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(書評)砂漠の薔薇

著者:飛鳥部勝則

砂漠の薔薇 (光文社文庫)砂漠の薔薇 (光文社文庫)
(2003/09)
飛鳥部 勝則

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美術館の喫茶室でバイトをする女子高生・美奈は、常連の画家・明石尚子にモデルに成って欲しいと頼まれる。一言で言えば、根負けした格好で、尚子のアトリエに通う日々。その尚子のアトリエから見える隣家の洋館では、美奈と同じ高校の女王だった少女が首のない遺体として発見されていた。そして、その建物には、昼夜逆転して暮らす男が越してきていて…
なんか、何よりも感じるのは「不安定さ」ということかな。
物語の語り部は、冒頭にも書いたように女子高生の美奈。そして、起こった事件というのは、その同級生の死であり、その首なし遺体の発見。さらに、同じく同級生の失踪。ここまではハッキリとした形で記される。しかし、そこからは、すべてが非常に不安定。
ヒロインである美奈自身が、その死んだ少女と関係を持っており、少女同様、表と裏という形で姿を変えている。そこでの歪な人間関係。そんな美奈をモデルに誘った画家・尚子も、年齢不詳で、とりとめもなく動く行動に歪さを感じさせる。さらに、美奈の前に現れる刑事を名乗る男・槍経介や、アトリエの隣人…文庫の内容紹介では「疑わしい人物ばかりが」というのだけど、疑わしいという以前に、誰が犯人だったのか? 誰が探偵なのか? という部分からして混沌とした状態で綴られるために、その不安定さに揺さぶられた。
さらに、その作中での著者らしい美術論も拍車をかける。死、遺体といったものを題材とする美術作品たち。そこに描かれるメッセージ。先の不安定さ、歪な関係と、メッセージが重なり合うことで、独特の幻想性が紡がれているように感じた。
トリックといったようなもので驚きを演出する、というよりも、不安定さに身を任せるのが、この作品の楽しみ方ではないかと思う。ちょっと独特なクセのある作品だとは思うが、私は十分に楽しめた。

No.1884

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