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(書評)バロックライン

著者:樹月弐夜

バロックライン (カッパ・ノベルス)バロックライン (カッパ・ノベルス)
(2007/02)
樹月 弐夜

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20世紀初頭のウィーン。イギリス・ケンブリッジ大学の学生であったヴィクターは、ミルフォード卿により、欧州世界の趨勢をも左右する品の運び屋に指名される。現地の案内人・ラヨシェと共に、その品を持つ男の元へ向かうが、男は何者かに殺害され、しかも、ウィーン宮廷警察を始め、様々な勢力に狙われることに…
なんか、個人的に舞台設定とか、作中での諸勢力が入り乱れての冒険譚という部分ではかなり好き。ただ、その一方で、色々と物足りない、と感じるところも多くあった。その辺りについて、書いてみたいと思う。
まず、好きだな、と感じるところとして、この舞台設定そのものが好き。1909年頃のウィーン。オーストリア・ハンガリー帝国、ハプスブルク帝国を舞台とした物語であり、世界史の話とすれば、第1次大戦前夜。欧州に長きに渡り、影響力を持ったハプスブルク家の帝国が崩れる前夜、とも言える時代。数々の危機的状況がありながら、それでも力を持っているハプスブルク家の秘密は何なのか? それを揺るがす「品」とは? という謎を中心にして、ヴィクターの前に現れる様々な勢力。
さらに、その物語を彩る「式」、「場の力」と言った、一種の特殊能力。ある種のファンタジー的なものがあるのだが、未熟ながらそれを駆使するヴィクターと、女にだらしないように見えながらも様々なネットワークと面倒見の良さでヴィクターを手助けする案内人・ラヨシェのやりとり。こういう辺りは非常に面白い。第1次大戦前夜とか、現代に通じる科学製品などが出始めた時代、というような設定とかも含めて、これが許される下地と、テンポの良い展開は非常に魅力的。
ただ、その一方で不満が残るのは、その「式」、「場の力」とか、そういうのが結構、重要になるにも関わらず最後まで、イマイチ、上手く説明されていない、という点。イギリスでは使えるけど、本来は大陸では使えないはず、とか、そういう断片的なところはあるのだけど、全体図みたいな物が最後まで見えて来なかったのが残念。物語の根幹にも関わるところだけに、そういうのをハッキリさせてくれれば…というのは思った。あと、伯爵とか、ドクターとか、あの辺りの描き分けにも、ちょっと難があったように感じた。
なんか、全体的に「惜しい」という感じ。色々と、もう少し、洗練されれば、冒険譚として「面白い」と素直に言えるのに、と感じられてならない。

No.1895

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