FC2ブログ

(書評)後巷説百物語

著者:京極夏彦

後巷説百物語 (角川文庫)後巷説百物語 (角川文庫)
(2007/04)
京極 夏彦

商品詳細を見る


維新の動乱も落ち着き始めた明治10年。矢作剣之進、倉田正馬、渋谷惣兵衛、笹村与次郎。4人の旧友は、怪異に纏わるやりとりを何度と重ねる。そして、それが進まなくなったとき、4人はある老人の元を訪れる。かつて、怪異譚を求め、諸国を渡り歩いたという一白翁の元へ…
巷説百物語』『続巷説百物語』に続くシリーズ3作目。
とは言え、冒頭のところからもわかるように、これまで、山岡百介の、現在進行形の目線で語られていた物語が、本作では老いた百介(一白翁)が、若者たち4人に回顧しながら語りかける、という形で紡がれる。そして、その時代の変化、というのもその作風に大きく影響を与えている。
とにかく、まず、1編目の『赤えいの魚』のインパクトが絶大。男鹿半島から僅か2里しか離れていないところに存在する離島。しかし、崖は切り立ち、海流は複雑で、たどり着くことが出来ない島。限りなく日本に近く、しかし、日本と全く違った異世界。そこでも、これまでのシリーズ同様に又市らの「策」が機能していくわけだが、まず何よりもその異世界の風景そのものが凄まじく、そこでまず、強烈に引き込まれた。
その後のエピソードは、基本的にあるパターンで展開する。怪談好きの巡査・剣之進が対処することになった不思議な事件。それを4人があれやこれやとやりとりし、そして、結果として一白翁の元へ。そこでもやりとりをする中、一白翁はヒントや、それと似たようなエピソードを披露する。ただし、そこの「表の話」「裏の話」というものを含ませながら…そして、最終編の『風の神』へ…
『風の神』の話は、一言で言えば、百介の生きた証を巡る物語。そして、(さらにシリーズは出ているけど)シリーズそのものの総括とも言える物語。タイトルでも綴られている「百物語」そのものが題材にされた物語。『続巷説百物語』で、どうしようもないほどに見せつけられてしまった「世界の違い」を埋める物語。そして、それは時を経た明治の世だからこそ、の物語。本作だけでなく、それまでのシリーズで語られた物語そのものも百介の「生きた証」ではあるのだが、その最後の「証」に収束してのまとめは、非常に感慨深いものがあった。
本作の場合、時代設定の違いなど、全てを含めて「時間」というのが一つのテーマなのだろう、というのも思わずにはいられない。物語の構成1つをとっても、基本的な流れは同じなれど、最初は4人が揃って一白翁のもとへ向かっていたのが少しずつそれが出来なくなっていく。また、最初は「表の話」だけで納得していたのが少しずつ「裏の話」の存在を知っていく…。物語の中にもしっかりと時間の経過が感じられる。そして、それが最後に全て結びつく。前作の構成もそうであるが、本作についても、ただ1編1編の面白さだけでなく、構成の巧みさを感じずにはいられなかった。
百介の最期は、ある意味では、全てを成し遂げての最期、とも言えるのだが…。その最期、本人はどのように感じているのだろう? と思わずにはいられなかった。

No.1907

にほんブログ村 本ブログへ





スポンサーサイト



COMMENT 0