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(書評)秋の花

著者:北村薫

秋の花 (創元推理文庫)秋の花 (創元推理文庫)
(1997/02)
北村 薫

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文化祭の準備中、学校の屋上から転落して死亡した少女。その少女と、いつも一緒にいた少女は、抜け殻のようになってしまった。ふたりの先輩である「私」の元へ届いた教科書のコピー。そして、その核心は…
シリーズ3作目。
常に一緒にいた少女たち。その片方が亡くなってしまった。そして、それは「殺人」と示唆する手紙。事故として処理されたそれは本当に「殺人」なのか? こうやって書くと、色々なミステリで描かれた展開のよう。確かに、その手紙により、「私」は動く。でも、それは別にどこぞの名探偵のように謎を解くためでもなんでもない。気にはかかるが、それより、抜け殻のようになった少女のことが心配、という優しさ。調べはしても、決して、その謎を解きたい、というわけではない。そして、当然のことながら、ただの大学生であり、調査の素人なので真相にはつかない。そこへの次なる手紙と、その裏に隠された苦しみ。
正直なところ、これまでこの「私と円紫師匠」シリーズは、苦手、と感じるところも多々あった。ただ、本作については、そういうところが殆ど感じず、また、その苦手意識を感じさせた「私」「師匠」の人間性が物語にとって極めて大切で、そして、「私」たちがそこへたどり着いたことに一つの救いと感じられた。そして、だからこそ、「私」に託したのだろうか、とも。
読み終わって思うのは、無駄が一切無い話だった、ということ。先の「苦手」の中には、「私」たちの大学での生活などがだらだらと続いて、みたいな、そういうところもあったのだけど、本作については、それすらも「苦しみ」への伏線であると読み終わってわかるし、また、そこで綴られる物語なども色々と中心となる物語との関連性を想像させる。そういう意味で、全く飽きずに読むことが出来た。
こういうと何だけど、ミステリとしては非常に小粒な話。序盤の段階で「こういう真相かな?」と想像出来る方もいるんじゃないかと思う。でも、それって、物語にとってそんなに大きいことではないのだと思う。事件だろうが、事故だろうが、関係者にとって大きな出来事であり、それは一生、その相手を苦しめるものにもなり得る。そして、他者の気遣いやらが、本人を苦しめることもあるし、また、誰かを救うことが別の苦しみへとも…
これがベストの解決だったのかはわからない。でも、それを知って臨む「師匠」に強さを感じるし、また、そこに優しさを感じた。

No.1888

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  •  秋の花/北村 薫
  • 円紫シリーズ第3弾、「秋の花」を読み終えました。 これまで様々な謎を扱ってきた円紫シリーズですが、人が死ぬお話はありませんでした。...
  • 2009.11.16 (Mon) 16:49 | 日々の記録