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(書評)百万のマルコ

著者:柳広司

百万のマルコ (創元推理文庫)百万のマルコ (創元推理文庫)
(2007/03)
柳 広司

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ジェノヴァの牢の奥。戦争捕虜として捕らえられた4人の若者たち。じめじめとした空気も、不味い食事も、時間の経過により慣れては来た。しかし、ただ一つ、彼らを困らせるのは「退屈である」ということ。そんな若者らの前にやってきた男、マルコ・ポーロは、東方で見たという不可思議な物語を語る……
という連作短編集。
マルコ・ポーロと言えば、『東方見聞録』、『東方見聞録』と言えば、黄金の国ジパング。
というのは、解説文の冒頭に書かれた文章なのだけど、確かに、そのことは知られているけど、実際にどういう内容の書籍なのか、についてはよく分からない。そんな人が多いのではないかと思う。私も読んだことはない。
で、その内容は、といえば、「百万(イタリア語でほら吹き、嘘八百などの意味を持つ)のマルコ」という異名を持つマルコ・ポーロが、フビライの元で体験した数々の出来事を語る。しかし、それは明らかに「おかしい」と思われる箇所があり、そのことについて4人の若者が「こうではないか」と議論し、やがて、その真相を知る、というパターンで語られる。
本作も、著者の他作品と同様に、実在の人物などをモチーフとしてはいるのだが、そこで描かれる世界観は、文字通り「法螺」のようなそんな世界観。「常闇の国」であるとか、文字通り、おとぎ話の世界のような物語が多く含まれており、他の作品とは異なったファンタジー小説を読んでいる気分になる。
そして、毎回のパターンである「おかしい」部分についての解釈。ここが、その……何というか……ミステリというよりは頓知の世界。マルコが語る物語の中に、しっかりと伏線となるヒントはちりばめられ、しかし、実際にそれをしたらどうなのか? と思われるような発想の解決策へと落とす。ある意味では、脱力するようなものであるのだが、先に書いたファンタジー小説のような世界観と相まって、妙にしっくりと来た。
で、そういう風に考えると、先に書いた『東方見聞録』の中身はどうだったのか? という疑問へたどり着く。この書で語られる物語が、どこまで、その中身に忠実なのか? マルコは、実際、どういう話を語っていたのか? と……。解説でもあるように、当時の欧州の人々、キリスト教文化が他文化に対して偏見などがあった、なんていうのを含めてこういう物語が書かれていたのかも……なんていう風にも考えてしまう。その一方で、だとすれば、当然、「ほら吹き」とか言われるだろう、とも感じるわけだが。
1編20頁程度の、本当に、分量の少ない短編集ながら、数々のスケールの大きな世界が次々と現れる。そういう部分だけでも、すごい、と感じさせる短編集だと思う。

No.2039

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