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(書評)死墓島の殺人

著者:大村友貴美

死墓島の殺人死墓島の殺人
(2008/08/29)
大村 友貴美

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釜石の沖に位置する離島・偲母島。漁業を中心とした過疎の島は、3つの集落が存在し、それぞれ海洞、宝屋敷、龍門という3家が中心となって成り立っている。その1つ、海洞家の当主で、水産会社の社長でもある海洞貞次が、オトシバと呼ばれる絶壁からつり下げられるような格好で遺体となって発見される。釜石署の警部補・藤田は、相棒の有原と共に島へ渡るが…
話としては、著者のデビュー作『首挽村の殺人』の続編。デビュー作にも登場した、藤田が、今作の主役。
冒頭に、導入部的なところはまとめたのだけれども、前作同様、本作も設定そのものは、いかにも「昔ながらの」本格ミステリという装い。3つの家が中心となって生計を立てる離島。戦国時代に端を発する過去の因習に、処刑場であったという伝説。村に多くある墓地に、童歌。そして、起こる見立て殺人。そういうのを見ると、いかにも、という感じがすると思う。
が、読んでいる最中、そういう作品という印象が全くしないのである。というのは、上に書いたような設定はあるのだが、読んでいて、全くそれを活かそうとしている印象がないのだ。
あまり批判的なレビューは書かないようにしているのだが、本作については、何がしたいのか、という風に感じられてならない。こう言っては何だが、舞台設定だけ用意されても、それだけで読者はその世界に入れるわけではない。そういう舞台設定があって、それがその世界で息づいている様子を描写して、初めて、その世界がリアルに感じられ、その世界に入るのだと思う。ある意味、読者は最初から「合理的な理由があって見立て殺人をしてるんでしょ?」と思いながら読む部分がある。それを頭の片隅に残しながらも、それでも、やっぱり「呪い?」「因習?」などと思わせるのが、腕の見せ所ではないかと思う。
ところが、本書の場合、それが感じられない。こういう伝説があります。というのは綴られても、具体的に、島の人々にどう息づいているのか描かれない。むしろ、唐突に限界集落についての演説が始まったり、とかで、「普通の田舎」という印象ばかりが先立つ。そして、最終的に明かされる真相なども、そこから乖離したものになってしまう…。
最後に明かされる被害者の、犯人の心情であるとかは面白い。面白いのだけれども、それは別に、この設定で描く必然性が全くない。むしろ、極めて現代的な町中を舞台にして綴った方が、素直に入れて良いのではないか? とすら思えてしまう。
私は、よく「詰め込み過ぎかな?」というような感想を書く。前作にも、書いた。けれども、本作に関して言うと、詰め込みすぎではなく、単純に、全く意味のない設定があるだけ、という印象。横溝作品のような舞台設定にこだわる必要はないのではなかろうか?

No.1715

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