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(書評)草祭

著者:恒川光太郎

草祭草祭
(2008/11)
恒川 光太郎

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「美奥」という土地を舞台とした5編を収録した連作短編集。
これで、恒川さんの作品は、全部読んだことになるのだが、それまでの作品にすべて共通することがある。それは、私たちが暮らしている日常の、すぐ横に、全く違う別の世界が存在している。そして、そこにあるのは、恐怖というよりも、不可思議な、正体がわからない曖昧さ、それ故の怖さ、そして、でも惹かれてしまう魅力というものが存在しているように思う。
本作の世界というのもその部分は近いと思う。「美奥」という舞台を背景に、時代も、語り部も異なるものたちの物語。ただ、そこにあるのは、これまでの、「すぐ隣にある、全く別の世界」というよりは、「すぐ隣にある、一歩だけ日常からずれた世界」であるように感じる。
迷い込んだ原野にいた行方不明の友人。会話も出来るけれども、「日常」からは外れた存在になっている、という様子が印象的な『けものはら』。空か降ってきた「守り神」を名乗る少年とのやりとりを描いた『屋根猩猩』。家を飛び出した先で「天化」なるゲームに参加することになる『天化の宿』など、それぞれ、日常と紙一重、日常と重なりつつも微妙にずれている、そんな異世界の雰囲気を感じる。そして、そのような形で、少しずつ「美奥」という土地に対するイメージが広がっていく…。
ジャンルとしては「ホラー」なのかも知れないが、恒川さんの作品を読むといつも思うのは、「人間が何か惹かれる、というのは、どういうメカニズムなのだろう?」ということ。今回にしても、そのことについて、色々と頭に浮かんでは消えた。

No.1720

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