(書評)銀座ブルース

著者:柴田哲孝

銀座ブルース銀座ブルース
(2009/07)
柴田 哲孝

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太平洋戦争の傷跡の残る東京。GHQによる占領、相次ぐインフレ。混乱の中、特効崩れの刑事・武田は、次々と事件を追う。という連作短編集。
これまで読んだ柴田氏の作品は、UMAモノと、そうでないもの、とで、どちらかというとUMAモノの方が面白い印象があったのだが、本作は、UMAとかは登場しないけれども、非常に面白かった。
最初にも書いたように、終戦直後の混乱の残る中での東京。その混乱の中に発生した「実際の」事件。帝銀事件や、昭電疑獄事件、下山事件と言った未解決事件の中に巻き込まれて、その中で結論を導いていく。
この武田の姿というのが、何とも言えない魅力がある。こういっては何だけど、現代を舞台とした作品であると、「悪徳警官」と言われても仕方がないような生き方と言える。けれども、戦後の混乱の中で活きなければならない、という状況。戦争中、自分の代わりに死んだ同僚への悔いとその妻子を、という義理。さらに、自らが惹かれた女・美音子との関係。その中で「きれい事を言っていられない」という状況もしっかりと描かれており、その生き方が良いとは言わないにせよ、納得出来るものとなっている。下山事件などについては、著者自身が、ノンフィクションとしての書籍を記しており、そういう点でも思い入れが深いのかも知れない。
また、先に、実在する事件を題材に、と書いたが、他にも、武田の行きつけのバーでよくあう「太宰治」という男、とか、武田と同じ刑事で、精力的に動いている平塚八兵衛とか、実在の人物だとかも生き生きと描かれ、より、時代の雰囲気を強く感じさせるのも魅力だと思う。
GHQとか、混乱期の中での勢力が、なんていうのは良いにせよ、連作ながら、それぞれがかなり近いところで繋がっていて……というのは、ちょっと繋がり過ぎかな? とか、物語の最後がちょっと唐突かな? と感じたところはある。でも、そういうところをマイナスしても、すごく作品として面白い短編集だった、と感じる。

No.2009

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