…。そのような歴史的背景を抜きにして語れないし、決して、多くの言葉を費やして描かれるわけではないものの、それが感じられる描写がまず、この作品を特徴付けていると思う。
そして、そんな物語をさらに特徴付けるのが、そのトリックの大胆さ。先に書いた、科学的思考への芽生え、という形での説明で語られる、歴史を題材にしたミステリは数多く読んできたが、その一方で、本格ミステリ的な、ある意味では荒唐無稽とも言えるような、大胆なトリックを仕掛けていることがもう一つの特徴と言える。論理的にはともかく、実際に、あり得るのか? と思えてしまうものを用いる。
正直、この作品で描かれる「奇跡」のいくつかは、知識などがあれば比較的早い段階で想像出来るものもあるのではないかと思う。実際、前例と言えるようなものも存在している。だが、それを組み合わせることで見事なコントラストを生じさせる。その大胆さ、絶妙さに脱帽させられた。
ラノベ作品の著者としても活躍している三雲氏であるが、この作品は、純然たるミステリ作品として、普段、ラノベ作品などを手に取らない方にもお勧めしたい傑作だと思う。

No.1684

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