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(書評)覆面作家の愛の歌

著者:北村薫

覆面作家の愛の歌 (角川文庫)覆面作家の愛の歌 (角川文庫)
(1998/05)
北村 薫

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「覆面作家」として、デビューした美貌の令嬢・新妻千秋。そして、彼女は、現実の事件をも解決してしまう探偵でもあった。
「覆面作家」シリーズの第2作。全3編を収録している。
第1作目の『覆面作家は二人いる』は、どちらかというと、ヒロインである新妻千秋のキャラクターそのもののインパクトがかなり強かったのだけど、今回は、そこに慣れたこともあるのか、素直にミステリ作品として楽しめた。一方で、今回、初登場の別の出版社の編集者・静さんがかなり強烈だった気がするけど(笑)
三編の中で、話として最も好きなのは、最初に収録されている『覆面作家のお茶の会』。最初に、軽いジャブ程度の暗号ときをかまして、メインは、「修行だ」と山寺へと隠れてしまったケーキ職人を連れ出す話。謎解きとしての部分よりも、それがわかったところで描かれる、職人の幼馴染みの愛情、職人の妻の子供たちへの愛情、というようなものが印象的。確かに、犯罪であるし、実際、これを許してしまったら、というのはあるにせよ、でも、何か見逃して挙げたくなってしまう。そういうものがある。探偵が彼女で良かったね、というか(笑)
表題作『覆面作家の愛の歌』は、ある劇団の看板女優が殺され、容疑者と目されるその演出家には鉄壁のアリバイが……。
収録されている作品の中でも、最も分量があり、そのトリックの方法であるとかもかなりこっており、「本格ミステリ」としてのこだわりを強く感じる。そして、語り部である良介が「ごちゃごちゃしている」というように、確かに、ごちゃごちゃ。でも、なるほど、とは思った。
ただ、先に書いた『愛の歌』に関しては、多少、時代を感じるかな。トリックの肝となる電話の部分、刑事である優介が「プライバシー保護のため、通話記録をNTTは見せてくれない」と言うのだけど、多分、今なら正式な令状などがあれば開示されると思う。そうなると、あっという間にばれてしまうような……。単行本になったのが95年なので、当時は、携帯電話はまだあまり普及していなかったり、とか、そういうのもあったのだろう、とは思う。
でも、1作目よりも、キャラクターに慣れたところもすんなりと入ってきて、サクサクと読めた。面白かった。

No.2029

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