著者:北村薫
円紫師匠と私、シリーズの第2作となる連作短編集。
うーん…前作もそうなのだけど、読んでいて、多少の居心地の悪さを感じずにはいられない。それは、あまりに純粋な「私」のキャラクターもあるだろうし、また、そこにある円紫師匠のキャラクターもあるのかも知れない。そういうところを含めて、(ある意味)おじさんが書いた女性像、みたいなところを感じたりもするのだけど(笑)
ただ、そういうところを感じつつも、確かに面白かった。
書店の中、カバーと反対に差し込まれた書籍の謎、置かれるべき場所が入れ替わったチェスの駒と卵と鏡、投函した手紙が別の人へと向かった謎…ミステリとしての謎としてはそこなのだけど、あくまでも、それを一つのきっかけとして紡がれる物語。どちらかと言えば、地味で、おっとりとした「私」と、どちらかと言えば「怖い」と感じていた姉との間にあった確執と、そこからの前進の物語…とでも言えば良いのだろうか。前作同様に、悪意やちょっとした秘密、罪悪感みたいなものを含め、「それを含めて人間なんだ」というメッセージにはすごく説得力を感じる。
と、同時に表題作での謎は見事だと思った。ちゃんと投函したはずの手紙が、別の人へと送られてしまった。ある意味、不可能犯罪のような、そんなシチュエーション。ある意味、その解は、すごくアナログなのだけど、でも、「なるほど」と感じさせる。そして、これも「人間のすること」だからこそ、と言う方法なんだなぁ…とも感じたわけだが。
最初にも書いたように、個人的にあまり得意なシリーズだとは言えない。また、「日常の謎」ミステリというのともちょっと違うような気がしている部分もある(物語のメインは、「私」の日常で、謎は終盤に出てきて、一つの結論への駒という感じがするのだ) ただ、表題作の巧さ、そして、何よりも、「私」と姉の物語を描いた作品として評価したいな、という風に感じた。
No.1847

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円紫師匠と私、シリーズの第2作となる連作短編集。
うーん…前作もそうなのだけど、読んでいて、多少の居心地の悪さを感じずにはいられない。それは、あまりに純粋な「私」のキャラクターもあるだろうし、また、そこにある円紫師匠のキャラクターもあるのかも知れない。そういうところを含めて、(ある意味)おじさんが書いた女性像、みたいなところを感じたりもするのだけど(笑)
ただ、そういうところを感じつつも、確かに面白かった。
書店の中、カバーと反対に差し込まれた書籍の謎、置かれるべき場所が入れ替わったチェスの駒と卵と鏡、投函した手紙が別の人へと向かった謎…ミステリとしての謎としてはそこなのだけど、あくまでも、それを一つのきっかけとして紡がれる物語。どちらかと言えば、地味で、おっとりとした「私」と、どちらかと言えば「怖い」と感じていた姉との間にあった確執と、そこからの前進の物語…とでも言えば良いのだろうか。前作同様に、悪意やちょっとした秘密、罪悪感みたいなものを含め、「それを含めて人間なんだ」というメッセージにはすごく説得力を感じる。
と、同時に表題作での謎は見事だと思った。ちゃんと投函したはずの手紙が、別の人へと送られてしまった。ある意味、不可能犯罪のような、そんなシチュエーション。ある意味、その解は、すごくアナログなのだけど、でも、「なるほど」と感じさせる。そして、これも「人間のすること」だからこそ、と言う方法なんだなぁ…とも感じたわけだが。
最初にも書いたように、個人的にあまり得意なシリーズだとは言えない。また、「日常の謎」ミステリというのともちょっと違うような気がしている部分もある(物語のメインは、「私」の日常で、謎は終盤に出てきて、一つの結論への駒という感じがするのだ) ただ、表題作の巧さ、そして、何よりも、「私」と姉の物語を描いた作品として評価したいな、という風に感じた。
No.1847

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