著者:笹本稜平
ビジネスパートナーの娘・ジャンヌに銃口を向けられた武器商人・戸崎。盟友・ポランスキーを殺害し、戸崎に罪を着せたのは、DGSEの大物工作員・マングース。ジャンヌと共にマングースを追うことになる戸崎だったが…
という、武器商人・戸崎を主人公にした連作短編集。
順番は前後するが、本作に登場する戸崎、ピカール、檜垣は、『
サハラ』にも登場する(檜垣は、『フォックス・ストーン』の主役でもある) そういう意味で、ある程度、人間関係とかを把握している状態で読むことになった。
物語は、武器商人・戸崎が世界を巡り、それぞれで商いなどをする。しかし、そこには、マングースとの戦い、横槍が入って…という形になる。
うーん…この作品については、ちょっと厳しい評価になってしまう。色々と問題点はあると思うのだが、特に気になった箇所が2つ。
まず、明らかに分量が足りない、ということ。アイルランド、パリ、ベトナム、ロシア…と、世界各地を舞台に、次々と事件に巻き込まれ、そこに「マングース」の陰が、という話になるわけだけど、あまり、その舞台が生きている感じがしない。それぞれ、その地に降り立ちました。事件に巻き込まれました。何とか危機を回避して、マングースに一泡吹かせました。という流れ作業みたいになってしまっていて、あまり緊張感を感じなかった。それぞれ、ちゃんとまとめては居るのだけど、そこまでの流れが弱いせいか、分量不足をまず感じずにはいられない。
そして、もう1つが、敵役であるマングースが、あまりに小物であること。主人公・戸崎も、それなりに武器商人として危ない橋を渡っている人間ではあるけど、そこに、一人でクーデタ軍を壊滅させた伝説を持つ檜垣、「虎」と恐れられ、老いたとは言え、常人離れしたピカールという仲間が加わって追う相手が、あまりに小物。スパイマスターと言うものの、ただ不正をして、金を稼いでいるだけの小悪党、という以上にどうしても思えない。先の、分量の問題もそうなのだけど、各地で登場しても、なんか安っぽい小悪党的な言葉をはいては失敗しているだけなのだ。もうちょっと、「大物」工作員らしさを示して欲しいのだが…。
逆に言えば、そういう「小物」だからこそ、檜垣とかが向きになって追っている、という感じもする。あまりに、せこくて、却って苛立つ、というか…そういうキャラクターではあるのだが…。
最初にも書いたように、本作の主人公・戸崎などは、後のシリーズにも登場していて、そちらを読んでいた身として、番外編、スピンオフ作品的なものとして楽しむことは出来た。ただ、これ単独の出来、となると、ちょっと他の作品に劣るのではないか、という風に感じる。
No.1731
テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学
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