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(書評)KUNIMORI

著者:五條瑛

KUNIMORIKUNIMORI
(2009/02/24)
五條瑛

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息子のようにかわいがってもらった伯母の遺産を引き継ぎ、住居と職場、2つのマンションの管理委員まですることになった耕太。そんなとき、職場のマンションの「デプラ」という会社が夜逃げしたことを知る。伯母の名前を頼りに、耕太の前に次々と現れる「デプラ」関係者。そんな中…
なんか、最初に思ったのは素材としては、『スリー・アゲーツ』に似ているな、ということ。諜報員、北朝鮮、親と子…素材はかなり近い。けれども、その調理方法は全く別であり、全く別の味わいの料理ができあがった。そんな感じ。
主人公・耕太が引き継いだのは、伯母の遺産。けれども、その遺産と共に、様々なものがあったように感じられる。どうしても直視しなければならない伯母の秘密。しかし、事件に巻き込まれていながらも、彼が思うのは、伯母のこと、そして、転がり込んできた少年・潤のこと。
素材が同じだけど、味わいが異なるのは、そこなのだろうな…と思う。先の『スリー・アゲーツ』の場合、家族を守りたいチョンと、そのチョンに真摯に向き合いながらも、一方で自らの任務との間で苦悩する葉山、というものの対比が一つのポイントになっていたように思うのだが、本作の主人公・耕太には、組織とかは関係がない。ただただ、潤のことを思い、その潤を放ってしまう彼の祖父、父の姿に苛立つ。
勿論、潤の祖父にしろ、父にしろ、全く思っていないわけではない。香西にしても、デプラの人々にしてもそう。でも、それでも耕太の目から見れば、「そんなの…」という感じになるんだろう。それは、彼がお人好し、とか、世間知らず、とか、そういう言い方をされる材料にもなるのかも知れないけど、でも、そういうのも含めて「育ち」とか、そういうのだし、また、それが違うからこそ、「わかり合えない」いや、「対立してしまう」ことになるのだろうな…とも。
正直、それなりに社会生活をしてきた、という割に随分と耕太はお人好しだな、とか、そういうのは思わないでもない。話のスケールも、『スリー・アゲーツ』なんかとは比べものにならないほど小さいとも思う。
でも、逆に身近に感じられて読みやすい、とも言えるし、最初にも書いたように「別の料理」として、しっかりとしまとまった佳作じゃないかと思う。

No.1845

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COMMENT 2

そら  2009, 10. 09 [Fri] 09:31

たこやきさん、おはよっ♪

確かにスケールの小さい作品でしたね~(笑)
でも、小粒ながら味わい深い作品でした。

「国」が違うと「育ち」が違ってくる。
と、物事に対する感覚も当然のように違ってくる。
そこが「分かり合えない」ところになる。
異文化交流って相手を受け入れるところから始まるとおっしゃったのは梨木香歩さんだったと思うけど、
なかなか難しいことだわね。。。と思ったのでした。

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たこやき  2009, 10. 11 [Sun] 10:42

そらさんへ

舞台設定の割に、という感じですけどね(^^;)
でも、こういう風にまとめてあるのなら、それはそれで良いのだろうな、と思います。

>「国」が違うと「育ち」が違ってくる。
>と、物事に対する感覚も当然のように違ってくる。
>そこが「分かり合えない」ところになる。

価値観、考え方、っていうのは行動の基盤となるものですからね。まず、その根底部分を受け入れないと、というのはあるんでしょうね。
これは、私が大学時代に教わった教授の言葉なのですが、「相互理解をするからこそ、受け入れられない、と判明することもある」というのも頭に浮かびました。
どちらが正しく、間違っている、ということではないのでしょうが、根本となる部分の違い、っていうのは何よりも複雑にしてしまう要因なのだろう、というのを感じます。

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  • 北朝鮮が絡みながらハードボイルドでない作品。 余韻の残る作品です。 こういう作品も,私,好きです。 ★★★★☆ 東京下町の貸しスタ...
  • 2009.10.09 (Fri) 09:22 | 日だまりで読書