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(書評)新世界

著者:柳広司

新世界 (角川文庫)新世界 (角川文庫)
(2006/10)
柳 広司

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1945年8月、アメリカ・ロスアラモス。長かった第二次大戦の終結を祝うパーティーの最中、祝砲代わりの爆薬が爆発する事故が発生する。奇跡的に、その事故による怪我人は軽傷だったのだが、その翌朝、誤爆してしまった科学者のいたはずのベッドで男が殺されて…
第二次大戦、ロスアラモスでの原爆開発。隔離された科学者たちの町での事件を舞台とした作品。一応、冒頭で書いたような形で物語が展開するのでミステリ作品という形なのだが、ミステリ作品と素直に取って良いものかどうか…
物語としては、原爆という、極めて強大な破壊力を持つ兵器を作ってしまった者のモラル。科学者の研究と、政治的、道義的責任と言ったところか。冒頭に書いた事件を追う、という形で展開するのだが、その中で描かれるのはミステリとしての展開よりも、そのメッセージのように思う。
ナチスドイツで行われていた非人道的な研究の数々。それを止めるため、という形で行われた実験。しかし、原爆の完成はドイツの敗戦後。さらに、その中で研究していた者、それを実際に使った者は、「言われたからやっただけ」という、ある種の無責任さと、故にどこまでも拡大してしまう残虐さ。ナチスドイツの研究者たちと、原爆を作った者たちのそれはどう違うのか…。メッセージ性などは非常に強いと思う。
ただ、正直、やや読みづらさも感じる。序章で、ロスアラモスの責任者であるロバート・オッペンハイマーが書いた、友人の視点からの彼らの物語、という構造を取っていること。さらに、作中で、完全な「おとぎ話」としての物語が挿入されたり、はたまた、突如、1950年代の赤狩り時代の様へと物語が飛んだり、でどうしても混乱を来したところがあった。さらに、キーパーソンとも言える「少女」の存在など、ファンタジー的なところも含まれていてちょっと違和感が残ってしまった。
作品のメッセージ性そのものを否定する気はないのだが、これまで読んだ著者の作品などと比較すると、ちょっと完成度として劣るかな、と感じざるを得ない。

No.1885

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COMMENT 2

はな  2009, 11. 19 [Thu] 10:31

ジェネラル~の方もTBありがとうございます♪こんちは^^

>読みづらさ
たこやきさんと少しでも同じ感想を持っているとかなり嬉しくなってしまいます(笑)
ファンタジーがマッチしているかって重要なポイントですよね~。現実的なテーマだからなおさら^^;
あれ、ナイチンゲールの沈黙でも似たようなこと思ったよーな...=3

歴史の教科書上の出来事でしかないので、こういう風に作品としてテーマを持ちかけられるとがっつりお勉強した気分になれました(笑)

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たこやき  2009, 11. 23 [Mon] 19:04

はなさんへ

こんばんは~。
返事、かなり遅くなってすいません。

>ファンタジーがマッチしているかって重要なポイントですよね~。現実的なテーマだからなおさら^^;
ですね。
現実的な部分が強く強調される作品の根幹がファンタジーだった、というと「あれ?」と感じてしまうんですよね。『ナイチンゲールの沈黙』も、やっぱり同じ部分、ありますよね。

この作品の時代、本当に歴史の「教科書」という感じがします。
ここまで授業が進んだことがなかったような…(笑)

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