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(書評)残される者たちへ

著者:小路幸也

残される者たちへ残される者たちへ
(2008/12/18)
小路 幸也

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かつて、巨大な団地で暮らしていた準一。その近くにあった学校の同窓会へ向かった彼は、幹事の記憶がないことに愕然とする。クラスメイトで、向かいに住んでいた彼の記憶だけがすっぽりと抜けているのはなぜか? 一方、団地に住む少女・みつき。事故で母を喪った彼女には、なぜか、母の記憶が残る…
「記憶のミステリー」なんていうあおり文句がついているのだけど、ミステリーというよりも、SF、ファンタジーに近いかも知れない。
高度成長時代に作られた巨大な団地群。しかし、数十年の時を経て、それは廃墟へと姿を変えつつある。年老いて、空き屋も目立ち始める団地。その団地に住んでいたはずの準一から喪われた記憶と、その団地で暮らす少女に、プラスされた記憶。序盤から、超常現象的な雰囲気を漂わせながらも、準一とみつきをつなぐ存在として、医師・美香なども加えることでミステリーとして現実的な部分を組み合わせていく序盤の展開は非常に引き込まれた。
さらに、その中で不思議な痣の存在。準一の記憶から消えた男・押田という存在に対する疑念…と繋がっていき、ますます迷わされていく。この辺りの広げ方もうまいと思う。
人類とは別の意志。そこにもある、人間的な心、優しさ。しかし、ズレも存在している。そのアイデアは面白いと思う。ただ、そういう部分などが少しずつ感じられ、積み重ねられる、というよりも中盤まで、何か不気味な…という雰囲気ばかりが先に立ち、終盤にぱっと出てしまうようなところに、どうしても違和感が残るの。色々と残したままになってしまう結末もちょっと混乱した。無論、想像力を働かせて読む作品というのはあって良いのだが、何か、急展開でそちらに行ってしまってどちらかというと混乱ばかりが残った感じがする。
好き嫌いはハッキリと分かれそう。個人的には、ちょっと違和感が強く出てしまったな、という感想になる。

No.1695

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