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(書評)模像殺人事件

著者:佐々木俊介

模像殺人事件 (創元クライム・クラブ)模像殺人事件 (創元クライム・クラブ)
(2004/12/11)
佐々木 俊介

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病床の友人を訪ねた啓作は、その友人から一枚のフロッピーディスクを手渡される。亡くなったマイナー作家が残した、というそのフロッピーに記されているのは、ある山中の屋敷で起こった惨劇。そこで何が起こったのか?
巻末にある解説でも触れられているのだが、本作の雰囲気は、明らかに「古い探偵小説」的な物を彷彿とさせる。山中の屋敷での事件。そこにある噂。そして、現れた二人の、包帯で顔を隠した男たち。文章そのものも、意図して、そういう雰囲気を出すための言葉使いをしているように感じる。
物語そのものの構成もかなり凝っている。マイナー作家の残した手記によって綴られる事件を、読んで何が起こったのか、安楽椅子探偵として検証していく物語。手記の著者と、語り部たちの間にある情報の差。それは、現場を見ていないから主人公たちにはわからない…というのとは、また違った形で。そして、その中にあるトリック…。
恐らく、トリックそのものを想像してしまえば、そこで確認作業みたいな形になってしまう部分があるのだとは思うが、そこに至るまでのかなりひねられた物語の構成。そして、大がかりなトリックと、デビュー作同様、ある種のやるせなさを残す結末は、かなり印象に残った。
ただ、不満がないわけでもない。まず、舞台設定、時代設定を現代にする必要性があまり感じられないこと。舞台の雰囲気を出すために、昭和初期くらいの雰囲気ような文章使いをしながら、一方で、都合良く物語を回すために現代の道具を最小限入れている、という感じが残って妙に違和感が残った。そして、根本的な物語の展開が偶然を組み合わせたところも多いように感じる。その2点はどうしても気になる。
分量として、決して多くないにも関わらず、かなりひねられた展開は見事なだけに、そういう細かいところが気にならなければより傑作と感じたのだろう、と、ちょっと惜しさを感じた。

No.1701

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