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(書評)家族内殺人

編著:浜井浩一

家族内殺人 (新書y)家族内殺人 (新書y)
(2009/06/06)
浜井 浩一・編著

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日本で起こる「殺人」の中で最も多いのが「家族内殺人」。伝統的な家庭の崩壊、というシナリオで説明されるそれであるが、その数は決して増えていない(むしろ、減っている) 少年による親殺し、虐待、嬰児殺、高齢者、心中というカテゴリでそれぞれ綴った後、更正の状況を綴った。
ちょっと前に読んだ『日本の殺人』(河合幹雄著)とも、殺人の状況は綴られていたわけだが、本作についても「減っている」という前提を綴りながら、どういう状況、どういう動機なのか、などについて分析していく。
それぞれの論者により、多少、重複しているところはあるのだが、とにかく、まず言えるのは、どのケースにしても、家庭というのが「最も小さな社会単位」である、という点だろうか。家族といえども、他人。ただし、家族という一つの絆、言い換えれば束縛が在るが故に、逃げ出すなどのことが、他のモノと比べても出来ない。そして、その中で暴発してしまう…。ある意味では、隔絶した社会であるが故に、そこでのローカルルールが優先されて…という形で学校での「いじめ」を綴った内藤朝雄氏の主張とも共通点をまず感じた。
その一方で、減少しているものの中でも顕著な嬰児殺。それは、経済発展、中絶の合法化、また、「出来ちゃった婚」などが認められつつある、という社会的変化。これらが、それまでの「社会的な視線」などを気にして、という形でのケースを減らしている、というのは説得力があった。もっとも、指摘されるように、反対にその中で現在も残るのは、その中でも悲惨なもの、といえるのだろうが。
本書の場合、統計データなどを中心に分析しているわけだが、一つ気になったのは、それぞれで「適切な処置、介入」を現在より、さらに減らす方策として挙げていること。小さな社会である家庭の中で、逃げ場を失った状態に、外部の力を、というのは確かなのだが、一方でその「適切な」という部分をどう確保するのか、が問題になるように思う。昨今、よく言われる「コミュニティの復活」「共同体の再構築」などは、一歩間違えると、排他的なコミュニティを作り、「地域」を「逃げ場のない場所」にしてしまう危険性などがないのか? というのがちょっと気になった。その辺りのバランスをどう取っていくのか、は、難しい問題であるが、そこを考察しないと「伝統的社会の崩壊」シナリオに利用されてしまう危険性を孕んでいるように感じた。
とは言え、「家族内殺人」の状況について知るには参考になると思う。

No.1739

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