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(書評)汐のなごり

著者:北重人

汐のなごり汐のなごり
(2008/09/17)
北 重人

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東北の港町、水潟を舞台とした6編を収録した短編集。
最初に、この作品を手に取る前に、著者の北氏が今年(09年)8月に亡くなった、というのを聞いて愕然とした。時代小説をあまり読まない私であるが、大藪賞を受賞した『蒼火』などで追いかけることにしていた作家で、この作品で直木賞候補など一気にブレイク…と思った矢先だっただけに…。
で、そんな北氏の作品の中で、私が最後に読むことになったのがこの作品集。
短編集ではあるが、静かに染み渡るような作品集…という印象だろうか。
かつて遊女であり、その時代に知り合った男とずっと想い寄せる志津。飢饉で津軽から父母を失いながら水潟へ逃れ、そこで商人として見いだされた喜三郎。商人の妻となりながらも、子、孫の男児を失い、その過去を思わずにはいらせない千世…など、各編の主人公たちは、それぞれ、水潟の町で齢を重ねた者たち。老境へと入り、ある程度の成功も収めている。しかし、その一方で、その人生の中に悔いや、心配なども残る。そんな彼らが、ふとしたことで、そこを見つめ、そして、一つの光を見いだす。
これまでの北氏の作品、例えば上述の『蒼火』とか、はたまた『月芝居』などと行った作品は、辻斬りの下手人を追う、とか、そういう感じの事件を中心に、「娯楽」作品としての側面を前面に出していたように思う。しかし、本作の場合、ミステリ小説的な構成を取りながらも、驚かせるとか、そういうのではなく、その中で主人公たちの人生を染み渡らせるところに力を注いでいるように感じた。そのじっくりとした味わいがすごく心地よかった。
それだけに、これで、著者の作品はすべて読み終わってしまった、というのが寂しい。

No.1876

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